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怖い話で眠れなくする!!コミュの赤緑シリーズ 暗躍

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カラ〜ン コロン…コロンカラ〜ン…

「本日のお勉強終了」を告げるチャイムが鳴り響く。
うちの高校は普通のキンコンカンコンのチャイムだけでなく、5限の後の終礼が終わると、独特のチャイムが鳴る。

声「真奈美〜?」
終礼直後のざわついた教室で帰り支度をしていると、隣のクラスから友達のハナがやってくる。
私「はーい、今いくー」
クラスの子にバイバイと挨拶をして、廊下で待つハナのところに行く。

ハナ――本名、立花華絵(たちばな はなえ)は、私の家の近くに住んでいる、小さい頃からの親友だ。
私がお父さんの言うことを聞いて大人しく女子高に入ったのは、ハナが一緒だったから、ってこともある。

下校時間の廊下を歩いていると、教室から到底年頃の乙女が発するとは思えない声が聞こえてくる。
キャッキャウフフではなく、ギャーとかゲェーとか。
大声で男言葉を叫んでいる子もいる。
世の中には、「ごきげんよう」なんて挨拶する女子高もあるのに(?)、ちょっとした"花園"を夢見ていた私は、入学当初、ガッカリしたものだ。

2/14
学校を出て、2人並んで歩いていく。
家から徒歩で通える距離――15分程で着く距離というのも、私がこの高校に入る事に決めた理由の1つだ。
お父さんとしても、その点は良かったのだろうな、と思う。
家が近いと色々と安心だろうし…通学中の電車やバスで、痴漢にあう心配も無い。

ハナ「…でね〜。それがまた美味しくてさぁ。気が付けば完食よ」
私「まーた、もう〜。あれほどダイエットするって言ってたのに」
ハナ「いいの。私、分かったの。時代はぽっちゃりを求めてるのよ」
私「時代ねぇ…」

先日、ハナの体重が私より15キロ程重いことが判明した。…彼女の名誉のために、数字はヒミツ。
それにひどくショックを受けたハナは、「ダイエットして10キロ落とす」と高らかに宣言したわけだけど…

ハナ「5キロ落とせば、ぽっちゃりと言えると思うのよね」
私「5キロって…それでも、そんなに食べちゃダメよぉ」
ハナ「平気平気。来年の今頃には、ばっちりだってば」
私「来年って…、1年計画なのね…」

そんな話をしながら歩いていると、道の先に1人の男性が立っているのが見えた。
何やら、こちらの様子を窺っているような…?

3/14
ハナ「…真奈美、あれ、あの人…知ってる人?」
男に気付いたハナが、私に聞いてくる。
…でも、まったく知らない人だ。私は首を横に振る。
ハナ「なんかさぁ、こっちのこと見てない?」
私「うん…そんな気するね…」
ハナ「もしかして、またアレかな?真奈美に…って」
私「えー、さすがに無いでしょ…」

以前、学校の帰りにハナと歩いていたとき、近くの高校に通っているという男の子に話しかけられたことがある。
突然呼び止められてビックリしたが、更に驚く事に、その男の子は私に告白してきたのだ。
その時は、何と言うか…ハッキリ言って好みじゃなかったので、丁重にお断りしてしまった。
…因みに、そのことはお父さんには言っていない。

私「だって、どう見ても社会人じゃない?道でも聞きたいのよ、きっと…」
立っている男は明らかに20代後半…ひょっとしたら30過ぎかもしれない。
それで高校生相手に、なんて…ちょっと気持ち悪いとか思ってしまう。

そんなことを思って見ていると、その男がこちらに向かって歩いてくる。
私たちは歩みを止めて、思わず身構える。

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男「あの、すみませんが…」
私「…はい?」
恐る恐る対応する。
男はTシャツにジーンズといったラフな格好で、手にはセカンドバッグを持っている。
どこにでも居る、ごく普通の人。
でも、何か変なことされたら…変なこと言われたら、大きな声で叫ぶか、ハナを連れてダッシュで逃げよう。

男「あぁ、そんな警戒しなくても…って無理かな?」
私たちの様子を悟ってか、男が砕けた感じで言ってくる。
でもこのご時世、警戒するな、なんて無茶な話だ。

男「汐崎さんですよね?汐崎、真奈美さん」

私「え…?」
いきなり本名を呼ばれて驚く。
隣のハナも一緒になって驚いている。まさか、ハナの予想が当たり…?
…と思ったけど違うみたいで、男の人はバッグから名刺を取り出し、私に渡してくる。

男「私、こういうもので…」
受け取った名刺を見ると、そこにはこう書かれていた。

「往来会 広報部 桐谷達夫」

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私「あれ…」
男「桐谷といいます。汐崎さん…お父さんには、いつもお世話になっています」

広報部と言えば、そうだ。
お父さんは部長だから…この人は部下になるのかな?

