ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

怖い話で眠れなくする!!コミュの赤緑シリーズ 後日の人々

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
1/16
副会長の別荘での一件があった翌日。
私――汐崎祐一は、ある決意を持って家を出た。

あの日、地下室に囚われていた私たちは、思いも掛けない人物――事務の三島さんに助けられた。

そして彼に連れられて1階の部屋に行くと、そこには神尾美加が1人で座り込んでおり、更にその隣の部屋には、何と源川会長が私たちを待っていた。

副会長や、その部下の姿はどこにも見当たらず、私の頭は混乱するばかりだったが、会長自らが事の顛末を説明してくれた。

しかし、その話の途中で往来会本部が全焼したことを知り…その中に真奈美が居た、という事を聞いた時点で、私はショックの余り、気を失ってしまったのだった。

…そして気が付いたのが、今から数時間前。場所は自宅。
既に夜も明け、時刻は昼過ぎになっていた。

目を覚ました私のすぐ傍には、三島さんからの手紙があり、その中で、彼が私をここまで届けてくれたことと…真奈美が無事であることを知った。

2/16
そして、丁度手紙を読み終わる頃に、真奈美が帰宅。

私達は思わず抱き合って喜び…不覚にも、娘の前で涙を流してしまった。
真奈美がわんわんと泣くので、貰い泣きだ。うん。

それから、真奈美は私が居なくなってからの事を教えてくれた。
それは私にとって、衝撃的な話だった。

古い友人である牧村陸が既に亡くなっていた、ということもそうだが…それ以上に、本部長のことにショックを受ける。

彼女が、真奈美のためにしてくれたこと。
その全てを知った私は、言葉を失う。

心の底から謝りたい。
それ以上に、感謝したい。

そう思って、私は真奈美と共に家を出た。

行き先は――本部長が入院している病院だ。

3/16
病院までの道のりで、私は三島さんの手紙のことを考える。

あの手紙には、本部の火事跡からは1体の焼死体――藤木徹の死体が見つかった、と書いてあった。
しかし、遺体の詳細についての報道はまだされていない。家を出るときのニュースでは、身元は不明と言っていた。

三島さんは何故、死体の身元を知っているのだろう…?と思ったが、私は、その点については深く考えないことにした。
私は元々そんな性格だし、相手はあの三島さんだ。
会長と繋がりがあることが分かったので、きっとそこから得た情報だろう、と思うことにした。

そして、目的の病院に着く。

真奈美「お父さん、ちょっと…」
すると真奈美が、持ってきたお見舞いの花を抱えながら、私をジロジロと見てくる。

私「どうした?まだ何か…変か?」

今日は仕事でも何でもないので、スーツではなく、普段着だ。
それも、家を出る前に真奈美にあれこれと厳しいチェックを受け、納得するまで何度も着替えさせられ、やっと決まった服だ。

真奈美「うーん…まぁ、大事なのは中身よね」

うんうん、と1人で頷きながら言うと、真奈美はさっさと病院に入っていってしまう。
何のことやらだか…やけに楽しそうだな。

4/16
本部長の病室は、3階だった。
真奈美は本部から救出され、怪我や異常が無いか検査を受けた後も、ずっとこの病院に…本部長と一緒に居たらしい。
でも一度家に帰るように言われ、そこで私と会い、また戻ってきた、という訳だ。

真奈美「ここ、ここ。沙織さんの部屋、個室なんだよー」

私より先行して廊下を走って行き、1つの病室の前で立ち止まる真奈美。
そういえば…真奈美は、本部長の事を下の名前で呼んでいる。
ほんの数日でそこまで親しくなったのかと、驚いてしまう。

真奈美「沙織さーん、ただいま〜」
そう言いながら、部屋に入る真奈美。

高城「…おかえりなさい、真奈美ちゃん」

部屋の中から、本部長の声が聞こえてくる。
病院でただいま、おかえり、とはねぇ…と思いながら、私も真奈美に続いて部屋に入る。

火事から救出されたので、それはそれは痛々しい姿を予想していたが、ベッドで半身を起こしている本部長は、左手に包帯を巻いているだけだった。
その姿を見て、私は心の底から安堵する。

私「本部長、この度は――」
そしてすぐに、準備してきた挨拶をしようとする。
が――

高城「あ、祐一さん…」

5/16
私「…はい?」

高城「…あ」
突然、真っ赤になって顔を伏せる本部長。

…何だ?
いきなり下の名前で呼ばれたぞ…?

私「あ、あの…」
何を言おうとしていたか、頭から綺麗サッパリ抜けてしまい、言葉を失う。
謝るのだっけ?お礼を言うのだっけ…?

