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ねこると創作クラブコミュの第四回ねこると短編小説大賞応募作品No.2『リ・インカーネーション』

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 私の人生なんて、毎日がどんよりと曇っているものであって、決して晴れ間なんて見えないものだった。例えるなら、日曜日のサザエさんが始まって「明日から仕事か……」と、週末が終わる儚さで暗くなる社会人の気分が、毎日続いていると言っていい。それほど私には希望や将来といったものが無かった。大げさに聞こえるかも知れないが、本当にだ。
 もう十分生きたと思い、自殺まで考えた。そんな時、彼に出会った。これから話す事は、私が彼と出会って一時間ほど話した事、只それだけだ。でもその会話のお陰で私はまだ生きている。それほど私にとって大切な会話だったんだ。その日もそう、私の人生を見事に表すほど、梅雨の大雨だった。


 初めに気付いたのは小学生の頃だった。「十年後の自分へ」というテーマで作文を書かされたとき、全くもって未来の自分が何をしているのか見えなかった。周囲のクラスメイトは皆、思い思いのなりたい職業に就いている自分へ向けて、「頑張れ」だの「十年前の私は……」だのと書いているのだ。
 それに比べ私には、特になりたい職業も無ければ、将来の自分の姿もぼやけて見えなかった。それでも書かなくては怒られる為、友人数名の作文を見せてもらい、それらしい言葉を並べて提出したのを覚えている。
 当時は、子供だからまだ解らないのだ、大人になれば見えてくるさと、暢気に考えていた。しかしその数年後、中学三年生の進路相談で思い知らされた。行きたい高校が無いのだ。
 いや、私の周囲に高校が無い訳ではない。寧ろ選び放題なくらい様々な高校があった。問題は、やはり私の未来がぼやけている事だった。どの高校に行った所で、学びたい事も無く、将来なりたいもの、したい事も無かった。仕方無いので、とりあえず勉強せずに行ける、偏差値が真ん中位の高校へ行くことにした私は、その後もこの問題に苦しめられる事となった。
 将来の事を何も考えていないのと、考えても解らないというのは、傍から見れば同じように見えるようだが、実際は大きく違う。私は明らかに後者の方だが、おそらく他の人より人生を考えた時間は永いだろう。なにせ高校でも自分の将来像が見えず、進路相談室の常連として自ら通いつめたくらいだ。
 結局自分の将来を先延ばしに考え、三年前と同じく勉強せずに行ける、偏差値が真ん中位の大学へ進学した。まぁ結論から言うと、結局最後まで未来が見えないままだったが。
 大学四回生の時点で、私は覚悟を決めた。諦めたと言ってもいい。片っ端から会社を受けまくったのだ。職種も規模もバラバラである。どうせ就きたい職が見当たらないのならば何をしても一緒だし、大学院へ行くよりは就職した方がマシだと考えたのだ。ある程度の面接練習と試験勉強をし、就活で忙しい毎日を過ごした。おそらくこの頃が私の人生で一番活動的だっただろう。その甲斐あってか、こんな私でも現在まで働けている会社に入ることが出来た。
 しかし、やはり考えてしまう。自分はこの仕事をしたかったのか?本当は他の仕事がしたかったのではないだろうか?では何がしたいのか?無数に選択肢は伸びているはずなのに、それが見えない。最終的に行き着いた答えは、「とりあえず生きる」である。
 正直に言うと、この時既に私は疲れていた。明日さえも見えず、ただその日を過ごすだけの毎日にだ。仕事にやり甲斐を見つけられた訳でもなく、得体の知れない不安感と、答えが見えない違和感に押しつぶされそうで、徐々に笑顔が減り、楽しいと思えることが何一つ無くなってしまった頃、私は生きることを諦めた。
 それからの行動は、自分でも驚くほど速かったと思う。まず、十年以上務めた職場に辞表を出した。周りは明らかに驚いていたが、何とか嘘をついて納得してもらった。次に考えたのは、この世からの旅立ち方で、これはとても悩んだ。やはり人様に迷惑を掛けるのは良くないと思い、派手な方法は次々に除外していくと、結局「人気のない山中で睡眠薬」が一番だという結論に至った。
 
