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短歌点コミュの短歌点1090△お題「桜」

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お世話になります。

りなさんの1085△お題「タクシー」よりバトンを受取りました、@貴です。

春の陽気が感じられる季節となってきて、
先日3月14日には「全国に先駆けて東京で開花が観測された」とニュースで見ました。
平年より高めの気温が花芽の順調な生長を促したのか、全国的に平年より早まる見込みだそうです。

ということで、今回のお題は「桜」です(「ピノ」と迷いました)。
過去に3回出題されたお題のようです(前回2015年)。

表記は「桜」「櫻」「さくら」「サクラ」「左久良(変体仮名)」いずれも自由ですが、
ちゃんと桜の意味で詠み込んでください。


 「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい(笹井宏之)


なお、少し早いですが、締め切りは3月31日とさせていただきます。

よろしくお願いいたします。


ルール

1:出題者が、お題を出します。
2:お題は、何でもありで面白そうなもの。
  50題以前に出されたものであれば、既出のお題でもOKです。
3:トピック本文に「前回の出題者名」「前回のお題ワード」を明記してください
 (例:●●さんの「▲▲」というお題からバトンを受け取りました)。
4:出題者じゃない人はお題を詠み込んだ短歌を書き込みます。(1人1首のみ)
5:一週間以後、出題者が(独断で)もっとも素晴らしいと思った短歌を1つ選
び、その選出理由を書きこみます。
6:次のお題は、最優秀短歌をつくった人が出すことになります。
 (新トピックの番号は「自分が選ばれたトピック番号+5」)
7:その後は、みんなでワイワイ感想をかわします。
ーーー

※2012年4月17日一部改定
(基本ルールに「特定の単語・文字列を指定してください。」を加筆。管理人:ツトム)
※2022年3月9日一部改定
( ルールの3番として以下加筆。「トピック本文に『前回の出題者名』『前回のお題ワード』を明記してください(例:●●さんの『▲▲』というお題からバトンを受け取りました)」。

コメント(98)

改めまして
ご投稿いただいた皆さま、ありがとうございます。
大変お待たせしており申し訳ありません。

選歌にあたり、まずは一首ごとに僭越ながら感想を添えさせていただきます。
リテラシーが足りないゆえに作者さまの本意でない読みを度々するかと思いますが、
どうか温かい目で読んでいただけると幸いです。

それでは、はじめます。
>>[3]

満開の桜あなたの肩越しに見上げた時に止まり生きる

桜並木を連れ立つ光景でしょうか。歌の空気感からして、しっかり準備して臨む花見のシーンではなさそう。「肩越し」なので、「あなた」の少し後ろに付いて歩く姿か、あるいは抱き合うふたりの姿が思われます。相聞歌と読みました。「あなた」の延長線上にある「満開の桜」を見上げる、それはとても素敵な時間。しかし、作中主体は甘やかな雰囲気に流され過ぎないで、「止まり生きる」としっかり現実を見据えている印象を受けます。満開の花を咲かせた桜の息吹に触れ、(この人と共に生きよう)と決心を新たにする、たしかな意志を読み取りました。

★良いと思った点

「肩越し」が良かったですね。生命感ある満開の桜の延長線上に据えた「あなた」と、これから共に生きていくんだ、という未来性。素敵なロケーション・甘やかな雰囲気に、得てして人は流されがちですが、詩の中にも現実をしっかり見据えた覚悟に好感を持ちました。
>>[6]

四年ぶり櫻の頃なら繰り出してハメを外そう錯乱の宴

全国各地の花見や桜祭りを詠まれた歌でしょうか。何か理由があってずっと自粛していたけれど、久しぶりに解禁された喜びを読み取りました。思われるのはやはり、コロナの影響です(「頃なら」に「コロナ」が隠されていることからも)。日常の生活やイベントなども少しずつまたコロナ以前のかたちを取り戻しつつあって、ずっと抑制されていた分、かつては当たり前だった事柄がありがたく感じられます。そうした気持がひとしおであるのが「ハメを外そう」からよく伝わってきますが、「錯乱」するまでには至らないよう、節度をもって楽しみたいものですね。

