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ぺ・天使のぼやきコミュの年の終宴とはじまり

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AM6:43

彼女もいない。
はしゃぎあえる友達もいない。
悩み事を相談する相手もいない。
昨日の晩飯すら思い出せない。

そんな僕たちはあの日、おのずとあの地へ集まったんだ。

やっとのことで土手にのぼった僕達は、絶句した。

そして一言だけ、鳥越ちゃんはつぶやいた。



鳥越「…やっぱ席替えしねえ?」












——数時間前。






2005/12/31 12:48
From カツヤ
Subject Re4:よっ!

君はメンツ確保と集合時間・場所きめといて。買い出し、集金等は話し合いで!




2005/12/31 13:02
From カツヤ
Subject Re6:よっ!

まあ万が一、誰も来なくてもいいんじゃない?最悪、君と僕でこの世の終わりについて話し合おうぜ!




2005/12/31 14:23
From たかなお
Subject 無題

今日は予定ありなんだ、ごめん!




2005/12/31 14:52
From 前ちゃん
Subject Re:

明日朝からバイトだからムリ(;_;)




2005/12/31 15:41
From ねぎしょ
Subject Re:Re2:Re2:Re2:Re2:Re2:

いやぁバイトなんで…




2005/12/31 16:48
From りえぽん
Subject 無題

いーなー!おもしろそう!でも今長野にいるから無理だ。。
また来年皆が集まる時に参加させていただきます!でわでわ良いお年を!





だいぶ割愛したものの、僕がこの日にメールした内容はどれも同じで、日が暮れるとともに心も沈んでいった。
大晦日にノープランで声をかけて誰が来よう。そう自分に言い聞かせていた時、金色のメールが届いた。



2005/12/31 17:02
From 鳥越ちゃん
Subject Re:

ま、別に暇だけど…。




僕はすぐさまカツヤに一報いれた。
それから間もなく、彼から大規模なプロジェクトの草案が発表された。
内容は以下のようなものだった。


大晦日の会 〜孤独の美学〜 

首謀者 小林 井上
参加者 鳥越 カドゥ  

内容 蓮根駅から徒歩5分のところにある小林カツヤのじいちゃんち(防音加工済)で執り行われる会。
   2005年最初で最後の男会ゆえ、恋愛ネタ◎、下ネタ◎、上ネタ△。
   なお、翌朝には初日の出を拝みに近くの土手、すなわち荒川までランニングする。


確かに男会はしばらくやっていなかった。それはHGとして興奮をおぼえることだ。
何よりもカドゥと会うのが久々で、例の彼女と別れたんではという噂まで街に出回っているものだから、余計に楽しみになっていた。
カドゥ…今、何してるんだ…



PM20:21

あと四時間足らずで年が明ける、2006年がやってくる。
僕と鳥越ちゃんは蓮根駅でカドゥを待っていた。
カツヤも寒い中自転車でこっちに向かっているようだった。
それにしても今年は冷える。
情報によればこの「20年ぶりの寒い冬」は電力量の最高値を更新したという。
それもきっと恐怖の大魔王の仕業に違いない。

「カドゥ遅くねえ?」
鳥越ちゃんは震える手をポケットに突っ込み、囁くような声で 問いかけてきた。僕は少し間を置いて答えた。
「ほんとにねえ」
少し咳をしながら彼は、駅についてから3本目のタバコに火をつけた。
ふと鳥越ちゃんの顔を見ると、血色が悪い。
少し体調が悪いようだ。

12月中旬に岩手から戻ってきた彼は、すぐさま来月にはまた岩手へ行くらしい。
最近ではみんな、「いつこっち来るの?」「何日に岩手帰るの?」と言うようになって、本人でさえ「あっちに戻るのは〜日かな」と言う。
彼にとってのホームはもう岩手なのだろうか。
一年も住めば、そういう気になってくるものか。
仮にもし、東京に思いを馳せるものさえ残せて行けたなら、きっと何か変わっているに違いない。こっちに帰ってくるときの気持ちも違うはずだ。そういう感覚を知ってくれることを、どれだけカツヤと僕が祈っていることだろう。
高校時代、場違いな「席替えしようぜ」という発言をきっかけに称されるようになってしまった、いわゆる不幸キャラとしての彼がこれまで感じてきたその気だるさは、僕達に推しはかれるであろうか。結果うまれた言葉が「ま、どでもいーけど」であることは納得するにたやすいことである。
「他人の幸せが僕の幸せ」が口癖の僕やカツヤとしては、2006年に向けて彼の背中を押すためにできることならなんでもしたいと思うばかりであった。滅多に望んだりすることのない無欲な彼からのSOSを、僕たちは見逃すつもりはなかった。

鳥越「…ねぇ」

井上「…」

鳥越「……ねぇ」

井上「……」

鳥越「………ねぇ」

井上「………」

鳥越「ねぇってば!」

井上「…あぇっ?あぁごめん、ぼーっとしてたわ」

鳥越「…。たばこの火貸してもらえる?ってさっきから言ってるんだけど」


僕は彼のSOSを完全に見逃していた。
こうして20年間不幸な男と20年間愚かな男の茶番は幕を閉じた。
そして気がつけば、カツヤもカドゥも到着していた。

カドゥは一見、全く変わってないように見えたが、なんとなくどこか一皮向けたようなかんじがした。
彼女と別れたと言う噂は本当なのだ、と僕は確信した。
そして傷に塩を擦り込ませる気持ちで尋ねた。

井上「カドゥ、例の…、例の娘と別れたって噂があるんだけど…」

カドゥ「いいや?うちら結婚するからさあ!」


どこかで聞いたような台詞だった。
遥か昔だが、誰かも同じことを言っていた。
別れてないのは意外だったが、その台詞を聞いたら余計に心配になってきた。
昔存在していた愚かなカップルは、破局の直前まで、もしくは破局した今でも、互いに結婚すると高らかに宣言をする。
カツヤはしばしばそのカップルを羨ましいと言うが、僕に言わせればこうだ。
奴らはきっと本当は、恋なんて人間にするもんじゃないと思っている。
奴らはきっと本当は、恋をしてる自分に恋してるだけだ。
僕はカドゥ夫妻がその理論の愚かさを証明してくれることを願ってやまない。




PM21:02

そして宴は始まった。

スタートから部屋の電気は豆電球。
芋焼酎をあけるやいなや、突然鳥越ちゃんは立ち上がり、震えながら喋った。

「こ、今宵の愚痴や陰口は、0時をもってリセットされる…。だからこれから3時間、ここは無法地帯だ…」

聞こえるか聞こえないかの声でそう話す彼の手には、すでに空のビール缶が握りつぶされていた。
もはやあれは鳥越ちゃんではなかった。
エセ心理分析家のカツヤに言わせれば、あれは恋をした時に鳥越氏によく起こる現象だという。
しかし誰も不気味がって何も追求することはなかった。


しばらくして、酔いが完全に皆を支配しはじめた。
3分に1度の割合でトイレへ駆けつけるという現象を、僕は久々に味わうことができた。
その現象が起こるときは決まって、トイレに黄色のチョウチョが数匹飛んでいるのだ。まさに至福のときである。


23時頃だろうか、カウントダウンまでまもなくというところで、カドゥは突然用事を思い出したと言って帰宅の準備をはじめた。

「そんなぁもうちょっと飲もうよん」
僕はからんだ。こんなときは大抵、ぐずぐずのカドゥものってきて
「そう?じゃあ飲もん飲もん!ぱふぇぱふぇ」
と、くるはずだった。

しかし今までのカドゥはもうそこにはいなかった。
「やめたまえ!おれは用事があるんだよ!」
さすがの僕もむっとして言い返した。
「頭きた、トイレ行ってきてやる!」
トイレから帰ってくると、もうそこにカドゥはいなかった。