ハナ「おじさんの会社の人?」
私「うん、会の人みたい…」

会社。会。昔からハナは、往来会を"会社"と呼ぶ。
私も小さい頃はそう呼んでいたが、大きくなって物心付いてからは、会社と呼ぶのを止めて、"会"と呼ぶようになった。
会社と呼ぶのに何だか違和感があったからだけど、呼び方を変えたことに対して、お父さんは何も言わなかった。

私「あの、桐谷さん…?父のことで何か?」

お父さんの勤め先の人が相手なので、ここは少し、お行儀良くしないとな。

桐谷「そうですねぇ…」
何か考えるような素振りをする桐谷さん。
用事があった訳じゃないの…?

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桐谷「えーっと…真奈美さんは、霊感などは…?」
いきなり突拍子も無いことを聞かれる。

私「霊感、って…」
お父さんの仕事がそういった関係のことだって知っているけど、何で私に聞くの…?
私「そういうの、分からないです。多分、無いと思うけど…」

桐谷「ですよねぇ…」
む…。分かってるなら聞くなっ、と言ってやりたくなる。
桐谷「それじゃ、勧誘するのもおかしいか…」
桐谷さんが独り言のように、何か呟く。
私「はい…?」

桐谷「いえ、何でも…。では、私はこれで。お父さんによろしくお伝え下さい」
私「え?」
突然そう言うと、桐谷さんはペコリと頭を下げて、クルッと反転、一度も振り返らず、そのまま去っていく。

私たちはポカーンとして、それを見送った。

7/14
2人で呆けたまま、桐谷さんが去った方を見ていたが…しばらくして、ハナが口を開く。

ハナ「何だったの…?今の」
私「さぁ…」
まったく意味不明だ。
私の手元には、1枚の名刺がある。ただ、これを渡しただけで去っていってしまった。
ハナ「上司の娘さんに挨拶…にしては、随分とつまらないわねぇ…」
つまらないのもそうだけど、わざわざそんな挨拶をする意味も分からない。

私「何だろうなぁー…」
再び歩き出しながら、貰った名刺を眺める。
ハナ「あ、その名刺、本物?もしかしたら、おじさんの知り合いを装ったアブナイ人かも…」
私「んー、どうだろ…?」

2人で首を傾げながら歩いていると、やがて十字路に着く。
ハナとは家の方向が異なるので、いつもここで別れる。

ハナ「一応、おじさんに聞いてみたほうが良いかもよ?こんな人に会ったんだけど、って」
私「うん、もちろん」
変に心配されそうだけど、まぁ、聞いておくべきだろうな。

ハナ「それじゃ、また明日ねー。バイバーイ」
元気よく手を振って帰っていくハナ。
私「じゃあね〜」
私も手を振り返し、家に帰ってお父さんの帰宅を待つ事にした――。

8/14
――
夜20時を少し過ぎた頃、往来会本部に着く。

一体、何がどうなっているんだ…?

私は車を降り、気持ちを落ち着かせながら本部に入る。

何だって言うんだ?何で真奈美に――?

今日、仕事を終えて家に帰ったときのことだった。
いつも通りに真奈美が出迎えてくれ、風呂に入り、さて夕飯…というときになって、真奈美がおかしな話をしてきた。
「桐谷って人から、名刺を貰った」と。

我ながら、情けないほどに動揺してしまった。
そ、そうか、と返事をして詳しく聞いてみると、ますます頭の中にハテナが一杯になる。
その男は、スーツは着ておらず、Tシャツにジーンズという格好だったらしい。
これじゃまるで…先日の、あの学生の話と同じだ。

死んだ桐谷の名刺を、誰かが配り歩いている。これは明らかに異常だ。
しかも、相手は私のことを…娘のことも知っていたのだ。

食事もそこそこに、私は居ても立ってもいられなくなり、何か事情を知っていると思われる人物――
高城本部長に話を聞いてもらおうと思い、真奈美には「ちょっと仕事がある」と言ってスーツに着替え、本部まで戻ってきたのだ。

9/14
事務課に行き、本部長はまだいるかどうかを聞いてみる。
あの人のことだから、きっとまだ居るだろう…と思っていたが、意外な回答が、意外な方向から聞こえてきた。

声「本部長は、もうご帰宅されましたよ」
事務員からではなく、後ろからの声。
誰だ…?と思い振り返ると、そこには久しぶりに見る顔があった。

私「あぁ、藤木…さん。久しぶりですね」
半年振りに見る顔だ。思わず、藤木君、と呼びそうになってしまった。
しかし確か…彼は今、支部長だ。ここは無難に”さん”付けにしておこう。

