ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

小説ブログコミュのリレー小説part2

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
我が清峰学院高等学校に島倉みなみという女の子が居る。
恐らく我が校唯一の美人と言っていいだろう。
名前はきっと某有名マンガのヒロインから取ったのだろうが、この子はきっと名前負けしない美人に育つと踏んで名付けたご両親の勇気は大したものだと思う。
僕ならちょっと怖くてその手の名前は付けられそうもない。
しかし彼女と某ヒロインには大きな違いがある。
それは前者は自分の美貌を思いっきり自覚しているという事だ。
でもそれは仕方がない事。
普通の美的価値観と、鏡さえ持ち合わせてさえいれば自分が美人かそうでないかなんて当然分かるものだから。

僕が彼女を初めて発見したのは入学してはじめての朝礼の時だった。
まだ友達もできず皆借りてきた猫のように静かにシンとパイプ椅子に腰掛け、これから先生の長ったらしい訓辞を聞こうと待ちかまえていた時それは起きた。
パターン!という大袈裟な音と共に「キャー!ごめんなさい!」という、いたいけな女の子の声。
当然そっちに視線が集中する。
後ろに倒れた椅子の前で彼女が一人立って照れくさそうに頭を掻いていた。
「おっ」という男子の声の中に(美人じゃん)の意味が含まれていたのは言うまでもない。
(わざとだ・・・あの椅子を倒したのはわざとだ・・・)そんなひねくれた感想を持つ男子は恐らく僕くらいのものだっただろう。

コメント(8)

その日、家に帰って僕は早速兄貴に報告した。兄の雄一は同じ高校の三年生だ。
「新入生の島倉みなみだろ。俺も知ってるよ」
「三年生の間でまで噂になってるの?」
「そりゃそうだ。島倉にも兄貴がいるんだよ。そいつは俺の友達の島倉稔っていって、全然いけてない奴なんだ。なんであの兄貴にあの妹が、ってな噂もあるよ」
「兄ちゃんの友達の島倉なんて奴、聞いたこともないけどな」
「だろうな。俺もおまえにははじめて言ったんだ」
「前から友達だった?」
「今年になって同じクラスになったから、友達になったんだよ」
思うに、一年生の島倉みなみの兄だからこそ、友達になったのではないだろうか。ってことは、兄貴はみなみに目をつけている? 僕が疑惑のまなざしで見ると、兄はにやにやっとして言った。
「玲二、おまえ、みなみちゃんに恋をしたのか? 無駄無駄、やめとけって」
「恋ってほどでも……」
恋ってほどではなくても、みなみと友達になれたらいいな、と思ってはいた。
しかし、三年生の間にまでみなみの噂が広まっているのならば、二年生ももちろん噂しているだろう。一年生の僕は不利なのか。
みなみの好きなタイプを聞いていないのだから、不利なのかどうかもわからない。こんなふうに考えるようになったのは、やはり、僕はみなみが好き?
その気持ちはまだ漠然としていて、「恋」と名づけるほどでもないような、ではあった。
彼女を好きなのかはともかくとして、人は誰しも綺麗なものが好きだ。
花を愛でる心は誰にでもある、それを否定してはいけないよな・・・。
・・・。
うわついて照れくさい自分の心に一人で言い訳する自分がまた恥ずかしい。
やめよう。

有り難くも?それから僕は毎日彼女を放課後目の当たりにする事になる。
単に彼女がチアガール部に所属し、練習場所が校舎前のロータリーだったからだが
しかし彼女はそれすらもちゃんと計算に入れてその部を選んだのだろう。
まったくもってその作戦は見事に成功していた。
男子生徒の殆どが下校する際、彼女に視線を送っているからだ。
もちろん僕もその中に入る。
僕には花を愛でる心が・・・いや、それはもういいか。

兄貴を含めた多くの男子が彼女と何らかの関わりを持てる機会はないかと期待しているのだろうが、その殆どが徒労に終わるだろう。
何の脈絡もなく無闇に特攻をしかけても玉砕するに違いない。
どこかで冷めている僕はロータリーの頂に咲く高嶺の花を手に入れようとせず、そのまま彼女が練習する横を通り過ぎるのだった。