★良いと思った点

「四年」という具体的な数詞が、抑圧と解放の両極を表現するうえで、(もうそんなに経つのか)(長いようで短い、でもやっぱり長かったな)と思いを馳せられ、効果的でした。「頃なら」や「錯乱」の駄洒落(他にもあるのでしょうか)も、探すのに興がありました。
>>[9]

僕たちの苗字の木々が伸びいつか桜並木になったら会おう

苗字の中に「森」や「林」、あるいは草冠の漢字が入っている夫婦を思い浮かべました。家族として支え合い成長していく意志を、生命感ある緑ゆたかな自分たちの苗字に寄せて表現するあたり、洒落っ気を感じます。一方で、「会おう」が誰に向けての科白か気になりますが、「会おう」と言うからにまだ会っていないわけで、「僕たち」夫婦の片方がもう片方のパートナーに宛てた言葉ではなさそう。となると、生長した木が桜を芽吹かせるように、いつか生まれ来る吾子へのメッセージと読みました。お題「木」や「虹」の出詠歌と同じシリーズの歌かもしれませんね。

★良いと思った点

苗字に使われる漢字にフィーチャーし、その生命感から詩を育ててゆく感性が良かったです。「名字」でなく「苗字」でないといけない。また、短歌における出逢いは現在や過去が詠まれがちに思いますが、未来の出逢いというのは、グッとくるものがありました。
>>[22]

アスファルトにあそぶ花弁にみちびかれ路地をまがれば満開の桜

桜、、、はな

一読、「花信風」という言葉が情景とともに頭に浮かびました。アスファルトの舗装された道のうえを、花弁がそよ風に舞ってゆく。それを目で追い導かれるように作中主体が路地を曲がると、まるで「待っていたよ」と言わんばかりの満開の桜が出迎えてくれた。やや説明的であるものの、丁寧な描写かつ素直な詠み口で、春の香りが鼻腔を擽るような絵が浮かんできます。「みちびかれ」から「まがれば」の流れが僥倖につながることで、歌中では語られない作中主体の感動が伝わります。親や友達や先生など出逢いに恵まれた学生の進路のメタファーとも読めそうです。

★良いと思った点

「あそぶ」が良い、ひらがな表記なのも。何故か「優しく睫毛に憩う」のフレーズが頭を過ぎりました。歌としては皆まで言ってしまっているんですが、その展開の、抑えて抑えて最後に花開く結末が、俗に言う「エモい」というやつでした。
>>[24]

告白は届かないまま憧れの君の袴に散りゆく桜

切ない青春を思う歌です。時季や詠まれるモチーフから、卒業式での告白のシーンと読みました。ずっと憧れの存在だった「君」に、これがもう最後の日だからと、意を決して長年の想いを告げたのかもしれません。残念ながらその想いは届くことのない結果に終わったようですが、俗に言う「言わない後悔より言う後悔」というやつで、いつか振り返ったとき、あのとき告白した勇気を、きっと小さな誇りとして懐かしく思うはずです。下句、「君」の卒業袴に桜の花びらが散りゆく情景や、それが示唆するものが印象的で、読後感としての余白を感じる歌でした。

★良いと思った点

改めて読み返すと、作中主体は秘めた想いを告げられないまま、「憧れの君」との別れの時間を過ごしたのだと思い至りました。君はこちらの想いに気づかず、あくまで親しい友として桜を散らした(涙を流した)のかもしれません。美しくも切ない表現にため息が出ます。
>>[25]

薄桃の風に問います「散るを美と桜自身は思えてるの?」と
桜=あなた

何やらメッセージ性のある歌です。「薄桃の風」は、柔らかく優しい春らしさのイメージが薄桃色にはあるので、たとえば恋愛における内面描写とか、作中主体の心象風景と読みました。散り際まで美しいとされる桜のように、玉砕覚悟の恋に「想い続けるのは自由」と半ば陶酔している人を、「それであなたは本当に幸せなの?」と(直接は言えないけれど)心の中で何度も問うているように思えて、その人を気に掛ける健気な姿に心打たれます。あるいは「桜=あなた」は作中主体自身のことで、自問する恋愛の苦悩を描いている歌なのかもしれない、とも読みました。

★良いと思った点

韻律を意識した独特な語順や言葉遣い、特に「散るを美と」のあたりなどは、声に出して読みたい音の運びでした。内容としては、胸に刺さるフレーズで軽いジャブを入れられて、自分のことでないのに読んでドキッとさせられる詩の力を感じました。
>>[26]

