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インドネシーアバウの24小説コミュの24(mcdonalds)?16:56-17:00

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16:56

東横線の渋谷駅は、学生らしき制服を着た男女を始め、若者の姿が多くみられた気がした。ビルの中でも「渋谷は若者の街」というイメージはあったが、その通りだった。
サラリーマンが仕事を終えて帰宅するにはやや早い時間だったのもある。
通勤ラッシュと呼ばれる時間帯ではなかった事を、ビルは心から安堵していただろう。
しかし、それでも仕事中と思われるスーツ姿の男女も幾分かは確認できた。

「1番線…横浜行き…横浜行き…」

ビルは周りには聞こえないくらいの小さな声でその言葉を反芻しながら「1」と大きく表示された方向へ早足で歩いていた。
1番線ホームにはすでに電車が到着していた。渋谷発の始発電車だからだろう、若干の待機時間があったようだった。
ビルは、空席を探すような仕草で、各車両の様子をうかがっていた。
自分を見ている者がいないか、挙動不審な男はいないか…そんな事を確認していたのだろう。
すでに電車の座席はすべて埋まっており、ラッシュとまでは言わないが、すでに立っているものも少なからずいた。

とある車両に差し掛かった時、ビルは少し眉間にしわを寄せた。
何かしらの違和感を感じたからだった。その違和感を確かめるために、先ほど見た車両と軽く見比べた。明らかに乗車している人間の数が多かった。

首を傾げながら、ビルは、天井からぶらさがった電光掲示板を見た。

【1・17;00発 通勤特急 横浜行き】

間違いない事を確認すると、今度はポケットから、携帯電話を取り出した。
いくつかのキーをプッシュして、ディスプレイに画像を表示させた。

==とうよこせんしぶや17じはつ5ごうしゃ まんなかとびらちかくにまっくかーどをおけ==

新名がエドガーの任天堂DSに送ったメッセージを保存したものだった。
その画面を確認すると、違和感を感じた車両を一度進行方向に向かって通り過ぎた。

先頭車両が見える位置まで来ると、上半身を傾け、前方から車両数を確認して行った。

「1…2…3…4…」ゆっくりと呟きながら確認していった。

そして「5」と言葉を発せずに指を止めたのは、先ほど違和感を感じた、人の多い車両だった。
やはりここか…と思ったのだろう、ビルは大きくため息をついた。

携帯電話に表示された時計を確認した。
デジタル表示の時計が16:58を示すところだった。

ビルは5号車の丁度前にあった椅子に、一度腰をおろし、電話をかけた。相手はすぐに出たようだ。

「クロエか、わたしだ。」

ビルは辺りを見渡しながら、話しかけた。

=到着しましたか?=

「ああ、問題ない。」ビルはそう言って早口で続けた。
「新名からの指示は、真ん中の扉の近くにマックカードを置けというものだ。
その意図が分かった。なぜか5号車は、他の車両より人が多く乗っている。
それを知っていて、この車両を指定してきたようだ。」

=なるほど=
クロエは短く同意した。

「すでに5号車に乗っているか…他の車両で様子をうかがっているか…
 新名の事だ、もしかすると次の駅などで待機している可能性もある。
 どちらにしても、私が5号車に乗り込み、鞄からは手を離した状態で見張る事にする。
 君には、次の駅以降の防犯カメラにアクセスして、怪しい者がいないかチェックしてくれ。
 何かあればメールを頼む。」

=分かりました=

「しかし…納得できないのは、置いた物を回収するという点だ…
 CTUの誰かが見張りにつくのは当然の事だし、奴らもそれに気づかないほど馬鹿じゃない。
 奴らはどうやって…このかばんを回収するつもりなのだ…」

=次の停車駅の中目黒の構内カメラにアクセスできました…すごい人…!
 この状態では不審者を特定する方が難しいわ…!=

「単に人ごみに乗じるだけなのか…」

そう言った時、まもなくの発車を知らせる音楽が鳴った。
時計は16:59を過ぎた辺りだろう。

「じゃあ行く。それと、この事は…」ビルが腰を上げ、付け足すように声をあげたと同時に、クロエは「分かっています。一人でやります」と声を被せた。

ビルは扉に向かいながら「よし」と言って携帯電話を切った。

そして目の前の扉に飛び乗り、何食わぬ顔で手に持っていたハンドバッグを扉の横に置いた。
顔をあげて、周りを見渡すと、隣にいた女性が不機嫌そうな顔でビルを見ていた。
その顔を見て、逆方向に目をやったが、ビルが見たのは同じように不快な顔をする女性だった。

その時ホームから声をかける男がいた。
それはビルに発せられたもので、男は駅員だった。

「この車両は女性専用車両ですよ。Lady’s only OK?」

駅員は、ビルの顔を見てか、片言の英語を使った。
ビルはハッとしたように即座に全体を見渡した。
先ほどは人の多さに気を取られて気付かなかったが、そこには女性の姿しかなかった。

ビルは駅員に促され、慌てて降り、置いた鞄を歯を食いしばりながら見つめ、5両目に近い扉から4両目に飛び乗った。

そこで場内アナウンスが流れた。
=まもなく1番線より電車が発車いたします…=

ホームにベル音が鳴り響くその間もビルは鞄のある方向から目を離す事はなかったが、鞄を持ち去るような男はいなかった。
ビルが扉の内側から、誰もいないホームを見つめていると、空気が抜けるような音とともに、目の前の扉が閉まった。

17:00

コメント(2)

文章が少しおかしかったので編集をかけました。
何度もすみません。
渋谷駅の次の駅を「代官山」としてましたが、特急の停車駅は「中目黒」でした。訂正してお詫びします。
…って細かいとこ気にしてないですよねw

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