THE　半ば面白い話（仮）コミュの【祭3rd】思い出の遠足(ｼｭｳﾄ)

先生「明日は待ちに待った遠足です！みんな、寝坊しないようにね～♪」

生徒「わかってるよ先生！だーれも寝坊しないんだってｗｗｗ」

　　　

　　　ドッｗｗｗｗｗｗ

教室にいる全員が楽しそうに笑っていた。
しかし・・・そんなみんなとは違い、オレは一人うつむいて机をみつめていた。

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オレ「やだ！絶対にいやだ！！」

母親「いい加減にしなさい！4年生からは新しい学校なんだから！」

家庭の事情で生まれ住んでいた宜野湾市から大里村へと転校する事を聞かされたのは3年生の3学期はじまったばかりの頃だった。突然すぎた話にオレは幼いながらも涙し親を怨んだ。

遠足・・・
たしか去年まではこうだったなぁ・・・

先生「明日は待ちに待った遠足です！みんな、寝坊しないようにね～♪」

オレ「っていうかぁ、先生も寝坊すんなよｗｗｗ」

　　　

　　　ドッｗｗｗｗｗｗ

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転校してまだ1ヶ月も過ぎていない時期での遠足。
新たな環境で馴染めないでいたオレにとって、普段の授業よりも酷なイベントとなった。

「おい、遠足のおやつ買いに行こーぜ！」

「イイネ！じゃあみんなでＡコープに行こうか！！」

「オレも行く行く！なぁ、1人300円だろ？みんなでおやつ金額合わせて買わないか？」

「それ名案！じゃあ1人100円ずつ集めて、残りの200円でドラゴンボールのフィギュア付きのお菓子買おうぜ！」

「オレあと1つで全種類揃うんだ！誰かクリリン2つ持ってたら交換しようぜ～♪」

＊　Ａコープ　＝　地域にあった大型スーパー　（今はＪＡアトールと名前が変更している）

ホームルーム終了後の周りの会話だ。みんな楽しそう・・・
楽しそうなみんなの会話の輪の中にオレは当然入っていけなかった。

そんなオレも、明日持っていくおやつ300円分を買いに1人でＡコープに向かう。

お菓子売り場コーナーには沢山の小学生で賑わっていた。小さな村にひとつしか無い大型スーパー。この日の為に、お菓子専用の特設コーナーが設けられる程になっていた。

オレもみんなと同じでドラゴンボールのフィギュア付きお菓子が欲しかった。その列に並んでいたんだが・・・

（えーっ・・・もう売り切れじゃんかよ・・・）

運悪く、オレの前の人の分で最後だった。他のお菓子！と思い辺りを見渡したんだけど・・・

人気のお菓子はすでに売り切れていた。仕方なしに残ったコアラのマーチを手に取り、1人寂しくレジにて会計を済ませて家に帰った。

＊＊＊

晩御飯時にて

母親「シュウト、明日の遠足の弁当期待しとってねｗ」

食事中に母親がオレに話かけてくる。

オレ「・・・・・・・・・・」

オレはまだ両親を許せてはいなかった。

父親「シュウト、新しい学校はどうだ？」

オレ「・・・・・・・・・・ごちそうさま」

オレは食器を片付け、ファミコンをしに部屋に篭った。
当時流行っていた【ドラゴンクエスト】（略してドラクエ）のソフトを差込み、スイッチを入れてゲームの世界に入っていった。オレはドラクエこそＲＰＧの最高峰だと思っている。仲間と共に冒険をしていくゲーム。ドラクエをしている時こそ、オレがオレでいられる唯一の楽しい時間だった。

しかし・・・
まだ小学4年生になったばかりのオレにドラクエは難しかった。途中で冒険の進め方が分からずにいて、この日もゲームの世界の中を途方も無く彷徨っていた。

オレ（・・・ふぅ、今日もレベル上げのみか・・・明日は遠足で早く家に帰れるし、今日はもう寝ようか。）

こうしてその日は就寝し、いよいよ遠足当日の朝を迎えた。

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天気は良好！4月なのに「もう夏かよ！」ってツッコミたくなる程に最高の遠足日和だった。

