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ケツポケットに文庫をコミュの1−2.電子書籍で読書は出来るか?

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●電子書籍のデメリット
ここ最近の傾向として、「電子書籍は紙書籍・出版文化を滅ぼすか?」といった観点から「電子書籍問題」については語られることが多いように感じます。正直、僕はこの傾向にとても違和感を覚えています。電子書籍の競合は紙書籍なのでしょうか?僕はそうではないと考えます。電子書籍も一つの本であると考えれば、むしろ競合はテレビやインターネットやゲームではないでしょうか?

しかし、兎にも角にも電子書籍の登場が紙書籍と既存の出版業界に大きな影響を与えることはもちろん言うまでもありません。

電子書籍化による書籍の価格の低下やソフトウェア化は本の「感覚的な価値」の低下を 引き起こすでしょうし、読書という行為自体も「PCを操作する」という動作に包摂されることによって価値下がることが推測されます。(つまり、「ネットをする」「メールを打つ」「ゲームをする」「映像をみる」といったPCで行えるさまざまな行為と「読書」が並置されるようになれば、これは読書という行為が持つある種の威厳であったり畏敬の念のようなものを喪失させてしまうことになり、結果的に読書という行為自体の価値の低下を招くことになる、ということです。)

読書というのは、映像を見たり音楽を聞いたりするのに比べて労力が必要とされる行為です。したがって、読書という行為自体になにがしかの価値(たとえば「読書は知的だ」とか「読書はかっこいい」とか)がなければ、「読書」という行為をわざわざ選択する人は減ってしまうと思われます。その意味で、「読書」という行為自体の価値は保たれなければならないものであり、「傍目に本を読んでいるのがわかる」というのはとても重要であると思われます。

●電子書籍のメリット
一方で、電子書籍にもさまざまなメリットがあります。原理的には絶版がなくなりますし、読者からすれば安い価格ですぐに読みたい本を手に入れることができます。それに何冊購入しても重さも大きさも変わらないですし、検索だって容易です。「本棚を持ち歩ける」という風に考えれば、これはとても便利です。さらに、セルフパブリッシングも容易になるため、書き手にも門戸が広がります。(「プロとアマの境界をいかに保つか」というのもまた重要な問題ではありますが…)。

また、電子書籍の登場は「委託制」や「本のニセ金化」によって発生した「出版洪水」に歯止めをかけ、流通構造モデル自体を大幅に改良・再構築するきっかけにもなり得るかもしれません。(長江朗さん 『本の現場 本はどこで生まれ、誰に読まれるか』参照)

要するに、一長一短だということです。棲み分けが大事だということでしょう。

●iPadの登場と読書人口の減少
それよりも問題なのは、「電子書籍の登場は読書人口の減少につながる可能性がある」ということです。「あれ、逆じゃないの?」と思うかもしれません。確かに一時的・短期的には読書人口は増える可能性はあります。電子書籍によって安く簡単に本を手に入れることができるようになるからです。しかし、長期的にみればまったく逆のこと、つまり読書人口が減少するのではないかと僕は危惧しています。

まず単純に考えて、kindleやリブリエといった「純粋に電子書籍に特化したデバイス」を購入するのは、ほとんどが「もともと本が好きな人たち」(以後「読書人」)であると考えられます。「もともと本が好きではない人たち」(以後「非読書人」)はiPadに代表されるような汎用性の高いタブレット型PCを購入するでしょう。単純に考えて、読書以外にもいろいろ出来たほうが便利だからです。読書人にもこのタイプのデバイスを利用する人はかなり多いはずです。

要するに、純粋な電子書籍リーダーを買うのは「読書人」だけで、「読書人」「非読書人」を含む多くの人たちはiPadのような汎用性の高いデバイスを買うだろうと推測することが出来ます。(一応データもあります。西田宗千佳さん『iPad vs キンドル』参照)

「実はこれ、とても危険な状況なのでは…」と僕は懸念しています。なぜなら、iPadで読書が出来るとは思えないからです。ネットも使えてメールも出来て、映像を楽しんだり音楽を聞いたり、さらにはゲームだって出来てしまう。しかも何をしていても傍目には「iPadを使っている」としか見られない。そのような状況で、読書を選択することが出来るでしょうか?読書習慣がある方ならまだしも、そうでない方には厳しいと思います。

つまり、本を読むというのは読書に特化したデバイス(紙書籍・電子書籍リーダーなど)でなければ難しい行為だということです。しかし、上述した通り、一般に普及するのはiPadの様な汎用性の高いデバイスのはずです。そうなれば、「非読書人」はもちろんのこと「読書人」までもが本から離れていってしまうことが懸念されます。

「電子書籍の登場によって新たな読書人口の増加が見込める!」と期待している人もいるようですが、ハッキリ言って僕にはそれが希望的観測のような気がしてなりません。たとえ増加したとしても一時的だろうし、電子書籍の購買数が上がったとしてもちゃんと読んだかどうかは定かではないと思います。簡単に手に入れられるものはぞんざいに扱ってしまうのではないでしょうか。

長くなりましたが、要するに電子書籍はまだしも、iPadの登場は人びとの読書習慣を脅かしかねないというのが僕の主張です。しかし、今後iPadのようなタブレット型PCが普及する
のはほぼ間違いありません。そのような中で、いかに人びとの読書習慣を維持することが出来るのか。今この問題に取り組まなければ、手遅れになってしまう気がします。

「電子書籍か紙書籍化か」といった内輪での争いの前に、本自体のもつ素晴らしさを広め、読書人人口を増やすような働きかけをしなければ、本や読書はますます肩身の狭いものになってしまうのではないでしょうか。

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