短歌点コミュの短歌点1112△お題「鰭」

お世話になります。
サワオさんの1107△お題「桃太郎」でバトンを受取りました、＠貴です。

今回のお題は「鰭」でお願いします。
読みは「ひれ」ですが、必ず漢字で詠み込んでください。
（熟語にした時の濁音はOKです）

　流れるまんま　流されたら
　抗おうか　美しい鰭で
　壊れる夜もあったけれど　自分でいられるように

　スピッツ『美しい鰭』

ルール

1：出題者が、お題を出します。
2：お題は、何でもありで面白そうなもの。ただし、直近で既出のお題を避けてください。
3：トピック本文に「前回の出題者名」「前回のお題ワード」を明記してください（例：●●さんの「▲▲」というお題からバトンを受け取りました）。
4：出題者じゃない人はお題を詠み込んだ短歌を書き込みます。（１人１首のみ）
5：一週間以後、出題者が（独断で）もっとも素晴らしいと思った短歌を１つ選
び、その選出理由を書きこみます。
6：次のお題は、最優秀短歌をつくった人が出すことになります。
　（新トピックの番号は「自分が選ばれたトピック番号＋５」）
7：その後は、みんなでワイワイ感想をかわします。

コメント(69)

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[30] mixiユーザー 08月14日 22:40

ぬめりつき窒息しそうな池のなか尾鰭で蹴った水面の積乱雲

[31] mixiユーザー 08月19日 11:49

ここまでのご投稿ありがとうございます。
当トピックを8月25日（金）に締め切ります。
引続きよろしくお願いします。

[32] mixiユーザー 08月19日 21:26

マーメイドクラスでいちばんキレイだった尾鰭のあの子がヒトになっちゃった

[33] mixiユーザー 08月20日 01:41

いつまでも飛べも歩けもしない鰭　透かす日向のきらめきの散る

[37] mixiユーザー 08月26日 12:26

ご投稿ありがとうございました。
遅くなりましたが締め切ります。

なお、選歌は事前告知した締切内の投稿歌より行いますので、
今しばらくお待ちください。

[40] mixiユーザー 09月03日 22:13

それではまずは歌の感想など順を追って投下してゆきます。

今回は箇条書きで、僭越ながら批評めいたことをしております。
自作品の拙さ・至らなさを棚に上げた物言いをしている箇所も、また、見当違いの誤った読みをしている箇所も多々あると思いますが、未熟な一個人の戯れ言と甘受いただければ。

なお、冗長駄文の感想ではありますが、歌によってその長短の差があることに、他意はございませんし、この後の選歌にも何ら関係ございません。

[41] mixiユーザー 09月03日 22:16

>>[3]

背鰭にてみなもをなでる曳き波のなだらな夏のぬまの熱なし

・意識的に配したと思われるN音（鼻音）が、「ぬま」のまとわりつくような肌感覚のイメージを表している。
・子音のみで構成された音の連なりも、何か狙いがあるのかもしれない。
・漢字とひらがなのバランスが良く、たとえば、通常、漢字表記であるべき「みなも」や「ぬま」をひらがなに開いた箇所も（賛否あるだろうが）、やわらかい印象とゆっくり流れてゆく時間経過を思わせて、良い意味で滞空時間の長い歌のつくりとなっている。
・ありのまま叙景歌として読んだが、歌全体が何かを暗示しているようにも読める。
・たとえば、「背鰭」は推進力の象徴、「曳き波」は其者がもたらす何某かの影響。
・「ぬま」はある対象に夢中になって囚われること、いわゆる“ハマる”という現象。
・波が「なだら」かつ「熱なし」なので、興味が冷めたということを婉曲に表しているのか。
・ただ、そこまで読んでみたものの、ではそこから何を感じ取れば良いのかという部分が見えてこないので、やはり当初のとおり、純粋な叙景歌として鑑賞したい。
・そうすると、日本の夏の原風景がノスタルジックな余韻として感ぜられる歌だ。

[42] mixiユーザー 09月03日 22:17

>>[4]

