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怖い話で眠れなくする!!コミュの赤緑シリーズ 扉(前)

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1/18
「おとうさーん、お茶入ったよぉー」

階下から真奈美の声がする。

私「あー。すぐ行くー」
書斎で作業をしていた私は、典型的な生返事をする。
今は最後のメモ書きをしているところだった。

…万が一のための、メモ。
私はそれを書斎机の一番上の引き出しに入れておく。
できるなら迷惑は掛けたくないが…仕方ない。他に手が無いのだ。

真奈美「おとうさんってば〜」
私「終わった終わったー。今行くよー」

再び真奈美に呼ばれ、私は書斎を出る。
そして1階に続く階段を降りながら…一度、振り向く。

書斎の扉。決して頑丈では無い、カギの付いてない、その扉。

…大丈夫。きっと、大丈夫だ。

2/18
真奈美「――でね、ハナったら、痩せるんだって言いながら、なーんにもしないのよ」
私「あぁ、あの子はいつも、元気だねぇ」

真奈美の昔からの親友である、ハナ――立花さん。
最近は会ってないが、相変わらず…恰幅が良いそうだ。

真奈美「元気一杯。それでね、私との体重差を減らすためにね、自分が痩せないで、私にもっと太れ、って言うんだから」
私「ハハハ…賢いな」

居間でお茶を飲みながら、台所で夕食の片付けをしている娘と会話をする。
会話の内容に、深い意味なんて無い。
ただ何でもないことでも、こうして話をしていられれば良い。
ずっとこうして、一緒に…

…でも、やはり言っておかなければならない。
この子の幸せだけが、私の望みだから。

私「――真奈美、ちょっといいか?」
真奈美「んー…?」

3/18
真奈美「なぁにー?」
洗い物をしながら応える真奈美。
私「ちょっと、こっちに」
真奈美「…はぁい」
そう言って、洗い物を中断し、エプロンで手を拭きながらやってくる。

真奈美「なぁに…?イヤな話でしょ」
探るような、警戒するような目でこちらを見ながら、椅子に座る真奈美。
私「真面目な話だよ」
真奈美「…はい」
背筋をピンと伸ばして、話を聞く体勢になる。

私「父さんの書斎机は分かるな?」
真奈美「うん。いつも掃除してるもの」
私「その一番上の引き出しに、メモ書きを入れておいた」
真奈美「…メモ?」
私「そこに、父さんの古い友人の電話番号が書いてある。何かあったらそこに電話するんだ」
真奈美「何かって…なに言ってるの?」
当然の疑問。だが、私は続ける。

4/18
私「携帯は持っているな?今も」
真奈美「持ってるけど…何で?」
私「あと、電話するときに…これは念のためだが、書斎の扉はしっかりと閉めること」
真奈美「ちょっと…何?」
私「カギは付いてないけど、ちゃんと閉めれば――」
真奈美「…ちょっと待ってってば!」

そう叫んで、立ち上がる真奈美。
初めて見た娘の剣幕に、ややたじろいでしまう。
…が、話を止める訳にもいかない。

私「座って、まずは話を聞くんだ」
真奈美「…イヤ。何言ってんのか分かんないもん」
私「座りなさい」
真奈美「…」
私「真奈美」
ムスッとした顔をして、大人しく座る真奈美。
私「いいか、もし――」
真奈美「…明日じゃだめ?」
私「…」
真奈美「明日なら、ちゃんと聞く…」

…あぁ、私は――

私「…ダメだ。今日、今、話をするよ」
そう言うと、真奈美が途端に泣きそうな顔になる。

5/18
真奈美「…最近、おかしかった話なの?」
私「ん…」
真奈美「アレでしょ?名刺…」
…流石に気付いていたか。
ここ最近、この子の前でも考え事をする事が多くなっていた。

私「あぁ、そうだよ」
真奈美「アレ…何なの?」
私「今、その事を調べて――」

ピンポーン

私「――っと…」
家のチャイムが鳴り、私は言葉を止める。話の腰を折られてしまった。
時計を見ると、時刻は21時過ぎだ。こんな時間に誰が?
真奈美「出てくるね」
私「あぁ…うん」

