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自分探しの就活しませんか??コミュの母と子の444日就活戦争(7)(終)

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初出勤から半月くらいたった休日、リビングのソファに座っていた息子が、しきりに肩を手で触っていた。

 「行きつけの美容院で肩をもんでもらっても、これまではくすぐったいだけだったのに、今日はすごく気持ちよかった。肩、こってたんだな、俺」と息子。

 「そりゃ、本人は自覚ないかもしれないけど、緊張してるんだよ。まったく新しい環境なんだし、新入社員なんだから」と私。

 「へえ、これが肩こりってもんなんだ」と、息子はそれが社会人の証であるかのように、うれしそうに肩を手でさすり続けた。

 それからさらに数日たち、今度は「今の学校で働けて本当よかった」と言ってきた。職場には尊敬できる先輩の先生と、元気な生徒がいるという。「被災地のために何かボランティアしたい」「そうか、よし、頑張れ…」というような職員室での生徒と教師の会話を聞いていると、そういう気持ちがふつふつとわいてくるという。

 そんな話を聞いていると、我が子が何とか社会人の第一歩を踏み出せたと、親としてホッとする。

 昨年の今ごろは最終面接まで行った会社に落ちて就活が白紙に戻り、いったいこの先どうなるのか…と案じていた。それを考えると、この1年の長かったこと。息子も就職活動によって社会の厳しい現実を知り、それを乗り越えることで少しは成長したようである。

採用基準や選考プロセスの不透明さなど改善すべき課題は多い。

 「こんなに長期化するのはおかしい」「なのに内定率が過去最低ってどういうこと?」

 この連載の起点になったのは、息子の就活を通して感じた数々の疑問であった。

 平成22年度卒業予定者の大学生の就職内定率は、2月1日時点でも77.4%にとどまり、10月1日、12月1日時点と同様に、平成8年度の調査開始以来、過去最低になった(厚生労働省と文部科学省の共同調査)。この事態を受けて、菅首相は「意欲と能力のある若者が就職できないのは本人だけでなく、国家・社会にとっても大きな損失」として、事業主向けに拡充した奨励金制度を活用し、未内定者の学生にチャンスを与えてほしいと呼びかけている。

 本人が納得いくキャリアをスタートさせることができ、将来、組織の成長に貢献する人材になり、ひいては産業振興や国の発展に寄与できる、そうなるように何が必要なのか。最終回では再度、専門家に問い、親としてすべきことをまとめてみたい。


■手応えはあったのに、落ち続ける

 「企業の採用基準と採用選考プロセスの透明化が必要です。それが不透明なため、学生が効率的に就活できないことが今の問題点なんです」

 法政大学准教授の上西充子氏はこう指摘する。労働問題と職業能力開発が専門の上西氏に言わせると「今の就活はわけの分からない状態になっている」という。

 我々親世代のときは大学や学部、所属ゼミなどによってアプローチできる企業が事実上決まっていた。そこには企業と学生、双方の“相場観”があった。

し かし今は違う。誰でも自由にどの企業にもアプローチできるようになった。企業側も、学校名もゼミも学校の成績も問わないという姿勢だ。前回紹介した日本経 団連の2010年の調査でも「企業側が採用活動にあたって特に重視した点」という質問に、学業成績と答えたのは5.4%、出身校にいたってはわずか 3.9%にすぎない。

 多くの学生はこうした企業のメッセージを素直に受け取って、ある種の希望と夢(妄想なのかもしれないが)を持って有名人気企業にエントリーする。しかしエントリーシート(ES)など選考の初期段階で何十社にもふるい落とされることになる。

学生には「落とされた理由」がわからない。

 「学生は自分がなぜ落ちたかは分かりません。面接では面接官がニコニコしていたのに不採用の結果だけが通知されたりする。『人間力』や『人柄』を重視するとうたっている選考から落とされたことで、学生の自信や自尊心は傷つけられます」(上西さん)

 確かにうちの息子もそうだった。第1志望の企業の最終面接で「面接のムード、好感触だった、社長から笑い取った!」といって意気揚々と帰ってきたが、結果不採用になり、一時は随分落ち込んでいた。

 「そんな見通しの悪い就職活動が学生たちの不安と閉塞感を高めていっているのです。企業は学生は覇気が足りないと言いますが、採用選考の方法についても、改善すべき点が多いのではないでしょうか」(上西氏)


■明示されない選考基準

 企業は本当に大学名を重視していないだろうか。それを額面どおりに受け取ることはできないかもしれない。本連載の2回目で紹介したように、HRプロの調査では33%の企業が「(採用の)ターゲット大学を設定」しており、その82%が20校以下に絞っているという狭さだ。

 人材コンサルタントの常見陽平氏は「実は就活は“みんなのもの”になっていない」と言う。

 「多くの大手企業が大学をターゲティングし、就職情報サイトで学生すべてにPRするものの、ほぼ一部の上位大学層からしか採用していないと いうのが現実。企業はESが届いた段階で大学名で分類し、その大学群ごとに説明会を設けて参加可能人数の枠を設けている。こういう仕分けは常とう手段で す。偏差値60台前半以下の大学の学生のESは読まないと言っている会社さえあります。だからターゲットの大学でない学生は、サイトを閲覧して応募するこ とはできても、採用ターゲットになりえずに無駄な努力を重ねる事態が起こるのです」(常見氏)

 今回の取材でも「今の状態だとエントリーが増えすぎて採用活動が煩雑になりすぎた。うちの社にあわない人も大勢エントリーする。本当にきて ほしい人のみにアプローチできるような方法を考えたい」との人事関係者の本音も聞かれた。人事担当以外の現場の若手社員に、選考について一定の権限を与えるリクルーター制や、教授推薦を再び採用活動に取り入れる企業も出てきている。

 上西氏によると、企業の採用基準は二層に分かれているという。つまりコミュニケーション力、熱意・意欲といったような明示される「人間力」 と、基礎学力や考える力など、明示されない「学ぶ力」だ。人間力はESや面接で判断するが、学ぶ力は大学名や筆記試験などで企業は見ているという。

 「企業がほしいのは、学ぶ力が高く、なおかつ人間力のある学生です。事前に大学名などでふるいにかけた後で『人間力』を見ている。しかし、 学生はそれを読みとれず、安易に大量にエントリーする。これでは『学ぶ力』が重要であるということが、双方の了解事項にならず、お互いに不幸です。そろそろ本音ベースで情報を擦り合わせたほうがいいでしょう」(上西氏)
常見氏も「採用活動のガラス張り」を求める。それなら水面下での学歴差別によって、学生が無駄に就活をして疲弊することを避けられる。

 「大学生が増えすぎている今、経済成長がないのなら、大学を出たら全員が国内の大企業のホワイトカラーになれるという幻想を捨てたほうがい い。そのためにも企業は毎年、各大学・各学部から、どの職種で何人採用したか、男女比別もつけて開示すべきです。それによって企業側は“学歴によって差別 している”と、企業イメージを悪くすると心配していますが、私は就活での無駄を省くことができると、むしろ学生に歓迎され、好印象を持たれると思います。 これにより、学生からのエントリー数が際限なく多くなることも避けられる。また同じように採用試験の通過基準や最終面接での不採用の理由も開示されるべき でしょう」(常見氏)

 大学名の明示が難しければ、経済学部卒業相当とか、TOEICスコア○○点相当とか、何らかの採用基準を開示し、「この企業なら応募しても 無理」「この企業なら可能性アリ」という見通しを学生に与えてほしい。それがむやみに数に頼る就活を抑える方向に働くと上西氏も言う。

 「新入社員の出身大学を発表している企業もある。自分の在籍している大学の卒業生がどこに就職しているかという実績や、大学に来ている求人 票も参考になります。求人票からは、企業がこの大学の学生を採用するつもりがあるということを、就職情報サイトなど誰にでも開かれた求人情報よりも高い確 度で予想できます」との上西氏の言葉に一瞬、私はポカンとしてしまった。

 「大学に求人票がきてるんですか?」と尋ねた私に、上西氏は「学内のキャリアセンター(就職部)にいけば閲覧できますよ」。

 すっかりネットを通じたデジタル型の就職活動に目が奪われて大学に届く求人票という存在を忘れていた。そこは親世代と一緒なのだ。ただし上西氏によると、学生はキャリアセンターになかなか足を運ばないそうであるが。


■学生を勘違いさせるエントリーシート

 「学生の本分は学業であるのに、それをなぜか企業は採用選考で明示的には問わない。しかし企業側が称賛する外国の優秀な学生というのは、中 国・韓国の有名大学の学生のように本当によく勉強する学生のはず。勉強もせずにサークル活動やアルバイトに精を出している学生ではないですよね」(上西 氏)

 確かに、確かにである。これも盲点を突かれた。

 私がエントリーシートの代表的な項目である「学生時代に力を入れたこと(通称ガクチカ)」に対して違和感があったのは、学生のときに力を入れるのは(建前であっても)学業であるはずなのに、そのことを引き出すような質問設定になっていないことにあった。

 就活の取材をしていても、「学業」や「学力」という言葉は聞かれなかった。そのため学生は「勉強しても内定に結びつかない」と学業にまじめに取り組まなくなる。


■文系学生に問われる「学ぶ力」

 経済産業省の「社会人基礎力に関する調査」(2005年)では、企業が採用基準で重視する項目は、上から「人柄」「その会社への熱意」「今後の可能性」となっている。

 「技術面接を伴う理系のエンジニアと違い、文系の学生は職務を明確に決めないまま、雇用契約を結びます。専門知識を問われない文系学生が何を見られているかというと、それが『今後の可能性』、いわば伸びしろ、ポテンシャルです」(上西氏)

 伸びしろを形成するものは、情報収集・分析能力、論理的思考力・論述力のような、どの学問分野を学んでも身に付くはずの能力(ジェネリッ ク・スキル:汎用的能力)。ある特定の学問分野を学んで身につく専門知識や能力は問わなくても、企業は学ぶ力、仕事をしていく中でも学び続けられる力を重 視していると上西氏。

 「それは実は大学での学びを通してこそ培われるものです。なのに、学生はその点を理解しておらず、ESの書き方やグループディスカッションの表層的なスキル獲得に飛びついてしまいます」(上西氏)

 新聞を毎日読み、世の中の動きを知る。自分の研究に必要な本を自分で選んで購入する。それを読み込み、リポートや論文を書く。そんな大学生の基礎の「キ」が、就活という局面ではなく、働き始めた後の長期間のキャリア支援になるのだと上西氏はいう。

 「そんな当たり前のことが…というかもしれませんが、それすらもできていない学生がたくさんいるんですよ。親は大学に入学すればそれで終わ り、就職も楽にできると思うかもしれないが、そうではない。せめて新聞代を含めて月1万円の学習支援をして学生を本分に立ち戻らせてほしい」(上西氏)


■実は就職先には関係ない「成功する人」の共通項

 就活中の学生の前で講演するとき、筆者は「実はあなたたちが○年後どこに就職しようと、かまわないんです。最初の就職先は大企業だろうが、中小・零細だろうが、どこでもいいんですよ」という話で締めくくることが多い。そうすると会場の学生はきょとんとした顔をする。

 私はこれまで『日経ウーマン』の記者として、数多くの女性を取材してきた。日経ウーマンには「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」という、その年に活躍した女性を表彰するアワードもあるため、その選考のためにこれまで何千という女性のキャリアをつぶさに見てきた。

 その結果、分かったことがある。大学を出て最初の就職先がどんなところであっても成功する人、きちんとキャリアを構築できる人には共通項があるのだ。

人 もうらやむ大企業に就職しても(いわば就活セレブ)「会社は自分を評価してくれない」とか「やりがいのある仕事をさせてくれない」と不満を言う人はごまん といる。出発点が大企業だろうが、中小零細だろうが、雇用形態が正規だろうが、非正規だろうが、関係ない。成功する人たちはキャリアの初期段階でがむしゃ らに働き、与えられた仕事を存分に自分で工夫して楽しみ、周囲の信頼を勝ち取っている。会社が自分に何かをしてくれないという「くれない族」ではなく、自 分が会社にどう貢献できるか(コストを削減できないか、収益を上げられないか…)という視点を持って真摯に働く人たちが、満足度の高い人生を送っている ――。そういうセオリーを取材を通じて常々実感している。

 厳しい就活状況だから、第1志望に入れる人は少ないかもしれないが、でもどこに就職しても大丈夫。実は就活において勝ち組も負け組もない。 新たに社会人になる4月にいる職場こそがあなたの居場所で、あなたにチャンスを与えてくれる場所である。そこからあなたらしいキャリアを構築すればいい ――。そういうことを学生に話している。

 それは言い換えると、上西氏のいう伸びしろ・ポテンシャルのある人が、就職のみならず、その後の豊かなキャリアを構築できる人と同義なのかもしれない。

 そもそも新卒一括採用がおかしいとの改革論も出てくるが、「今のフレームの中で改善すべき点も山積している。その課題を一つ一つつぶしていくことで就活は変わる」(上西氏)。

 幸いなことにまだ求人倍率は1.0を割ってはいない。ミスマッチの部分が大きいのである。


■企業、学生、親、それぞれがやるべきこと

 企業は採用活動の情報開示を進め、透明性を高める。学生側は企業の本音を聞き取るような情報収集をする(キャリアセンターの最大活用が前 提)。就活マニュアル本だけではなく、新聞やビジネス誌を読み込む。「調査をした結果、一般向けビジネス情報を利用している学生ほど就職結果がよい傾向に あることが判明した」(上西氏)そうだ。それは業界研究や企業研究に多いに役立つ。いい会社を探す目を養うことができる。そして当然、大学の勉強もきちん とする。

 そして私たち親世代は、子供たちが主体的に意識的に学生生活を過ごすために支援する。これが今すべきことだろう。
 うちの息子の夢は「彼女と早く結婚して子だくさんの家庭を築くこと」である。「ほしいものは10万円の超高級炊飯器。だってご飯がおいしいと幸せじゃん」と語る男子である。

 それを聞いて、今流行の草食系か、と思っていたのだが、この連載のために、息子を“取材”したら、「仕事が好きだと人生を楽しく送ることが できると思う」「教師という自分の時間をすべて使ってもいいと思える仕事に出合えた幸運を感謝している」と語り、親がまったく知らなかった熱い考えを持っ ていることを知ることになった。「結構しっかり仕事のことを考えているな」と思った。でも、それはうちの息子だけでなく、実は多くの子供たちがそうなのだ ろう。

 「父親には感謝しているけれど、顔を合わせるとつい反抗的な態度を取ってしまって、話すことができない」と言っていた現役就活生もいた。

 でも、いつ何があるか分からない時代だから、「就活」という局面で、就活そのものだけではなく、仕事の苦労、楽しさ、やりがいを子供と語り合う、そういう場面が必要なのではないかと思っている。5回目にも書いたが、この連載がそのきっかけになればと思っている。

 もうすぐ息子の初任給の日である。何か私と夫にはプレゼントがあるそうである。

 それを楽しみにこの連載を終えたい。

(了)

---2010年5月、日本経済新聞より抜粋----


これ深いです。
就活の本質は何って言うのを問われてるような気がします。
就職するための学生生活ではなくって、就職した後の人生設計を組みたる基礎を学生時代に学んで欲しいってことなんでしょうね。

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