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自作小説お披露目会場コミュのこいこいしようよ! 3−1

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「そういや、初心者でも経験者に勝てる方法ってあったりするの?」

 花札部の部室に向かう道中、亜衣はキキコにそんな質問を投じた。

「ビギナーズラックだね」
「いや、そういうのじゃなくてさ……」

 げんなりする亜衣に、キキコは大真面目に言う。

「いやいや。現実問題そうなの。花札って物凄く運に左右されるゲームで『運も実力の内』って言葉がまかり通る世界だからね。故にビギナーズラックだよ」
「なるほど。なら、技術的な事は?」
「技術的って事なら基本的な事だけど一に菊に盃を取得する事、二に光札を出来る限り取得する事、三に相手の取得札を見て邪魔する事、四に欲張らない事。この辺に注意して戦えば、後は自分の運次第」
「あ、結局運なんだね?」
「結局運だよ。ま、それをどう受け取るかは個々人で違うけどさ」

 そこで二人は花札部の部室の敷地内に差しかかった。

「おおー。ホントに教室が部室なんだねー」

 亜衣がクラスのプレートが張られている場所を見て言った。そこには本来あるべき「一年七組」というプレートはなく、代わりに「花札部」と書かれたプレートが堂々と飾られている。

「ここで間違いないみたいだね。中でやっているし」

 キキコは引き戸についている窓から中を覗き見しながら言った。室内では前の方に集まって三人の女子生徒と顧問と思しきスーツを着た男性がいて、時折「こいこい」や「勝負」を初め、役の名前がくぐもって聞こえてくる。

「キキコ、ノックするよ?」
「あ、うん」

 食い気味に亜衣が引き戸をノックした。

『はーい。今開けるわー』

 室内から軽快な女声が返ってくる。
 少し待つと中から扉が開き、声の主が顔を出した。
 その人物はキキコと亜衣の事を見て『おっ』と声を上げる。

「これは奇遇。それとも数奇かしら?」

 キキコと亜衣を出迎えたのは生徒会長の赤松鶴賀だった。

「赤松、どちらさんだ?」
「もしかして一年生?」
「とすると見学者?」

 などと言いつつ、中にいる人物がぞろぞろと顔を出した。

「あ、松町先生。こんにちは」
「松町先生って花札部の顧問だったの?」

 新たに現れた三人の内、一人の顔をキキコと亜衣は知っていた。松町健悟。キキコと亜衣が所属している一年一組を担当している国語科の教師だ。

「おうともよ」
「マツセンが知ってるって事はマツセンのクラスの子?」

 気だるそうな三年生女子が尋ねた。

「おう。ま、立ち話もなんだ。入ってからにしようぜ」

 そう言い置いて松町はさっさと室内に引っ込んでいく。

「承知」
「ま、それもそうね」

 それに続くように物静かそうな二年生女子と三年生女子が続き、

「そういうわけだから、ま、入って。花札部へようこそ」

 鶴賀が室内に入るように引き戸を押さえて示してくる。
 キキコと亜衣は一礼してから部室に入った。

「おー」
「教室丸々一個使っているからか、流石に広いですねー」

 二人は各々感想をこぼした。
 教室だった名残を感じさせるのは目の前の黒板と教卓のみ。後の机と椅子は、机は机、椅子は椅子で重ねてまとめられて隅の方に寄せられている。掃除道具入れが廊下側の壁に移動されているので奥まで寄せられ、尚の事広々としている。
 部室だと感じさせるのは対戦台として使われているだろう一つの机と横に置かれている二つの椅子、それが二組。教師用の机には電気ポットが置かれ、その後ろには何処から持ってきたのかカップが入った戸棚が置かれているところか。

「二人ともこっちに席を用意したから座ってくれ」
「あ、はーい」
「分かりました」

 亜衣とキキコは各々返事をして用意された椅子に座る。

「さて、まずは自己紹介か。俺はやらなくていいとして、折角黒板もある事だから転入生が挨拶するみたいにやるか。その方が色々と手間が省ける」

 松町が早速とばかりに場を仕切り、そんな提案をする。

「全員それでいいよな? 口で自分の名前説明するの面倒だろうし」
「じゃ、まずは部長であるあたしから」

 鶴賀が立ち上がり、黒板に向かい、自分の名前を書いて皆の方を向く。

「えー、改めまして赤松鶴賀よ。よろしく、一年生のお二人さん」

 話を振られ、キキコと亜衣は「よろしくお願いします」と言葉を返す。

「桐子。次は貴女よ」

 言いながら黒板から離れる鶴賀。

「はいはい」

 気だるそうに指示を受けた三年生女子が立ち上がり、鶴賀と入れ替わる。その際にチョークを受け取り、鶴賀の名前の横に【鳳桐子】と書いた。

「鳳桐子よ。適当によろしく頼むわ」

 話を振られ、キキコと亜衣は再び挨拶を返す。

「朱美」

 二年生女子を呼びながら黒板から離れる桐子。

「ん」

 外見相応に短く返事をして二年生女子は桐子と入れ替わる。黒板の前に立つと桐子の名前の横に【藤谷朱美】と書いて振り向く。

「藤谷朱美。所属は二年三組。よろしく」

 話を振られ、三度キキコと亜衣は挨拶を返した。

「マツセン、一年生達はどっちからするの?」

 朱美は自己紹介を済ませると静観している松町に尋ねた。

「五十音順でいいだろう。というわけで、佐治、前に出てくれ」
「あ、はーい」

 指示を受けて亜衣が小走りで黒板に近づいた。途中、朱美からチョークを手渡され、朱美の名前の横に自分の名前を書いて振り向く。

「ええと、佐治亜衣です。クラスは一年一組。よろしくお願いします」

 自己紹介を終えると部員と顧問から返答が来た。

「最後は私ですね」

 キキコは立ち上がり、黒板に近づく。その途中で亜衣からチョークを受け取り、佐治の名前の横に自分の名前を書いてから振り向く。

「キキコ・四季咲・フランクールです。所属は――」
「「四季咲でフランクール!?」」

 キキコの自己紹介を遮ったのは、鶴賀と朱美の驚愕の声だった。


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