短歌点コミュの短歌点856∆お題「涙」

トピック「燕」より、バトンを受けとりました。お題は「涙」でお願いします。この漢字を読み込んで下さい。

　…それを聞いているとわけてもなく胸がせまって向島の家々の灯がいろんな形をして海へ映って、それがまたどれも涙ぐんで見えるのでした。竹久夢二「夏祭の夜」
　　
　「おそらくはつひに視ざらむみづからの骨ありて涙　骨」(涙　骨にルビ　オス•ラクリマーレ)塚本邦雄

　「送りおきて帰りし野辺の朝露を袖にうつすは涙なりけり」　　　　　　　　　　西行

　「しまうまが右の涙腺通過して青信号に眠ってしまう」　　　　　　　　　　　笹井宏之
　
　ルール
1,出題者がお題を出します。
2,お題は何でもありで面白そうなもの。50題以上まえなら既出もあり。
3,出題者じゃないひとはお題を詠み込んだ短歌を投じます。
4,.一週間以降、出題者が独断で、最も素晴らしいと思った短歌をひとつ、選び、その理由を添えて書き込みます。
5,.最優秀短歌をつくったひとが次のお題を出します。(新トピックの番号は「自分が選ばれたトピック番号」+5)
6,その後はみんなでワイガヤ感想を交わします。
　+特定の単語、文字列を指定して下さい。

コメント(55)

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[16] mixiユーザー 07月03日 19:25

「箱にねむる緑の涙ふる頃に白手袋の訪れるまで」

雛人形か五月人形か、手がかりは「みどりの涙」。三月の季語「菜種梅雨」の優しい雨でもあるような、五月「若葉」でもあるような。
　いづれにしろ、ひらがなで開いた「みどりの涙」は人形の目線で描かれたこととあわせて、日常から異世界へうまく誘っています。
　箱のふたが開けられ、青葉をとうしたやさしい外光が入り込み、白手袋をはめた巨大な手が、自分を抱き上げようと伸びてくる。そんな体験をしました。

[17] mixiユーザー 07月04日 12:14

「この星に水はいつまであるだろう砂と涙の見分けがつかぬ」
　歌意はわかりやすく、環境問題は比喩で、おそらく自己の存在への不安を歌っているのだろうと理解
しました。その理由は長くなるし、あまり大事でないので略。
　大変現代的な不安をテーマにし、下句の、涙で砂漠の風景がぼやけ、なみだと溶け合っていく様は、美しいです。
　ここからが難儀なのですが、抱いてしまった疑問は、解いておきたい。
　嘆きからはじまり、嘆きで終わる。ひとり言ではない、他者に読ませる表現として、何か引っかかりを覚えました。こだわらないひとは、「いい歌だけど歌意が弱いね」でスルーするかもですが。

[18] mixiユーザー 07月04日 12:39

続)「短歌と嘆き」
足引きの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかもねむ　　　　　柿本人麻呂
　さびしーい！

玉の緖よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする　　　　　武子内親王
　げんかーい！死にたーい！

　　万葉集の嘆き歌は、　強い感情がある。
震災詠　となりますと、言葉を失う大きすぎる体験は、事実をそのまま言葉にしていく歌になり、比喩や感情表現には、禁欲的になる。ﾊﾞｲ永田和宏
　「死ねる子を箱におさめて親の名をねんごろに書きて路に捨ててあり」空田空穂

で、たどりついたのが、現代短歌。
　「サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい」　　穂村弘
　「誰にもどこにもぶつけようのない感情をぶつける対象を見出した」ﾊﾞｲ新井貴彦
　嘆きをそのまま歌うのではなく、黙って聞いてくれる対象を置いたことで、この嘆き歌は、成立しているのがわかります。
　
　そして投稿いただいた作品ですが、短歌武装解除で有名な「,棒立ち感」「現在への嫌悪」という現代短歌の新しいあり様に、結びつきました。
　この考えは、わたしは、知ってはいましたが、未だに未消化で、うまく説明できません。
　きわめて個人的なつぶやきを、あえて、フラットに、歌う。強い物語はないが、不思議な詩的世界に、読むひとをときに呑みこむ、そういった有り様です。　　