真奈美がパタパタとスリッパを鳴らして、玄関に掛けていく。
良い音だ。可愛らしい、幸せな音。
私はこれを守りたい。なんとしても…。

真奈美「おとうさーん」
玄関から私を呼ぶ声がする。
そして呼ばれるまま玄関に向かった私が見たのは、2人の訪問者――本部長と藤木の姿だった。

6/18
――
高城「こんばんは汐崎さん。お嬢さんも、はじめまして…夜分遅くにごめんなさいね」
藤木「こんばんは、部長」

訪問してきた2人に、居間に通ってもらう。
お父さんの紹介によると、2人は高城さんと藤木さん、というらしい。
そう紹介されて何より驚いたのは、高城さんが、お父さんの上司――本部長さんだということだった。

お父さんの上司ってことは、結構なお偉いさんの筈なのに…こんなに若いなんて。
それに凄く綺麗で…女の私から見ても、色気を感じてしまう。
顔は、ちょっと切れ長の目をした美人顔。
鼻の形がかっこよくて、羨ましいな。
ハナは可愛いって言ってくれるけど、私のちょっと丸い鼻とは大違いだ。

でも、一番羨ましいのは――そのスタイル。
足が長くて…出る所はすごく良く出ている。
スーツ姿でもあれだけの膨らみって事は、きっとサイズは…あわわ。
私じゃ足元にも及ばないや。
大きさだけなら、ハナは良い勝負かも…なんて言ったら、怒られそうだ。

お父さんたら、こんな人の下で働いていたんだ…と思い、父親を見てみると、何だか緊張した顔をしている。
それが綺麗な人を相手にしているからなのか、他の理由なのかは、その時は分からなかった。

7/18
藤木「良いお住まいですねぇ…」

お茶を飲みながら藤木という人が言う。
こっちは、無いかな。…いろんな意味で、無いや。
高城さんとの2ショットも、余りに似合わない。バランスが悪いよ。
お父さんの方が、絶対良い。2人でちょっと並んでみて欲しい――なんて思い、ふと考える。

…高城さんって何歳くらいなんだろ。
お父さんより一回りくらい下かな?
それくらいだったら、お父さん、ちょっと頑張って――

父「真奈美」
…と。ふと気付くと、台所に居た私のところに、お父さんが来ていた。
私「ん?今、お茶菓子持っていくよ」
父「いや…。アレはどこだっけな…っと」
お父さんは、何やら背後を…居間の2人を気にしながら喋る。
何だろ…?

父「…真奈美」
鋭く小さな声で囁く父。
私「なぁに…?」
その今までに無い雰囲気に、私はお茶菓子の容器を持ったまま、固まってしまう。

8/18
父「さっきの話、間に合って良かった。こんなに早くとは…」
私「…」
何だか、嫌な感じ。
凄く、何か…イヤ。

父「私の部屋で…分かったな?」
ボソボソと話す父。
明らかに、あの2人を警戒して喋っている。
私「…今なの?」
父「あぁ、今だ」
私「何で――」

高城「汐崎さん、どうぞお構いなく」
高城さんの声が聞こえる。
あの人たちが、何か…なの?
藤木って人はともかく、あの高城さんが変な事…悪い事?何か分からないけど、間違った事をするとは思えない。
…さっき会ったばかりの、私の勝手な印象だけど。

父「あぁ、いえ…はい」
お父さんはそう言いながら、私の手から容器を取り、運んでいく。
私「何でなの…?」
その背中にもう一度問い掛けるが、お父さんはそれを無視して、そのまま行ってしまった。

9/18
急に疎外感のようなものを感じてしまい、悲しくなってくる。
あんな態度、ひどいよ。ちょっと泣きそう…。

気持ちを紛らわすために洗い物の続きでもしてようかな…、と思ったけど、
それをすると、お父さんが困るだろうな。

そんな風に、困らせちゃいけない。
ちゃんと言う事、聞かないと。
お母さんに約束したもの。お父さんの言う事聞く、って…。

…よーし。
明日、ハナに思いっきり愚痴ってやるんだ。
お題は、「仕事にかまけて家庭を省みない父親」。これだ。
上司の、綺麗な女の人に誘惑されて…みたいなこと、言ってやる。
フンだ。しばらく、夕食をニガテな献立にしてやるんだから。

