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小説日記コミュの初恋

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白い雪の結晶が今もしんしんと降り続ける12月。

街角の綺麗なイルミネーションにビルや店舗に装飾された幾多の煌めき。

まだ3週間以上もあるというのに世間はクリスマス一色で賑わい、至る所ではお互いの予定をたてるカップルに、恋人を必死に探す若い男女、そして諦めからなのだろうか冬のイベントには眼中にない様子で仕事に没頭する人々。


私はウキウキしていた。

その日の為に新しく購入したお洒落な服、普段はあまり穿くことがない可愛らしいミニスカートや大人の雰囲気を醸し出したブーツにファー付きのコート。
それにアクセサリーも買った。美容院も予約した。少しでも綺麗な姿を見てもらいたいからダイエットだってしてるんだよ。

そう、今年は大好きな彼と一緒に過ごすクリスマス。

だって初めて出来た彼氏だから、高校時代は女子校で少なからず出逢いはあったもののタイミングと内気な性格が駄目だったのかな、これといった恋愛感情はなくも卒業。

大学へ入学してから、このままじゃ何も変わらないと思い自分から進んでコミュニケーションを取り、お洒落や化粧も施してアカ抜けた。

そんな大学生活2年目の夏、私は告白された。

とても嬉しかった。

彼とは1年の時から同じクラスで男女グループの間で良く遊びに行ったりもした。そういえば去年はみんなでクリスマスパーティーをしたよね。

私はずっと彼を見ていた。普段はさ不器用で言葉使いも悪いけど真剣になった時の顔はとってもカッコイイんだ。何だろう……ギャップって言うのかな!?

言葉には表さないけど行動で示してくれるタイプ?見えない優しさを垣間みた時から本当にずっと、でも「好きです」の一言が出て来なくて。もしフラれたら今迄の関係が全て崩れてしまうんじゃなかなっていう恐怖もあったから。

でもね、夏の花火大会の日の夜。

大きな花が満天の夜空一面に咲き乱れた後、彼が私の目を見て気持ちを伝えてくれた。無愛想な言葉だったけどさ、私…嬉しくて嬉しくて泣いちゃった。だって初恋の人なんだよ。

ハンカチを貸してくれた時の手が震えていたのを見て、緊張してたんだなぁって、とても愛おしくなって、その時はもう声にならなかったけど私だってあなたに負けないぐらい大好きなんだから。


秋になると紅葉を見にいったね。2人で雑誌を見ながら場所を選んで、慣れない電車に揺られながら沢山の色付く紅葉を。

そういえば老舗が軒を連ねる雑貨店であなたは私に初めて指輪を買ってくれたよね。

お前は赤色が似合うからって言って、あの時と一緒でまた手が震えていたのも覚えてるよ。



カレンダーの24と書かれた欄にハナマルとハートが記されている。

朝から予約していた美容院で髪の毛をお洒落にセットしてもらう。少しは魅力的な女性に近づけたかな!?

決して高価じゃないけど苺のケーキとシャンパンを買って、家に帰るとツリーに飾り付けをしてから夕飯の支度をする。

メニューはもちろん彼の大好きなハンバーグ。今日は特別な日だからソースも手作りだよ。



陽も次第に傾き私は新調した服に着替える。

鏡の前でチェックは怠らない、、、うん!上出来!!

用意していたプレゼントを膝の横に置き、時間を確認すると20時前。

彼のバイトが終わり、私の家に到着するまであと少し。

20時4分頃に到着するんだよね。だからあと少し。

玄関のドアを開けて「ただいま」って、声が聞こえたら私は満面の笑みで「おかえり」って言うから。…だって今日は特別な日なんだもん。

…初めてできた大好きな彼氏との、特別な…。




…駄目だ、涙が出てきた。

…何やってんだろ、私…。

20時23分。

…わかってるよ、彼が今日だけじゃなく、もうずっとここに来ないことは……。

ふと、壁に飾ってある2人で撮った写真を見る。

この笑顔が最期だったんだよね、デートしてその帰りに彼は交通事故に巻き込まれ帰らぬ人となった。

今日のクリスマスだってそう、これから一緒にあれもしようって、これもしようって、私…頑張ってお洒落したんだよ?

スカート穿いたよ?美容院も行ったよ?大好きなハンバーグ作ったよ?ケーキ買ったよ?それにプレゼントも買ったよ?


私は他に何もいらない…ただ、あなたが私にいつも見せてくれたぶっきらぼうだけど一番の笑顔を見せてよ…。
最高のプリスマスプレゼントが欲しいよ…。







パーーッッッン!!!
パーーッッッン!!!

不意に玄関から何かが破裂する音が鳴り響いた。

えっ…何だろう?

するとリビングのドアが開き、そこにはサークルの仲間がいた。

ほら、今日は飲むよ。

あんたの事だから1人でご飯作って、ケーキ買って、プレゼントも買って泣いてんじゃないかなって思ったから。

忘れろなんて言わない、あんたが初めて心から惚れた人だもんね。

時間はかかるけど、あんたには私達みんながいる、辛い時は一緒に泣くよ、楽しい時は一緒に笑う。

だから、今日は朝まで食べて飲むよ。

何だか心が、気持ちが暖かくなったような気がした。

私…まだ笑えるかもしれない。


…クスッ

そんな仲間の沢山の笑顔を見ていると、唇が少し緩んでしまった。




綺麗なイルミネーションの中、雪が降っていた。
白い雪の結晶が今もしんしんと降り続けていた。

夜が必ず朝となるように、冬も必ず春となる。

今は冷たく降り続ける雪だけど、それはいつか暖かな桜に変わるその日を待ちわびて。

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