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シャーク◎市屋の面白い話コミュの疑獄

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「盗っただろ。」

そう言われた瞬間俺の背中には冷たい物が伝わり

頭は真っ白になった。



遡ること10時間。

俺は研修を受ける為、とある温泉街にやって来た。

しかし、温泉街とは名ばかりで降りた駅に

人影はなく、まるでゴーストタウンの様だった。

それは迫り来る台風の影響なのか

元々寂れた観光地であるのか真相は定かでないが

浴衣を着たお姉さんが行き交う温泉街を勝手に思い描いていた俺のテンションが

フリーフォールした事だけは確かだった。


ホテルに着くと一服する間もなく研修会は始まった。

有名講師による講演。

各社が共通に抱える問題の解決法を模索する為のディスカッション。

その他情報交換等。

プログラムは分刻みのスケジュールで行われ

全てが終わる頃には窓から見える景色は綺麗な夜景へと変わっていた。

チェックインを済ませ、

部屋へと向かう俺の足取りは重かった。

無論、ハードスケジュールせいもあるのだが

原因はもう一つあった。

宿泊する部屋は相部屋で見知らぬ他社の人間と一夜を共に

しなければならないからである。

あまり社交的でない俺にとってそれは堪え難い苦痛であり

必要以上にナーバスにさせられた。

小さく溜息を付きながら

部屋に入ると既に同室の人は中におり

ソファーに腰掛けながら煙草を燻らしていた。

禿具合から推測するに50代半位であろうか。

名刺を取り出し、堅苦しい挨拶をする俺とは対照的に

「よろしく!」と砕けた感じで挨拶するその様から

気さくな人柄が伺え、少しホッとした。

懇親会の時間が迫っていたので挨拶以上の会話を

する間もなく二人一緒に部屋を出た。


懇親会は開始10分で飽きた。

以前参加した時は、若いキレイな女性が数名いた為、

終始ナンパに徹していたが、今回参加しているのは中年ばかりで

若い女性は一人も見当たらなかった。

何時間も中年男女とコミュニケーションを図るのは

耐え難いと思った俺は、一通りの料理とアルコールを胃袋に詰め込むと

早々に会場を後にした。

部屋に戻った俺は温泉に向かおうと思ったが

一気にあおったアルコールのせいか

急激な睡魔に襲われ、そのままベッドに横たわり

寝入ってしまった。


どれくらい眠っただろうか。

同室の人が部屋に戻ってきた物音で目が覚めた。

酔って上機嫌なのか寝ている俺に

構う事無く暫くの間、演歌を口ずさみ続けた。

だからは相部屋は嫌なんだ・・・

そう思い再度、布団を頭から被り寝ようとしたその瞬間

その人は言った。

「盗っただろ。」

最初は聞き間違えだと思った。

何のやましい覚えもない俺は

まさかそんな疑惑が向けられるとは思いもしなかったから。

しかし、その人は俺の枕元まで近付くと再度はっきりと言った。

「盗っただろ。」

そう言われた瞬間俺の背中には冷たい物が伝わり

頭は真っ白になった。

例えやましい覚えがなくともこうもストレートに

疑惑を向けられると人は焦る様で

無意味に俺の心拍数は上昇した。

確かに先に部屋にいたのは俺である。

疑われても仕方がない。

それに不自然過ぎる程早く部屋に戻っている。

その行動を見ていたとしたら俺に対する疑惑は深まるばかりであろう。

しかし、俺は何も盗っていない。

確かに手癖は悪いがそれは女性に対してのみであり

人様の金品を盗ったりはしない。

もし、ここで起き上がりそう無実を主張したとしても

きっと容易に受け入れられる事はないであろう。

ましてや相手は酔っ払い。

勘違いかもしれない。

だったら今日は何も言わない方がいい。寝た振りをしよう。

そんな俺の考えを見透かす様にその人は俺の耳元まで

近付くともう一度言った。

「盗っただろ・・・










俺のハート。」

「ホモかよっ!」

「ホモだよっ!」

二人は唇をそっと重ねた。

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