私が「Appalachian Waltz」を作った直接のきっかけは、ある日、星くんが古いカセットテープを持って来たことに始まります。それは、私と星くんが参加していた「Morning Special」というブルーグラス・バンドの練習の録音でした。北大の学生だったドブロ弾きのミカちゃんとバンジョー弾きのアイちゃん、ベースのサカイくんと組んでいたバンドです。バンド名が表す通り、朝練が中心のバンドでした。星くんは遅刻の常習で、最後まで現れないこともありました。それはさておき、テープを聴いて、渋い選曲に笑ってしまいました。その多くはミカちゃんの好みでした。何がカナシくて、ハタチそこそこの女の子がこんな曲をやるのだろう。 そんな懐かしい音を聴いてイメージが湧いて作ったのが「Appalachian Waltz」です。曲の後半は、ビル・モンローの名曲、本当に美しい曲「Summer Time is Past and Gone」を意識して作りました。
しばらくは、RINKAふたりだけで演奏していましたが、アルバムを作る段階になって、何かもうひと工夫したいということになりました。そこで星くんが提案したのが、マンドリン弾きのキンちゃんこと金一健さんの参加でした。私にとってもイメージどおりのことでした。キンちゃんには「A West Ocean Waltz」ではメロディーを美しく、「Appalachian Waltz」では、バッキングを自由に弾いてもらおうと思いました。キンちゃんとの録音は、一応打ち合わせはしたものの、殆どぶっつけ本番でした。キンちゃんのマンドリンはアドリブがいちばん。「Appalachian Waltz」のバッキングは、ビル・モンローを彷彿とさせる素晴しいものです。そして、この曲は、ライブでは星くんはブズーキを弾いていますが、録音では、私の希望で、ブルーグラスらしいギターも入れてもらいました。