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短歌点コミュの短歌点1122△お題「馬」

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クンタ・キンテさんの1117△お題「意訳」からバトンを受け取りました、りりるです。

お題は「 馬」でお願いします。移動の手段でもあり、心通わせるパートナーでもあり、食料でもあり、ギャンブルの対象でもあり、ゴディバチョコレートのアイコンの馬に乗る女性は、伝説というか史実があります。絵画でも愛されるモチーフですね。馬という意味であれば、漢字カタカナひらがな英語他OKです。〆切は一月後。よろしくお願いします。


馬を洗はば馬のたましい冴ゆるまで人戀はば人あやむるこころ
        塚本邦雄
あたらしい馬糞ありて朝けより日のくるるまで踏むものなし
        斎藤茂吉
子を乗せて木馬しづかに沈むときこの子さへ死ぬのかと思ひき
        大辻隆弘
手のひらにシャガールの馬かけてきて血溜まりをいま草原に変える     拙歌

ルール
1出題者がお題を出します。
2お題は何でもありで、面白そうなもの。50題以上に出されたものであれば、既出もOK。
3トピック本文に、「前回の出題者名」「前回のお題ワード」を明記して下さい。(例○○さんの「▲▲」というお題からバトンをうけとりました。)
4出題者じゃない人はお題を詠み込んだ短歌を書き込みます。(一人一首)
5一週間以降出題者が(独断で)最も素晴らしいと思った短歌を、一つ選び、その理由も書きます。
6次のお題は最優秀短歌をつくった人が出します。(新トピックの番号は「自分が選ばれたトピック番号+5」)
7その後はみんなでワイワイガヤガヤ感想を交わします。
※2012年4/17一部改定(基本ルールに「特定の単語、文字列を規定)+加筆。管理人ツトム
※2022年3/9一部改定(ルールの3番を加筆。以前の3番を4番に、以下同じく移動)管理人とみいえひろこ

コメント(68)

し、締めます。ちゃんちゃん。ここまでね。
とぴをとめていて申し訳ありません。汗。次の(土)まで時間ください(⁠+⁠_⁠+⁠)
>>[1]

Kの韻のつらなりが、愛唱性を高めています。誰にも言ってはならない、ほどの秘密を抱えるときひとは、日常の人間関係から断ち切られ、孤独になります。
馬は繊細な生き物で有名ですね。女主人が殺人を犯し、まわりは誰も彼女の変化に気がつかなかったのに彼女の愛馬だけは、それ以降、彼女を乗せるのを暴れて嫌がった、という話しがあります。

「夜と星 水路を走る少女らの傍らで血を流す青馬」安井高志 「サトゥルヌス菓子店」コールサック社




>>[5]  草原という遠景を置き、馬の嘶きという美しい音を置く。われおもうきみをあいする、の上句に色彩と動きを与えて、成功。

「空の青海のあおさのその間サーフボードの君を見つめる」俵万智「サラダ記念日」河出文庫
>>[7]  民族学のエピソードですが、蒸気機関車が日本に取り入れられたころ、やたらたぬきと競争する話しが語られたそうです。そうやってひとは人知を越える大きな何かを理解し、自分たちなりの文化の文脈で理解しようとしたのてしょう、と。
短歌の形式をとってはいるけれど、思考のつぶやきにとどまっている。歌にするには、その自分なりのカルチャーでいちど事実を解体し、受けたショックやおののきなどを物語ることではないかな、と思いました。

ですが、連作のなかの一首であれば、世界観を作るための歌としてありだと思います。
>>[7]

「ロボットもことばをもたば苦しまむ虹の下ゆく鉄腕アトム」
坂井修一

>>[10]

笑わせると笑われる、では、人間の尊厳がまったく違いますね。日常のなかで誰もがかすかにひりつく痛みにフォーカスした歌。下句は上句の事実を詩的に言い換えて、成功。

「ぶざまブザマ無様がオレのためだけの言葉になるまで降れ笑い声」 工藤吉生「世界で一番すばらしい俺」短歌研究社
>>[11]
高層ビルの窓のなかにいて、路上の馬頭琴の音が聞こえるのか、主体は地上にいるのかな、もしかして、と読みに迷いました。
調べると、モンゴルでは、ラップが今大ブームで、馬頭琴やホーミーなど独自の文化とミックスして、社会問題や恋愛など、クールに熱く表現していておもしろい。

