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THE 半ば面白い話(仮)コミュのカレンとサトシ(絶望)

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※創作


科学が発達した国に一人の妊婦さんがいました。

妊婦さんのお腹は大きく、お医者さんの話ではもうすぐ赤ちゃんが生まれるとのことでした。

同時に、お母さんは体調を崩すようになりました。

ご飯の香りがきつく感じられ箸に手をつけられません。

日によってはベットから起き上がるのもやっとです。
家事なんてとても出来る状態ではありません。

なので、朝食は作り置きの物や簡単な料理が並びました。

それでも、お母さんが丹精愛情を込めて作った料理でした。

ですが父さん、つまりお母さんの夫はは眉を潜めます。

お父さんはため息をついて、ろくに料理に手をつけずに言い放ちました。

「怠け者」と。

お母さんはとても悲しい気持ちになりましたが、唇をグッと噛み締めて我慢しました。

怒っても解決しない。

お腹の子を無事に生むことに専念しないと。

お母さんはお父さんに、ごめんなさいと謝りました。
お父さんは、ふんと鼻を鳴らすと白衣に着替えました。

お父さんは国の中で一番頭の良い科学者でした。

数々の発明に国の大臣達を唸らせるほどの。

偉人。

しかし、家事はできませんでした。

卵を割ることも、白衣にアイロンをかけることすらできません。

家事はお母さんの仕事でした。

お父さんは、お母さんに背を向けて言いました。

「しばらく家を留守にする」
お母さんは驚いて、聞きました。

「いつまで?」と。

「私は世紀の大発明で忙しいんだ!わからんよ!つわりぐらい自分でなんとかしろ!!なんならベビーシッターでも頼めばいい!!おっと、赤ん坊はまだ生まれていなかったんだな!?」
お父さんは吐き捨てるように言うと、家を出ていきました。