 その日は私の人生を見事に表した程の、ジメジメして、曇っていて、梅雨ならではの大雨が降っていた。
 それまで住んでいたアパートを引き払い、家財道具も全て処分し、本当の意味で身一つになった私は、睡眠薬と遺書が入ったデイパックを背負い、近場の山へ行くため、バス停へと向かった。
 まだ九時過ぎだというのに、通勤ラッシュは終わっているのか、駅前の停留所には誰も居なかった。屋根付きのベンチに腰掛け、服に付いた水滴を払いながら、これからの事をイメージする。大丈夫、何の未練も無いし、意思は揺らいでいない。
 これなら完璧だ。こんな時だけ未来の事がはっきりと見えるなんて、やはり私はそういう運命なのだろう。自嘲が顔に出ている事に気付いた私は、それを止める事もせず、寧ろ周りに人が居ないことを良い事に、大声で笑ってみた。こんなに笑ったのは何時ぶりだろう?もしかして初めてではないのか?一頻り笑い、更に覚悟が決まった様に思える。
 それにしても、まだバスは来ないのだろうか?携帯電話も腕時計も処分してしまった為、時計を探すために周りを見渡した時だった。
 「生きたくなった?」
 唐突に話しかけられたので、最初は私に向けての言葉とは思わなかった。
 「さっき大声で笑ってたじゃないか。生きる素晴らしさに気付いたんじゃなないの?」
 雨が止んだのか、静かになった空間で響いた声が、やっと私に向けての言葉だと気付いた時には、声の主は私の目の前に居た。
 そこには学生服を着た少年が立っていた。シャツの裾をズボンに入れておらず、派手な模様のTシャツが透けていた。首にはネックレスとヘッドフォンが掛かっており、一目見ただけで今風の、真面目では無い男子高校生だと解った。顔立ちなどはどことなく、高校生当時の私に似ていなくもないが、流石に進路相談室の常連であった私は、服装だけはキチッとしていた。
 それにしてもこんな少年が私に何の用だろう?と言うか、もしかしてさっきの高笑いを聞かれてた?誰も居ないと思っていたのに……。そんな後悔と恥ずかしさで、頭が上手く回っていない私を尻目に、彼は私の横に座ってきた。
 「おじさん、いやお兄さんの方が良いか。お兄さんには悪い知らせかもしれないけど、もしまだ自殺する気なら諦めた方が良いよ。僕は知ってるから」
 いきなり私の横に座っておきながら、笑顔で何を言っているんだろう。いや、寧ろ何故彼は私が今からする事を知っているのだろう。やっと落ち着き始めた私の頭脳は、疑問を解決するためにまたもやフル稼働を始めた。
 私は誰にも今日の事は言っていない。両親にすら、遺書が見つかってから連絡が行くようにしているのだ。いや、そうじゃない。今考えなければならないのはそこじゃない。
 そうだ、彼は先程自殺を諦めろと言っていた。何故私が自殺志願者だと解ったのかは、この際置いておき、最優先で考えなければならないのは、どうやって彼に邪魔されず目的を遂げるか、である。
 「自殺?諦めろ?一体何を言ってるんだい?大体君は誰なんだい。私を勝手に自殺志願者にしているみたいだけど、初対面の人に対して、それってかなり失礼じゃあないのかい」
 とりあえず私は嘘をついた。彼は少し変わった子みたいなので、適当にあしらっておけば良いだろうと考えたからだ。しかし直ぐに彼は、私の浅はかな嘘に対して、まるで全てお見通しだと言わんばかりに言葉を返してきた。
 「やっぱりそうきたか。じゃあお兄さんの疑問に答えるけど、僕は自殺を止めに来た神様みたいなものだよ」
 「はぁ?」
 「だよね、そうなるよね、普通。まぁこれは知っていたから大丈夫。えーっとそう、僕はその方面のボランティア団体に所属しているから、それっぽい人が居たら直ぐに解っちゃう、みたいな人だとでも思っておいて」
 彼はやや不思議なことを言いながら、そう説明した。しかしそれなら納得する。確かに、いきなり大人が大声で笑い出したら、誰でも危ない人だと思うだろう。
 私は彼のような、一見不真面目な格好の少年が、長くボランティアをしている事に感心したが、それとこれとは別問題である。こちらとしては、彼の崇高な精神が目的遂行への障害物以外の何物でもないからだ。
 これは何としても彼を追い払わねばならない。しかし彼は、私の気持ちも知らずに言葉を続けてきた。
 「そう言えば自己紹介がまだだったね。僕の名前はウラベ、浦和の浦に部活の部で浦部って言うんだ。まだまだ色々と説明しなきゃいけない事があるんだけど、どうせお兄さんは信じてくれないから、とりあえずは、僕の事は居ないものとして、まずはお兄さんが考えたプランを一通りしてみようか。もしかしたら途中で気が変わるかもしれないし」
 彼、浦部がそう言ってベンチから立ち上がると同時に、バスが到着した。その瞬間、まるで今まで時間が止まっていたかのような錯覚が私を襲った。浦部が話しかけてきてから止んだと思っていた雨音が、いきなり耳に飛び込んできた事からすると、本当に時間が止まっていたのかもしれない。
 私は何が起きたのか解らずにいたが、まずはそこまで深く考えずに、彼の言うとおり、当初の目的を果たすためバスに乗ることにした。勿論、私の後ろから浦部も付いて来たが。