[19] mixiユーザー 07月07日 15:36

「涙壺買って帰りて窓際に置けば燕がツィーッと飛ぶ」

　上句と下句で世界観が引き裂かれていて、燕の尾が刃物のように何かを切り裂く様がリアルでした。　
　上句、誰にも迷惑はかけない、でも自分ひとりでは、かなしみで張り裂けてしまいそう。お気に入りのきれいな涙壺を買って、優しい誰かの変わりに、思いを受けとめてもらいましょう。だってわたしは大人なんだから。
　下句、だけど本当は、いちばん近くにいるひとにだけは、わかってくれるなら、どこの誰にだっていい、つらい気持ちをわかってほしい。他人を巻き込んで、ともに、苦しんでほしい。
　こう葛藤しながらも、主体はやはり涙を見せず穏やかに生きていくのでしょう。この意志ある感じが涙壺という道具だて、とともに歌の魅力となっています。

[20] mixiユーザー 07月07日 16:05

「ただのみずじゃんねこれらの涙などシロツメクサの露とおなじの」　
　
　ひらがな、漢字、カタカナの使い分けが巧みで、短詩形文学の魅力と可能性を教えてくれます。
　泣いているのは、主体なのに生々しい情動や葛藤は一切語られない。壊れそうな自分が怖く、健気に自分に冷静になれよ、と呼びかけているのか。下句の「シロツメクサの露」がまた、何の葛藤もなく素直にきれいなんですよね。　
　これは、離人感なのかな。痛みから自分を守る分厚い無色透明の層に包まれて、見えるけど感じない。
　離人症という病は、それに苦痛を感じはじめると、治癒への第一歩。ただその道のりは、護られていた痛みからの防御装置を外していく作業なので、すごくつらいの。長くかかるしね。

　さらっと歌評が書けず申し訳ありません。んんん、ひらがなの使い方からすると、やっぱり、たいしたことない、たいしたことない、て、冷静になろうと、自分に言い聞かせてる歌なのかな。下句からすると、悪い涙ではないみたいで、うれし泣きして照れをごまかそうとしてる、そっちの解釈もあるのかなぁ。　
　涙、心が揺れている非日常と、乾いた冷静さが両立している。
　竹久夢二には描けない、現代アートな歌！

[21] mixiユーザー 07月07日 18:10

「どうしよう涙が出ない母が死にアクリル絵の具みたいな空だ」
　
　短歌界のヒットメーカー、とでも呼びたくなるこの愛唱性の高さよ。大人にははかり知れない、子どもの後悔と絶望を楽しく歌った「パパのクラリネットを壊しちゃった」が映画のサントラのように、脳内になりひびきました。
　冒頭のセリフから、読者を主体の置かれた非日常に巻き込み、最後までスピードがつきない。
　アクリル絵の具の比喩が端的に主体の心情と苦しみを物語っています。鮮やかだけど、のっぺりして、あんなのをぺたぺた塗られたら、窒息しそうですもんね、心が。

　主体が泣くことを阻むものは、何か。これは読者がそれぞれ自分の体験から想像すればよい。わかっているのは、人間の心は、複雑でやっかいで、安心感や赦し、受け入れなどたくさんの支えがないと、泣くことすら、叶わない。　
　自分だけじゃ、なかったんだ、わかってくれるひとがいた。うれしー。というカタルシス。芸術表現が人間社会に無くてはならないのは、これではないでしょうか。
　
　

[23] mixiユーザー 07月07日 21:00

>>[22] 　ご質問、ありがとうございます。わかりやすく、書きますと、ぼんやりとした嘆きだけの歌は、読んでいて、作品以前のまだ、つぶやきではないかしら、と考えました。いち読者として、もう少し強い感情なり、人間関係なりが欲しかった、という読者のわがままです。
　で、調べたところ、いまポピュラーな、現代短歌のもっとも新しい表現方法だったんだなあ、と理解しました。引っかかりは、解けました。

[24] mixiユーザー 07月07日 21:12

ええと、選歌です。一、完成度。ニ、わたしがすごく好きだったこと。(一般的ではない)三、すごいなぁ、どうやったら、こんなに巧みに歌えるように、なりますか？と教えを乞いたくなる作品。(本当に、教えてください(/_;))

