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ねこると創作クラブコミュのねこると瞬殺大賞応募作品No.11『若き日の闘争』

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俺は、主に助かりようのない死に損ないとか死体と化した人から記憶を吸い取ることができる。
 だが最近、死体がそこになくても記憶を手に入れることができることに気がついた。
 この能力自体にいつ気が付いたのか覚えていないが、死んだやつが隠していた財産やらなんやらの場所が何故だかわからないがわかってしまううえに、そいつの持っていた、例えば機械の使い方だとか、他人のそういう結論に達した。
 
 ヘルメットやら古い軍服やらを身に付けたりしている鏡に写った自分の姿を見て、兵士のようで格好良いと思いながら、 銃剣の付いたボルトアクション式ライフルKar98kを持ち、手榴弾とリボルバーをポケットに入れた。
 俺は森に行かなくてはならなかった。
 行かなければならない。
 民族のためでもあるし、俺のためでもあり、思想のためでもある。
 実際のところ、俺の周りにいるのは概ね異民族だが、それでも彼等を救わなければならない。
 だが、森は立ち入りが制限されていて、俺は入れない。
 夜のうちに廃棄されたトンネルに入ることができれば、こっちのものだ。それを抜ければ森のナチスの古い基地に出る。そうすれば、森の警備基地兼アウトポストも怖くはない。簡単に森に入れるし、目的を容易にとは行かずとも、完遂できるはずだ。
 基地に出たらそのに残っているであろう武器で再武装しよう。アサルトライフルやもっとまともなピストルだってあるはずだ。もしかしたら、アサルトピストルもあるかもしれない。
 なんとしても成功させ無くてはならない。
 この脅威が抹殺できるうちに抹殺しなければならない。
 日が沈むまであと二時間だ。
 日が沈んだとき、それが決行の時だ。
 
 最後になるかもしれない晩飯を食ったあと、俺は外へ出た。
 トンネルの入り口は先日死んだ爺さんの家の地下の本棚の裏にある。
 元々ここに駐留していたナチスの将校だった男だ。死ぬ一ヶ月前から、わけのわからん儀式ばっかりやっていて、死ねばそれをやっていた理由がわかるかもしれないと思っていたが、俺が吸い取った記憶からはその理由を知ることはできなかった。
 外から来る連中はよく勘違いをするが、死人の記憶をそいつが物心ついたころのから、死ぬその時までの全てを吸い取れるわけじゃないし、吸い取れたとしてもそれを全て自分で思い出せるわけでもない。
 そう思い出すのだ。記憶を自分のにするのだから、思い出すが妥当な言葉だろう。
 爺さんの家の合鍵は持っているから、家に侵入することは容易に済んだ。
 俺は地下室に行き、妙な模様で埋め尽くされた部屋の本棚の裏にある入口から冷たく、皆無という言葉が似合う空間に入っていった。
 ライトで足元を照らしながら、向こうのほうへ黙々と歩いていった。

 トンネル内を十分ほど歩いたあたりから、トンネルの奥から足音が聞こえるようになった。
 俺はそれでも歩みを止めず進んだ。
 途中、足音は消えたり、ゆっくりしたり、急いだりしながらも、俺は段々とその音に近づていった。
 だが、俺はついに足を止めた。
 向こうに何がいるのか? 化け物か? 人か?
 人だとしたら、何故ここにいる? 何の用がある?
 化物なら唸り声がしないし、こんな音も出すまい。もっと別のものか? 何なんだ。
 俺が再び歩き出そうとしたとき、突如として片足がしびれ、その場に倒れこんだ。
 酷いしびれだ。苦痛で表情を歪めながら、必死で何が起こっているか理解しようとした。
 「出てこい、能無し!」
 リボルバーを手に取りながら、そう叫んだ。
 足音は消え、その代わりに複数の唸り声が奥の方からした。
 そして、それが加速度的に俺のほうへ近づいてきくる。
 ライトを取り、奥を照らしながら、銃口も同じ方へ向けながら、唸り声の主に備えた。
 ついに、唸り声の主、人の顔を持って、焦げたような皮膚を持ち、頬まで裂けた口を持ったのが天井をつたって現れた。
 俺は迷わずそいつに向けて、発砲した。
 恐ろしい外見を持っていても、こいつらは案外脆い。
 胴体の上半分か頭に当たれば大概一撃で殺せるし、ライフル弾でならどこに当たろうが一撃だ。
 天井から剥がれ落ちるや否や別のが今度は重力に逆らっていない状態で突撃してきたので、そいつにも二回発砲した。
 一発目で外れたり、殺しきれなかったりしても殺せるし、そもそも、こういうのってのは一発撃って死んでるかどうか確認するなんてほど余裕を持ってなんていられない。
 勢い余って俺に当たるかと思ったが、死体は俺にはぶつからなかった。
 次ので最後だった。
 そいつを射殺したあと、シリンダーに残った薬莢を新しい弾薬と交換して、足の痺れが消えてから、すぐに奥のほうへ再び進み始めた。
 しばらくすると再び足音がし始めた。今度は前よりもずっと大きい。
 だが、今回は足音だけではない。
 同時に曲も流れていた。
 歌い手はいなかったが、曲のタイトルは、旗を高く掲げよだというのはすぐにわかった。 延々とメロディーを聞かされているうちに自然と自分でも歌詞を口ずさむようになっていたが、自分でそれを口ずさんでいるのに気が付くのには少し時間がかかった。
 気が付いてから少したつと俺は歌うのをやめ、再び黙々と歩き出した。
 曲は流れ続けている。
 俺が基地へと上がれる梯子にたどり着いた頃には、再びトンネルは虚しさに支配される空間と化していた。
 非人や共産主義者に殺された奴らの霊なのか、それとも、爺さんの霊なのか。
 単に俺の空耳か。
 自分が通ってきた道を照らすと、案の定虚しさに支配された空間が広がっていたが、よく見て、感じてみるとそうでもないような気がしなくもなかった。
 もし、死んだら、俺はここへ霊として来るのだろうか。
 ふと、そう思ったが、すぐに考えるのをやめ、梯子を登った。
 死ねばわかるんだ、焦ることもあるまい。

コメント(5)

<投稿者のたろうさんによるあとがきコメントがあります>
初めまして、たろうです。
最初字数制限を考えずに長篇にしようと思って、
書いていたので残念ながら、
ろくな伏線もない凄惨な出来になってしまいました。
次はもっとマシなのを書きたいですorz
<読んだ人の感想>
・着眼点が少し違っていると思うが、記憶を吸い取るという能力に惹かれて。
・構想が興味深い。フルVerで読みたいです

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