春さりて形なきキミ匂へども
咲くサクラから花から根から

どことなく和歌のテイストを感じる上句。あらゆる生命が息吹く「春さりて」の、心躍る季節の始まりを予感させる措辞から一転して、二句以降は、心の裡に切なさと寂しさの風が吹き抜けるような、そんな趣を思います。「形なきキミ匂へども」の表現は、叶わぬ想いをそれでも追い続ける一途さとも読めるし、泉下の人を慕い続ける健気さとも読めるのだけれど、いずれも“想いの強さ”が真に伝わってくる情感があります。「春となり、不在のキミを感じようとするけれど、桜の花や根からの匂いだけで、余計に独りを実感しました」という具合でしょうか。切ない。

★良いと思った点

口語の現代短歌が多く詠まれる歌の席において、和歌の調べや「匂い」という五感からのアプローチが新鮮でした。特に匂いは和歌の時代に多く詠まれていて、匂いからその人を思い出す、いわゆる「プルースト現象」的な作意があったのかなと思います。
>>[27]

I can't do anythig. 地球儀に余すことなく降らせる桜

冒頭、英文からはじまるのが瀟洒な印象です。「何もできない」「どうしようもない」などと訳す感じでしょうか。“何が”は明示されないので読み手が好きに想像を膨らませることになりますが、いずれも読み解きの鍵は下句が示唆するものの解釈次第といったところ。「地球儀」は、作中主体の価値観や世界観みたいなもの、と捉えてみました。もしかすれば、他と比べて卑下してしまう一面があるのかもしれません。そこへ「余すことなく降らせる桜」。自分ではどうすることもできない問題に対する、せめてもの抗いや祈りのような繊細な思いを感じました。

★良いと思った点

思い切った上句は、ともすれば奇を衒った表現で終わってしまうところ、「地球儀」との取り合せとしての(世界共通語のグローバルな)英語と捉えれば、なかなかどうして成功していると思いました。それに何と言っても、下句の景が(心象風景だとしても)印象的。
>>[29]

桜雨 儚き命の晴れ舞台
無観客にて はらりはらりと
(選歌対象外)

能楽や歌舞伎など伝統芸能を詠まれた歌でしょうか。そちらの分野には明るくないので特定の演目を挙げるに難いですが、「桜雨」の景や「儚き命の晴れ舞台」の措辞から、散りゆく桜と人の世の無常を重ね、その刹那の舞台(命)を華やかに魅せる様式美を感じました。昨今、コロナの影響で多くの公演が無観客を余儀なくされたと聞きます。役者は一公演に魂を込めて日々稽古に励み、その志は素人目にも崇高なもの。それゆえ観客と邂逅する機会を奪われたことは、どんなにか無念でしょう。静謐の中たしかな意志をもつ「はらりはらりと」の着地に、余韻があります。

★良いと思った点

義太夫語りと三味線のリズムが聞えてきそうな、伝統としての和の世界観がしっかり根ざされた読み口が良かったです。また、何気なく配置された「にて」や「はらりはらりと」が独特な節回しの役者のセリフ然としていて、そうした部分からも歌世界に没入できました。
>>[32]

ひんやりと冷たい肌のひとを抱く千鳥ヶ淵に泣くような桜

歌全体に横たわるペーソスが印象的な世界観の歌。一読、スピッツの『冷たい頬』を想起しました。「千鳥ヶ淵」は皇居内にあるお堀で、桜の名所として有名ですね。「ひんやりと冷たい肌のひと」は普通読みすれば冷え性の人かなと思いますが、下句のフィルターを通して見ると意味深長です。それはつまり、病臥や故人を示唆しているのではという読みですが、千鳥ヶ淵の緑道沿いに戦没者墓苑があることや、「泣くような」の措辞などが、そう思わせるのかもしれません。いずれの背景であっても、泣くように咲く桜の下、大事な人を抱く切なる時間を思いました。

★良いと思った点

寂しい風が吹き渡るような読後感が、詩にすることで得られるカタルシスで良かったです。儚さと美しさは紙一重なんですねえ。直接的だけれど「泣くような」という喩えに、図らずも感情を動かされました。
ちょうど10首分を投下し終えたので、ここで一旦休憩を挟ませていただきます。
残り10首、できれば本日中に全て投下できればと思っておりますのでよろしくお願いしますm(_ _)m
それでは続きを再開します。