バタン、と扉が閉まる音。
一人残されたお母さん。

お母さんから涙がポロポロと流れ落ちました。

エプロンでぬぐっても、ぬぐっても涙は止まりません。

体がブルブル震えます。

不安で不安で。

悲しくて悲しくて。

寂しくて寂しくて。

お母さんは色んな感情が溢れて、どうにかなってしまいそうでした。

「うわあぁぁ〜!!」

お母さんはテーブルに置かれた料理を次々と床に叩きつけました。

ちょっと焦がしたスープが床に水溜まりを作ります。
不格好なおにぎりが形をもっと崩します。

いつもより出来が良かった味噌汁がおにぎりを濡らします。

お母さんはそれらを尻目に、本当はもっともっと美味しくできるのにと思いました。

「ぅ、うあああ〜!わーー!!」

お母さんは床にうずくまり、ただただ泣き続けました。

「あのぅ、大丈夫?」

「どこか苦しいんですか?」
二つの声が唐突に響きました。

「え!?」

お母さんは慌てて顔を起こすと、学生服を着た見知らぬ少年と少女が心配そうに見下ろしていました。

お母さんは一瞬、首を傾げます。

どこかで会ったようなと。
しかし、事も事です。

見知らぬ誰かが家にいるのです。

お母さんは声を震わせて叫びます。

「あなたたち、ど、泥棒!?う、家にはお金なんてないわよ!?警察を呼ばれたくなかったらどこかに行ってちょうだい!!」

お母さんは台所に這って行き、包丁を握ります。

刃先がカタカタ震えます。
「あ、あの僕たち…驚くかもしれないけど、実は…!」

少年が慌てて口を開きますが。

少女がそれを手で制し、床に膝をついてゆっくりと。
お母さんに近づきながら、言いました。

「驚かれるのも無理ありません。私たちはベビーシッターです。無論、学生ですからボランティアの域はまだ出ませんが。妊婦さんのお手伝いもそれに含まれます」

お母さんはその言葉に数秒。

思考を停止しました。

数秒後。

なんだかんだ言っても夫が頼んでくれたのかしら?と思いました。

泥棒の言い訳にしても、やけにつじつまが合います。
お母さんは納得しました。
「はぁ〜あ、あなた達を信じるわ…」

お母さんは深くため息をつき。

包丁をしまいました。

「ありがとうございます…私はカレン、あっちはサトシと言います。よろしくお願いします…」

カレンが微笑みながら手を差し出します。

お母さんはお礼を言って、手を掴むとなんだか安心してしまい。

不意にカレンを抱き寄せてしまいました。

カレンはぴくりと肩を震わせましたが、すぐに笑みを浮かべてお母さんのお腹をさすりました。

「元気な赤ちゃん生まれると良いですね?」

「えぇ…そうね」

お母さんは先ほどのお父さんが言った言葉を思い出しましたが、それほど気分は落ち込みませんでした。

「あ、あの…おとりこみ中、すいません…これぇ、おいひぃですね……もっとありませんか?」

サトシの声にお母さんとカレンは振り返ります。

見ると、サトシは床に落ちた食べ物をパクパク食べていました。

ハムスターのように口にいっぱい食べ物を詰め込んで。

美味しそうに頬張っていたのです。

お母さんとカレンは、プッと吹き出して笑いました。

サトシは笑う二人をキョトンと首を傾げて見ていましたが、つられて笑いました。
三人の笑い声がこだましました。

お母さんは「こんなに楽しく笑ったのは新米科学者だった私とお父さんが初めてデートした以来」と思いました。

あの頃はお互い若くて、世間のせの字も知らず夢を見ながら勝手気ままに馬鹿をしていたなと。

お母さんとサトシ、カレンはどんどん仲良くなってゆきました。

お母さんは二人の介護もあってか日に日に元気を取り戻していきました。

食いしん坊なサトシは主に買い出しを。

気が利くカレンは家事全般とお母さんの介護を。

三人はまるで本当の家族のようでした。

笑い声が絶えない毎日。

買い出しの品をつまみ食いするサトシ。

ガミガミ叱るカレン。

それを宥めるお母さん。

お母さんは二人を抱き締めて、ケンカしちゃダメと笑顔で囁きます。

はーい!わかりました!!
おばさん…がそう言うなら。

食べかすをつけたまま元気に返事をするサトシ。

顔を赤らめモジモジするカレン。

お母さんはこの子達が、私の子供だったらいいのにと思ってなりませんでした。
そんなある日。

買い出しに出掛けたサトシを見送ったお母さんはテレビを観ていました。

ネクタイが曲がった残念なキャスターが研究所のリポートをしているようです。
テロップには「世紀の大発明」と銘打ってます。

お母さんは研究所やテロップに見覚えや聞き覚えがありました。

そう、そこはお父さんが「世紀の大発明」のため缶詰になっている研究所でした。

あの人は一体何を作っているのだろう、とお母さんはため息が溢れました。

「もっと楽しい番組にしましょうか?」

チャンネルがバチッと切り替わります。

少女がチャンネルを変えたのです。

心なしかカレンの顔は悲しげでした。

テレビはウサギと亀が競争している子供向けアニメを映し出していました。

「カレンちゃん、どうかしたの?」

「え、いいえ!なんでもありません!あ〜お風呂のお掃除してきますね!?何かあったら呼んで下さい!」
カレンはお母さんの声にハッとなると、慌ててお風呂場に消えて行きます。

お母さん首を傾げますが、お腹をさすりながらアニメを見つめました。

「たっだいま〜」

口に食べかすをつけたサトシが買い出しから帰ってきました。

つまみ食いしたのは間違いありません。

お母さんはそれを見て、クスリと笑い「おかえりなさいサトシ君」と言いました。

それからお風呂掃除を終えたカレンはサトシを叱りつけますが、お母さんがいつものように宥めます。

楽しい時間はあっという間に過ぎて行きます。

「じゃあ私たちはそろそろ帰りますね…おばさん…ほら、行くよサトシ!」

夕食を終えると、いつのものようにカレンはサトシを引っ張りながらお別れを言います。

サトシはお肉を刺したままのナイフを掴んだまま、まだ食べてる〜と唸っています。

お母さんは、また明日ね?と笑いました。

バタン。

肌寒い風がお母さんの頬を過りました。

ドアが開いていました。

見ると、紙袋を持ったお父さんがカレンとサトシを睨んで言いました。

「誰だ!?お前ら!?」

「あ、あなた!?帰ってきたのね?だ、だれって…この子達はあなたが頼んだベビーシッターじゃないの?」

「そんなガキ共は知らん!いいからお前はそいつらから離れろ!!」

お父さんは懐から拳銃を取り出しました。

「あ、あなた!?」

「いいから!どけ!おいガキ共、残念だったな!武器を捨てて腹這いになれ!でなけりゃ撃つぞ!?」

カレンとサトシはポカンとお父さんを見つめていましたが、カレンは素早く腹這いになりました。

「サトシ!言う通りにして!」

カレンがサトシの足を引っ張ります。

ですが、サトシはナイフを握り締めて言いました。

「うるせぇ!!」

食いしん坊なサトシとは思えないほど迫力ある声がビリビリと響きました。

お父さんやお母さんもびっくりして目を見開きました。

「あんた、おばさんが大変なのに…研究ばっかしてたのか?」

「あ、当たり前だ…私はこの国で一番偉い科学者だ!今は世紀の大発明で忙しくて…」

「うるせぇっ!!!」

サトシはお父さんの言葉を遮ると、ナイフを捨てて飛びかかりました。

ぱぁん。

乾いた銃声が響きました。
「ぐぅ…」

殴られたお父さんは床に倒れていました。

落ちた紙袋からは花束と手紙が落ちました。

「おばさん…おじさん…殴ってごめんね…でも許せなくてさ…それに…うぅ…でも、おじさんを許してあげてよ…根はいい人だから…」
サトシはひきっつた笑顔を浮かべながらお母さんに謝罪しました。

「サトシ!?」

「サトシ君!?」

お母さんとカレンは声をあげ、サトシに抱きつくと顔を真っ青にさせました。

「本当…ごめん…カレン…もういいよな?言っても」
「う…うん」

カレンはサトシの言葉に大きく頷きます。

同時に涙がポロポロ溢れ落ちました。

「おばさん…いや、お母さん…僕達は未来の世界からやって来た…お母さんの子供なんだ…今ノビてるお父さんが言う世紀の大発明は…タイムマシンのこと…だったんだよ…嘘みたいな話だけど…本当なんだ…一人心細かったお母さんを助けたくて……」

サトシはお母さんに説明すると、ごめんなさいと言って眼を瞑りました。

カレンも、ごめんなさいと何度も謝りサトシを強く抱き締めました。

お母さんは状況理解するまでもなく二人をただただ抱き締めて涙を浮かべて祈りました。

神様、私の子供を…サトシを殺さないでと。

サトシはお腹を赤く染めたたまま目覚めませんでした。

そうしているうちに、サトシとカレンの体は光り輝きだしました。

「こ、これは!?」

「お母さん…私たち…本当はあまり過去の人、特に親族とは関わっちゃいけないの…タイムマシンや正体を明かすことを言うことも絶対タブー…だからもう帰らないと…」

カレンとサトシの体は足からどんどん消えて行きます。

「ま、待って!サトシを病院に!」

「サトシのことなら大丈夫…絶対死なせないから…だから……っ!」

少年と少女。

光りは一層輝き。

体はどんどん消えて行きます。

そして、最後の一声が。

お母さんに届きます。

「私たちを生んでください…おかあさん」

二人が消えた後。

お母さんは涙ながらに、何度も何度も。

頷きました。

うん、元気なあなた達をお母さん絶対生むから。

後日。

お母さんは元気な男の子と女の子を出産。

ただ、不思議なことに。

男の子のお腹には銃創と思われる傷が見つかりました。

お医者さんや看護師さんは大騒ぎ。

けれど、お母さんは傷を見て。

罰当たりながらも、ほっとしてしまいました。

お母さんはそれぞれ、サトシとカレンと命名。

二人はお母さんとお父さんの愛情受けて育ちます。

研究から一歩退き、家庭を大事にするようになったお父さん。

子育てに追われるお母さん。

大変だけれど。

家には四人の笑顔が絶えませんでした。

おわり

コメント(1)

どう転がってもおかしくない話。
いい話で良かったわーい(嬉しい顔)

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