「死なぬほどの底であればそれでよし昨日の酔いも残っているらし」窪田政男「Sad Song」皓星社



>>[13]
競馬をこれほど美しく表現した歌がほかにあるのか、知らない。競馬ではないのかな。騎手がムチを叩いている、そのムチのしなりに最後フォーカスしているのかと思いましたが、走る馬から弓を的に射る神道の行事かもしれない。

「疾走の象しなやかに凍りつきよもすがらなる風よ 木馬に」永田和宏「メビウスの地平」現代短歌社

>>[14]
塞翁が馬の一字、がをのに変えたことで、故事を自分のものとして表現しています。消えてった、の口語もリズム良く、ティガーべルの足跡みたい。

「風という名前をつけてあげました それから彼を見ないのですが」笹井宏之「ひとさらい」書肆侃侃房
>>[15]  馬毛の震えの音はまるで、草原を渡る風の音のようだ、と詩を読み、識った、という歌だと読みました。
倒置方が説明に落ちるのをとどめています。
馬毛の振るえと、馬毛の振るえを素晴らしく歌った詩と、フォーカスがふたつあって、損してるかな、と思いました。

歌に識る馬毛の振るえモンゴルの草原渡る風と知った日
うーん。
よほど、いい詩なんだろうな、と主体が受けたこころの震え、このお歌のままで、ちゃんと伝わるんですよね。
ただ、その震えた心そのものを、歌ったほうが輝くのかも。

「木製の銃でデコイの水鳥を撃ち抜いた、って感じがしたね」中澤系「中澤系歌集 uta0001.txt」






>>[16]  娘さんの魅力的なプロフィールは、良く伝わり、そんな娘さんを主体がどう思っているかもよくわかる家族詠。
ですが、まだ「作品」に至る何かが無い。
事実だけを並べるのと、事実の何を選んで、あるいは選ばないで、歌にするか、このへんの選択の苦しみがあると、作品足り得るのでは、ないでしょうか。

「吾児がわが母にほのかに似てくるを九月の朝のさざなみとなす」黒瀬珂瀾「ひかりの針がうたふ」書肆侃侃房
>>[18]  一字空けが二箇所もあり、新美南吉のような児童文学的世界観のため、短歌というより「赤い鳥」時代の童謡として、大変魅力的。

ぼろぼろのだちょう、という有名な詩も想起させます。ピノキオのろばも。
絵が見え、動きがあり、人生のビターな真実味、リアリティがある。短歌点、やめないで続けていて良かった。…これは個人的過ぎる感想。
短歌は世界を比喩するもの、というひとつの短歌解釈があり。名歌と呼ばれるものは、みなわたしたちの生きる世界の何かを掬い上げ、歌にしている。
この作品は、人生と労働、命の終わりまで働き続けるひとの悲哀、そして、それを見つめる主体の眼差しの優しさ、それこそ人間の尊厳があります。

「長き会議に倦みたる妻は帰り来て桃色の保育所日誌をひらく」黒瀬珂瀾「ひかりの針がうたふ」書肆侃侃房





>>[22] 「月曜は来ないかも症候群」なかなかなパワーワード。リズム良く、愛唱性あり。絵も鮮やかに浮かぶ。

「缶詰のグリンピースが真夜中にあけろあけろと囁いている」俵万智「サラダ記念日」(河出文庫)
>>[23] 口語短歌のひとつのあり方として、読者にあるのかな、と思わせて実はない、と空っぽをつきつける歌い方があるなぁ、と思います。
近代短歌のひとつのコアなる「不在を歌う」のとまた違う。馬のひとみが美しく歌われ、その世界に自分は居ないんだな、という実感。人間関係が希薄な社会で自分の存在に確信をもてない、現代社会の比喩として成功。

「ウィスキーは風を飲むもの馬もまた風に立ち去るものでありたい」安井高志「サトゥルヌス菓子店」コールサック社



>>[24]  歌世界が調和していて、ひとつひとつの要素が美しいです。連作のなかに置けば、世界観や個性を表現するのに大事な歌となるかと。
一首独立で読む時、光ばかりで影がない、人生のリアリティがとこかに入ると歌がひとつの迫力を持って立ち上がる、と思いました。

