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ねこると創作クラブコミュのねこると"SF"大賞 応募作品No.3『遺伝子治療』

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「障害児…ですか?」

歳老いた医師はこくりと頷いた。

「脳に障害をもったお子さんが生まれます」
「………」
「いかがしますか?」

医師はスッと契約書を取り出した。
『遺伝子治療の契約書』
2150年。科学は目まぐるしく発達し、生まれてくる胎児の遺伝子検査は当たり前となった。事前に遺伝子を検査することで、異常がないか調べるのだ。これにより『先天性障害児』の数はめっきり減った。自分の子供の不幸をなげき、自分のせいだと責める親はほとんどいないといっても過言ではないだろう。
もちろん、ここまでの道のりは長く険しいものだった。140年ほど前から出産前診断の技術があったそうだが、とある問題に直面し議論となった。
胎児に異常を見つけたとしても、堕胎するのは『人殺し』と同じではないのか?という倫理的な問題だ。

しかし、2050年。某国が遺伝子操作を受けた胎児の出産に成功した。
彼らの主張はこうだ。
『染色体の異常がある受精卵を廃棄すると殺人。なら、病気にかかった受精卵の遺伝子を操作して治療をすればいいじゃないか』
この思想と遺伝子治療の技術は爆発的に全世界に広まり、今や遺伝子治療を受けないで生まれてくる子供の方が少ない。

医師は電子カルテを見ながら口を開いた。

「あと、お子さんは同性愛に興味をもつ可能性が高いですね。将来、『腐女子』という病気にかかるでしょう」
「え!それも『障害』じゃないですか!治療お願いします!他にはありますか?」
「あとは…ピーマンが苦手ですね」
「それも!」
「音楽はビジュアル系への興味が高くなります」
「そんな…それも『障害』です!クラシック系にしてください」
「わかりました。色は黒や赤を好みます」
「女の子はピンクよ!それも『障害』じゃない!」
「では、ピンクに好感をもてるように『治療』しますね」

確認を取るべく医師が項目を挙げる度に、悲痛な声が病室内に響いた。
ふと、彼女は不安になる。
いくら自分の母親が推薦してきたお墨付きの病院でも、こんなに多くの項目について『治療』できるのだろうか。
急に曇った彼女の顔に、医師は小首を傾げた。

「どうされました?」
「いいえ、あの、先生の腕を疑っているわけではないのですけど…本当に遺伝子操作するだけで治るのですか?」

それを聞いた医師は電子カルテに書かれた名前を確認した後、


「ええ、大丈夫ですよ。私は長年何症例もの遺伝子操作をしてきましたが、貴女との応答でいっそう自信がもてました」


にっこりと微笑んだ。



(テーマ:サイエンス・フィクション…?)

コメント(2)

<投稿者のアリカさんによるあとがきがあります>
どうも、大当たりです。ありかさんでした。
私全開で書いちゃいました。相変わらずの短文です。
色々な問題を孕む文章なもので、各方面から誹謗中傷まではいかずとも(?)非難が飛んできそうな気がしてなりません。最後まで、投稿しようかどうしようか悩んだ作品です。
この文章を読んで気分を害された方がいらっしゃいましたら深くお詫び申し上げます。自慰はあっても他意はないです。悪意なんて毛頭ないです。
話は飛びますが、眼鏡って凄い発明ですよね。コンタクトはもっとすごい。これがないと外を歩くことができません。昔の人はどうしてたんでしょう。私は目が悪いことは身体障害であると考えてます。でも、眼鏡をしている人やコンタクトをしている人を見て特に何も思わないし、一般社会に馴染んで生活しております。じゃあ昔なら?例えば平安時代、戦国時代だったら?なんて、考えてみたり。人は何をもって『障害』としてるんですかね。とは言っても、やっぱ目がいいのに越したことはないですねー。
iPS細胞の臨床試験が成功することを期待してます。網膜さえできれば…!
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
・母親のコミカルなリアクションにニヤリ。今は笑える。架空の未来だから……笑わせといてどこかうすら寒い雰囲気がタマラン
・近未来の科学技術って夢が広がりますよね。あと、便利になる反面人間的にどうなの?っていう点が好きです。
・人類始まって以来、ず──っと積みあがってきた遺伝子情報の螺旋。それは、祖先の礎。過去の記憶。未来への架け橋とも形容できるのではないかと。代々、未来永劫続いていくであろう途方のない螺旋階段に、科学的見地から手を加えると言う、サイエンスフィクションらしきこの展開。実に面白い。
 人はまず自我に目覚め、成長と共に人格を形成していくもの。『遺伝子治療』となると、その作業が要らなくなるということなんでしょうか。逆に考えると、人と為りを形成させていく過程である教育や躾といったものは、遺伝子の構造を変える『遺伝子治療』そのものではないか、と思ってしまいますね。
 身近に聞く人工受精や体外受精、そしてiPS細胞。ゆくゆくは親いらず。この先、どんな未来人が出てくるのでしょうか。
 最後に、電子カルテに書かれた名前は、どんな名前だったんでしょう。老医師は何かを納得したかのように思えますが、その名前を見て何を思ったんでしょうか。それは親から子に向けての一番理想に適う名前であったに違いありませんが、その名前を読み手が考えてみるのも面白いですね。"
なんだかんだ言って、人間って倫理的なことに口うるさいですからね。こんな未来にはなってないことを祈ります。

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