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自己満足な短編部屋コミュの空・・・好きか? 3月15日 その15(最終回)

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桜の花がまだ三分咲きだからか、花見をしている人は無く、貸切の状態だった。
あのクリスマスの記憶が蘇る…

光国は手紙を読み終えると、空を見上げて微笑んでみた。
 雨が頬を濡らしている・・・
傍からはまるで泣いているかのように、頬から顎にかけて、細い道が出来る。
 心の中で光国は思う。
(雨に濡れるのも悪くないな・・・)

 手紙を受け取ってから直ぐに彩香のアパートへ行ったのだが、別の住人が住んでいた。
聞けばもう3か月になるという。
それは、出張と言ってから、ひと月後に契約を解除したということだった。
彩香の就職先も連絡先も解らなかったから、光国は店に近い総合病院を調べ回った。
「こちらに入院している人で・・・」
2件目の病院で、彩香が亡くなったことを知った。事前に自分が亡くなったら、いつも見舞いに来てくれる友人に、手紙を渡して欲しと、前もって準備していたようだった。
「凄く素敵な笑顔でしたよ」
 そう看護師は光国に言った。亡くなる前に意識は無かったが、うわ言のように『出会ってくれてありがとう』と言っていたらしい。

 季節の花が、桜に変わろうとする3月15日・・・
短いけど心に素敵な思い出を残すあたりは、彩香の人生に似ていると光国は思った。
心の中で光国は思う。

(今日は彩香さんの誕生日…でも、貴方はこのまま27歳で時が止まっているんだよね・・・)
 光国はポケットから煙草を取り出した。
 彩香の手紙を読んだ日から始めた煙草は、まだ吸い方がどこかぎこちない。
 店主には止めろと何度も言われたが、咳き込みながらも、無理矢理に吸っていた。
「お前・・・」
「煙草の煙が目に入っただけだよ!」
 光国が煙草を始めたのは、自分の泣いている姿を誤魔化すためのものだったと知って、店主はそれ以降何も言わなくなった。
 煙草に火を点けて、空に向かって言う。
(誕生日おめでとう!一度も祝えなかったけど・・・いつまでもちゃんと覚えているから、寂しくはないだろ?え?)
 空を見上げる光国の頬を涙が流れた。
(違うって、煙草の煙が目に入ったから、それで目が染みたんだ!解るだろ?)
 光国はピースサインを出し、それを口の両端に持っていき、端を持ち上げた。

(ほら!ピースは幸せの意味だから、こうすれば幸せな笑顔!)

 にっこりと微笑む光国の頬は、いつまでも煙草の煙で流れる涙が止まらずにいた。

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