カツヤと鳥越氏は、テレビに映った敗北後の曙を冷めた瞳で見つめ、同類のものを見るかの如くそのまま僕へと視線を向けた。
「おまえは虫けらの中の英雄だよ」
カツヤはそう呟いて、目を閉じた。



PM23:51


いよいよ年が明けようというのに、気付けばカウントダウンの過ごし方さえ決めていなかった。
新年もノープランを売りにして生きるのか…。
絶望に打ちひしがれていたその時、やはり空気をかえたのが鳥越氏の台詞だった。

「電話しようぜ!」

新年が明ける直前にいろんな人に「良いお年を」という言葉を捧げようという馬鹿げたプランは、3秒後に朗らかに実行された。
僕は携帯を握り、無差別に電波を乱射した。

この時間帯とあってやはり、僕の電波はことごとく遭難し、ほとんどの電話がつながらなかった。

すると次の瞬間!プルルルル…

改めて聞くとなんとすばらしい音だろうか。

こんなに電波が込み合っているのに、なんとラッキーなことよ。

おっと、相手は誰だったかな…?


岩壁氏!!

おそらく彼と話し込んだら10分じゃ済むまい。だが幸い、彼は電話に出なかった。


そしてまた電波の乱射を始めた。

すると次の瞬間!プルルルル…

改めて聞くとなんとすばらしい音だろうか。

こんなに電波が込み合っているのに、なんとラッキーなことよ。

おっと、相手は誰だったかな…?


菅井氏!!

よりによって大晦日に菅井とは…パンニハムハサムニダパンニハムハサムニダ…

菅井「もしもし?」

井上「パンニハムハサムニダ!」

菅井「え?あぁ、韓国語でサンドイッチのことね。じゃあフランス語で農家は?」

井上「モンペデクワ!」

菅井「やるわね。じゃあ石さんが舵を取る船といえば?」

井上「ウズクマル!」


そのやりとりがしばらく続いた後、いつのまにか年は明けた。






PM5:12

少し寝てしまったのだろうか、目を開けるとそこにマッチーがいた。
不思議なこともあるもんだと、再び目を閉じた。

眠い。


PM6:??

またどれくらいの時間が過ぎたのだろう、部屋は暖かく、酔いは程よくさめているので余計に睡魔を誘う。
僕は今マッサージチェアで寝ているらしく、とても快適だ。
このまま昼まで寝てしまおう。
そう決心した。
そして約10分後、僕は奈落へ突き落とされた。

そういえば初日の出を見に行くというプランがあったのだ。
外へでると、人生で初めて本気で死にたくなった。

早朝の小鳥も凍えてさえずることを忘れるほどだった。


荒川の土手まで、近いとは言えども徒歩15分といったところであろうか。

到着するまでいろいろなことを考えた。
なぜこんなに寒い事態になっているのか。
なぜ家でぬくぬくと大晦日を過ごさなかったのか。
なぜ僕は生きているのか。
正月のバーゲンはどこへ行こうか。


一方、空は雲行きが怪しかった。

皆不安を口にしはじめた。
カツヤ「曇ってるけど大丈夫なん?」
井上「もうやだ、引き返そう」
まっち「ここまできて初日の出見れないってのはないよね」
井上「ねえ帰ろうってばー涙」
鳥越「席替えしようぜ」


そしてついに荒川に着いた。。。





AM6:43

彼女もいない。
はしゃぎあえる友達もいない。
悩み事を相談する相手もいない。
銀色の髪のアギトが見たい。

そんな僕たちはあの日、おのずとあの地へ集まったんだ。

やっとのことで土手にのぼった僕達は、絶句した。

そして一言だけ、鳥越ちゃんはつぶやいた。



鳥越「…やっぱ席替えしねえ?」






土手からは見事に、初日の出が見えることはなかった。

たまにアクティブに行動すると裏目に出る。
だいたい予想はついていたはずである。

だが、僕たちは笑った。つくづくなこの状況に。

2006年も、僕たちは、こういう不器用な人たちであろう。


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