だとしてものその先にあるだとしても　もがく鰭から光の泡は

・眼前の課題を解決しようと必死に踠く作中主体の姿が思い浮かぶ。
・しかし、解決したその先にはまた違う課題が既に待ち受けていて、人生は常に「課題」と「解決」の連続であることを考えさせられる。
・“人生について” とか “仕事について” “恋について” など、何でもいい。読者に何かしら考える時間・振り返る時間を与える歌というのは、強い。
・映像の情報を持たない「だとしても」という措辞（しかもリフレイン）と、それを受けた下句の心象風景のみで構成されており、具象は描かれていないながらも、何やら読者に訴えかけてくるメッセージ性が、朧気ながら読み取れる。
・「もがく」と言うからには、作中主体は水中を苦しみ彷徨っていて、遠く見上げた水面から希望のような光が降り注いでいる。進むための鰭から零れた泡は光を纏い、自分を置いて希望の水面へと還ってゆく。そういう絵が思い浮かぶ。
・結句の言いさし表現が余韻増幅器となって、歌意と相まって読者のペーソスを誘う。

[43] mixiユーザー 09月03日 22:19

>>[5]

人魚姫の捨てた鰭よすいすいと　泡になっても心のままに

・今年実写映画化された『リトル・マーメイド』を下敷きにした歌だろうか。
・人魚姫は鰭を捨てる代わりに足を手に入れたが、すべては陸世界への憧憬と王子への恋心のため（足りない “なにか” を希う物語）。
・二句目の字足らずが「自身の欠落した “なにか” 」とリンクするところは巧いと思う。
・一方で、三句目「すいすいと」のオノマトペは、功罪が分かれそうだ。
・自由への開放感は表れているのだが、如何せん、ありふれた表現と言わざるを得ない。
・短歌は短詩型文学であるゆえ、つねに言葉の取捨選択は慎重に為されなければならない。殊に、非概念的な言語記号であるオノマトペの使用については。オノマトペに限ったことではないが、手垢のついた慣用句は避けるべきだろう。
・歌人の春日真木子氏は、オノマトペについて以下のように語っている。
・「オノマトペ（擬音語）は、感覚のゆれを手渡すのに効果があるからであろうか、選歌をしていて、その多用に気づいた。しかしオノマトペも慣用表現では、訴えるところが弱い。さらさらと砂がこぼれ、からからと枯落葉がまろび、ぴょんぴょんと兎の跳ねる類いは余りにも平板であり、迂濶に用いると一首が浅くなる惧れがある」
・下句は、形なきものになっても想いは続くことの貴さを、「泡」「心」を用いて換喩的にうまくまとめた感があり、結句の余韻が歌意の前向きな切なさを増幅させている。

[44] mixiユーザー 09月03日 22:21

>>[6]

陽光に骨まで透けてとびうおの鰭のきらめき波の水しぶき

・一瞬間を切り取ったカメラワークだからこその躍動感が描かれている。
・「骨まで透けて」という、実際にその場に遭遇していなければ分からないディテールの景に、歌として確かな実感が籠もっている。
・下句「鰭のきらめき」「波の水しぶき」の並列表現の効果だが、端的に要点のみを列挙するため、読者の印象に残るフレーズになりやすく、リズムも説得力もある。その効果により、とびうおが水面上を飛翔する刹那の美しさ、それが目に焼き付いて離れないのであろう作中主体の感動を、余すことなく言い得ている。
・一点だけ気に掛かった点を挙げるとすれば、「波の」は言わなくとも伝わるので省略可能ではないか、ということ。ただ、そうすると、「●●の■■」「▲▲の◆◆」という並列表現の型が成立しなくなるので、そこまで言及するほどではないのかとも思う。

[45] mixiユーザー 09月03日 22:22

>>[14]