>>[33] ひでさん

通勤の途中でぼくについてきた桜のはなびら 電車に乗ろうか

風趣のある情景が一読してスッと入ってくる歌です。通勤の朝、電車待ちのホームで桜の花びらが作中主体の肩などに舞い降りて、そのまま一緒に電車に乗ったのか、あるいはドアが開いて乗ろうとするときに、同じタイミングで作中主体の脇から桜の花びらがひらひらと入っていったのか、いずれにせよ春の訪れを感じます。歌中で明示はされていませんが、景の雰囲気からして、朝のラッシュを過ぎた時間帯とか、乗降客の少ないローカル駅とか、ゆったりした時間経過が思われて、作中主体の心の余裕すら窺える読後感です。その日の仕事も頑張ろうと思えますね。

★良いと思った点

忙殺される毎日から、こうした心癒やされるひとこまを切り取る詩への嗅覚というか、何気ない日常の出来事を細やかに見つめ直してあげる目線が良かったです。擬人化した桜の花びらと電車に乗り合わせるときの、1字あけからの「電車に乗ろうか」があたたかい。
>>[34]

15歳、桜が咲いて震える卒業式の時限爆弾

涙、涙の卒業式だったんでしょうね。「15歳」という年頃は、折に触れて感じるものがある時期なのかもしれません。石川啄木、然り。尾崎豊、然り。アンジェラ・アキ、然り。まさに“青春時代”というやつです。梢に付いた桜の蕾が歳月を経て花咲かせて、早春の風に震えるように靡いている。同じように、苦楽をともにした級友たちとの歳月を経て、それぞれの進路へ巣立ってゆくまだ若い彼ら。支えてくれた友達や家族、先生方とのこれまでが走馬灯のように思い出され、感情の臨界点を迎えようとしていることが、「震える」や「時限爆弾」の表現から伝わります。

★良いと思った点

たとえば18歳とかではなく「15歳」としたところが妙にリアルで、加えて昨今の情勢では、コロナの影響を諸に受けた世代のこともあって、感動もひとしおだったのが想像されます。「震える」の字足らずや「時限爆弾」という独特な喩えが目を引きました。
>>[36]

出さないで終わった手紙がありますね。君には桜を処方しましょう

甘酸っぱい失恋。想いをしたためた手紙があって、畢竟、勇気が出せず想い人へ渡せなかった。「恋患い」という言葉があるように、それを抑えるには処方薬が必要なんだけれど、処方箋代わりの手紙が「出せないで終わった」ことで、不治の病となったかに見えた。その上での「桜を処方」なので、本作において「桜」がどれだけの意味を持たせられているかが生命線になり得ると思いました(個人的には、中々の象徴性だと思いました)。「君」という親しみある人称は、近しい人を指す他に、作中主体が自らの内面に対して語りかけている、激励の歌とも読めました。

★良いと思った点

「恋」という言葉を直截に詠まずに相聞を匂わせるような言葉の運びが、まず巧いなと思いました。また、「出す」「手紙」「処方」という縁語で創り上げる世界観や、「桜を処方」という表現が好みでした。
>>[42]

華やぎは吉野や枝垂れに及ばずも峠の道の山桜や佳し

風流な歌です。景勝地などで観られる染井吉野や枝垂れ桜にはたしかに華があって、多くの日本人を魅了してくれていますね。薄ピンクの大ぶりな花を付ける染井吉野はまさに桜の王道ですし、一斉に花のシャワーを浴びせる枝垂れ桜は圧巻もの。それらに比べるとどうしても派手さや華やかさでは及ばないものの、山野に自生する山桜には素朴な美しさがあるように思います。実際、江戸時代までは花見と言えば山桜で、和歌に詠まれることも多く、古来より親しまれてきた原種。ですので、侘しい峠の道にひっそり咲く山桜の景に、得も言われぬ味わい深さを覚えました。

★良いと思った点

「桜」と言えば染井吉野や枝垂れ桜が詠まれがちであるところ、山桜に焦点を当てたのが純正な和の心という感じがして、好感でした。また、モチーフの魅力を最大限に活かす流麗な古語の運び、「や」の詠嘆、「佳」の字の「佳し」などが素敵でした。
>>[44]

