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シャーク◎市屋の面白い話コミュのサクラチル

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*以前書いた日記のリメイクです

<プロローグ>

半年程前、受付嬢としてオフィスにやって来た

アントニオさん(33歳)にほのかな恋をした。


彼女は誰もが認めるような美人ではなかったし

体系は少しぽっちゃり。

いや、正直言ってデブだった。

それでも彼女が時折見せるほんわかした笑顔が

激務に忙殺される毎日を送る私にとっての掛け替えの無いオアシスだった。


彼女に彼氏がいない事、そして柔術が強い事は

同僚たちがしていた噂話から知っていたが

部署が違う私には挨拶程度しか話す機会はなく

何の行動も起こせない日々が続いた。


しかし、チャンスは突然やって来た。


私はいつも電車通勤だが

その日は外出する予定があったので車で出勤した。

電車通勤者用の駐車スペースは無い為、駐車するには

来客駐車場に止める許可証を受付に貰いに行かなければならなかった。

申請書に記入し許可証を貰う。

ただそれだけなのにアントニオさんと話せるかもしれないと思うと心弾んだ。

受付に行くとタイミングよく来客応対を終えたばかりの

彼女が迎えてくれた。

彼女の対応は想像以上に丁寧でより一層強い好意を抱いた。

せっかくの機会だから何か話さなければ・・・

そうは思ってみても無駄に緊張してしまった私は言葉に詰まり必要以上の事を話せなかった。

しかし、記入した用紙を見ながら彼女の方から話し掛けて来た。

「ナノッテドンナクルマナノ?」


好機到来。


あいさつ程度の会話しかした事が無いのにも関わらず

彼女の方から駄洒落混じりの質問する。

これはきっと私に興味があるから。

私に興味があるって事は多分私の事が気になるから。

私の事が気になるって事はずばり私が好きだから。

と言う三段論法が成立する。

よって両思いの確率98%。

車の話題から話を広げて

ドライブに誘えばきっとうまく行く。

ドライブはどこがいいかな・・・

この季節なら伊豆か!

伊豆ってことは温泉?

温泉と言えば・・・

「シャークサン、オンセンハイリマショウ」

「えっ?でも一緒に入るなんてまだ二人は出会ったばかりじゃないか」

「シャークエッチ。ダレモイッショニハイルイッテナイ。デモシャークナラ・・・」

「一緒に入ったら今宵は伊豆の踊り子だぜ?」

「Sim・・・」

私はアントニオを抱き寄せるとアゴをそっと重ねた。


ここまで妄想した所で我に返ると彼女の質問に答えた。

「ナノってのはタタ・モーターズって言う会社の・・・」

そして会話を徐々に広げるべく

彼女の乗ってる車について聞いた。

すると彼女はチョットマテと言うとポケットから携帯を出し

その待ち受け画面を見せてくれた。

そこに写っていたのはトヨタのヴィッツだった。

「カワイイデショ。カッタバカリヨ」

自慢げに言う彼女。

「へぇー。そうなんだ。かわいいね」

そう会話を進めようと思った。

しかし、私は思い留まった。

こんな受け答えでは並みの男と同じである。

ここでは例え両思いであろうと

間違いなくデートが出来る様に

より面白い男である事をアピールする事が必須。

だから私は斬鉄剣の様に切れ味鋭くボケた。


「かわいいね。このポークビッツ!」


決まった。

ヴィッツとポークビッツ。

この二つを掛ける事は北野誠でも無理かもしれない。

きっと彼女も爆・・・

と思ったら爆笑したのは彼女の隣に座る

もう一人の受付嬢ルイスだけだった。

一方彼女は

「サイテイ!!」

そう言い放ち駐車許可証を私に投げつけると

席を立ち何処かへ行ってしまった。

一体何が起こったか全く判らなかった。

呆然としていると

笑いすぎて涙目になっていたルイスが私に言った。

「アントニオニポークビッツトカサイテイヨ」

そこで私は気付いた。

ポークとアントニオさんも掛かっていたことに・・・


<エピローグ>

相変わらずアントニオさんに彼氏がいない事、好きな食べ物はキャッサバである事は

同僚の噂話で知っていたが

あれ以来気まずくなってしまった私は

廊下ですれ違っても挨拶すら出来ないまま

悶々とした日々を過ごしていた。

しかし、挽回するチャンスは突然巡って来た。


その日もあの時と同様、社外へ出る用事があった為、車で出社した。

車で出社したと言うことは

駐車許可証を受付に貰いに行かなければならない訳で

実に6ヶ月ぶりにアントニオさんと話す機会がやって来たのである。

このチャンスを逸したら

次はいつ彼女と話せるか判らない。

だから私は心に決めた。

前回の失態を謝りつつそれを口実にして食事に誘おうと。

食事が無理でも最悪メルアドくらいはゲットしようと。

車での出勤が決まって以来どのような会話の流れで誘うのが

一番スマートであるか考えていたが

結局、当日になっても何も浮かばなかった。

しかし、私の売りは頭の回転の速さ。

例え、今思い浮かばなかったとしても臨機応変に対応出来るはず。

そうやって今までも数多くの危機を乗り越えてきたんだから。

そう自分に嘯くと

意を決して彼女のいる受付へ向かった。

受付に行くと幸いアントニオさん以外誰もいなかった。

相変わらず彼女の応対は丁寧であったが

事務的なその態度にはどこか冷たさを感じた。

きっとまだあの時の事を怒っているのだろう。

まずは謝らなくては・・・

でも突然謝るのも不自然か・・・

代わりに何か自然な話題を・・・

しかし、考えれば考えるほど

気持ちばかりが逸り空回りするだけで言葉が出てこない。

彼女は許可証に印を押す寸前。

これを逃すと、また暫く話す機会はない。

一体何を話せば・・・

朝のニュース番組の占いでは恋愛運好調だったのに・・・

占い!これだ!

私は咄嗟に口を開いた。

「占いは好きですか?」

私のデータベースに拠れば

95%以上の女性は占いに興味を持っている。

よってこの話題を振れば高確率で食いつくはずなのだ。

案の定アントニオさんも

「スキヨ」

と食いついてきた。

しかし、本当に問題なのはここからである。

占いの話を振ったはいいものの

私には占いの知識はない。

手相もわからないし、ましてやタロットも扱えない。

ここからの会話の展開が

今後の二人の関係を大きく左右する。

さぁどうする・・・

次の瞬間、悩む私に神が舞い降りた。


「ちょっと珍しい占いなんだけど、ハム占いって知ってる?」

「ハム?」

「そう。ハム占い。好きなハムの名前を言って貰えればそれで性格を占う事が出来るんだ」

「ハジメテキイタヨ。デモハムノナマエソンナニシラナイョ」

「例えば、日本ハム、鎌倉ハム、伊藤ハム、日進ハム、丸大ハムとかいろいろあるじゃん」

「ジャア、ニホンハム!」


実はこのハム占い

彼女が何と答えようと答えは一つしかなかった。

これを言ったら絶対ダメなのは判っていたが

私の中に降臨したおふざけの神がそれを止める事を許さなかった。





「食欲旺盛と出ております」

「Burro!!!!」


久しぶり味わったエルボーは

頬と胸に何時までも大きな痛みを残した。

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