 バスに乗り、後方の座席に座ると、浦部も横に座ってきた。どうやらとことん付いて来るつもりらしい。
 バス停で引き止めなかったということは、もしかすると本当に途中まで私の自由にさせる気なのだろう。そして最後の最後で何とか止める算段なのだろうが、そちらがその気なら、こちらも考えがある。と言っても強行突破しか浮かばないが。
 まぁ山中に入ってしまえば、後は薬を飲むだけである。私がどうやって死ぬかを彼は知らないはずなので、私のほうが一手早い。
 私は膝の上に置いたデイパックの外側をそっと触ってみる。薬を入れた瓶の感触がそこにあった。大丈夫、素早く取り出して飲むだけだ。それで全て終わる。そんな事を考えている内に、やがてバスは私達を目的地まで運んでくれていた。

 目的の山は、まだ午前中だというのに暗かった。この雨の所為もあるかもしれないが、高く伸びた木々に茂った葉が、この世の全てを覆い尽くしている感じがした。
 なるべく早く奥へと進む私に対し、少し後ろを付いてくる浦部は、またもや私に話しかけてきている。
 「あのね、お兄さんは信じないだろうけど、ここはお兄さんの終着駅じゃ無いんだよ。本当はもっとずっと先なのさ。早く僕の言うことを聞いて引き返してくれると、僕としてもあまりズボンが汚れずに済むし、お兄さんも疲れずに済むんだけどなぁ。やっぱりどうしても聞いてくれないよなぁ、僕の話」
 車内では何故か不気味なほど静かだったのだが、バスを降りてから終始、彼はこんな感じである。いい加減私もウンザリしてきたところだ。本当はもう少し奥へ行きたかったが、もう良いだろう。
 計画していた場所よりかなり手前で私は立ち止まり、浦部からの邪魔が入らないよう素早く背中のデイパックから薬の瓶を取り出し、力任せに蓋を開けた。
 てっきり慌てて走ってくるかと思っていたが、浦部は別段驚いた顔もせずに、未だに私へ同じ内容を話しかけてくるだけだった。なるほど、君はまだ私が思い留まるとでも思っているのだろう。しかし残念ながら浦部君、つい数時間前に出会った君の言葉で思い留まるほど、私の覚悟は軽くないのだよ。
 蓋を投げ捨て、彼の目の前で大量の睡眠薬を飲んでやった。いや、水無しで錠剤を飲むのはやはり難しく、飲むというより食べると言った方が正解のようだ。ただ、それでも浦部は相変わらず何もしてこなかった。
 これでも死ねないとでも思っているのだろうか。だとしたらずっとそうしているがいい。ほら、全部食べ尽くしてしまうぞ。聖人みたいな事を言いやがって。お前の思い通りになると思うなよ。
 最後の一欠片まで飲み込んだ瞬間、私は完全に勝ち誇っていた。
 