冬服を押し込め想う春の日の桜を踏んで踏みにじられて

人間関係の軋轢による心痛を暗喩的に詠まれた歌と解します。夜の長い冬は塞ぐ気持の喩えで、堪え忍ぶ冬服を身に纏っていたけれど、やっとそれを脱ぎ捨てた。「仕舞う」でなく「押し込め」としたところに、決心か自棄か、何かしら心の動きが読み取れそう。ともあれ一歩踏み出した作中主体が想うのは、三句以降のこと。桜は無垢な心の象徴でしょうか。今踏んでいる桜と、踏みにじられた過日の自分の姿とを重ね合わせているのかもしれません。それでも惨めな気持の中に春の兆しが灯ることを、季節が廻ればまた春服に袖を通す日が来ることを、願いたい歌でした。

★良いと思った点

「冬服を押し込める」「桜を踏む」という具体的な情景が詠まれているにも関わらず、どこか他に含意があるような手触りの、不思議な感覚の歌で、そこがミステリアスな魅力に思いました。「踏んで踏みにじられて」という、能動・受動のカットの切り替りが痛切でした。
>>[49]

散るためのかたちをしてる 雨ひとつぶんのてのひら、さくらひとひら

花散らしの雨に遭った桜の花びらに焦点を当てた歌、と読みました。ひとしずくの雨を受ける器としての手のひら、そのイメージに、雨雫を受ける「さくらひとひら」を重ね合わせて見ているのでしょうか。それは儚いイメージで、「散るためのかたち」との形容がどこかペーソスを思わせます。散りゆく桜を惜しむ和の心と読めますが、穿った見方(誤用)をすれば、たとえば、「最初から叶わないと知りながらする恋を、散る桜の情景に託した歌」とも読めそうです。そうするとこの「雨ひとつ」は、作中主体の瞳から自然とこぼれ落ちた、涙なのかもしれません。

★良いと思った点

生きるために咲いてきた花を「散るためのかたち」と表したのが、無常観や儚い想いを言い得ていて、胸が締め付けられます。また、「てのひら」と「さくらひとひら」の韻や、イメージがオーバーラップするところに、この歌の風合いが感じられて、良かったです。
>>[50]

晴れ女のきみ喪ひしこの街に桜散らしの長雨降りぬ

叙情的な雰囲気のある挽歌です。「晴れ女」という縁起の良いジンクスを持っていた女性が、かつてこの街に作中主体とともに生きていた。「きみ」は、恋人とも読めるし、妻、吾子、姉、妹、友人など、読み手次第で歌の色合いも違ってきそう。時季は春。桜の開花宣言から街が華やぎを醸して、人々が浮き足立っている最中。大切に想う人を喪った作中主体は、そんな街に馴染めずにいるのでしょう。やがてこの哀しみを代弁してくれるかのように桜散らしの長雨が降って、雨音だけが支配する静寂のなか、窓辺で遠い目をして彼女との想い出に耽る姿が思われました。

★良いと思った点

「晴れ女」と「桜散らしの長雨」が対比構造をとっていることで、歌の奥行き・登場人物の背景の深みが生まれたように思います。「喪」の字や、文語・旧かな表記などのこだわりも、歌の世界観に合っていて良かったです。「降りぬ」だからこその余情も◎でした。
>>[53]

恋人はひとり散歩にでた夜の桜吹雪に遭難したの

恋人との別れでしょうか。死期が近づくと飼い主のもとを去ると言われる猫の行動原理を彷彿としますが、それで言うと、恋人はこの恋の死を予感していたとする見方には、図らずも詩情があります。夜の桜吹雪に姿を暗ます幻想的な景が、にわかに立ち上がってきました。いわゆる“蒸発”というかたちでの別れには、残された者の心残りがあって、伝えたかった言葉だけが澱のように静かに降り積もってゆく。そうした余情が言外に匂い立つような読後感というか、どうしても後ろ髪を引かれるような思いの襞がこの歌にはあるように感じられました。

★良いと思った点

「桜吹雪」に「遭難」という言い回しがセンス以外の何物でもないと思わせられるところが、まず良かったです。そして下句の“歌舞伎”感というか、粋でいて儚い景が(同時に作中主体の感傷も)立ち上がってくるフレーズが、とても印象に残ります。
>>[54]