真奈美「お花、ここに飾っておくねー」

固まってしまった大人2人を尻目に、真奈美がちゃっちゃと花を飾る。
そして、「それじゃ、後はよろしくー」と言い残し、止める間もなく部屋を出て行ってしまう。

最後にこっそり、「私はOKだからね」と、謎の耳打ちをしてから。

6/16
真奈美が出て行き、急に部屋の空気が変わってしまった。

まずは落ち着いて深呼吸をし、まだ真っ赤になって下を向いている本部長に、声を掛ける。

私「あ…あの、本部長…」
高城「…」
私がそう呼ぶと、本部長は何か意味ありげな目でこちらをジッと見てから、プイとソッポを向いてしまう。

その仕草で、私はとてつもなく重大な”可能性”に気付く。
この私が、自他共に認める鈍感さを持つ私が、気付いたのだ。
何しろここ数日間、私はずっと本部長のことを考えていた。…いろいろな意味で。
そして今、ほんの一瞬だが目で会話をしてしまい、そこからとんでもない言葉が伝わってきた…ような気がした。

だがしかし、待て。
これが勘違いだったら…かなり恥ずかしい事になるぞ?
いい歳したオジサンが、何言っているの?歳の差ってものを考えなさいよって事になる。

ここは慎重に…と思い、改めて彼女を見る。
そこには、命を掛けて真奈美を守ってくれた本部長が居る。
真っ赤になって、拗ねるように俯いて――…あれ、こんな人だったっけ?

…何だか、慎重になんて、言ってられなくなってきた。
私は男として…今、勝負を掛ける時が来たのじゃないか?真奈美はOKなのだ。

私はありったけの勇気を振り絞り、真奈美と同じように、彼女の名前を呼ぶ。

すると彼女は顔を上げ、今までに見たことの無い笑顔を見せてくれた――。

7/16
――
「それで、往来会は解散ってことか」

神尾さんの家。
毎度女の子の部屋に集まるってのは、どうかとも思うが…ここがすっかり俺達4人のたまり場になっている。

そこで神尾さんの口から、彼女が昨日体験したことが語られた。
神尾さん自身、何故霊感を求めていたか、という理由についても含めて。

昔の彼氏の話もあったので、北上は複雑な顔をしていたが…
何年も前のことだし、こいつはそういうことを気にする男ではない。…確かそうだ。

神尾「うん。源川さんはそうするって。それで、また新しい会を開くみたい」

会を開くって言うと、なんだかお楽しみ会みたいに聞こえる。

神尾「今度は前の本部長…高城さんを中心に、往来会に居た人を集めるって言っていたわ」
北上「ほぉ…」

まぁそうしないと、突然の解散で仕事を失った人が可哀想か。
それに、元々そのつもりだったような感じもする。

8/16
古乃羽「あのさ」
神尾「んー?」
古乃羽「その…源川さんが言っていた”あの方”って、やっぱり…舞さんのことかな?」
神尾「うーん…確認はしてないけど、多分、そうだと思う」

往来会の会長、源川さん。
その名前は俺も知っていた。あの小女――優理ちゃんの母親の旧姓だ。
その人と姉貴は、何か関係があるみたいだが…詳しい事は神尾さんも知らなかった。