「水びたしの灰色猫が現れて流星の尾に噛みつくところ」笹井宏之「ひとさらい」書肆侃侃房
>>[25]  ふたりぶんからこれからさんにん、よにん、と、ふえていく。「から」にその将来への予感が託されている。と、読みました。
まだ恋人気分が抜けない2人の歌でしょうか。連作のなかのひとつだったら、状況説明になるのでありです。
一首独立としては、「馬鹿なふりしていられたら」ここの切実さがどれだけ読者にも響くかでしょうか。子どもの時間は終わる。子育て、介護、人生の重荷がどん、と、待っている。

「すべり台を寝そべりながらずり落ちる君たちの無限の可能性」工藤吉生「世界で一番すばらしい俺」短歌研究社


>>[26]
「そっと身体を近づけて」この具体にリアリティがあり、成功。自分とはちがう身体を持つ命との出会い、それに身を任せる行為は、いろんな比喩として成立します。こわいようなときめくような。

「こうちゃんが好きそうな猫 こわごわと抱きかかえたらてのひら噛んだ」北川草子「シチュー鍋の天使」
>>[28] 「目交いて」目交わして?
海馬は、記憶を司る脳のあの?古いお酒にほろ酔いになって、あなたと見つめあっている、漢詩によくあるシチュエーションを推理するしかなく。
短歌は芸術表現なので作りての心のままにつくったらいい。同時に他者へと開かれた表現である以上、他の人間が読んで理解てきる言葉に整えることも大切。ときにそれは相反するので、表現者は苦しむ。
などと言うことを考えさせられました。


「綺語とどめがたし火宅にこえ絶ゆる六肢具足の冬きりぎりす」塚本邦雄「青き菊の主題」難解で解説なきゃ読めやしない、というのが塚本邦雄ワールド。

事情は省きますが、年末から、生きるのをやめたくて、短歌は生きるための行為なので、短歌にもむかいあえないでいました。
お時間頂きありがとうございました。
また、作品を読んで、短歌表現について考えたり、良い歌、おもしろい歌がいっぱいで、読めて良かった、短歌点で、短歌やってて良かった、と思えました。
ありがとうございます。
選です。今回は三首。

完成度、かけがえのなさ(似たような歌は短歌の歴史をたどれば、どうしたって存在するがそれらに負けてない熱量)で選びました。

このことを誰にも言わないこっくりとうなずく馬の夕刻のこと

神風の果ての襲歩の馬の背の弓手のさきの光こそ追へ

遊園地 子を乗せ歩く白い馬 とぼとぼ周る日が沈むまで

バトンをお渡しするお歌は

このことを誰にも言わないこっくりとうなずく馬の夕刻のこと

このリアル世界にある残酷を歌い、こっくりと黙ってうなずく馬という救済を存在させた。

とみいえひろこさん、バトンよろしくお願いします。

みなさん、ありがとうございました。
>>[57]

あまりお具合がよろしくなかったようですが、今はいかがですか?
少しでも楽になられているといいのですが。
そのような中、ご講評、選歌をしていただいてありがとうございました。お疲れ様でした。

この度は、拙歌をお気に入りに挙げていただいて本当にありがとうございました。
元々短歌は下手っぴで、恥ずかしいなという思いが高じて最近めっきり投稿できなくなっていて、また、今回の歌も幼稚なものしかできなかったので、思いがけずお気に入りに挙げていただいて、とてもうれしかったです!

また、とみいえひろこさん、最優秀おめでとうございます!

このことを誰にも言わないこっくりとうなずく馬の夕刻のこと

主体の抱えきれない苦しさを、馬が引き取ってくれたようで、読ませていただいて主体が救われたように感じてホッとしました。

素晴らしいお歌を読ませていただいてありがとうございました!
>>[54]

体調の優れない中、講評選歌大変にお疲れ様でした。
それぞれの歌への講評興味深く読ませて頂きました

また私の拙い短歌へも講評大変に嬉しく思います
人の体が約300穣個の粒子で構成されている、これを知ってる人だけわかってくれればいいかなって思って投稿させていただきました

添付頂いた塚本邦夫……実はめちゃくちゃ大好きなんです、朝4時前にりりるさんのコメント読んで飛び起きました!!
書いていただいた短歌も仏教用語ぶちこみ過ぎの意味不明、おそらく痛烈な社会風刺でしょうね
当時歌壇からも意味不明な事書いてんじゃねーよくそだりーなって言われてたのに
三島由紀夫は塚本邦夫の歌を認めてたのもすっごい好きです
私へのコメントに塚本邦夫を載せていただいて、正直なとこものすごくすっきりしました、朝から私が心から信頼してる人に

みて!みて!塚本邦夫の事書いてるの!!つってもの凄い長文送りつけました

やばー!やばくない?もう死んでもいいくらいうれしいんだけど!!
あー気絶しそう!つって

本当にありがとうございます
伝えやすくすると言葉の美しさが損なわれる様な感じしたり
使いたい言葉が先行したりしてるうちに

もういいや!!って書きたい事書こーってなっちゃいます

いやー!でも本当にうれしくて
本当にすっきりしました
お題「馬」参加出来てよかったです
ありがとうございます
次のお題も楽しんでいっきまーす!
>>[57]

愛情のこもった丁寧な講評をありがとうございました!
添えられた一首一首を読んで、それぞれの方の一首一首に戻ると、なんだかまたぜんぜん違うように読めて、新鮮でした。一首の世界観がそれぞれあって、ほんとにそれぞれなんだなー、とあらためて思いました。
バトン嬉しいですし、安井高志さんの歌も嬉しかったです。


ゆー@毎日酔っ払いさんが塚本邦雄好きだというの、意外だったけれど不思議に合点がいきました。突き詰め方なのか、何かしら世の中に対する気分なのか。


私の好きだった歌、こちらでした。

馬頭琴やさしく響く新宿の高層ビルよりみおろす路地に
(はしるさん)

塞翁の馬だあなたは消えてった方の朝日が我が街を差す
(ナカノさん)

草原の音のようだと言っていた 詩に至り識る馬毛の振え
(おこげさん)
こちらも、読みによってなるほどと思い歌の良さにはっとした歌でした。

みずうみのように潤んだ馬の瞳にたぶんわたしは映っていない
(ひでさん)

いつまでも馬鹿なフリしていれたならミールキットは2人分から
(ぼんぼりさん)
>>[57]
具合が優れないなか、選歌、講評お疲れさまでした。今は大丈夫でしょうか?あまり無理せずゆっくりお過ごしくださいクローバー

俵万智さんのかわいいお歌ありがとうございます!嬉しいです。

>>とみいえひろこさん
最優秀おめでとうございます!
ひっそりとした1人の時間が馬が出てくることによって優しい時間になっていて素敵でした。

お気に入りのお歌は、ひでさんとぼんぼりさんのお歌でした。
>>[57]
講評・選歌お疲れさまでした!
投稿歌への簡潔で落ち着いた講評は、鑑賞の結果浮かび上がる「問い」や「さらに」を聞かせて頂けて、とても味わいがありました。
それと投稿歌に一つ、歌を添えるっていいですね。さらに楽しめました。
拙歌にも丁寧なご講評をいただき、ありがとうございました。

お気に入りは
とみいえひろこ、はしるさん、ジョズエさん、小竹陽さんでした。
>>[60]
最優秀、おめでとうございます!

このことを誰にも言わないこっくりとうなずく馬の夕刻のこと

りりる♪さんも言われていましたが、私もまず韻に引き付けられました。
「こ」の音が5回。「こ」は「孤独」「故郷」「ことん」など、静のイメージがあります。それが、歌の世界に静けさを漂わせているように感じました。
謎めいた二句までと三句以降の静けさに引き込まれました。
おまけ…お気に入りで選んでいただいたのは小竹陽さんのお歌です(^_^;)
>>[63]

ありがとうございます。
歌のこと、たいへん失礼しました!
>>[60]の作品でした。
ひでさん、小竹陽さん、たいへん失礼しました!
りりる♪さん、ご講評と選歌お疲れさまでした。

力強さと繊細さを同居させた「馬」というモチーフを今回お題に据えられて、どちらのイメージに寄せて詠もうか、他のイメージも捨てがたく、これだけで連作が編めてしまえるくらいポテンシャルの高いお題に、楽しませていただきました。

「馬」といえば、最近、一頭の馬が草原のなかyogibo(というクッション?ビーズソファ?)にただただ寝そべるだけのCM(ずっと見ていられる)を見て癒やされました、というタイムリーな余談を。

拙歌への評、ならびに選に入れていただきありがとうございました。


とみいえひろこさん
最優秀おめでとうございます。

■このことを誰にも言わないこっくりとうなずく馬の夕刻のこと

社会性が強く群れを形成して生活する馬は、もともとコミュニケーション能力が高い動物として知られていて、これまでエビデンスこそありませんでしたが、近年では某大学が発表した研究で、「人の表情と声を関連付けて感情を読み取れる」ことが科学的に証明されたのだとか。