小雨降る川面の桜思い出は心のうちにつねに鮮らし

桜流しの小雨降る川一面に、真白い花筏の美しい景が立ち上がってきました。その景を眺めながら、作中主体の心の裡には今もなお鮮明に思い出される大切な記憶があるのでしょう。それが何かは歌中では語られないので読み手に委ねられますが、上述した「川面の桜」の景のイメージの提示から、清白で尊い思い出だったのではないかということが読み取れます。二句切れで「情景+心情」という手本のような型が、歌の佇まいを端正にみせていて、歌に詠まれる情景や文語調のやわらかな言葉の運びも相まって、しみじみとした趣が感じられる歌だと思いました。

★良いと思った点

これぞ古き良き日本の原風景、と思える風流な味わい、読み心地。何某かの惜別の念を抱かせる桜流しの情景が、下句の心情とリンクしてゆく様が素敵です。「鮮らし」という言葉は初めて知りましたが、雅やかな響きがあります。
>>[57]

門出なる気持ちに満ちてた桜の木その眩しさが今は遠くて

何か人生の節目となる出来事があった春(時節柄、入学や入社など新しい生活と読みました)を思い返しながら、キラキラ輝いていた頃の自分が今では遠くに感じられる、侘しさや空しさを詠まれた歌と解します。考えてみれば、咲き誇る桜の眩しさを我々は毎年浴びているのに、若い頃は(自分も同じくらい眩しい存在だから)全く気にせず、歳を重ねるにつれ引け目を感じるようになるというのは、心理学的に興味深い現象に思えます。社会に出てある程度の景色を見てきた、代わり映えのない今だからこそ、何か新しい趣味や発見をして再び眩しくありたいものですね。

★良いと思った点

昔と今の対比、そして、眩しさと冴えなさの対比が、より如実に侘しさや空しさを表現できていて、その意味では「門出なる〜桜の木」が象徴的によく効いた道具立てでした。また、「遠くて」の言いさし表現が、本当に遠くて途方に暮れている感じがして、良かったです。
以上、20首への拙い感想を述べさせていただきました。
読み間違いなどにはご容赦いただき、後ほどわいがやでご教示いただけると幸いです。

それでは以上を踏まえ、これより選歌に移りますので、
今少しお待ちいただけますよう、よろしくお願いいたします。
長らくお待たせしてしまってホントすみません。

どのお歌も素敵ポイントがあって実質お気に入りは全てなんですが、
(おべんちゃらでなくマジで)なので今回随分と悩みに悩みました。

その中から五首選をまずは挙げさせていただきます。

■満開の桜あなたの肩越しに見上げた時に止まり生きる(奈央さん)

⇒ あなたの肩越しに満開の桜を見上げる、という構図がドラマで響きました。

■告白は届かないまま憧れの君の袴に散りゆく桜(笹本 筆太夫さん)

⇒ 君の袴に桜が散りゆく景に美しい含蓄があって、印象的でした。

■I can't do anythig. 地球儀に余すことなく降らせる桜(りなさん)

⇒ 作中主体のナイーヴな内面に迫る、地球儀に桜を降らせる心象風景。

■ひんやりと冷たい肌のひとを抱く千鳥ヶ淵に泣くような桜(りりる♪さん)

⇒ しだれ感や淡い色合い、はらはらという散り様を思う「泣くような桜」の措辞。

■散るためのかたちをしてる 雨ひとつぶんのてのひら、さくらひとひら(おこげさん)

⇒ あえかな桜を「散るためのかたち」と形容し、そこに自身を重ねた繊細さ。
【次点】

>>[32] りりる♪さん

ひんやりと冷たい肌のひとを抱く千鳥ヶ淵に泣くような桜

歌の底流にある寂寥感や「ひんやりと冷たい」温度感が、得も言われぬ感傷を催させるのか、儚くも美しい景に魅せられました。
【最優秀】

>>[49] おこげさん

散るためのかたちをしてる 雨ひとつぶんのてのひら、さくらひとひら

色々と読み手の想像をかき立てられ、読み解きの余地のある歌だったと思います。

桜の散り様に作中主体自身の姿を投影しているのだと読んでいるのですが、
「散る」はいわゆる人生や恋、受験など、何かの終わりを示唆しているとして、
桜の花びらを見て「散るためのかたちをしてる」と思うに至る経験が何かあるわけですね。
そこへ思いを馳せられることがもう詩だなと。