「箱にねむるみどりの涙ふる頃に白手袋の訪れるまで」　　　感想の欄では、漢字とひらがなの表記ミスがあり、申し訳ありませんでした。「ねむるみどりの涙ふる」　ひと流れで、やわらかさをはじめ、五感に訴えてきました。異世界へと。

　あと三首あるのですが、申しわけありません。疲れて頭が働かないので、今日はここまでにさせて下さい。

[25] mixiユーザー 07月08日 06:47

上のコメントですが、一、ニ、三、のみっつを満たした作品を選びました。
　ニの、一般的ではない、は、誤解がありますね。他の人の意見ではなく、自分が好きだと思った、ということ。
　短歌点は、システム的に多様な意見が混ざりにくいから、ワイガヤでみなさん、よろしくお願いします。何とぞ。

[28] mixiユーザー 07月08日 21:23

え、えと、すみませんが、選歌を終わらせます。

最終的に四首に絞り込み。

のこり三首が

「涙壺買って帰りて窓際に置けば燕がツィーッと飛ぶ」　　　　竹久夢二賞　夢二の生きた時代は、涙の治癒力を自ずと誘う、細やかな人間関係、自然環境がありました。現代は、どうだろう、とわたしが抱いた疑問に直接答えてくれたのは、このお歌でした。
　無駄な言葉が何ひとつなく、リズム、構成力もきちんと、創られた作品だと思います。

[29] mixiユーザー 07月08日 21:32

　「ただのみずじゃんねこれらの涙などシロツメクサの露とおなじの」　　わかりやすい表記でありながら、理解しようとすると、あえての消された情報が多く、そこが不可思議な魅力をたたえています。わからなくても、ひとの心に何かを残す歌って、あるんだなぁと知りました。わたしは、わかんないと、ぽいっとしてしまう人間なんですが。種子のようにいつか根を張りだすような、心の糧になる、謎を残す歌かぁ。
　しかし、これは他の方の、歌評も聴きたいですね。もちろん歌人自身のも。短歌点で聞けなかったら、持ちあるいて、歌人さんに出会うたびに聴いてみよう。

　　　　　　フランツ・カフカ賞！

[30] mixiユーザー 07月08日 21:35

上のこめ、歌人自身の→歌人さん自身の

失礼しました。

[31] mixiユーザー 07月08日 21:48

　「どうしよう涙が出ない母が死にアクリル絵の具みたいな空だ」　
　短歌、芸術表現とは、声なき声にかたちと光りを与え、世の中に実在させるもの。その実体が創り出す影法師は行く先々で、声を奪われ、存在を無き者にされてきたものたちに、言葉を与える。心をあたえる、考え、意志する力を与える。とわたしは、理解しています。
　自分だけじゃなかったんだ、よかたー。こう、思わせる、大衆性(わかりやすさ)、カタルシス(治癒力)愛唱性に敬意を払い、こちらの作品にバトンを託したいと思います。このリレーが末永く続きますように。
　

[32] mixiユーザー 07月08日 21:49

みなさん、ご参加ありがとうございました。毎回、遂行不足の駄文でごめんなさい。

[33] mixiユーザー 07月08日 21:52

>>[27] 　…そうでしたか。投稿ありがとうございました。大変勉強になりました。感謝しています。読みが浅くてごめんなさい。

[38] mixiユーザー 07月08日 22:36

>>[31]

ありがとうございます！
正直恐縮しています。
でもとても嬉しいです！
今、電車に乗っています。
新しいお題は明日出そうと思っています。
みなさんよろしくお願い致します！

[47] mixiユーザー 07月10日 07:03

>>[44] 　こんにちわ。感想ありがとう。素直に読めば、何の謎もなく、素直なかなしみをシロツメクサの露にたくしたのかなあ。と思えてきました。
　素朴な表現なんですが、慎重に冷静につくられていますよね。どうしても白い壁には陰影が生まれるように、謎がかくされてる気がしてしまったのです。