古乃羽「舞さん、どうしているのかなぁ…」

心配そうに呟く古乃羽。
…ここは、早く話しておくかな。

俺「あー…後でと思ったけど、姉貴のことでちょっと」
神尾「何?」
古乃羽「連絡あった?」
いい喰いつきだ。

俺「連絡というか…昨日の夜に電話が掛かってきて、1つお願い事をされてさ」
古乃羽「どんなこと?」

俺「簡単なことだったよ。今からすぐに、往来会の本部前に行って…ブザーが聞こえたら、「中に人が居るんじゃないか?」って叫んで欲しい、ってさ」

9/16
――
立派に務めを果たした雨月君と、今回、ほとんど何もしなかった北上が帰った後…

私は、古乃羽からお説教をされていた。

古乃羽「――いい?今度勝手なことしたら、ほんとに許さないからね?」
私「はい…反省しております…」

ラット君を抱きながら正座をし、小さくなる私。
こんなとき、ラット君はちっとも私を守ってくれない。
流石の彼も、古乃羽の雷は怖いとみえる。

古乃羽「ハァ…もう、いくら言っても言い足りないわ」
お茶を飲みながら、母親のような事を言う古乃羽。

私「あの、少しご休憩を…肩でもお揉みしましょうか?」
古乃羽「ム…」
私「あ、冗談です…」
古乃羽「ん、もう…」
ため息混じりに、呆れた声を出す古乃羽。

10/16
古乃羽「ところでさ」
私「ん?…あ、はい?」
古乃羽「もう普通で良いってば。あのさ、桐谷さんってどうするのかな」
私「どうって…」

あの別荘で会長さんを交えて会ったとき、彼は自分の境遇…壷を求めた理由を、私に教えてくれた。
その内容は、古乃羽たちにも伝えてある。

私「私に「ありがとう」って言ってくれて…これからお兄さんのお墓に報告に行って、後はそれから、って言っていたけど?」

古乃羽「そうじゃなくて、舞さんと何か…とか」
私「舞さん?…あぁ」
古乃羽は、2人の仲を疑っているわけだ。

桐谷さんの話では、壷のことで兄を訪ねて来た舞さんとは面識があり、兄が亡くなった後でも、何度か相談をしていたらしいけど…

私「古乃羽が考えているようなことは、無いと思うよ?」
残念ながらそれだけの仲です。と、桐谷さんは言っていた。
そこには、特に深い意味もなさそうだった。

古乃羽「そっかぁ…」
何故か安堵の表情の古乃羽。

舞さんも大変ねぇ、と、私は毎度のごとく思うのだった。

11/16
――
都会から少し離れた、郊外にある家。
今は私が1人で暮らしている、源川の家。

三島さんに送ってもらってから、私は居間で1人…間もなく来るであろう訪問者を待ちながら、物思いに耽る。

約20年前…
妹の容子と、その息子の暁彦が、壷の呪いを受けた。

容子は倒れ、暁彦は…壊れてしまった。

私は容子のお見舞いに行ったとき、それが呪いによるものだと悟った。
しかし、当時壷の事を知らなかった私は、必死でその原因を調べたけど何も分からず、そのまま容子は亡くなってしまった。
それが悔しかった私は、その後も諦めずに、寺坂さんから数多くの骨董品を引き取り、それらを1つ1つ調べていった。

…それを手伝ってくれたのが、夏目川だった。

その頃私は、夏目川と一緒に暮らしていた。
…結婚はしていなかったけど、私達は”そういった関係”だったから。
彼は難しい人ではあったけれど、私には優しくしてくれた。
私が喜ぶであろうことを、何でもしてくれた。

しかし――

私より先に壷の秘密を知った彼は、変わってしまった。

12/16
彼は、壷の秘密を私に隠したまま、往来会を設立。
私が容子の調査に没頭している間に、会は瞬く間に大きくなっていき…
私が壷の秘密に辿り着く頃には、取り返しの付かないところまできていた。

私は当然の事ながら、すぐに壷の破壊を試みた。
容子の仇…寺坂家の幸せを奪った元凶である、その壷を。

…でも、出来なかった。

それを目にしたとき…私には壊せないと、すぐに分かった。
私の中の霊感が、それを完全に拒絶した。
憎しみを持ってそれと対峙してしまった私は、一瞬のうちに魅入られてしまった。

壷を壊せないと悟った私は、これ以上それを使わせないための行動に出た。
それはつまり…夏目川を止めることだった。

しかし、まともな方法ではどうにもならないことは、明らかだった。
何しろ、彼の周囲には不気味な部下が沢山いる。一方こちらは、年老いた女が1人。
散々悩んだ末、まずは往来会をどうにかしようと決め、私は高城沙織を見い出した。

彼女は私の期待以上に成長し、本部長の地位にまで登り詰めてくれた。
…でも、それでも夏目川は――往来会は、止められそうになかった。

そしてそんな時、私の前に、舞が現れた。

13/16
…家のチャイムが鳴る。

来たみたいだ。

私はその場で何もせず、その場でしばらく待つ。
彼女には、家に鍵は掛けていないから、いつでも入ってきて良いと言ってある。
それでも律儀にチャイムを鳴らし、時間を置いてから彼女は入ってくる。

舞「こんにちは、恵子さん」
私「こんにちは、舞さん。無事でよかった…」

そう言うと、彼女はニコリと笑う。
強い人…。私の想像も付かない程に。

私「高城のこと、ありがとう」
舞「いえ…お約束したことですから」

桐谷達夫の遺体が見つかる数日前、舞が壷について私の元を訪ねてきたとき…私は私の知る限り、全てのことを彼女に話した。

そして、高城沙織を守って欲しいとお願いをした。
決して夏目川に悟られぬよう、影から…。

14/16
舞「でも、危険な状態でした。死相が見えるくらい…。もしあそこで高城さんが諦めていたら、私は間に合わなかったかも知れません」
私「そのときは、私の責任ですよ」

彼女がもし、大切な感情を失ってしまっていたら…それは、私のせいだ。
彼女を夏目川に対抗させるため、本部長にするため、私は帝王学に近い教育を、彼女に受けさせた。
そのせいで彼女は孤立し、この私との間に、変な…女同士なのに、本当に変な噂まで流れてしまった。

それが常に気掛かりではあったけれど、汐崎祐一との出会い、そしてその娘の真奈美との出会いで、彼女は変わってくれた。
…いや、元の気質を取り戻してくれた。

彼女はきっと、幸せになる。
決して諦めず、自分の手で掴み取ったものだから。

舞「それで…恵子さんは、この後…?」
舞が聞いてくる。
それが気になったから、ここに来てくれたのかも知れない。

私「そうねぇ…。これでも一応会長でしたから…色々と忙しいことになるでしょうね」

これから、面倒な後処理が待っているだろう。
今までそういった事は、全て夏目川がやってくれていた。
良くも悪くも、彼が。

ずっと昔から、私のことは全て…

15/16
舞「…夏目川さんのことは、残念でした」
舞が、私の心を読んだかのように言う。

私「仕方無いわ。彼は、完全に虜になっていたから…」

彼はきっと、気付いていなかっただろう。
自分が、壷を使っているのではなく、壷に使われていた、ということに。
己自身もまた、それに呪われ…支配されていたことに。

私は、彼にそれを気付かせてあげることができず、私自身もまた、あれを一目見ただけで支配されてしまった。

そんな力を持っていた、あの壷。
それを破壊するなんてことは、きっと舞にしかできない…
私はそう思っていたけれど、彼女は他にもそれができるであろう人を教えてくれた。

それが神尾美加であり、あの子は見事にそれを成してくれた。

彼女には、優理の事も含め、本当に感謝しないといけない。
機会があったら、もっとお話をしたいな、と思う。

16/16
私「舞さんの方は、これからどうするのかしら?」
私は彼女に聞き返す。
私「今は、静まったのでしょう?」
舞「はい。とりあえず、今は…」

彼女の持っているもの。
彼女が、抱えているもの。

それは、あの壷とは比較にならない程のもの。
彼女はそれを押さえ込みながら…生きている。
私には、その苦しみは想像もできない。

舞「これから、家に帰ろうと思います」
舞が、何故か照れくさそうに言う。
私「そう。それが良いわね」

舞「はい。…きっと、怒られますけど」
私「お母様に?でも、それは――」
舞「いえ…。怒るのは、弟です」
私「あら…」

舞「私、世話の焼ける姉なので」

舞は少し笑いながらそう言うと、また来ます、と言って帰っていく。
私は、彼女のどことなく嬉しそうな様子に安心し、微笑ましい気持ちでそれを見送った――

コメント(26)

本部長…(ρ_;)

赤緑シリーズ面白かったです!最初は「なんだ、創作か」と思ってましたけど、気付いたらどっぷりハマってました指でOK

面白い話うpUPしてくれてありがとうございました!
完全に魅入ってしまった♪( ´▽`)
すごい楽しめました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆


高城さん・・・よかった(/ _ ; )
面白いを通り越して凄かった。脱帽ですなこれは。
いやいやexclamation ×2ホントにウッシッシ参りました顔(願)
最高ですexclamation ×2
これ、、すごすぎます、、、

仕事中なのに2日でよんじゃいました。
あと五時間で仕事が始まるあせあせ(飛び散る汗)すごい作品あせあせ(飛び散る汗)
アイさんはどうなったんだ?
是非とも漫画版を描かせていただきたくなりました!

いいはなしだ(´・ω・`)
とてもおもしろかったです(^-^)/ 続きがあれば是非読みたいです!!
感動しました( ;∀;)
高城さんには幸せになってもらいたいですね。
イヤー、読みごたえの有る話ですね(^-^)

創作でも楽しく読めました(^^ゞ
めっちゃ面白かったうれしい顔
なんか小説を読み終わった気分になりましたウッシッシ
映像化希望ですぅ〜(^3^)/

一気に読んじゃいましたm(__)m
怖い話と言うより物語として面白かったです、
良いもの見たと思いました。ありがとうございました。、ハッピーエンドでよかったw
読めば読む程、物語に引き込まれました。
私から多大な睡眠時間を奪った、主様の文才に脱帽です。

素敵な作品をありがとうございました。
私も映画化か何かを希望します。
気付いたら、一気に読んでました。ハッピーエンドで良かった。本当、映画化して欲しいですね。
久々に嵌ってしまった。書籍化しないのかな。

ログインすると、残り8件のコメントが見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

怖い話で眠れなくする!! 更新情報

怖い話で眠れなくする!!のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。