雨粒を受ける「さくらひとひら」を「てのひら」に喩え、そのイメージがオーバーラップすることで、自身の何か儚い経験を振り返るきっかけとなる。
そうした振り返る時間を与えてくれる歌というのは、追体験的に読むからこそ沁みるものがありました。


ということで、
おこげさん最優秀おめでとうございます。

と思ったら、この下書きを書いている間に別トピで最優秀に選出されていたんですね。
2トピかけもちとなってしまい、ご負担をお掛けしてすみませんが、
もしよろしければこのバトンをお受け取りいただければ幸いです。
さて。
本トピックを長らく停滞させてしまって申し訳ありませんでした。
言い訳になりますが、新年度や選挙のこの時期、仕事柄忙しく、
そんな中、家人が病に臥してしまったことで思うように時間が取れない状況で。

ただ、個人的にこのお題でバトンを繋ぎたいと思っていたので、
曲りなりにも終えられて少しホッとしています。

読解力の乏しい感想で、充分に作者さまの意図を汲めていないと思いますので、
よろしければ皆さんこの後のわいがやでそれぞれご感想などお聞かせいただければと幸いです。

それでは、ご静聴ありがとうございました。
@貴さん講評お疲れさまでした。
お忙しい時期にご家族様のお加減のよくない中
心身ともに大変でしたでしょう。
丁寧な一つひとつの講評ありがとうございます。
@貴さんのお名前通りの温かさを感じました。
五首選にもいれていただき嬉しかったです。
桜は特別な花ですよね。今年も桜が見られて、幸せだなと感じました。
ご家族様の回復を心より願っております。
>>[84]

選歌講評ありがとうございました!

人は経験したことしか語れないとするのなら、@貴さんの広くつぶさにやさしく日々の物事を感じとり、機微に感じ入る眼差しがあってはじめてこれほどまでに詩性ゆたかに歌の読み幅を掬い取り、読み取ることができるのだなといつも感動しています。

個別の感想や御礼はまた後ほど時間作りますので、取り急ぎバトン拝受と選んでいただいた御礼まで晴れ
>>[85]
大変ななか、選歌・講評ありがとうございました。(このコメントのお返事は大丈夫です)

こちらでも鰯トピと同じように英語を取り入れてみて、楽しく作歌できました。5首選に選んでいただきありがとうございます。

>>おこげさん
こちらでも最優秀おめでとうございます!
優しいお歌でわたしもとても好きでした。

お気に入りのお歌は
おこげさん、りりる♪さん、蜜柑さんのお歌でした。

またこちらでもイイネをりりるさんありがとうございます!励みになります。
@貴さん、講評・選歌おつかれさまでした。何度読んでも読み応えたっぷりで博識で、すごいです。
私の歌では、「木」のトピの歌の続きです。

おこげさん、最優秀おめでとうございます。
散るためのかたちという表現、下の句の「ら」の音の韻律、とても素敵です。私も一番好きなお歌でした。

お気に入りは、おこげさん、りりる♪さん、ぼんぼりさん、蜜柑さんです。
>>[84]

大変な状況の中でのご講評・選歌、本当にお疲れ様でした!
大変な状況の中でもご講評、選歌していただけたので、いつもの@貴さんの深く味わいのあるご講評を読ませていただくことができ、とても嬉しかったです。今回のご講評でもやはり 多くの気づき、発見を教えていただくことができました。
拙歌にも 心のこもったご講評をいただき、ありがとうございました。

お気に入りは、奈央さん、はしるさん、りりる♪さん、蜜柑さん、小竹陽さんでした。
>>[49]

最優秀おめでとうございました!

