ep.人魚は<箱庭>の夢を見るか?コミュの飴玉

「ふーん、そっかあ」
「聞いてるの？何考えてるの？」
「聞いてるよ、ちゃんと。たださこの飴玉甘いはずなんだけどすっぱいんだよ」
「どういう意味」
「君の話に集中しながら飴玉を舐めるのって難しいんだなって」
「それって貴方が不器用なだけじゃないの？」

君は僕のほうを不機嫌そうに見ながらと投げ捨てるように言葉をかけた

「怒るなって。それぐらいお前の話って俺にとって重要ってことだから」
「だからさ、言い訳やめてよ。そんな言い方するなら飴玉吐き出してもっと私と向き合いなさいよ」
「なあ、どうしてそうかっかするんだよ」
「最近、私と居るとき貴方って上の空じゃない」
「そうかな」
「私にはそう感じるのよ、私のことどうでもいいの」
「どうしてそんなに一緒に居る時間ばかりを重要視するのかな。一緒に暮らしているのに、無理に繋ぎとめようとするから苦しいんだよ。だから」
「････だから？」
「心配しすぎなんだよ、俺はさお前と居る時驚くぐらい安心するんだ。時々頭がすっからかんになりそうになる、それぐらい落ち着くんだよ。」

「････私は貴方のそんなわからないところが怖いの不安なの」
「どうしてそんなに深く自分の中で理解しようとするんだよ、もっとシンプルになれよ」
「私は貴方じゃないの」

目に涙をいっぱいに溜める君は子猫のようで壊れそうだった
でもやっぱり僕にはわからなかった、君が僕を捕まえて置こうとすることを
捉まえなくても僕は君から離れないのにただそれを上手く口に出来ないだけなのに
いつも君は確実な言葉を欲しがってるんだ、確実な言葉ほど理解に苦しむことが多いのに。
感じて欲しかった、言葉じゃ表せない気持ちを。

「俺もお前じゃないからわからないよ、だから無理に意味を探すなよ。今があるから二人で居られるんだろ」

君は堪えられなかったんだろう泣き出して僕は君を抱きしめた
「なあ、いつまで形ばかりを求める？目に見えるものが表現できるものだけが全てじゃない。俺は居なくならないって」

君は頷きもせずただ泣いていた。
多分、またこんなことを話しながらお互いの違いを感じてそれでも惹かれて離れないだろうなと変な確信が頭をよぎって心の中で「ははは」って笑った

君をとても愛しいと思った

いつの間にか僕の口の中の飴玉はなくなっていて少し口に残った飴玉の風味が優しかった。そういえばあの飴玉は果汁100％の蜜柑の飴だったけ。それだからそんなに甘くなかったのか。