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THE 半ば面白い話(仮)コミュのまっくろ屋さんと赤ちゃん(絶望)

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※創作


国民のおとなのみんなが働き者の国に。

「まっくろ屋さん」と呼ばれる男がいました。

まっくろ屋さんは、こどもたちがとっくのむかしに寝静まった。

よる、12時にどこからともなく現れます。

まっくろなシルクハット

まっくろな上着にズボン

まっくろな靴

ぜんしん、まっくろなすがたで、ねむっているこどもを起こさないように、おとなにしかきこえない魔法の言葉で国中を歩き回り、さけびます。

「まっくろは要らんかねー!?なんでも交換するよ!」

おおきな声でなんども、なんども叫びます。

大きな底なし沼に添えられた花束を尻目に、どんどん歩いてゆきます。

すると、天使の羽を生やした赤ちゃんが言いました。

「ぼくの命とお母さんの痛みを交換して」

赤ちゃんはこれから生まれてくる子供で、母親が苦しむ姿を見たくありませんでした。

まっくろ屋さんはニッコリと笑うと赤ちゃんの手を取って言いました。

「あなたが帰るべき場所に案内してください。それから考えましょう」

二人は一軒の家にたどり着きました。

そっと窓から家の中をのぞくと、お産に苦しむ母親とお医者さんの姿がありました。

赤ちゃんは悲しそうな顔をして、まっくろ屋さんの手を強く掴みました。

まっくろ屋さんは赤ちゃんの頭をなでて言います。

「安心なさい、痛みは取りましょう」

まっくろ屋さんは自分の影に手を沈めると、えぃ!というかけ声とともに悪魔を引き抜きました。

同時に母親の苦しげな声は穏やかなものへと変わりました。

まっくろ屋さんは赤ちゃんに笑いかけると言います。
「お帰りなさい」

赤ちゃんは笑い返すと、ありがとうと言って消えてゆきました。

まっくろ屋さんは悪魔を見据えると言いました。

「赤ちゃんと母親を悲しませようとしたのはあなたですか?」

まっくろな悪魔は裂けた口をニィと吊り上げて言いました。

「子供なんて親にとって目の上のコブだぜ?俺様はそのコブを取ってやろうとしただけだ。それの何が悪い」

悪魔はそう言うと、ケタケタと笑いました。

「果たしてそうでしょうか?ご覧なさい」

まっくろ屋さんは悪魔に促すと、母親を見守りました。

しばらくすると、赤ちゃんの元気なうぶ声があがりました。

取り上げられた赤ちゃんはお医者さんに抱えられて母親と対面します。

母子ともに互いを祝福し合っているようでした。

不意にまっくろ屋さんの隣で泣き声がしました。

ぐす、ぐす、ぐす…。

ぐす、ぐす、ぐす…。

悪魔が泣いていたのです。
まっくろ屋さんは悪魔の頭をなでて言いました。

「本当はさびしかったのでしょう?」

悪魔は背を向けて言います。

「俺様だって本当はああやって祝福されながら生まれたかったんだ!けど…お母さんにとって俺様は……ただのコブだったんだ!望まれて生を受けるこてはなかった…生まれて直ぐに底なし沼に捨てられた…体や心は黒く汚れた…まっくろ屋さんの言う通り…俺は寂しかったんだ…」

悪魔の足元には透き通るような水たまりができていました。

まっくろ屋さんは悪魔の手を取り、まっくろなハンカチで涙を拭ってあげて言いました。

「少し歩きましょうか?」

悪魔はだまったまま頷きました。

二人はどんどん歩いてゆきました。

すると、大きな底なし沼にたどりつきました。

沼の縁にはスズランの花束が添えられていました。

まっくろ屋さんは手をつないだ悪魔に言いました。

「スズランの花言葉を知っていますか?」

悪魔は首を横に振ります。
まっくろ屋さんはニッコリと笑って言いました。

「スズランの花言葉は(幸福の再来)です。お母さんはあなたにしたことを…きっと悔いたことでしょう。そして生まれ変わって幸せを掴んで欲しいと願っているはずです」

まっくろ屋さんは花束に記された赤ちゃんの名前を見つめました。

悪魔はいつのまにか泣いていました。

ポロポロと落ちた涙が肌に落ちるとまっくろは、はがれてゆきました。

裂けた口は小さなものへとなり、背中には天使の羽が生えていました。

まっくろ屋さんはそれを見守ると、まっくろな手鏡を出して言いました。

「まっくろ屋さん…お、俺様は…もう悪魔じゃないの?」

赤ちゃんとなった悪魔は鏡に映った自分の姿に驚いているようでした。

まっくろ屋さんは赤ちゃんを見つめると胸を張って言いました。

「あなたは最初から可愛らしい赤ちゃんですよ」

赤ちゃんはそれを聞くと、声が枯れるまで泣き続けました。

そして、泣きつかれると赤ちゃんの頭上にまばゆい光が雲の谷間からこぼれました。

「お迎えが来たようですね?」

「まっくろ屋さん、こんどは絶対幸せになる!決めてるんだ、また同じお母さんの所に生まれようって」

赤ちゃんはまっくろ屋さんの手から離れてフワフワと浮いてゆきます。

そして、手を伸ばしてまっくろ屋さんに言いました。
「まっくろ屋さんも良かったら一緒に来ない?神様に頼むから」

まっくろ屋さんは困った顔で言いました。

「すみません、私はまっくろなのでそちらには行けません。それに、まだこちらの世界で仕事が残っていますから」

「そう…でも、まっくろ屋さんはまっくろじゃないよ!」

赤ちゃんは悲しげな顔をしましたが、直ぐにニッコリと笑って空の谷間に消えてゆきました。

まっくろ屋さんはしばらく空を見上げていました。

空は白み始め太陽さんが顔を出そうかという時。

スズランの花束を持った母親が現れました。

まっくろ屋さんはシルクハットを外して母親に一礼しました。

母親も一礼しましたが、顔は曇っていました。

まっくろ屋さんは母親に言いました。

「元気な赤ちゃんを生んで幸せにしてあげて下さい。彼もそれを望んでいます」
それを聞いた母親は泣き崩れて、膨らんだお腹をそっと抱いていました。

いつまでも、いつまでも。

おわり

コメント(13)

ホント、挿絵が浮かんできました。
絵本になって欲しい。
そんな内容ですね・
ちなみにEDかBGMが付くとしたら「翼をください」を希望します。
まっくろ屋さんシリーズっていくつくらいありましたっけ?
> ヨーデル@UTさん


まっしろ屋さんも含めると全部で21話くらいです。
すみません。作者さんが糸色望だったんですね。ルーキーなもので、エロとかグロみたいなカテゴリで絶望があるのかとソワソワしながらよんで、あれ?いい話?って混乱してました。
長い余談ですみません。

私は以前、保育所の先生でした。
こういう話は本当に子どもに読んであげてほしい。全ての意味が分からなくとも感じるものがあるかと思います。
> さいが★さん


もしかして時事ネタや絶望話かと思いましたか?
|壁|ω・`)


保母さんにそう言ってもらえるなら心強いです。
> 糸色望さん
多分、保父さんぢゃないかと・・
>006 糸色望さん
20以上!?
すっげΣ( ̄□ ̄;)
んじゃ俺まだほとんど読んでないや…
> U子@おばQさん


すみません変換ミスですあせあせ(飛び散る汗)
いいお話ですね♪
感動しました。
赤ちゃん…来世こそ幸せになってね(^-^)

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