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ウィーン古典派コミュのW.A.モーツァルト 交響曲第36番 ハ長調≪リンツ≫K.425

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モーツァルトのネタで何か探してましたが、とりあえず以前私がいたオケでのライナーノーツをご紹介します。
なんとこの演奏会はモーツァルトの命日と重なるという、いわく付きのものでした。少し長いですがご容赦ください。

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作曲年は1783年、モーツァルト27才の時の作品です。交響曲第35番《ハフナー》K.385が、父レオポルトの依頼で作曲したハフナー家のためのセレナードから編曲した間に合わせに近いものであったのに対し、後期3大交響曲につながる新境地を開拓した、本格的交響曲です。 ザルツブルグを飛び出してウィーンで結婚をしたモーツァルトが、第一子出生後、子供を預け、妻であるコンスタンツェを故郷に紹介するための旅の帰路で立ち寄った都市、リンツにて作曲されました。リンツはウィーンとザルツブルグの中間に位置するオーストリア第3の都市で、後にブルックナーが生誕し聖職者として務めた地でもあります。

リンツでの大歓迎をうけたからか、ドイツ・オーストリア的伝統において祝祭的な側面を持つ「ハ長調」で書かれています。堂々たる序奏、軽快なテンポ、まるで子守歌のように頬を撫でるやさしいメロディー。楽曲全体としては壮絶なエネルギーが貫いています。でも、どこか深い哀愁と陰影が、聴く者を強く惹き付けてやまない曲であります。 この曲が作曲から初演まで、僅か4日足らずであったことも有名な話です(リンツ着:10月30日、初演:11月4日)。

なぜ、「リンツ」は異常なまでに驚異的なスピードで作曲されたのでしょうか?プロの作曲家として演奏会に間に合わせること以外に、何か特別な意味があったからではないでしょうか? 実はこの曲、リンツ市民のための記念碑的一大交響曲であるものの、それとは裏腹に、「哀の告白」ともいうべき神業がなされているのです。

なんと「十字架」が描かれております!それも実に均整のとれた、かくも美しい十字架・・・。それは、「死の十字架」なのです。

十字架はご周知の通りキリスト教の象徴です。当時のヨーロッパはローマ・カトリック教会が隆盛を極めており、人の生から死まで、あらゆる局面に十字架が存在していたことでしょう。
譜例1をご覧ください。4つの音符を線で結ぶと、その線がクロスしますね。その形が十字架(英語でCross)のメタファー(暗喩)として扱われています。 この手法はバロック時代の宗教曲などで用いられており、特にバッハは好んで多用しています。(譜例2 バッハの代表的な十字架)
「リンツ」において特筆すべきは、第「4」楽章において第一ヴァイオリンの85小節から88小節までと320小節から323小節までがそれです。この部分は弦楽器のかけ合いにに埋もれてしまい、通常ほとんど聴こえてきません。その他、変形はしているもの、十字架音型がふんだんに用いられています。
他のモーツァルト作品にも、十字架は見られます。12才の時のミサブレビスK.65に早くも出現するのをはじめ、超有名な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」K.525の第1楽章のビオラパート(譜例4)、さらには映画「アマデウス」で父レオポルトのメタファーとして用いられている歌劇「ドン・ジョバンニ」K.527のテーマも、十字架の骨格を持ちます。 
譜例1の部分を音名に直すと・・・「D」→「E」→「A」→「D」となります。 はたして、かの天才モーツァルトが意味もなく悪戯に、こんな事をするでしょうか?これこそ、彼が最も云いたかったことではないでしょうか。モーツァルト関連の本を読み返してみると、1783年6月に第1子(ライムント・レオポルト)が生まれ、8月には病気で亡くなっています。また、モーツァルトがザルツブルグを飛び出してから、彼とあれだけ親密であった父レオポルト、そして姉ナンネルとの関係に確執が生じ始めていたのです。

ザルツブルグ訪問の結果、彼の姉そして父との不仲が回復できなかったのは、このことが原因と考えてもおかしくないのではないでしょうか。
このように、曲想と作曲意図とのギャップを考えた時、彼独特の「泣き笑い」に近い心理が浮かび上がってくるのです。

「リンツ」は、父親からの自立の一歩であり、深い哀しみを乗り越えるための墓標であり、また彼自身を勇気づける応援歌であったわけです。そんな様々な思いがこの曲に込められているように感じます。事実、ウィーンに戻ってから彼の活躍はすさまじいものであり、新しい活動が次々と展開され、大きな成功へと歩んでいくのです。

人間、何か哀しいことがあった時、それを乗り越えるための「きっかけ」が必要です。私は、この愁い深い「ハ長調」の交響曲が、亡き息子ライムントへの「レクイエム」である気がしてなりません。

実は私も息子を出生時に失いかけた体験があり、この発見は単なる偶然ではなく、モーツァルトが時空を超越して、そんな私を通して皆様の前にメッセージを伝えに来たのではないか、と勝手に想像しています。
モーツァルトとその家族、そして偉大なる友人のご冥福を、皆様と共に心よりお祈りいたしましょう。

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