散るためのかたちをしてる 雨ひとつぶんのてのひら、さくらひとひら

一読、詩だなぁと感じました。言葉が放つ空気、匂いが全て統一されているように感じました。
てのひらとひとひらの韻、そして桜の花びらが舞い散るのを連想させる「ひら」。
「散るためのかたち」「雨ひとつぶん」どちらも豊かな表現ですね。
素敵な短歌を読ませていただき、ありがとうございました!
>>[86]
ご投稿と労いのお言葉ありがとうございました桜
少しずつ時間を見つけては短歌点に参加できるようにはしたいなと思っております。
冗長なだけの拙文にそのように言っていただけて、嬉しい限りです(^^)

奈央さんのお歌、
今が盛りとばかりに咲く桜の生命感と、
「あなた」と共に歩む道・人生観が重なって見えて、
自分もしゃんと前を向いていこうと思えました。
>>[87]

ご投稿並びにバトンのお受取りありがとうございました桜

いやいやいや。
講評をひとつの読み物レベルにまで昇華されるあのおこげさんから、そのようなお言葉をいただけるのはホント恐縮の限りです(;´Д`)
自分のはただ長いだけ、ちょっとそれっぽい言葉を遣っているけれど全然読み解きのレベルの低い、見かけ倒しのものですから。。

でも、そのように労っていただいている[87]のお言葉自体がもう既に詩文っぽくて、何だかそちらの方に惚れ惚れしてしまいました(笑)

おこげさんのお歌、
差し替え前のピクセルの方も好きでしたが、
「散るためのかたち」という見切りが後半句に良い影響を与えて、
具体的な作中主体の景は見えないまでも、それが逆に読み手それぞれの解釈に落とし込める、受け皿の広さが物寂しい情緒とリンクして好きでした。
>>[88]

ご投稿と労いのお言葉ありがとうございました桜
あれから少し落ち着いた時間が取れましたので、(このコメントのお返事は大丈夫です)とのご配慮をいただきましたが、(大丈夫)が大丈夫です(笑)

りなさんのお歌、
のっけから英語はやっぱりインパクトありましたね〜。
自分も作歌の際は色んな角度での表記・表現を考えてみたりするのですが、実際詠んでみると大抵けれんみのある凡作になるんですよね。
そこを本作は、下句の含蓄のある心象風景?で補完されているようで、バランスが良かったです。綺麗で印象的な景ですし。

最優秀祝辞とお気に入りのご提示も、ありがとうございます(^^)
>>[89]

ご投稿ありがとうございました桜
いやいや、識らないことばかりなので調べて取り繕っているだけです(^_^;)
でもありがとうございます、励みになります◎

美結さんのお歌、
やはり「木」の続きでしたか〜。
そうじゃないかなあと思いつつ、連作のような物語性を感じて、しかも苗字を植物の育成⇒家族の繁栄に結びつける、独自性のアイデアと感性が心地好いなあと思っておりました。
家族って大事だよなあと感じ入る読後感が良かったですよね。

最優秀祝辞とお気に入りのご提示も、ありがとうございました。
>>[90]

ご投稿と労いのお言葉をありがとうございました桜
今回の期間をとおして、人とのふれあいの大切さを改めて学んだのですが、それを踏まえて今一度ご投稿いただいた皆さんのお歌に内在する「私」の機微を思うと、それぞれのより素敵な魅力が汲み取れた気がして、詠まれたことに今一度感謝したい心持でした。

ひでさんのお歌、
全てにおいてやわらかく優しい世界観というか、
「ぼく」も「ついてきた」も「はなびら」もひらがな表記であることがひとつの要因でもあるのでしょうが、忙しい日常の中でついつい見落としてしまいがちな、あるいは見ていても疲弊した心じゃ関心にすら映らない物事にも、愛おしく目を向けてあげる・手を差し伸べてあげる視線が好きな世界観でした。

お気に入りのご提示と、[91]の最優秀祝辞のコメントもありがとうございました。
>>[88]

僕の歌にもコメントを寄せてくださりありがとうございます晴れそうなんです、この歌はとても優しいやつなんですが、優しさは自覚しない自己犠牲なのでとても寂しいのです。

お気に入りは
無力な自分が神心地になるけど、やっぱり虚しい余韻のあるりなさんのお歌
儚く切ない、硬派な歌い振りの笹本筆太夫さんのお歌
でした!


>>[89]

一番好きと言っていただけて嬉しいです、ありがとうございます晴れ
家のベランダから目黒川の桜が見えるのですが、、ずっと桜のことを眺めて考えてたら、満開がピークだと喜ぶのは僕らだけで、散っていく桜が世界に次々とひとり立ちしていくように思えて、そこを主役にして歌いたいと思い生まれた初句でした桜

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