そんな事を思いながら、私はエプロンを外すと、
テーブルを囲んで話をしている3人を尻目に、ソソクサと居間を出て――

藤木「あぁ、真奈美ちゃん。ちょっといいかな」

という所で、呼び止められてしまった。

10/18
私「…はい?」

まさか呼ばれると思わなかったので、キョトンとしてしまう。
藤木「ちょっと来てくれる?」
私に背を向けて座っていた藤木さんが、振り向いて言ってくる。

私「えーっと…」
お父さんは丁度こちらを向いている角度に座っているので、その顔色を窺う。
…と、うわ。何だか少し青い顔してる。

私「あの、私ちょっと――」
藤木「大事な話があるんだよ」
有無を言わせないような口調に、少しカチンとくる。
女の子を誘うなら、もっと優しく言いなさいよね。
お父さん、ちょっとどうにかして…と思い、再び父親を見ると、首を横に振っている。
無視して行け、ってことだ。
でも、そんなのって何だか失礼で…
藤木「ね、ほら…」
…とか思って躊躇していると、藤木さんが椅子から立ち上がる。
藤木「良い子だから、こっちに…」

気持ち悪い口調。ギラギラした目。
ヤダ、この人。生理的に受け付けない――

11/18
父「真奈美は関係ないだろう!?」
不意にそう叫んで、お父さんが立ち上がる。
その様子に、私はすぐに逃げればいいのに、その場で固まってしまう。

藤木「関係あるかないかは、こちらが決めることなんですよ」
私の方に来ようとした藤木さんが立ち止まり、振り返ってお父さんに言う。

何でこんな険悪なのよぉ、もう。…あ、高城さん、高城さんは?
と思って見てみるが、彼女はこちらに背を向けたまま座っている。
顔が見えないので、どんな表情をしているのかは分からない。

父「そちらにそんな権利はない」
いつもは見せない怖い顔をして、お父さんが言う。
何があったのか知らないけど、もう修復不可能な関係みたいだ。
お父さん、上司と喧嘩して、クビになっちゃうのかな…

藤木「私はねぇ、穏便に済ませたいんですよ…。分かります?」
父「これ以上、何一つ従うつもりは無い」
睨み合う2人。
…でも、どう贔屓目に見ても、あっちの方が強そうだ。
若いし、ガタイも良いし…顔が乱暴そうだし。

う〜…止めないと、お父さんが怪我しそう。
でもでも、私、ここに居ちゃいけないような…でも何とかしないと…
と、心の中でジタバタしていると…

高城「2人とも、座ってくださる?」
ここでやっと、高城さんが口を開いた。

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父「…本部長」
お父さんが高城さんを見る。

高城「汐崎さん、前に言ったと思いますけど…私、見下ろされるのが嫌いなの」
父「…今は座りません」
高城「…そう」
ため息混じりに言う高城さん。
私としても、座って落ち着いて欲しいのにな。

高城「では、そのままでどうぞ…。藤木は?」
藤木「自分は、まぁ…座りますよ。もちろんね」
そう言って座る藤木さん。
うー…なんか、イヤーな感じ。

父「本部長、あなたは――」
高城「汐崎部長」
藤木さんが――ううん、もう藤木でいいや。
藤木が座ってから喋り始めたお父さんを、高城さんが制する。

父「…はい」
高城「今日、神尾という学生と会っていましたね?」

…?神尾?って誰だろう。今日会っていたって…?

13/18
父「…えぇ、会いました」
高城「私は、この件については忘れろと言いましたよね」
澄ました声で言う高城さん。

父「…はい」
高城「それに対して、あなたは忘れますと返事をしましたよね」
父「…」
そんな高城さんを、ジッと見つめるお父さん。
どんな事を考えているのか、私でも分からなかった。

高城「残念ですけど…、私達と一緒に来てもらうしかありません」

――え?来てもらう、って…?
父「…今すぐ、ですか」
高城「えぇ。今すぐ」

ヤダ、何言ってるの?ダメ。ダメよ。絶対ダメ。だって――
名刺の名前。
私は名刺を受け取った翌日、ネットで調べたんだ。それで、普通じゃないことが分かった。
あれが殺人事件の被害者の物だ、ってすぐに分かった。
誰かに殺された人の名詞。…人が死んでるんだ。私は、それに巻き込まれたんだ。

そんな大変な事態の中、こんな風に有無を言わさず連れて行かれるなんて…。
どう考えたって、絶対危ない事になる。
最悪、お父さんも――

14/18
父「分かりました」

え?
お父さんが簡単に了承するので、私は驚いてしまう。
危ないってば!ちょっと、何考えて…

藤木「それじゃ、ほら…。真奈美ちゃんも、ね」

えええ?何で私も?
名刺を受け取ったから?…それだけのことで?