縞々の縁に答えは書いてある気がして今日は鰭酒嗅ぐん

・鰭酒とは、温めた日本酒（燗酒）に魚の鰭を入れて飲む、日本酒の楽しみ方のひとつ。鰭を焙って焦げ目を付け、香ばしくなったのを熱燗に浸して啜るのは、冬の醍醐味である。鯛や河豚の鰭などがよく使われる（全てインターネット調べ）。
・鰭酒を嗜んだことがないので「縞々」が何のことを言っているのか分からないが、鰭に入っている筋（鰭条）のことと推測してみる。
・「鰭条」には、硬い筋の「棘条」と、柔らかい筋の「軟条」があり、魚によってそれらの数が決まっているため、本数を数えれば魚の種類を見極めることも可能なのだそう。
・「縞々の縁」、つまり、酒器に浮かぶ鰭、その筋を作中主体が目線で辿ったその先、ということだろうか。そこに「答えは書いてある」気がした。占いを信じる心理のように、不確かだけれど心の拠り所とする人間臭さというか、ひとの弱い部分であり大事な部分でもあるイデオロギーを、やさしく掬い上げた歌のように読める。
・「縞々」とは何か、どんな「答え」が書いてあるのか、あえて言わず読者に委ねているあたりの、言葉との距離感は巧みだ。また、「今日は」の限定に、いざという特別感が増す。
・日常の些細なところに独自の視点を向け、何かに事寄せて験を担ぐというのは、誰しも記憶にありそうなことで、鰭酒経験はなくとも共感性のある歌だ。
・ただ、結句の「嗅ぐん」だけが最後まで解せず。どこかの方言なのか誤字なのか。その意図するところが掴めなかった。

[46] mixiユーザー 09月03日 22:24

>>[16]

偏光の金魚の鰭に似た爪で剥がされてまた夜に陥る

・「偏光」とは、一方向にのみ振動する光の波のこと。
・そもそも光は電磁波＝波であり、進行方向に対して垂直に振動する横波である。
・太陽光線などの「自然光」は、振動する光の波が全方向に存在するが、自然光の反射時に生じる「偏光」は、特定の振動方向以外の光をカットし、光量を低減させている。
・複数の光の波が重なり、強め合ったり弱め合ったりする現象を「光の干渉」と言うが、通常、自然光は光子の位相やエネルギーがランダムなため、互いに干渉することはない。
・一方、レーザー光などの偏光は、位相やエネルギーが揃って（偏って）いるため、光のコヒーレンス（可干渉性）が高い。
・光の干渉を利用し、見る角度によって色が変わる特性を応用したもののひとつが、「偏光ネイル」と呼ばれるファッションであり、掲出歌はそれを題材にしていると思われる。
・「金魚の鰭」という喩をはさむことによって、「しなやかさ」や「艶美さ」「気まぐれ」「翻弄」などのイメージが湧きあがる。
・小悪魔的に掴み所のないひとに振り回される作中主体が、それでも相手の色んな色にどうしようもなく魅せられる歌、と解した。
・「剥がされて」や「陥る」という表現に、退廃的な色気がある。
・ただ、「偏光」という難しい概念の言葉が硬質で、そこだけ全体の中で浮いており、やや取って付けたような印象を拭えなかった。

[47] mixiユーザー 09月03日 22:25

>>[18]

恋するは我が尾と知らず惚れ抜いて回る二匹の尾鰭追う鯉

・恋というものの本質や真理を説いた歌。
・（歌中では明言されていないがイメージとしては）紅白の色鮮やかな錦鯉と、人生で最も貴いもののひとつである恋との取り合せが、何とも雅やかである。
・リズムも良く、愛唱性に優れている。
・しかしながら、上句がまるまる説明的になってしまったきらいがある。
・「恋する」や「惚れ抜いて」という言葉は直截には言わず、「自らの尾鰭を追う鯉」の景を以て「恋」というものを寓意的に詠んだ方が、読む側として心に入りやすい。
・たとえば、作中主体の “今、恋しているリアルな心情” をにおわせる程度の措辞を、上句で描写することで、詩的飛躍した下句の景が、より活きてくるのではないか。
・とは言うものの、「恋」で始まり「鯉」で終わる構成も、実は然程嫌いでなかったりする。

[48] mixiユーザー 09月03日 22:26

>>[22]

