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今川家と色彩団コミュのプチ小説『通り悪魔(1章)』

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『通り悪魔(1章)』

「はっ! とうっ!」
「ふっ! ていっ!」

 ここは駿河を支配する今川家にある剣術道場。
 そこに今川家直属部隊『色彩団』の1つ、攻撃部隊を司る赤子隊が今、修行や鍛錬に励んでいる。
 竹刀同士打ち合う音や、竹刀が隊員の装束や防具に当たる音、隊員達の気合声や怒声が飛び交っており、その鍛錬は極めて激しさを物語っていた。
 そんな様子を道場の隅っこで2人の男が見ていた。
 1人は茶色い長い髪を1つに纏めた凛々しい青年・源九郎義経。
 もう1人は今、道場で鍛錬をしている赤子隊の隊長・赤尾一磨。
 2人は真剣な表情で、赤い装束集団の激しい乱取りを見ていたが、不意に九朗が申し訳なさそうに話しかけた。

「赤尾殿……今日は急な申し出を聞いてくれて、すまなんだ」
「気にするな。今川家は常に来客を歓迎しているからな」

 赤尾は隣に居る九朗を軽く見て、軽く微笑む。
 事の発端は今より数時間前、九朗が突然、駿河に訪れた事から始まった。
 話によれば源氏と平家が和解した後も、自分は頼朝に仕えており、今は源氏武士団の武術指南役になっているという。
 自分も家来達と共に鍛錬を重ねているが、ふと『他所の国の、やり方はどういうものなのか?』と疑問に思い、今川家に来たという。
 剣術ならリズヴァーンや将臣の方が詳しいのではないか、と赤尾は言ったが『師匠や将臣達とは、まったく違う戦い方が豊富な今川家が良いのだ』と答えたため赤子隊の長は、自分の部下達が鍛錬している現場を見せることになったのだ。
 現に源平合戦の最中、今川家が乱入した時には九郎は強襲してきた赤尾と刃を交え、熾烈を極めるも何とか撃退した(ちなみに将臣は翡翠、リズヴァーンは黒沢、ヒノエは奏楽&青木とやり合い、辛勝している)。
 その際、自分が今までやりあった相手と、少し違うと感じて今後、何かの参考になるかもしれないと思い駿河に来たのだという。

「何か参考になるか?」

 赤尾の問いに九郎は乱取りしている赤子隊を見ながら答える。

「参考というより質問がある」
「なんだ?」
「皆、防具をつけているのだな。鍛錬の時は」
「まぁな。一応、武術訓練だからな」
「だが、俺が赤尾殿達……赤子隊とやりあった時は赤尾殿や他の隊員達は防具などつけていなかったぞ」

 よく見ると顔を隠している頭巾や肩、腹部、足まで全て防具がついている。
 戦の時は全く防具をつけずに戦っていた色彩団の姿に、九郎は疑問を感じた。

「あの防具は竹刀が急所に当たっても良いようにしてある。打ち所が悪かったら死ぬ可能性もなくはないからな。それと、もう1つ理由がある」
「何だ?」
「九郎殿もそうだろうが戦で生き残るには、どのような手を使ってでも生き延びなければならん。如何に相手を能率的に且つ、自分の身を守りながら討つ事を目的にしてるから、俺達の場合は拳や肘で相手の顔を打ったり、相手の足を踏みつけて身動き取れなくなった所を斬ったりするなど、文字通り肉体を駆使して戦う。刀を振り回すだけが剣術じゃないからな」
「なるほど……だが、どのような手を使ってでも、と赤尾殿は言ったが……それは……」

 眉を潜める九郎が何を言いたいのかを察知した赤尾は、すぐさま苦笑する。

「俺の言う、どのような手を使ってでも、というのはあくまでも今言った通りだ。茶谷や翡翠みたいに騙し討ちや謀殺を使ってでも勝ちたいとは思わない。少し矛盾してるがな」
「赤尾殿らしいな……」

 その言葉に九郎は険しい顔を解いて、どこか安心したような表情を見せた。
 九郎が赤尾と戦った時、鍔迫り合いになると足で九郎の腹部を蹴ろうとしたり、相手の刃を受け流しながら拳で殴り掛かるなど文字通り肉弾戦を赤尾は駆使して戦った。
 その戦い方は刀1本でしか戦った事のない九郎にとっては今まで会った事無い敵だった。
 そして2人が戦っている最中、九郎の背後から狙撃しようとした茶谷に赤尾は『男同士の戦いに横槍を入れるな!』と一喝、あくまでも真っ向から戦うのが自分の流儀だ、と言いきった赤子隊の長に九郎は好感を抱いた。
 やがて時間が経ち、赤尾は自分の部下達に打ち合いをやめるよう言った。
 道場内に密集していた隊員達は瞬時に2列になり、対峙するように道場内の壁まで下がる。
 そして赤尾が九郎に声を掛けた。

「九郎殿。1度、俺の部下とやってみないか?」
「えっ?」

 突然の申し出に九郎は一瞬、戸惑った。

「心配するな。戦じゃないから肘や蹴りは出さないさ。あくまでも竹刀同士での勝負だ。それに、たまには違う相手と戦わせるのも部下達にとっても、九郎殿にとっても良い経験になると思うが、どうだ?」

 九郎は顎に手を軽く当て、しばらく考える仕草をしていたが力強く頷く。

「そうだな。たまには違う相手をするのも悪くはないな」
「感謝するぞ。九郎殿が特別にお前達の稽古をしてくれるそうだ。腕に自信のある者、我こそと思う者は手を挙げるか1歩前に出ろ!」

 赤尾は部下達に大声で呼び掛けると、部下達は一斉に手を挙げた。
 自分達からしてみれば八葉の1人にして鎌倉にその人ありと言われた九郎は、隊長である赤尾を打ち負かした相手……どれほどの腕なのか、その身をもって知りたいのだ。
 血気盛んというわけではないが彼等も九郎と同じく、武人の血が騒ぐのだろう……『自分が行く!』という感情が顔に出ている。
 九郎は誰と勝負をすべきか隊員達を1人ずつ見て行くと、覇気を強く発する1人の団員に目が行った。
 頭巾を被っているため顔は分からないが、他の団員と違って赤尾に近い闘気を放っている。
 
「そこの者にしようか」

 九郎は、その男に指を差して声をかけると赤尾は感心した表情を見せた。

「副隊長を指名したか。さすが九郎殿、彼の雰囲気を読み取ったか」
「あれだけ一段と強い雰囲気を放っていたら、な」
「そうか。よし……赤城、行け」

 赤子隊副隊長を務める赤城という男は、赤尾の声に従い道場内の中央にまで移動し、九郎と対峙した。

「私は赤城慎一郎(あかぎ しんいちろう)と言います。源九郎義経様の話は今川家でも知っています。源氏を勝利に導いた武士……その武士と、こうしてやり合えるのは武人として光栄に思います。いざっ!」
「来いっ!」

 赤城と九郎は竹刀を持って正眼(剣道で中段の構え)の構えで対峙、そして道場内の空気は一気に張りつめた緊張感が支配した。
(続く)

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