 次の瞬間、猛烈な吐き気に襲われた。薬の副作用なのか、理性で抑えきれず身体が拒否反応を起こしていた。頑張って堪えようとすればするほど、胃の奥底から引っ繰り返るほどの痙攣が押し寄せ、堪らず吐いてしまった。それこそ胃の中全てを。
 「ほーら言わんこっちゃない。最近の睡眠薬は、自殺防止の為に大量摂取すると吐くように出来ているんだって」
 そう言っていつの間にか浦部は、私の背後に立ち背中を摩っていた。私は死ねなかった事と浦部の介抱に苛立ち、涙目ではあったが、強い口調で彼に言った。
 「何を知った風な事を言っているんだ!お前に何が解る!勝手に付いてきて、耳障りの良い事ばかり言いやがって、何様のつもりだ!」
 「だから最初に言ったじゃないか、神様のようなものだって。まぁ正確に言うと、遠い未来の君なんだけどね」
 私の罵声など彼に対して効果は無く、それどころか、この期に及んでまだ彼はふざけた事を言ってきた。
 「何が神様だ!何が未来の私だ!人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
 もう何も我慢するつもりは無い。浦部に向かって私は、ありったけの罵詈雑言を浴びせるつもりだった。しかし彼は落ち着いて、やや悲しそうな顔をしながら口を開いた。
 「まぁ信じてもらえるとは思ってないけど、本当なんだ。お兄さん、輪廻転生って知ってる?この世にはその輪廻転生ってのが実際にあるんだけど、実は転生するのは何も人間だけじゃない。この地球だって生まれ変わってるのさ。そしてそれは既に何回も続いている。それこそ天文学的な数字でね」
 いきなり地球規模の、それも宗教的概念の輪廻転生の話が来たため、私は一瞬思考が停止してしまった。いつの間にか私の呼び方がお兄さんから君に変わっている事も気付かないくらいに。それでもお構いなしに、浦部は続ける。
 「元々僕らが生きている地球は、ビッグバンで宇宙が出来てから天体の衝突により生まれ、最終的には星としての寿命を迎えて消滅すると言われているけど、正確には少し違っていて、寿命を迎えた地球が消滅した後に、また同じ地球が出来るんだよ。つまり最初にビッグバンが起きた後は、ずっと地球が生まれて消えてを繰り返しているって訳さ。そうして転生した地球に生きている万物の物は、転生前の地球での出来事を繰り返してしまうんだ。これが運命と呼ばれているものの正体って事だね」
 「……なら私が自殺に失敗するのも、以前の地球で既に行われていたからだと言うのか?だとしても、そんな話をハイそうですかと簡単に信じられる訳が無いじゃないか!そこまで言うなら、何か証拠を見せて欲しいもんだ。大体、君が私の生まれ変わりだとしても、同じ時代に生きているなら生まれ変わりじゃあないじゃないか」
 「そう、ご尤もな意見だよ。本当は直ぐにでも確かな証拠を見せてあげたいんだけど、それについてまずは、君の事について説明しなきゃいけないんだ。この地球は転生を繰り返しているし、地球で生きる人だって同じように転生を繰り返しているとさっき僕は言った。でも実は君だけは他の人と違うんだ。特異点と言うらしいんだけど、他の人が何度転生を繰り返しても、それは必ず転生前の地球に居た時と同じ運命を辿る。転生前の地球で画家から主婦に転生した人は、転生後の地球でも同じく画家から学者に転生する。だけど君だけは、今まで一度たりとも同じ転生をしてきていないんだ。今まで天文学的な数字で地球は転生している訳だけども、例えば一番初めに地球が出来た時から現在まで、君は全然違う人になっている。ある時は歴史に名を残す国王、ある時は世間を騒がせた犯罪者、ある時は平凡な主婦ってな具合にね。しかもそれは一度として同じ運命を辿らない。そして僕の正体だけど、今から更に何回も転生した未来の地球での君が僕なんだ。だから生まれ変わりと言う表現を使った」
 にわかには信じられない話ではあるが、確かに浦部を初めて見た時、どことなく自分に似ていると思っていたし、何より彼から伝わる雰囲気は、何故か嘘をついているようには思えなかった。しかしまだ疑問は尽きない。
 「じゃあ、君が私の生まれ変わりだとして、何故私と同じ時間にいれるんだい?神様のようなものって、一体何なんだい」
 「そうだね、地球の話から君の話へ来たから、そろそろ僕の話をしないといけないな。そもそもは君が自殺しようとした原因からなんだけど、君の将来像が見えないってのは、望みを叶え過ぎたんだ。今まで転生してきた君が考えた、なりたい未来に君は既になっているんだ。勿論その中に自殺というのもあった。だからこれまでの事から、君はもう自殺は出来ないと言ったんだ。そして僕だけど、どうやら僕でこの現象も終わりらしい。おそらく本当に君が望む将来像が無くなってしまったから、最終的に何かよく解らないエネルギーの塊になってしまったんだろう。まぁ生まれた時からなんとなく神様っぽいなとは思っていたけど、自由に時間を遡れる事に気付いてから自分の事を知ったよ。そして君の事も知った。さっき僕は、君の未来は全て望んだ分だけ叶ってきたと言ったけど、本当はまだまだ望める夢があるんだ。そして僕は君にその事を教えに来た。自殺なんて僕が止めなくても、既に叶っているから、この時代ではどうやっても自殺で死ぬ運命では無いんだ」
 そこまで浦部は話すと、ふぅと一息ついた。気を抜いた所為か、浦部の身体は半透明になり、少し光っていた。本当に実体が無いようであり、手を伸ばして触れようとしても、手は空を切るだけだった。
 今私の目の前にいる少年は、全てを知っていた。そしてそれを私に教えようとし、私は頑なにそれを拒んだ。そう考えると、彼に出会ってから自分のしてきた事が、とても恥ずかしく思えた。自分はなんて子供じみた事をしてきたのだろう。彼のほうがよほど大人ではないか。
 反省と後悔を終え、私の心の中に一つの決意が生まれた。この時既に自殺する気は無くなっていた。
 「……すまなかった、浦部。今まで君はちゃんと僕の事を見ていてくれていたのに、酷いことを言ってしまった。でももう大丈夫だ。私の運命の終わりがここで無いのならば、とりあえず最後まで生きてみるよ。そしてもう一度、夢を探してみるよ。未来の自分をこれ以上悲しませないためにも、ね」
 「そうしてくれると助かるよ。やはり僕の前世にだって、楽しく生きて欲しいからね。そうそう、君のこれからだけど、この先の運命はあえて僕は教えないよ。今の君ならどんなことでもやっていけそうだしね。僕も安心して帰れるよ」
 運命か。今まで流されたように生きてきた私だが、これからはちゃんと自分の運命と向き合えるような気がする。なにより、ここまでしてくれた遠い来世の自分をこれ以上失望させたくなかった。
 「ありがとう浦部、そしてさよならだ」
 半透明の浦部は何も言わず、ただ微笑んで手を振った瞬間、眩しい光となって彼は消えていた。きっと役目が終わったから、元の場所へと戻ったのだろう。
 もう以前のような不安感は無くなっていた。私は今からでも、何者にもなれると解ったからだ。選択肢はかなり少ないのだろうが、今までの前世の私が願っていない未来が、未だあるはずである。まずはそれを探そうと思う。
 