澄み渡る希望は気泡になりて空尾鰭がついて泳ぎ出す夢

・「希望」と「気泡」の近似する音から組み立てられた詩。
・野暮なことを言うようだが、推敲前の上句はその近似をやや説明的に表していたので、正直うまく修正された感はある。
・「希望」「気泡」という音の近似から、「気泡」「尾鰭」「泳ぎ出す」というイメージの連関へと繋げ、親和性のある「空」と「夢」の体言止めを上下句に配した着地が、詩情。
・純粋無垢に抱いていた夢への希望が、ある日叶わないと悟ったときの儚さ。頭の中で膨らむばかりの夢に尾鰭がついて、遂には作中主体の手を離れて泳ぎ出す。
・理想と現実の無情、その狭間に囚われているモラトリアムと哀愁が幻想的に描かれている。
・ただ、（個人の感覚の違いではあるが）上下句の間の余白は、半角でなく全角で空けられていた方が、作中主体のやるせなさや虚しさをより如実に表し得たのでは。

[49] mixiユーザー 09月03日 22:28

>>[25]

僕たちの肩甲骨の背鰭などが震えるような青・蒼・碧を

・「この星の青・蒼・碧のみずうみに生の数だけ降る蝉時雨（ｄ＿ｓｎｏｗさん）」（お題「みずうみ」投稿歌。以下、「本歌」と言う）のオマージュ、若しくは返歌か。
・本歌は、「水深や水域によって色相の微妙な移ろいをみせる「みずうみ」の“あおいろ”。それと同じように、この星の生きとし生けるもの全てが、ダーウィンの進化論によって少しずつ異なりながら繋がり、生を全うしている」という生物賛歌と解している。
・掲出歌は、「肩甲骨の背鰭」という措辞がまさしく進化論を思わせ、太古の水棲生物としての記憶に遡るような、プリミティブな世界観が立ち上がる。
・琴線に触れるような感動を欲する芸術家肌のひとの（あるいはもっと根源的な “生” に対する喜びを求めるひとの）心の叫びに聞えた。
・ゲーテの今際の際の言葉「もっと光を！」が、一瞬頭をもたげた。
・一方、「など」の曖昧表現の是非は、ここでは一考の余地があるように思う。

[50] mixiユーザー 09月03日 22:29

>>[27]

ぷくぷくと吐息のような泡はき尾鰭ひらひら金魚は退屈
泡:あぶく

・金魚鉢や水槽のなかの金魚を眺めている作中主体。
・「吐息のような」「退屈」は、作中主体自身の心情の投影か。
・代わり映えのない日常に感じている退屈さや思い悩みを、別の事物（金魚）に仮託して婉曲に表現する、さり気ないレトリックが垣間見える。
・日常の何気ない風景からリアルな心情を描き出すには、丁寧な視点が必要であり、かつ、自身や日々への偽りのない向き合い方と、それに裏打ちされた確かな筆致も必要。
・掲出歌は、限りなく自然体でそれらが備わっていて、作為的なものが何ひとつない。
・ただ、「退屈」はここでは蛇足のように思う。歌中では直截に言わず、退屈さは読者に読み取ってもらう、くらいの手渡し方で良かったのでは。
・そして、他歌への感想でも前述した、オノマトペ問題。
・何もありふれたオノマトペの使用自体が悪いわけでなく、「それを用いることで、もののイメージが共感覚的に飛躍的な広がりを見せうるか」、「そこに新鮮さはあるか」等に重きを置き、本当にその表現がそこでの最適解か、一度立ち止まって考える時間は必要だと、個人的には思う。
・たとえば、白秋の「さくさくと」は、その音自体はありふれているが、雪を踏みしめる音と林檎を囓る音の両方に掛かって、聴覚だけでなく、味覚・嗅覚・触覚にまで重層的にイメージの広がりを見せる。ありふれた音でオノマトペを使用するなら、それくらいでなければ、なかなか詩には昇華し得ないのではないか。

[51] mixiユーザー 09月03日 22:30

>>[30]