そんなある日、彼女と間近で接する機会はふいに訪れた。
恥ずかしながら僕は初めての中間テストを見事ストレートで赤点を貰ってしまい、最初の再試をにB棟にある4組で受けることになったのである。
僕が教室の前に辿り着き
(はじめて他のクラスの奴と触れ合える機会が赤点の再試じゃみっともねえな・・・)そう思ったそのとき
「私なんて3教科再試だよっ、ひっさ〜ん!アハハハハ!」
と、いうわざとらしくも張りのある彼女の大声が教室を越え、廊下中に響き渡った。
「なんなのよ、あれ」
みなみのわざとらしい大声を聞いた女の子が、さもいやそうに吐き捨てる。女の子がふたりしてひそひそ話している声に、僕は耳をそば立てた。
「みなみってほんと、なにをするにもこれ見よがしっていうの? あんな大きな声を出さなくていいのにさ」
「だよねぇ。男子の注目を浴びたくてしようがないんだよ」
「そんなに男子に注目されたいんだったら、男子校に行けばいいんだ」
「それは無理だろうけどさ」
 ますます声を低めて、ふたりそろって言った。
「ふんっだ、あんなブス」
 ブスだなどと言うのは、ひがみだろう。おまえらのほうがよっぽどブスじゃん、と僕は言いたかったのだが、彼女たちに聞こえでもしたら大変なので、当然口には出さなかった。
「彼女って女の子には評判よくないのかな」
こそこそっと僕も言うと、同じクラスの橘が言った。
「あんなタイプは男子にはきゃあきゃあ言われても、女子には嫌われるに決まってんじゃん。玲二は女の子を知らないね。そんなだったら彼女なんてできないよ」
「頼まれてもおまえとはつきあわないから、ほっといて」
「あたしも頼まれても、おまえとなんかつきあわないよーだ」
橘は勉強はできるのだが、なにやら大失敗したとかで追試となったのだそうで、そのせいで機嫌がよくないのだろう。
しかし、橘だって女なのだから、女の気持ちってのはわかっているようで、すると、僕がみなみとつきあうようになったら、女の子たちに嫌われるのか。
つきあってもらえるなんてあり得ないかもしれないのに、僕はついつい気の早い想像をしていた。
ぽわわわーんとなっていたものだから、つい正直に話してしまった。再試験も終了して、橘とふたりして帰る道々でだった。
「ふーーん」
みなみちゃんってほんとはこんな女の子なんだぞ、おまえら女は誤解してるんだぞ、と先ほどの一件を話すと、橘はつめたい目つきで僕を見た。
「アホやぁ。男ってアホやぁ」
「なんなんだ。なんで関西弁になってるんだよ」
「アホのほうが馬鹿より似合うからかな。だまされちゃってさ。ま、だまされてるのも幸せなんだろうから、好きにしろ」
「好きにするけどさ」
僕だってちょっと前までは、みなみって子の本性はいかに? と疑っていたものだった。が、先ほどのあのみなみを見ていれば、僕も誤解していたのだとしか思えない。
そんな僕をアホとは、だまされているのだとは、おまえのほうがアホやろ。僕までが大阪弁で考えていると、橘は言った。
「単純なアホってハッピィだよね。あたしもそうやって、男をだまそうかな」
「おまえはみなみちゃんとは顔がちがいすぎるから、無理だろ」
「顔さえよかったらそれでいいんだから、男ってほんとにアホ」
「顔だけじゃないよ。バストだとかさ……むふふ」
蹴飛ばされそうになって飛びのいて、僕は言った。
「おまえ、追試も駄目だったの?」
「駄目じゃないよ」
「それで機嫌が悪いんじゃないの?」
「ちがうよっ」
そしたら、男にふられたのか。などと言うと、だから男はアホ、と決めつけられそうで、おまえのほうがアホじゃん、と心で言うにとどめておいた。
次の日音楽の授業で教室を出てB棟へ向かう廊下を歩いていると「あっ追試マンだっ!」と、いう何処かで聞いたような声。
振り向くと彼女だった。
む〜ん、追試マンとは失敬な・・・とは思ったが事実だからしょうがない。
「やぁ、綺麗なバカ子さんこんにちわ」しゃくに触ったから言い返してやったさ。
「キッツ〜!言うねぇ、綺麗とか言ってくれたわりには」
「ったく、ぶしつけに追試マンとか言っといてよく言うよ」
「アハハ!」
「ホラホラ、綺麗なバカ子さんと一緒に話してると下々の者が嫉妬の目で見られちゃうから、バイバイ」
と、言いながら辺りを見回すと案の定、野郎共が僕達の会話に聞き耳を立てている・・・。
いや、確認したわけではないけど視線を感じると言った方が的確か。
ここは素直に退散した方が良さそうだ。
男の嫉妬は女より直接的で暴力的だから始末に負えないのだ。
特に先輩からは目ぇ付けられたくない。

「面白いね、君」腕組みしながらウンウン、確かにそうだよ、という風に頷く彼女。
「え〜・・・・みなみちゃんからそれだけは言われたくねぇなぁ」
「み、みなみちゃ?・・・」
「やっぱり漫画みたく自分のことミナミはぁ・・・とか、言うの?」ブリブリッと。
「言うかっ」

シカトして音楽室へ向かってテクテク歩く。
「言うかぁ〜!!」
と、もう一度とりわけ大きな声で僕の背中に向かって叫ぶ彼女の声を聞きながら
ん〜・・・綺麗な女の子と会話弾ましちゃったぞ僕。
と、ちょっとしたモテ気分を感じて調子込む勘違いな僕は確かにバカだと思った。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

小説ブログ 更新情報

小説ブログのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング