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懐かしい昭和の風景やエッセイ集コミュの第6話 昭和の風景 『銭湯通い』

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あたしのおうちには、お風呂がなかった。

だから、あたしはいつも銭湯に通っていた。

小さい頃は、父ちゃんや母ちゃんに連れられて銭湯通いをした。

父ちゃんと行くときは夕食の後、母ちゃんと行くときは店を閉めてから行ったりしたから、夜10時ごろになることもあった。

だから、あたしは、すごーく宵っ張りの子供だった。

小学生の3年生ごろからは、近所の銭湯仲間とあたしの4人で通った。


銭湯ののれんをくぐって入ると、右側に番台におばちゃんが座っていて、台の上にお金を置いた。

小学校2〜3年生頃までは、う〜んと手をのばさなきゃ、番台に手が届かなかったけれど、
小学校の中学年ぐらいからは、番台のおばちゃんの顔を見て、あいさつしながらお金を渡した。

ちょっと、大きくなってからは、回数券を持って銭湯へでかけた。

回数券を1枚ずつ切って銭湯へ持って行って番台に渡すシステムに変わった。

回数券は、バスなんかと同じで、10枚分のお金で11枚ついていた。

母ちゃんは、「1回分儲かるから、回数券がよかね〜(いいわねー)」
と言って、回数券システムができたときは嬉しそうだった。


げた箱につっかけを入れて番号の書かれた木の札をとるとかぎがかかった。
あたしは、チビだったから、下の方に入れた。


中学生ぐらいになると、学校の出席番号と同じ番号に入れたり、五郎(野口五郎)ファンのあたしは5番とか6番に入れたりした。

脱衣場は壁際に棚があった。
細かく区切ってあり、衣類を入れるようになっていた。

でも、あたしはいつも山積みになっているカゴをとって、その中に服を脱いで入れた。

なぜか、母ちゃんはカゴ派だったので、あたしもカゴ派に属した。

脱いだ服とか着替えがみえないように、カゴの上にバスタオルをかけて、浴場に向かった。

浴場の出入口近くに、ベービーベッドが置いてあった。

2人分のベビーベッドには、時々、湯上りのホカホカの赤ちゃんが寝ていた。
お風呂に入ってスヤスヤと眠っている赤ちゃん!
湯上りホカホカで上機嫌になった赤ちゃんは、一人でニコニコ笑っていた!

赤ちゃんのお母さんは、とても忙しい。

まず、赤ちゃんをお風呂に入れて、一旦、脱衣場に戻って赤ちゃんの体をふいて、オムツをして、手早く服を着せて、再び自分の体を洗うために浴場にいった。

あたしは、時々、赤ちゃんのお世話係をお願いされた。

「ちょっと、見ていてくれる?」と、赤ちゃんのお母さん。

「うん、いいよ。」と私。

赤ちゃんのお母さんは、そう言って浴場へと向かっていく。

ホカホカの湯上り赤ちゃんは、お顔が真っ赤になり本当に赤ちゃんになる。

あたしの人差し指を自分の手でしっかり握ってニコっと笑う。

あたしが赤ちゃんの手を持って、

「あくしゅ、あくしゅ」と言いながら、手を左右にふると声をたてて笑う。

足の裏をコチョコチョすると、もっと大きな声で笑う。

しばらくして、赤ちゃんのお母さんが戻ってくると、あたしのお世話係りは終了する。

赤ちゃんのお世話は、脱衣場にいるおばちゃんや番台のおばちゃんも引き受けていた。
ぐずる赤ちゃんは、湯上りでくつろいでいるおばちゃんが抱き上げてあやしていた。

ちょっと大きくなってから、この光景を見て、あたしもこんなふうにかわいがってもらったのかなぁ〜なんて思った。

面倒をみてもらった赤ちゃんは、大きくなって赤ちゃんの面倒を見る。

銭湯での赤ちゃんお世話係はこうして、世代交代しながら繰り返していった。


小学校3年生ぐらいになると、銭湯には夕方、行くようになった。

夕方の銭湯は、あたしたち子ども、高校生ぐらいのお姉さん、飲食店のお姉さんやおばちゃんで賑わった。

あたしの住んでいた町は繁華街の真ん中。

だから、お客さんのほとんどが、あたしみたいなお店屋さんの子供、飲食店経営の人たちだった。

飲食店のおばちゃんやお姉さんは、夕方近くにお風呂に入り、身じたくして仕事場に出かけていた。

あたしは、鏡に向かって、せわしくお化粧をするおばちゃんやお姉さんをながめるのが好きだった。

今いくよ、くるよさんみたいに、太ったおばちゃん、痩せたおばちゃん、

ドラマ『時間ですよ』にでてくる、飲み屋のりん子さんやおリョウさんみたいに、ちょっと色っぽいお姉さん。

夜のお仕事の人たちは、いつも急いで身支度をしていた。

浴場は、大きなお風呂が二つ。

一つは、薬湯と言って、緑色の薬が入っていた。

もう一つは、透明だったけれど、真ん中で泡がボコボコしていた。

あたしは、ボコボコお風呂が嫌いだったので、いつも薬湯に入った。

人が少ないときは、お風呂仲間のキコちゃんとこっそり泳いだ。

今みたいに、シャワーなんてシャレたものはなくて、水とお湯が出てくるカランだけが壁際にいくつもついていた。

おうちにお風呂のある友達が羨ましかったり、おうちにお風呂がないことをみじめに思ったりした時期もあったけれど、

今では、父ちゃんや母ちゃんに手を引かれたり、お友達とおしゃべりしながらお風呂屋さん通いを経験できたことを誇りに思う。


それはねー!

おうちのおふろには、ホカホカ湯上りの赤ちゃんも色っぽいお姉さんもいないから・・・。


つづく



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