父「だから、真奈美は関係ないだろう!」
凄い剣幕でお父さんが怒鳴りつける。
それを受けて、藤木が再びゆっくりと立ち上がる。

藤木「もう、この問答はしたくないですね」
父「何を――」
と言った瞬間、藤木がお父さんの顔面を殴りつける。

私「あっ…!」
鈍い音がして、崩れ落ちるお父さん。
高城「…藤木!」
高城さんが咎めるように言い放つ。

藤木「どうです?慣れたものでしょう。急所を狙えば、一発で気絶ですよ」
偉そうに言う藤木。
バカじゃないの!?この人…!

15/18
藤木「さ、ほら…真奈美ちゃんは大人しく、ね?」
そう言いながら、こっちに近付いてくる藤木。
そんなことで大人しく従うわけないのに…!

私はキッと藤木を睨みつける。
…戦う?
冗談じゃない。17の乙女が勝てる訳がない。
すぐに、逃げるべきだ。
どこに?
勿論、言われた通り、お父さんの部屋に。
でも、お父さんが…
逃げる体勢を取りながら、私は倒れたお父さんを見る。

…と、その傍らに高城さんがしゃがみ込んでいた。
そして、その綺麗な手で、お父さんの顔を――殴られた辺りを触っている。
その仕草に、私は何か不思議な感じを受ける。
何だろう、これ…変な気持ち。
高城さんの横顔は、とても優しそうで…まるで――

…っと、いけない!
目の前に迫ってくる悪漢を忘れちゃいけない。
私は背中を向け、一目散に2階へと駆け上がって行った。

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2階のお父さんの部屋に逃げ込み、急いで扉を閉める。
…でも、この部屋にはカギが無いんだ。
これじゃ、閉めても…と思ったけど、閉まった扉を見て驚く。

お札。
その扉には、ビッシリとお札が貼られていた。

何のお札かサッパリだけど、20枚くらいある。
私、霊感とか無いけど…これはこれで、何か効果があるのかな?

そう思っていると、トントンと、階段を登る音がする。
1人…2人だ。2人とも来た。
大丈夫よね?お父さん…
私は祈るような気持ちで、扉に貼られたお札を見つめる。

やがて、足音が扉の前で止まる。
…逃げ込んだ場所は、丸分かりだったみたいだ。

藤木「真奈美ちゃーん。入るよー?」
そう言って、藤木が扉を…

藤木「あら?ノブが回らない…?」

――やった!効果ありだ!

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藤木「あぁ、これ、もしかして…本部長」
高城「…触るまで気付かないの?」

2人の会話が聞こえる。
高城「こんなにハッキリ、封がされているのに」
藤木「いや、どうもこういうのは苦手で…参ったなぁ」

参って参って。
意味は分からないけど、こんなに沢山お札が貼ってあるんだから、そう間単には――

高城「…退いていて」
高城さんの声が聞こえる。
何だか嫌な予感…。
藤木「こういうのは、お任せしますよ」

お任せします、って…高城さん?
私は不安な気持ちで、扉を見つめる。
すると…

私の目の前で、一枚ずつ、お札が剥がれ始めていった。

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剥がれたお札を拾って、もう一度貼ろうか…なんて思ったけど、私じゃきっと意味が無い。

これじゃ…このままじゃダメ…
私は部屋の中を振り返り、何か…っと、そうだ!机の引き出し――電話!

私は慌てて書斎机の所に行き、一番上の引き出しを開ける。
そこには、お父さんが言ったとおり、一枚のメモが置かれていた。
私は持っていた携帯を取り出し、番号を…

…あ、それより警察に電話した方が良い?
何て言って?
お父さんの上司の人が、お父さんを無理やり連れて行こうとしているんです?
…違う。無理やりじゃないんだ。お父さんは了承していた。
それに、私は子供。相手は…高城さんみたいな大人の人。
絶対に、私の言うことなんて通らない。
せめてあの名刺でもあれば良いのに、私の手元には今は無い…。

悩みながら扉を見ると、次々にお札が剥がれていく。
時間は余り無いのかも知れない。今は、お父さんの言う通りにするんだ――

私はそう思い、そこに書かれた番号に電話をする。
メモには相手の名前も書いてあり、そこには、「牧村陸」と書かれていた。

コメント(2)

この娘うぜぇwwww
イライラするΣ( ̄ロ ̄lll)
さっさと部屋行けしwwww

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