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何だ、コイツ(ーー;)コミュのRe-Make/Re-Model

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ウチの町内に住むA子ちゃんの話をしましょう。

A子ちゃんは、小さな工場を経営するお父さんとお母さんの三人家族です。残念なことに、お母さんは体が弱くて、病院にずっと入院していました。なので、小学生のころから、A子ちゃんは、お母さんの代わりに、炊事・洗濯などの家事一切をしてきました。学校が終わって、友達が道草しながら遊んでいる時でも、A子ちゃんはまっすぐ家に帰って、夕飯の支度を始めます。遊びたい盛りなのに、A子ちゃんは不平一つ言ったことがありません。近所の世話焼きおばちゃんたちは、そんな健気なA子ちゃんのために、おかずを作って持って行ってやったり、時にはしつこい新聞の勧誘員を追い払ってやったり、なにくれとなく面倒を見てやりました。

彼女が高校に進学してまもなく、お父さんの工場が倒産します。お母さんが長期入院しているせいもあり、それまでも決して楽ではありませんでしたが、一気に家計が苦しくなります。ですので、彼女はコンビニやファミレスでのバイトを始めます。家事と学校とアルバイト。辛いに決まっていますが、そんなことはおくびにも出さずに頑張るA子ちゃんを、町内のみんなは心の底から応援していました。

高校3年生。彼女は卒業したら就職して家計を支えるつもりでした。そうするのが当たり前だと思っていました。が、お父さんが反対をします。自分が不甲斐ないせいで苦労をかけっぱなしだった娘に、せめて大学くらいは行かせてやりたいという親心です。高校の先生も進学を勧めます。彼女の高校は、都内でも有数の進学校ですが、彼女の成績は全校で五位を下ったことのないほど優秀だったそうです。バイトと家事に追われて勉強する時間などほとんど取れないはずなのに、です。

父の思いを酌んで彼女は東大を受験し、見事合格します。良いことは重なるもので、いや、彼女の大学合格が家族に幸福をもたらしたのでしょう、まず、お父さんの就職が決まりました。しかも、日本でも有数の大企業が、給与は重役待遇で、とある重要部門の責任者のポストを用意してくれたのです。聞けば、お父さんは、その分野では世界的に評価の高い技術者なのだそうです。経営者としての才覚が無く工場を倒産させてしまいましたが、むしろ技術者として働く方が彼にとってもよかったのでしょう。そして、お母さんが長年の闘病生活を終え、元気になって退院しました。親子三人揃って暮らせるようになりました。

一家を知る町内のものは皆、我がことのようにA子ちゃん家族の幸せを喜びました。「よかったねえ。やっぱり、お天道様は見捨てないね」「うんうん。A子ちゃんも、今までずっと苦労してきたんだから、これからは今時の女子大生みたいに、少しは遊びもさせてあげたいよねえ」「そうだよ、なにしろA子ちゃんは、性格がいいでしょ。おとなしいし。で、頭もよくってさ。で、美人じゃない。いい男がほっとかないよ」「ウン。アタシももう十年若かったらさー」「アンタなんか、三十年若くったって、男なんぞ寄って来ないよ」「あら、ヒドイこと言うわね(笑)」イヤ、もうおばちゃんたち、うるさいうるさい。

「ホーント。非の打ちどころのない娘なんだけども、あれさえなければねー」「あ。あれね」。そうなんです。A子ちゃんの唯一の欠点、と言っては可哀想ですが、あるんです。

A子ちゃん、歌が好きなんです。人前で歌うのが。そんなの、普通じゃん、ちっとも悪くないでしょ。ええ、そりゃま、そうなんですが、ちょっと尋常じゃないくらいに、人前で歌いたがるン。町内の夏祭りののど自慢大会に毎年出場なんてのは、別にどうと言うことはないんですが、近所の会社の忘年会のカラオケ大会みたいなのにも、なぜか出場しちゃうんです。もちろん、A子ちゃんとその会社に何のつながりもないんです。一番驚いたのは、隣町の老人会の慰安旅行でのカラオケ大会でも歌ったってんですから。その時は、老人会のメンバーの中にA子ちゃんを知っている人がいて、上手くとりなしてくれたんだそうですが。老人に混じって歌う高校生の娘。

家族のためにと抑圧されていた何かが、ああいう形で出るんでしょうかね。とにかく、人前で歌える場があると、出たがるんです。

話が横道にそれました。で、この春、A子ちゃんは無事東大を卒業して、某大手企業に就職したんです。で、就職してまもなく、そこの社長に気に入られて、ぜひウチの息子の嫁にと縁談を持ち掛けられたんだそうです。大企業の社長とその息子。ワシのような根っからの貧乏人のひがみ根性からすると、成金親父と遊び人の息子みたいなのを想像しちゃいますが、実は、親父は一代で会社を作り上げた苦労人で、息子を厳しく育て、息子も腰の低い努力家で、しかもイケメンだそうです。

入社したての女の子が社長の御曹司と結婚。そりゃあ、お局様たちじゃなくても、いろいろ陰口やらなにやら、圧力がありそうですが、不思議にそんなのはなかったそうです。やはり、A子ちゃんの人柄でしょうね。

で、この秋にめでたく結婚式がとりおこなわれました。

もちろん、町内からも何人かは招待されましたがね。私は出てません。そんなことは、どうでもいいんでさあ。ちょうど、町内の寄り合いの日でもありましたし。いや、寄り合いったって、ちょっとしたことを話し合って、後は酒飲んで、カラオケ大会ですからね。その日はもう、A子ちゃんの結婚話で持ちきりでね。

「今頃は、A子ちゃん、文金高島田で綺麗だろうねえー」「うんうん。わたしゃA子ちゃんが小学生のころ芋の煮っころがしの作り方教えてやったんだよー」「わたしゃ、舌ビラメのムニエルプロバンス風を」「アタシなんか、キャビアとチョウザメの親子丼を…」ヨクワカラナイ(-_-;)。ともかく、おばちゃんたち目を真っ赤にしながら、思い出話にふけっております。

「さて、では、そろそろ、町内会寄り合い恒例のカラオケ大会と参りましょうかー」進行役の畳屋が声を張り上げます。「今日は、A子ちゃんの結婚式ですので、もしかしたらA子ちゃんが登場するかもしれませんねー(笑)」。出るわけねえだろがよ。今披露宴の真っ最中の時間だぜ。オヤジギャグもここまでくるとしらけるなあ。「では、一番バッター、乾物屋のご隠居の『天国への階段』どうぞー」

で、出てきたのが、A子ちゃん。何だ、コイツ(-_-;)。

一同、A子ちゃんの結婚を祝福する気持ちに何の変わりもないんですが、それでも、こんな日にまで出てくるのかよという思いはあったようで。

「嫁行く日も出る」

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