ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

ねこると創作クラブコミュの一周年記念寄稿作品『少女とお節と奇妙な正月』

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
<コミュニティ参加者の真生みゅうさんから、一周年を記念して作品を頂きました>

「あまりにも悪さするので、追い出されてしまいました。ここにおいてください」
「…………はい?」


 どこにでもある1DKのマンション。
 実家に帰らなかったこの部屋の持ち主は、初日の出を見るのも面倒くさく昼まで寝ていたのだが、持ち主――彼女が目を覚ますと、ベッドの近くで正座し三つ指ついて挨拶をした小学生低学年くらいの少女が脇に居た。
 起きたばかりの彼女は何事だ……という表情をすることなく、口をポカーンと開けた間抜けな表情を少女に向けた。
「……お母さんに怒られたの?」
「違うでありまする。怒られたのは稲荷神です」
 女の子との言葉、起きたての頭には少々理解しがたかった。
 とりあえず寒かったので枕元においてあったエアコンのスイッチを入れ、何故か少女を真似て起き上がり、ベッドの上に正座する。
「い、稲荷神でございまするか……」
 彼女の言葉に少女はコクンと小さく頷く。
 その様子に彼女は目をぱちくりとさせる。そしてそのとき、彼女は自分の目を疑った。
 今まで気にしていなかったのか気付いていなかったのか。いや、気にしたくなかったのか――。
「み、み、み……そ、その耳にその格好……」
 彼女が指さしたその先には、変わらず少女が居た。……が、少女の格好があまりにも異様だった。
 狐耳に腰まである金色に輝く髪、服装は俗に言う巫女服と呼ばれるもの。少女が座っている足の横には狐の尻尾と思われるものもある。
 あまりにも異質な状況に、寝起きの彼女も一気に目が覚めた。
 ベッドからおり、少女に近寄る。
 そーっと手を伸ばして耳を触ると、偽物ではない、温かみのある本当の耳。
「うゆゆ」
 少女は一言漏らすと顔をフルフルと震わせた。……と同時に、
「あーーーー。もう猫かぶるの疲れたっ!!!」
 少女はそう言葉を漏らすと、正座していた足を崩しあぐらをかくと右手で頭をかきむしった。
 その変貌に耳を触っていた彼女の動きは止まる。
「おたく、古川穂(ふるかわ・みのり)だよな?」
 彼女――古川穂と呼ばれた彼女は、少女の耳を触ったまま何度も頷く。
 いつまでも耳に触られていることが癪に障ったのか、少女はそれをうっとおしそうな表情で手を払うと、穂を睨みつけ、
「うちは神様の見習い。さっき言った通り、稲荷神の怒り買っちゃってさ。しばらく厄介になっちゃうよ」



 ――正月からけったいなことに巻き込まれた。
 実家に帰らなかったため注文しておいたお節を、一人暮らし用の小さな正方形のこたつの上へ置いて、穂は頭を垂れ小さくため息をついた。
 コトンと小さな音を立てて置かれたお節のお重を、パカリと開けるときらびやかな色とりどりのお節が目を楽しませる。
 少女もきらびやかなお節に目をキラキラさせていた。
 すっと伸びる右手……を、穂はペシンと叩いて睨みつける。
「行儀が悪いっ! もうすぐお雑煮出来上がるから正座して待ってなさい!!」
 穂の言葉にビクンと体が震える。
 大人しく正座をすると、伸ばしたてを太ももの上においてじっとお節を見つめた。
 少女の様子に小さくため息をつきながら、お玉をくるりとお鍋の中で一混ぜし、お椀の中にお雑煮を二つつぐ。
 こたつに向かい同士に座ると、
「あけましておめでとうございます」
 たった今知り合った少女に深々と頭を下げて、新年の挨拶をする。
 少女はそれに答えることなく、
「神様の見習いにお神酒&お年玉プリーズ!」
 と、軽快に叫んだ……が、どこから取り出したか新聞紙を丸めたもので、少女の頭をスパーンと小気味いい音を立てて叩いた。
「いったぁぁぁ……」
 叩かれた少女は涙目になりながら、両の手で頭を押さえながら穂を睨みつける。
 何か一言でも言いたそうな表情だが、また余計な一言をいって痛い目にあうのは嫌なのか、睨みつけるだけだった。
 しかし穂はそんなことを一向に気にする様子を見せずに、
「ところで神様の見習い。あんたの名前って何? 呼びにくいんだけど」
 と、聞いた。
 少女はお重の中の伊達巻を大きく一口頬張り、もぐもぐさせながら途中喉を詰まらせたのか慌てて水を飲み込んだ。
「げっほ、げほ……え、名前? きっちゃんだよ☆」
「……き、きっちゃん……?」
 少女――きっちゃんが口角を上げ、にやりと笑いながら名前を告げる。
 が、告げられた意外過ぎる名前に、穂は掴もうとした黒豆をポロリとお重の中に落とした。
 そんな様子を気にすることなく、きっちゃんは穂の落とした黒豆を掴むとポイっと口に放り込む。
「うまー」
「さ、最近の神様は斬新な名前つけるのね……」
 誰に言うわけでもなく納得すると、少し冷めたお雑煮に手を付ける。
 その間も、きっちゃんは遠慮することなく、一人用のお雑煮をパクパクと口に放り込んでいく。
 人の分を残しておくと言うことを気にしないきっちゃんに、怒ることも忘れてお雑煮の中のお餅にかじりつく。
「ところで……怒らせるようなこと、何をしたの?」
 行儀が悪いと思いながらも、餅を口に若干含ませながら穂はぼそりと呟く…………が、聞かれた張本人のきっちゃんはお節に夢中なのか、穂の言葉に気にすることなくどんどんとお重に手をつけていく。
 その様子に、穂は手元にあったお重の蓋をきっちゃんの箸がない隙にバチンとしめる。
「わたしの話……聞いてた??」
「あぁぁぁぁ……」
 しかし、穂の言葉に耳を傾けることなく、きっちゃんはこの世の終わりのような顔をして近くにあったクッションに顔をうずめた。
 数秒クッションに顔をうずめてた後、ガバっと起き上がり穂を睨みつける。
「……理由教えてくれたら、お節なんか全部あげるわよ……」
 はぁ、やれやれ……と言った呆れの表情を穂は見せた。
「お賽銭盗んだり、寝所襲ってマジックで落書きしたり、化けて人を驚かしたり……」
 しかし、これを語ったきっちゃんの表情は反省の色を見せるどころか、両手を腰に当て『どうだすごいだろう』と言った、自慢気な表情を穂に向けた。
 その表情に穂は無言のまま、閉まっていたお重の蓋を取るとそれを縦にし、きっちゃんの頭に振り落とした。
「お盆ちょっぷ!」
「ぎゃんっ!」
 ごんっ!! と小気味いい音が部屋中に広がる。
 きっちゃんは腰に当てていた両の手で頭を抑え、涙目になりながら穂に不満の表情を投げつけた。
 穂はそんな表情を気にすることなく、手にしている蓋でお重をしめる。
「あっきれた。あんた神様の見習いなんでしょ……」
 目をつぶり、右手で頭を押さえる。
 きっちゃんは何度も頭をさすりながら、
「穂は神様は何一つ悪いことしないと思ってるわけ?」
 と、今までのふざけた表情を一変させた。
 しかし穂はその表情に飲まれることなく、
「まぁ、そんなことはないでしょうねぇ……でも、お賽銭泥棒は悪いどころか、人間もやっちゃいけないものよ」
「そうだけれど……」
 穂の言葉にきっちゃんは自信無さげに口をモゴモゴしながら、うつむいてしまった。
 きっちゃんの様子に穂は小さくため息をつきながら、お重の蓋を開ける。
「ま、いいわ。わたしがあんたのしたこと叱っても仕方ないんだし」
 お重の蓋が開いた瞬間、きっちゃんはうつむいていた顔をお重を覗きこんだ。
 その表情は最初と変わらずキラキラした目をしている。
 キラキラとした表情のまま、お重と穂を交互に見つめ、その表情は誰が見ても『食べてもいいのか?』という表情。
「いいわよ、食べても。あげるわ」
 その一言に、きっちゃんは勢いよく箸を手に取ると再びお節料理を食べ始めた。



「はてさて、この生き物どうしたものか……」
 心底困り果てた声を上げるのは穂。その目線の先には、お節やお雑煮、あまつさえみかんもたらふく食べてベッドで寝こけているきっちゃん。
 きっちゃんは心底幸せそうな表情で、むにゃむにゃと言いながら口をモゴモゴさせている。
「夢の世界でも食べてるのか?」
 呆れ顔の穂は、しょうがない……と言った表情で、冷蔵庫の中にあった缶ビールを取り出し口を付ける。
 クイッと傾けて、一気に半分くらい飲み干す。
「あー……これからどうしよう」
 缶をこたつの上に置くと、穂は頭を垂らす。
 無論、穂は普通の人間なので神様に連絡手段は持っていない。唯一あるとしたら稲荷神社に行くことくらいしか彼女は思いつかなかった。
 が、神社に行った所で追い出された神様の見習い――きっちゃんに到底会ってはくれないだろうと穂は思っている。
 ――そもそもこんな格好のやつを連れ出すのが無理だ。
 寝こける少し前にきっちゃんに聞いたところ、
『しばらくここでゴロゴロする』
 と、穂の都合を無視した発言をした。
「はー……」
 小さく息を吐き、チラリときっちゃんの方を見る。
 あいも変わらずスヤスヤと幸せそうな表情。
 そして視線を戻すと、目の前の残りのビールを手に取り一気に飲み干す。
「なるようにしかならないかぁ……!」



 不思議な神様の見習い、きっちゃんと穂の生活は始まったばかりである。

コメント(1)

<寄稿者のみゅうさんによるあとがきがあります>
 話が全く落ちなかったー/(^o^)\

 というわけで、(今更)1周年おめでとうございますの作品『少女とお節と奇妙な正月』を書きました、真生みゅうです。
 うーん。
 久々に書いて酷すぎました(汗) もっと精進します。
 何が書きたいのは迷走してますorz

 きっちゃんかわいいよ、きっちゃん。愛でたい。耳とか尻尾とかもふもふしたい。
 ちなみにお雑煮は京風白味噌仕立てをイメージしてます。お味噌ラブ。

 1周年本当におめでとうございます!
 (未だに作品レベルが上がらない)真生みゅうでした☆

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

ねこると創作クラブ 更新情報

ねこると創作クラブのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング