シャーク◎市屋の面白い話コミュの文化祭の思い出

高校生の頃の話。

私の高校にも文化祭と言うものがあった。

文化祭は2日に渡って催され

1日目はバンドやダンスなどのいろんな出し物を全校で鑑賞する。

2日目は各クラスで屋台などを出す。

そんな文化祭だった。

1日目のスタートにはお決まりのイベントがあった。

生徒会が作ったくす玉を割りたい人みんなで割ると言う物だ。

生徒会長の合図で

「それでは文化祭はじまるよー！せーの！」

パカッ。

と言った感じで。

全校の目立ちたがりたちは

この一瞬にかけていた。

マスクを被って変装したり、お神輿を作ってその上に乗って登場したり

海パン一丁で走ってきたり

みんな並々ならぬ意気込みで臨んでいた。

1年生の私は割りたいなと思いつつも、先輩たちの雰囲気に飲まれ

しゃしゃり出ることは出来なかった。

しかし、来年は絶対やろうと決意した。

時は流れて

迎えた2年生の文化祭。

準備万端だった。

全校を爆笑の渦に包む秘策があった。

会場の体育館に入ると密かに私は席を離れた。

そしてカーテンが閉められ、暗くなった体育館の闇の中に姿を消した。

やがて、舞台の中央にスポットライトがあたり生徒会長が現れた。

「それでは今年も文化祭がはじまります。まずは恒例のくす玉割か・・・」

「トライぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい！！！！！」

一糸纏わぬ姿でラグビーボールであそこだけを隠し

舞台袖から現れた私はくす玉の紐を生徒会長の手から奪うと

一気に引いた。

ファッサァー・・・

くす玉は確かに割れた。

しかし、何故か

全校生徒も引いた。

大　誤　算　。

私の笑いのセンスは10年先を走っていた様だった。

舞台の上を振り返ると

生徒会長(女)が膝から崩れ落ち泣いているのが見えた・・・

当然のことながら後日私は生徒指導室に呼ばれた。

激高した教師は俺の胸倉を掴みながら言った。

「生徒会のみんなが一生懸命作ったものを台無しにしやがって！

お前はあんなことをして面白いと思ってんのかぁ！！！！」

「はい・・・。みんな大爆笑すると思ってやったんっすけどねぇ・・・・」

「そ、そうか・・・でも生徒会長だけには謝れよ」

悪気がなかったことを理解して貰えたのか

それだけで許してもらえた。

隣のクラスだった生徒会長に謝りに言ったが

許してくれなかった。

別に許してもらえなくてもよかったのだが

後味が悪かったので手紙で謝罪することにした。

「前略　生徒会長様　先日は私のふざけた行為で深く生徒会長様の心を

傷つけてしまい、大変申し訳ございませんでした。でも一つだけ、弁解させてください。

ボクは文化祭をぶち壊したくてやった訳ではありません。

実は生徒会長様の事がずっと好きでした。

だからどうしても気を引きたくてやってしまいました。

小学生みたいなことをしてすいませんでした。草々

2年1組シャーク・市屋」

好きだからやったと言えば許してくれるだろう。

そんな甘い考えだった。

しかし、それは本当に甘かった。

生徒会長のげた箱に手紙を入れた翌日、呼び出された。

「あれって本当？」

もちろん嘘なのだが、嘘と言う訳にもいかず

「もちろん」

と答えた。

すると、今まで怒った表情しか見せなかった生徒会長が一変した。

「うれしぃ。私も好きだったんだ」

突然、乙女になった。

「嫌われてるからあんなことやったのかなと思ったら泣けてきちゃったんだけどぉ・・・」

よく見るとかわいかった。

付き合うことになった。

あれから14年。

生徒会長だった彼女は今では3人の子供のお母さん。

くす玉で始まった恋は

私のやり逃げと言う形で簡単に膜を開けたけど幕を閉じ

未だに私は独身だ。