先生「じゃあみんな～！1列になって歩いて行くわよ。しっかりはぐれない様にしましょうね。」

全員「「「「「！！！はーいっ！！！」」」」」

みんな楽しそうにキャッキャと話しながら目的地へと歩いていたが、相変わらずオレは1人黙々と歩いていた。

そしていざ弁当の時間。

仲の良いグループ同士が集まってビニールシートを敷きワイワイと食事を始めた。この瞬間を想定していたオレだったが、いざ現実に起こるととても辛かった。

どうしよう・・・このまま隠れておこうか・・・
ひとりビニールシートを広げて食べてもきっと美味しくない。それに・・・それになんか恥ずかしいし悲しくなってくる。

・・・そうだ！【もう弁当食べた】って設定にしておこう！！知らん顔してブランコで時間を潰そう！どーせ誰もオレの事なんて気に留めてくれていないし。そうだ・・・うん、そうしようか・・・

弁当食べるのを諦めた、まさにその時だった。

「シュウト君、よかったらこっちおいでよ！」

昨日ドラゴンボールのお菓子でワイワイしていた人物がオレに声を掛けてくれた。

「ああ、シュウト君か！おいでおいで♪」

「シュウト君、前の学校の事教えてよ！」

「オレの隣空いてるよ！早く来なよ！！」

「あ・・・ありがとう。」

他のメンバーも暖かく迎えてくれた。
オレは嬉しかった。涙こそ出なかったが、こうしてみんなの輪の中に入れてもらい、弁当を食べる事ができた。

「へぇ～、シュウト君の前の学校ってウチより大きかったんだ～！」

「え？シュウト君の前の学校にプール無かったんだ！」

「シュウト君、剣道してたんだ！オレも剣道してんだよ～！」

早速みんなが沢山質問してきた。
それに答えながらオレはリュックサックから弁当を取り出した。

　　　　　　　　母親「シュウト、明日の遠足の弁当期待しとってねｗ」

母親の言葉を思い出しながら弁当箱を開ける。
そこにはオレの大好物な【鶏そぼろ】と【厚焼き卵】が沢山入っていた。

　　　　　　　　　　　　　　【弁当期待しとってねｗ】

とても美味しかった。
食べながら母親の愛情がどんどん伝わってくるのが解った。
あの日の弁当の味は今でも鮮明に覚えている。

そして無事に弁当を食べ終えた時だった。

「・・・あーーーくっそ！またヤムチャだよ！」

クリリンを欲しがっていた1人が残念そうに叫んでいた。周りのメンバーも、お目当てのキャラが当たらなかったみたいだった。そんな中で、オレは勇気を振り絞りこう告げた。

オレ「・・・クリリンなら・・・オレ家に3つあるよ！」

「えーーーっっ！マジでー！！？」

オレ「うん・・・よければあげよっか？」

「っひょーウレシーｗｗｗじゃあ今日遊びに行ってもいいかな？」

オレ「うっ・・・うん！イイよ！おいでよ！！」

「ありがとー！じゃあ今日は一緒に帰ろう！！」

転校して初めてまともに喋った瞬間だった。人見知りのオレだったが、今回の遠足でようやく【友達】と呼べる仲間が作れそうな気がした瞬間でもあった。

そして遠足の帰り道での会話

「えっ！シュウト君もドラクエしてんだ！今どの辺まで進んでいるの？」

オレ「今○○○の所で手詰まりになってるんだ。ちなみにレベルは30位かな？」

「ちょｗｗｗその場所でレベル30ｗｗｗオレよりレベル高いしｗｗｗ」

オレ「だよね！変だよね絶対ｗｗｗ良かったら進め方教えてよ！」

「よーしわかった。オレともう1人・・・ほら、前歩いているシンっていう奴！シュウト君と同じく剣道している奴だよ。シンも連れていっていいかなぁ？あいつはもうドラクエクリアーしたみたい。オレよりも詳しいからきっとタメになるよ！」

オレ「えーっ！マジで～！？」

シン「ドラクエでしょ！話聞いてたよ！オレでよければ全部教えてあげる！！」

オレ「あ、ありがとー！」

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こうしてオレは、遠足を通して沢山の友達が出来た。
1人寂しく過ごしていたオレの姿を皆は心配していたそうだ。オレはあの時全てがマイナス思考で物事を捉えていた。親の都合で強制的に転校させられた怨みが強く、家庭でも学校でもどこか冷めていたんだ。

でも、周りのみんなはオレなんかよりずーっと大人だった。
この日以来、オレは少しずつ昔のように明るい性格に戻りつつあったのでした。

ーーーーーそして一年後

先生「明日は待ちに待った遠足です！みんな、寝坊しないようにね～♪」

オレ「っていうかぁ、先生も寝坊すんなよｗｗｗ」

　　　

　　　ドッｗｗｗｗｗｗ

そこには新しい学校、地域に完全に馴染んでいるオレの姿があった。

おわり