ぬめりつき窒息しそうな池のなか尾鰭で蹴った水面の積乱雲

・社会の中で、何か息苦しさ（生き苦しさ）にも似た閉塞感を覚えている。それを、池に棲息する生物になぞらえて表現した歌、と解する。
・とりわけ田舎の古くからある未整備の池を想像するが、あの鄙びた景観や泥が沈殿しているような水質の、息が詰まりそうな空気感を上句で言い得ていて、それはそのまま、作中主体が社会に対して抱いているモヤモヤそのものの暗示なのかもしれない。
・近年では、コロナ禍の影響による諸々の制限活動が思い浮かぶ。
・心身ともに抑圧された作中主体が、せめてもの反撥心として表すのが、「水面の積乱雲」を「尾鰭で蹴る」という行為（もちろん心象風景）だろう。
・（心象風景とはいえ）天高い積乱雲を蹴ることは叶わないので、水面に映ったその影の方を蹴る、というところに若干の虚しさが残り、それが歌としての味わいとなっている。
・積乱雲は雷雨を呼ぶ雲。堆く盛り上がった塔のように大きなその雲は、人智の及ぶところではない。それと同じように、社会という大きな壁の前で、我々ひとりひとりはあまりに無力である、ということをまざまざと思わせられる。
・そういう意味では、「積乱雲」というチョイスや、水面に映った雲影を蹴る描写がとても示唆的で、そのときの作中主体の繊細な心の動きがリアルに感じ取れる。
・ただ、おそらくこれは全体が何かのメタファーであると思われるが、作中主体が何について閉塞感を覚えているのか、その具体が不明瞭であるため、一首がぼんやりしてしまった印象を受ける。

[52] mixiユーザー 09月03日 22:31

>>[32]

マーメイドクラスでいちばんキレイだった尾鰭のあの子がヒトになっちゃった

・人魚姫のストーリーがベースにある歌だが、舞台設定を「クラス」としたところにオリジナリティーがある。
・「クラスでいちばん」という狭い世界と、「ヒトになっちゃった」という未知の世界との対比が、歌に奥行きを与えている。
・美醜の感覚が人間世界と違って、容姿ではなく、尾鰭がキレイかどうかで判断される世界、というのがまた「如何にも」という感じで、面白い。
・人魚からしてみれば人間こそが「異形の生物」であるわけで、その視点の異化にハッとさせられる。生物学的な「ヒト」というカタカナ表記や、「なっちゃった」という不可逆性の哀しみを含んだ表現は、ある種、排他主義社会へのアンチテーゼなのかもしれない。

[53] mixiユーザー 09月03日 22:33

>>[33]

いつまでも飛べも歩けもしない鰭　透かす日向のきらめきの散る

・飛ぶための翼も歩くための足も持たない代わりに、泳ぐための鰭は備わっている。それはその環境下でそのものが生来具有する、適者生存の能力に他ならないが、隣の芝生は青いもので、どうやら臨んだ能力ではないようだ。
・「いつまでも～しない」という言い回しに、違う世界を切望する作中主体の侘しさやもどかしさが読み取れる。
・無いものねだり。ある種、現代社会のテーマのひとつであるこの人間心理を、鰭のある生物に仮託して詠まれており、それでいて主義主張の押しつけがましさのない読後感だ。
・それはおそらく、歌の中で “答え” （＝結論）を言っていないからだろう。曖昧だと思われるかもしれないが、短歌では、皆まで言ってしまって読者の読み解きの余地を奪うことの方が、むしろ詩情の損失となる（引き算の文学）。
・その点で言えば、掲出歌の下句は（言い方は悪いが）うまく暈かした表現で以て、詩的飛躍したように思う。仮にここで「哀しい」とか「空しい」とか、答えを言ってしまっていれば、歌に広がりがなくなっていたところだ。
・本来望んでいる飛翔も歩行もできないこの鰭を翳して、陽の光を透かしてみせる作中主体の心中は、推して知るべしだろう。それが歌の広がりとなり、余情となる。
・また、「透ける」ではなく「透かす」としたところに、僅かながら作中主体の意志があって、それゆえ望みの叶わぬ現実が、相対的にペーソスを生じさせている。

[54] mixiユーザー 09月03日 22:38

以上、ご投稿いただいた13首への率直な感想でした。
生意気を言ってしまっている箇所もあったかと思いますが、何卒ご勘弁ください。

それでは選歌に移りたいと思いますので、また少しお時間をいただきたく。

[55] mixiユーザー 09月09日 11:30

お待たせいたしました。
それでは選歌に入ります。
悩みましたが、まずは五首選です。

【五首選】

■だとしてものその先にあるだとしても　もがく鰭から光の泡は（蜜柑さん）

■陽光に骨まで透けてとびうおの鰭のきらめき波の水しぶき（むらしんさん）

■澄み渡る希望は気泡になりて空尾鰭がついて泳ぎ出す夢（おこげさん）

■僕たちの肩甲骨の背鰭などが震えるような青・蒼・碧を（クンタ・キンテさん）

■いつまでも飛べも歩けもしない鰭　透かす日向のきらめきの散る（ナカノフスキさん）

[56] mixiユーザー 09月11日 00:03

遅くなってすみません。
まずは次点から挙げさせていただきます。

【次点】

■だとしてものその先にあるだとしても　もがく鰭から光の泡は（蜜柑さん）

・「だとしても」の逆接が無情に響き、人生の厳しさ、生きることの大変さが、痛切に説かれたように思う。
・それでも希望を捨てないで実直に頑張る人物像が、下句の心象風景から浮かび上がって、こんなご時世だからこそ、身につまされるものがあった。

･･･等が選の理由です。

[57] mixiユーザー 09月11日 00:04

そして、最優秀です。

【最優秀】

■僕たちの肩甲骨の背鰭などが震えるような青・蒼・碧を（クンタ・キンテさん）

・「僕たちの肩甲骨の背鰭」が進化の名残を思わせ、海のグラデーションのように生態系は多様であること、ひともまたその中のひとつの色調であることが窺える。
・「ひとが無意識に海に惹かれるのは、生命のふるさとである海の記憶に立ち返るから」という、生命の神秘的ロマンを感じさせる。
・ある種、感性の先祖返りのような「背鰭などが震える」という措辞が繊細で、表現者のあるべき姿を考えさせられた。

･･･等が選の理由です。

クンタ・キンテさん、最優秀おめでとうございます。
ぜひバトンをお受取りください。

[58] mixiユーザー 09月11日 00:04

今回の批評で偉そうな物言いをしてしまった歌の作者さまには申し訳なかったと思います。
繰り返し言うようですが、拙歌の拙さを棚に上げていることは重々承知で、下書きをしながら、自らの作歌姿勢やレベルを見つめ直す良い機会とさせていただいておりました。
もちろん読み間違いも沢山ありましょうし、自分の言った作歌論がすべて正しいとも思っておりません。
読み返すとまだまだ浅学ゆえの粗さや必死さが目立ちますし、これからもっと精進せねばと思った次第です。

差し支えなければ皆さんには、この後のわいがやで作意などを教えていただければ幸いです。
私事ですが、最近は仕事に加えて諸事情であまり短歌にまとまった時間を費やせずもどかしいですが、少しずつレスしてゆければと思っております。

よろしくお願いいたします。

[59] mixiユーザー 09月12日 06:41

>>[56]
わーい！次点をありがとうございます！
前後しましたが、講評と選歌、お疲れ様でした。
私生活が落ち着かなくて、まだ皆さんの分の講評を読めていないのですが、私の短歌への完璧以上の読み取りと、いつもながら細やかな感受性で、歌に歌が引き立つ額縁をつけて頂いたような心地がしています。
落ち着きましたら楽しみに全体をゆっくりじっくり読ませていただきますね！
取り急ぎお礼まで！

>クンタさん
最優秀おめでとうございます！
私も大好きな短歌でした！下句が全体を引き立てていて、クンタさんらしい一首。
待ちに待ったクンタさんのトピック、楽しみにしています！笑