藤木「久しぶりですねぇ、汐崎部長。お元気そうで…」
ニヤニヤとしながら藤木が言う。

私はあまり、人に対して好き嫌いを言わないが…言わないようにしているが、
この藤木という男は、ハッキリ言って好きになれない。

私「お陰様で。えっと、本部長は、もう…?」
本来なら支部長への昇進が云々という話をするべきかも知れないが、今はそんな会話はしたくない。

藤木「…えぇ。今日は早くにお帰りになったようですよ」
やや不機嫌そうに、藤木が答える。

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私「そうですか…」
まだ居ると思ったのだが、見当が外れてしまった。

藤木「何か用があったんですか?」
藤木が聞いてくる。
私「いや、まぁ…ちょっと仕事のことで」
藤木「仕事ねぇ…。相変わらず、熱心ですねぇ」
何か勘繰るような、どことなく嘲笑するような感じで、藤木が言う。

藤木「実は私も、本部長に用事があったんですけどね」
私「はぁ…」
藤木「いやいや、見事に逃げられちゃいましたよ。…お互い、振られちゃいましたねぇ」
振られた…?何の用事か知らないが、一緒にしないで欲しいものだ。

藤木「汐崎部長、お暇ならどうですか?これから飲みにでも」
私「ん…。あぁ、いや、私は…」
そんな気分ではないし、この男と飲みに行きたくもない。

藤木「用事、無くなったでしょ?いいお店知っているんですよ」
私「いや、車ですし、家で娘も待っているので…」
藤木「娘…?」

11/14
藤木「そういえば、娘さんが居ましたねぇ。今、高校生くらいですか?」

しまった、という気持ちになる。
何となくだが、この男に真奈美の話をしたくない。

私「えぇ…」
藤木「女子高生かぁ…いやぁ、もう大人ですねぇ」
私「…」
どことなく下卑た言い方をする藤木。まったくもって不快だ。

藤木「いいなぁ…。年頃になって、父親としても色々大変なんじゃないですか?」
私「いや、特に大変ということも…」
藤木「そうですか?なんか、こう…大変だと思うんだけどなぁ」

いちいち癪に障る言い方をする男だな…。

私「まぁ、そんなでも無いですよ。それじゃ、また後日」
スパッと言い切り、私は出口に向かう。
目上の人間に対してはどうかと思う態度だが、何と思われても構わない。

後ろでチッと舌打ちをする音が聞こえたが、それ程腹も立たなかった。

12/14
外に出て車に乗り込み、取り敢えず車を出す。
そのまま駐車場に居ると、また絡まれそうな気がしたからだ。

…しかし、どうする?
残念ながら、本部長は帰った後だった。じゃあ、仕方ない…か?
明日、朝一にでも?

…いや、それじゃダメだ。
明日、真奈美が学校に行くまでには、ハッキリさせておきたい。
何か問題があるなら、今日中に手を打っておきたい。

――よし。

私は道の端に車を止め、携帯を取り出す。
本部長の携帯番号は一応登録してある。一度も掛けた事は無いが、一応。
その番号に電話を掛けてみる。

プルルル…プルルル…

こんな事なら、自宅で電話してからにすれば良かったな…、なんて思っていると、すぐに電話が通じる。

高城「…はい」

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私「あ、あの…汐崎です。夜分遅くすみません」
高城「こんばんは、汐崎さん…どうしたの?」
私「あぁ、どうも、こんばんは…」
なぜだか分からないが、電話で話すと、面と向かって話す以上に、声に艶があるように思えてしまう。

私「あの、ちょっとお話したい事がありまして…。本部に行ったのですが、もう帰られた後でしたので」
高城「あら、そう…。ごめんなさいね」
私「いえ、そんな…私の勝手ですから」
高城「何か、急な用事?」
私「それが、その…」

私は真奈美から借りてきた、桐谷の名刺に目をやる。
…できるなら、直接これを見てもらいたい。

私「どこかで、少しお話できませんか?」
高城「…これから?」
私「はい、できれば…。お手数でなければ」
高城「んー…。私、もう外に出られる格好じゃないのよね」

14/14
外に出られる格好じゃない…?
相変わらず、なんだか変な事を想像させる。

しかし困った。じゃあ、電話で伝えるか。
私「では、えっと…」
高城「じゃあ、家まで来てくれる?」
私「…は?」

高城「今から住所言うわね。今、車でしょ?住所が分かれば来られるわよね?」
私「あ…え、はい。あの…手帳を…っと…」
思いもかけなかったことに、わたわたと慌ててしまう。

高城「××市――」
背広のポケットから手帳を取り出し、私は言われた住所をメモする。
…どうやらマンションのようだ。
そういえば、本部長が上の人間からマンションを買って貰ったとか何とかって、噂になっていたか。

高城「それじゃ、お待ちしていますね」
私「あ…はい。ありがとうございます。すぐに行きます」

電話を切り、カーナビに住所を設定する。
ここから20分程の場所だ。私は急いでそこに向かった。

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