「一蓮托生」という言葉がありますが、秘密を共有する、ということは最上の信頼関係のかたちのひとつとして、美しさすら感じられます。しかもそれが「人と人」ではなく、「人と動物(繊細で人懐こい「馬」であれば尚のこと)」という異種間の絆と云うのですから、詩情もひとしおです。

“音”について言及すると、りりる♪さんやひでさんも仰る、K音の響く音の連なりがやはり静謐さや愛唱性を高め、歌の世界観にふわっとオブラートを包んでゆくような優しさが醸されていて、良いですよね。
「この“こと”」「夕刻の“こと”」という“こと”の韻が、ことこと歩く馬の足音のイメージに繋がりますし、「こっくり(KOKKU-ri)」「夕刻(yuu-KOKU)」という音も、人と馬が寄り添っている景がなぜかしら思われて、親しみを覚えます。

人は誰しも大小さまざまな秘密を隠し持っているものですが、それを一人でずっと抱えていられるかは、秘密の程度やその人の精神力によるところ。
そんな愛すべき矮小な人間(もちろん自分も含め)が、少時、肩の荷を下ろし、自分を見つめ直し、周りをもっとよく見回して、「一人ではない」「人は一人では生きられない」ということを、この歌は教えてくれているような、そんな印象を読後に抱きました。


お気に入りは後ほど。
以下お気に入りです。

■このことを誰にも言わないこっくりとうなずく馬の夕刻のこと(とみいえひろこさん)

秘密の共有。動物との共鳴。自明の関係性と、心地好い静寂。
一首だけで世界が確立されているこの感じが、とても洒脱な印象で素敵に思いました。
「馬が合う」とはまさにこのことだなと(⇐そのつまらん一言は余計だわ)。

誰にも言わない、言われたくない、知られたくない、墓場まで持って行く秘密が作中主体にはあって、でも本当は、誰か心許せる存在にだけ知っておいてもらいたい。そんなアンビバレンス。
(この歌ではその対象が「馬」として登場しましたが、それを実景として読んでもいいし、何か別のものの喩として読んでもいいと思います)

こういう、針に糸を通すような繊細な心の機微って、きっと多くのひとが抱え持っていて、自分もその内のひとりなんですけど、だからこそ「静」のテイストと相まって、深くじんわり心に沁みるのかな、と読みました。

■空深く蒼の底ひにしづもれる星をたづねて馬は駆けゆく(ひでさん)

画として、物語として、これほどまで美しく洗練されたイメージと言葉運び、表記の選択やバランス、カメラワーク、設定 etc... は、ここ最近ではなかなか他にないってくらい、一読してため息が出るほど、歌の世界観にすっかり魅了されました。

何でしょうね。
人の手で読解しようとすると途端にその世界観が崩れてしまいかねないほど、これまた繊細な歌なんですよね。

どこまでも深い、それほどまでに澄んでいる空の蒼深く(「底ひ」が味わい深い)に見える星を「しづもれる」と表現したのが、自然の美しさと天体の悠久さのどちらも過不足なく言い得ていて、しかもそれが旧かな表記で、より抒情的な雰囲気を醸し出しています。

そんな夜空深くに沈んだ星を訪ねて、馬は駆けゆく。
何かここからひとつの物語が始まりそうな、冒険譚の序章がしずかに情景として立ち上がって、たとえばここでタイトルコールが流れ出もしたら、人知れず鳥肌たつかもしれないくらい、印象的な場面を読み取りました。

あとこれは勝手読みなんですが、
この歌に詠まれる「空深くの星」って実は、湖とかの水面に映り込んだ星なんじゃないかなって、読み返しているうちに思いました。
つまり、実情としては「水をもとめて駆ける馬」なんだけれど、少し視点を変えてみると、「(水面に映った)空の星を訪ねて駆ける馬」とも言える、何ともロマンティックな景を詠まれたのかもしれない、と妄想しました。

いずれにせよ、素敵な読み口の歌をすっかり堪能したのでした。
>>[67]
お気に入りにあげていただき、ありがとうございました!
そのうえ拙歌に深い深い評を寄せていただいて、感謝しかありません。過分な評を頂いて凝縮しましたが、やっぱりものすごく嬉しくて、とても励みになりました。
やっぱり@貴さんの評は深いなぁ。

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