 
 さて、これが私の体験した、人生が大きく変わった話だ。呆けた老人の、嘘臭い昔話だと思っただろう?何、信じてくれるのか。そうか、良かった。なら、もう自殺なんて考え無いでおくれよ。やっと私の夢が叶ったんだから。特異点として他人の運命に干渉して、誰かを助けるという、長年の夢がね。

コメント(2)

<投稿者のカラッカラさんによるあとがきがあります>
どうも、「リ・インカーネーション」を投稿しました、カラです。

何かよく解らない作品になってしまいました。
この話を思いついた時は、「イケる!」と自信たっぷりだったんですが、書いてる途中で「あぁ、これ俺の語彙力と技量じゃ表現するの無理だな……」と気付きました。
しかし締め切りは目の前。行くっきゃ無い、ってか他に何も思いつかん。という訳で、良い話にも不思議な話にもなりきれず、なんだか最後まで宙ぶらりんな感じに。もっと上手に纏めるスキルを磨かなければと猛省しました。
実際、かなり説明不足ですし、矛盾もあるはずです。字数制限を取っ払っても無理でしょう。ホント、今回は抽象的なイメージが先行した形でした。特別賞とか全く入れる余地無かったし。って言うか転生の話って、前もそんなんだったじゃねぇか、俺。後書きで思い出してどうすんだ。
……まぁ、ここで補足説明なんてしていたら、とんでもない量になってしまいそうなので、疑問や指摘がある人は後日直接連絡下さい。

こんな作品でも最後まで読んで下さった方々、本当に有難うございます。また、今回も参加させて頂いたことにも感謝しております。
次回こそ、何も考えずに、勢いだけの馬鹿話を書こうかと思っております。いつになるのかなぁ、次回…。
<読んだ人の感想>
・一回読んだだけでは理解できませんでしたが、解読していく楽しみがあります。

・始まりから共感できる文で、知らないうちに引き込まれていきました。世界観とかも好きです。

・自分にもそんな時期がありました。

・オチを食らって暫く立てなかった。言いすぎか。しかしやられた

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