[53] mixiユーザー 09月22日 14:03

海の鳴き声の貝殻集めてる
その夏の日の静けさを知り

[54] mixiユーザー 10月07日 00:45

>>[15]
選歌・評、お疲れ様でした。
拙歌への丁寧な評ありがとうございました。

コメントをしたいしたいと思いつつ、ずいぶん間延びしてしまい、本当にすみません。
何度か書こうとしたものの、踏ん切りがつかず、今日になってしまいりました。

祖母の死に涙の出ない我を責むもう会えないと母は泣くのに

> なぜ自分は泣けないのか、自分は冷たい人間なのか、苦しんでいます。
りりるさん♪の読みは的確でした。
これは、七歳の時の記憶です。葬式に参加すると、周りでたくさんの人が泣いていました。棺で眠る祖母に水をあげたりしながら、別れの儀式が進みますが、涙は出そうにありません。私も泣かないといけないと思って、目を何度も強くつぶったりもするのですが、遂に涙は出ませんでした。父方の祖母の葬式なので、母にとっては義母ですが、喪服に身を包み、ハンカチで目を拭いていたのを覚えています。

祖母の一番の記憶は手づくりのぼた餅です。彼岸の頃には大抵、手作りしたのを出してｊｙれました。あんこに包まれたもちが素朴でご飯粒の形を残しつつも、粘り気は十分にあり、とても美味しかったのを憶えています。氷砂糖が好きでよく舐めていました。訪れた時には必ず分けてくれました。

そんな思い出があるから、なおのこと、私は自然に泣けるものだと思っていました。でも、どうにも涙は出ません。その時から、自分は大切な人の死に涙の出ない冷たい人間だと思い込んでしまいました。高校時代以降の母方の祖父母の死も、たくさんの思い出があるのに泣けませんでした。そして、葬式があるたび、不安と自責の念を味わっていました。そのことを誰にも言えずに、否、むしろ、隠さなくてはいけないこととして、自分の内側に閉じ込め続けたのです。

> かなしむべき場面でかなしみを実感できない、
> そんなことが人に起こるのはなぜか
結局のところ、そうなる理由は今でもよくわかっていません。
呪縛が解け始めたのは、成人後に小津安二郎監督の映画『東京物語』を観てからです。詳しい内容は映画を観て欲しいのですが、一番たくさん泣いた人が故人を一番大切にしていた訳ではないし、人それぞれの看取り方、見送り方があっていいのだと思うきっかけになりました。それ以前のような、泣けないことへの不安やプレッシャーはずいぶんと和らいだのを憶えています。

それでも、祖父母の死に泣けなかった私は、近づいている母の最期に果たして泣くのだろうかと気になっています。これまでにも弱り切った身体でありながら、食事の際に看護士さんに「あ～ん」とうながされると、ぱかっと口を大きく開けて食べさせてもらったのを見て、食べたい気持ちが生きたいの意思表示に思え、目に涙がたまったことがありました。言葉を話すことが難しくなった頃に、目と目とが合い、じっと見つめ合った時には、私も母も目に涙が浮かんでいました。それでも、最後の時に泣けるかどうかの不安は残っています。

今日も母の病院へ見舞いに行きました。でも、意思疎通ができたとは言えない反応のままです。ただ、少し前より熱は下がり、食事もできているとのこと。明日（既に今日ですが）も見舞いと、医師の説明を聞きに病院に行ってきます。まだ完全に解けたわけではない呪縛をまとったままで、どんな風に説明を受け止めるのか、私なりに誠実に聞いてきたいと思っています。

短歌以外の内容が多く長文になってしまいましたが、最後まで読んいただき、ありがとうございました。

[55] mixiユーザー 10月07日 14:49

　>>[54] ごじょうさん　貴重な創作秘話を、ありがとうございます。結社に入ると毎月かなりの数の短歌を読むことになりますが、みな、ひとりひとりの二度とない人生の歌なんですよね。
　大切なのは、創る自分は、心に留まった、「歌いたい」と思う対象を丁寧に見つめ、描写すること。
　読者としての自分は、作品の描写を丁寧に理解し、その歌人さんの一回限りの人生の体験を、自分なりに体験しようとすること。だと、ようやく、わかってきました。投稿、コメント、ありがとうございました。

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