[60] mixiユーザー 09月12日 20:10

>>[57]
最近は生活のほうが慌しく選歌されていることに気づかず
今朝、蜜柑さんから連絡してもらって確認しました。

＠貴さんが取り上げている通り、ｄ＿ｓｎｏｗさんの短歌
『この星の青・蒼・碧のみずうみに生の数だけ降る蝉時雨』
の言い回しを使わせてもらったものです。
『みずうみ』トピでの個人的に好きな歌としてトピ内でも取り上げたこの歌の『青・蒼・碧』という表現を自分なりに使ってみたかったのですが
そういう正直、「人の言い回しを使って最優秀へと選歌されるのはさすがにあんまりかな～」という気持ちがあるので最優秀は辞退したい気持ちでいっぱいなんですがそれは駄目でしょうか？

[61] mixiユーザー 09月13日 11:00

>>[60]
私が次点ですので、まだ＠貴さんからのコメントがないですが、横から私の意見を失礼します。

私としては、＠貴さんがことさら真摯に一つ一つの短歌に向き合って講評され、あらゆることを踏まえて分かった上でなお＠貴さんの分析とお気持ちで選ばれた最優秀ですから、ここは速やかにバトンを受け取られて次のトピックを立てるべきかと思います。
私もクンタさんにトピック立てて欲しいですし。笑

私生活が多忙との事でしたら、講評なしの選歌のみ、というスタイルでも構わないと思います。
私も前回はそうさせていただきました。

また、最優秀はトピ主さんの独断で決めるのが短歌点のルールです。
それを辞退してもいい、という流れも作らない方がいい(余程突発的な、のっぴきならない事情がある時は例外として)という気持ちも強くあります。

もうひとつ、投稿した以上はどの短歌にも最優秀の可能性があるのが短歌点です。
もし最優秀に選ばれた場合にご自身の中にしこりを感じるような歌であれば、今後はそのような短歌は投稿を控えるようにされるのが得策かと思います。

今回は＠貴さんが自身を持って選ばれた歌なのですから、クンタさんもぜひバトンを引き継いでくださればと思います。

>＠貴さん
先にコメントしてしまってすいません

つい思いが溢れてしまいまして^^;
あくまでも私の意見です。

[62] mixiユーザー 09月13日 12:26

あ、ごめんなさい

61のコメントに誤字が。

自身を持って→自信を持って
ですm(_ _)m

[63] mixiユーザー 09月13日 12:33

>>[61]

クンタさんへのお返事が遅れていてすみません。
誠実な見解のコメントありがとうございます。

最終的にはクンタさんご自身のお気持ちによるところなのかなと思いますが、また後ほど時間のある時に私見を述べさせていただきますね。

取り急ぎ。

[64] mixiユーザー 09月13日 23:44

お疲れさまです。

今回の件の私見を述べる前に、
まずは以下のとおり状況を整理してみます。

【クンタさんからの申し出】
　最優秀を辞退したい
【申し出の理由】
　他人の表現を使った作品で気が引けるから（生活が慌ただしいのも理由？）

上記を踏まえたうえで私見ですが、

①「辞退したい」という参加者の意思は、特定の条件下でのみ汲まれるべき

大筋は>>[61]蜜柑さんの「辞退してもいいという流れは作らない方がいい」に同意ですが、どうしても引き受けられない事情があれば、当該トピ主（選者）に相談のうえ辞退可とする。
時間的・身体的・精神的に余裕がないなど、本人にしか解り得ないどうしようもない事情はある筈。それを、事情も知らない他人が軽々と蔑ろにしてバトンを押しつける権利はない、と考えます。
（講評なし・選歌のみでも良いから引き受けるべき、というのは話が違うと思います）
（「選歌対象外」の可否についても同様に言えると考えますが、今回の議題からは逸れますので、ここでは控えます）
ただ、そうした特定の条件には当てはまらないのであれば、歌を投稿して選ばれた以上は、責任を持って次に繋げていただく必要があるでしょう。

