大江山コミュの051　藤原実方朝臣

かくとだに　えはやいぶきの　さしも草　さしも知らじな　燃ゆる思ひを

歌意：
これほど思い焦がれているのだ、ということだけでも、私には言えないのだから、
まして伊吹山のさしも草のように、私の燃えている思いの火がこんなだとは
あなたはご存知ありますまいね。

出典：後拾遺集

後拾遺集の詞書には「女にはじめてつかはしける　藤原実方朝臣」とある。
思いを寄せる相手に、初めて心のうちを打ち明けた歌である。

この歌において用いられている表現方法は、四句切れ・序詞・掛詞・
縁語・倒置法。
このうち、序詞・掛詞・縁語について説明する。
まず、「いぶきのさしも草」が同音反復の序詞として「さしも」を導く。
掛詞は二組あり、「言ふ」と「伊吹」、「思ひ」と「火」。
さらに「さしも草」「燃ゆる」「火」が縁語。

技巧過多とも言えるほど、さまざまな技巧が織り交ぜられているが
主想は「かくとだにえやはいふ、さしも知らじな燃ゆる思ひを」
（こうである、とだけでも私には言えない。だからあなたはご存知あるまい、
　私のこの燃えるような思いの火を）
と、極めて明確に恋心を示している。
序詞や掛詞・縁語はその感覚化であり具象化であるから、
技巧倒れのそらぞらしい歌と判断するのは早計であろう。

藤原実方朝臣は生年未詳～９９８年。
「026　小倉山～」の貞信公・藤原忠平の曾孫。定時（貞時）の子。
父が早世したため、叔父・済時の養子となる。
正四位下左中将に至る。
円融・花山両天皇に仕えたが、９９５年（長徳元年）に陸奥守となり、
認知で没した。
また華やかな話題に事欠かず、光源氏のモデルの一人とも言われている。

コメント(4)

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[1] mixiユーザー 04月05日 03:42

藤原実方にまつわる逸話としては「入内雀」があります。
これは実方の霊が雀と化したものです。

参考：http://mambo.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~boat/html/inugoya/inu9.htm

「藤原実方奥州に左遷せらる。
　その一念雀と化して大内に入り、
　台盤所の飯を啄しとかや。
　これを入内雀と云。」

実方が陸奥守になった経緯として、
藤原行成（「050　君がため～」の藤原義孝の子、三蹟の一人）と殿上で争って
一条天皇に「歌枕見て参れ」と左遷されたという説があります。
都に帰れないまま没した実方は死後、雀になって清涼殿に飛来し
食物を啄むと、さらに藤原一族の学舎・勧学院に舞い降りて
そこで途絶えたということです。

勧学院には、実方の霊を弔う塚が築かれました。
これが、更雀寺（きょうじゃくじ）にある伝わる雀塚だそうです。

更雀寺　参考：http://www5f.biglobe.ne.jp/~nekonyann/kyoto_p023.htm

ニュウナイスズメとは実際に存在する鳥の種類で、
スズメにあるニュウ（頬の黒斑）がないのでニュウナイスズメなのだそうです。

画像取得元↓
http://mailsrv.nara-edu.ac.jp/~inoue/NNM/tori04.html

[3] mixiユーザー 04月05日 10:01

きた！！！　きた！！

実方やんか～～～！！

私の大好きな実方って　そっか　こんな人だったんですね。
ますます　好きになちゃった。

[4] mixiユーザー 04月05日 20:21

＞あかね様
藤原実方と清少納言の恋仲は有名なようですね。
『枕草子』には、実方の亡霊が賀茂川の橋の下に出る、という
噂が流れたとの記述もあるようです。

入内雀は実方雀とも呼ばれるようですが、分類的には妖怪なんですね。
衝撃です。妖怪って。

＞かあちゃん様
ついにお待ちかねの実方です！
とても風流な人で、清少納言以外にも小大君（通称・左近）という女流歌人との
恋歌の贈答もあったようです。

実方ゆかりの土地として主なものは、二つあるようです。
ひとつは横浜市戸塚区。「実方塚」というものがあります。
また、「実方」という苗字の人が多いということです。

参考：http://www.city.yokohama.jp/me/totsuka/tmtnl/015.html

もうひとつは、実方のお墓がある宮城県名取市の笠島。
『奥の細道』では、芭蕉が笠島で実方の墓を参ろうとしたのだが、
五月雨で道が悪くなっており、やむなく断念したという記述があります。

参考：http://www.asahi-net.or.jp/~ee4y-nsn/oku/ksjaa01.htm

画像取得元↓
http://kazekobo.cool.ne.jp/basyou/kasasima.htm

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