②クンタさんの懸念点であろう「他人の表現を使った」ことについて

彼の口ぶりから察するに、「言わば借り物の（オールオリジナルではない）表現で得た最優秀だから、引き受けるのは気が引ける」くらいの感じでしょうか。
表現者として善い志をお持ちだと思いますが、それは果たして今回の辞退理由として適当でしょうか。
たとえば、これが丸パクリの盗作（他人の表現のほぼ十割と同一、若しくは、ほんの少しだけ言い回しや表記を変えているだけの剽窃作品）だと、話は変わってきます。
その場合はそもそも著作権法違反であり、事実確認次第、有無を言わさず最優秀からの除外が適用されます。
しかし、今回のクンタさんの作品は、「青・蒼・碧」という一部の表現を（本歌へのリスペクトも込めて）歌に落とし込んだ、歴とした「オマージュ作品（本歌取り）」に該当すると思われます。
であれば、何も懸念することはなく、また、他人にとやかく言われる筋合いもなく、後はご自身の心の持ちように帰結するのではないでしょうか。

以上の私見①②から、

・最優秀を引き受けられない特段の理由があれば、トピ主に相談次第で辞退OK
・ただし、特段の理由がなく、ただ何となく「バツが悪い・気が引ける・自分のプライドが許さない」などが理由であれば、それは不適格として辞退は認められない

と、結論を述べさせていただきます（大体は蜜柑さんと同じ）。

選をした自分としては、バトンを受取ってもらえるならもちろん嬉しいですが、ルールとして明文化していない以上、そこはきっちり線引きしなければいけないのかな、と思っております。
あとは、クンタさんのお心次第だと存じております。

以上、よろしくお願いいたします。

[65] mixiユーザー 09月14日 00:02

※補足

「歌を投稿する余裕があるんなら、バトン受取るのも訳ないでしょ」
という指摘も想定されます。

しかし、歌を投稿した時と、選歌が為された時とでは、そのひとの実生活の状況が変わっていて、余裕がなくなってしまっていることだって、考えられます。
そのあたりを考慮に入れ、想像力を働かせて、参加者ひとりひとりが理解してあげられるような場作りを、自分は望みます。

今回の件がそうなのかは分かりませんが、いちおう補足として。

[66] mixiユーザー 09月15日 04:52

>>[64]
返答が遅くてすみません。

・「言わば借り物の（オールオリジナルではない）表現で得た最優秀だから、引き受けるのは気が引ける」くらいの感じでしょうか。
　心情的にその通りです。
そういうあまり前向きな気持ちではないのですが、蜜柑さんと＠貴さんからの「辞退する流れをつくってしまうのは良くない」というのはその通りだと思うので
トピのほうを引き受けさせていただきます。

せっかく選んでくださったのにお騒がせして申し訳ありませんでした。
以後、気をつけます。

[67] mixiユーザー 09月20日 23:59

@貴さん講評勉強になりました。
いつもなんとなく作ってしまって皆様のような深い造詣がないなと感じています。
なかなか上達できないかと思いますが、今後ともご指導下さい。
実は子どもの頃から人魚姫が好きで、悲恋ものが好きなようです。
リトルマーメイドは逆に見たことないのですが、違う表現だったらどんなのがいいのかなと考えてみたいです。

[68] mixiユーザー 09月26日 19:59

>>[57]
ご講評・選歌、お疲れ様でした！
久しぶりに@貴さんのご講評をたっぷりと堪能させていただきました。
皆さんの投稿歌に対して様々な角度から深く読み解かれたご講評はまさに圧巻で、改めて投稿歌を深く鑑賞することが出来ました。
願うらく、@貴さんの「お気に入りの歌評」が、また復活するのを心待ちにしております。
拙歌にもとても深いご講評をいただき、ありがとうございました！

お気に入りは、
蜜柑さん、むらしんさん、おこげさん、クンタ・キンテさんでした。

[69] mixiユーザー 09月26日 20:00

>>[25]
最優秀おめでとうございました！

僕たちの肩甲骨の背鰭などが震えるような青・蒼・碧を

すでに@貴さんに深くご講評いただいているのですが、私もその表現されている世界の美しさに引き込まれました。特に「震えるような」が「背鰭などが」と「青・蒼・碧を」のどちらにも掛かっているように思えて、さらに深い透明感を感じました。
素晴らしい短歌をありがとうございました。

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