えんどう君の豆知識コミュの横浜市マンションの傾き問題について考える。

横浜市内の大型マンションが傾いた問題で、建設時の杭打ち工事で、建物の基礎となっている複数の杭が強固な地盤に届いておらず、杭打ちのデータに別の工事のデータが転用されていたことに加え、セメント注入量まで偽装されていたことが明らかになりました。

　建築を営んでいる上に耐震補強工事をメインに仕事としている者としてはとても他人事ではないのだが業界の体質も大きく関係していると思われます。

　まず、建物を設計するという事は間取り図を仕上げる事ではないという事。

　建築法規に始まって構造計算や地質調査を含めて建築設計と言えるのです。

　現実問題として、その設計者が現場で杭打ちを行うわけではないという事。その趣旨がどこまで現場まで伝わるかという事や工期や予算がついて回るという事やそして、一番の問題が下請けに責任の殆どを押し付けているという業界の体質が有るのです。

　テレビでかつて現場代理人をしていた人話が流れていました。

　

　話を要約するとまさか傾くとは思わなかったという事らしいのです。

　いろいろな意味で、このまさかと言う感覚は、今回の問題点の一つではないでしょうか？

　通常、建築の設計は基本的な考え方として安全側と言う考え方が有るのです。

　例えば材料の強度、まったく同じものはあり得ないし、現場施工ではどうしてもむらが出来たりするので想定の外力を１．５倍から２倍に設定を行います。

　今回のケースでいえば、本当に必要な本数より、数割余計に打ち込む設計をしている筈なのです。

　では、今回の様にマンションが傾いたのでしょうか？

　第一　予算と後期からくる妥協

　今回のケースだと実際に工事をする現場にはぎりぎりの予算とかなり無理な工期が有ったらしい。

　例えば、弊社の場合、材料の種類にもよるけれど通常は少し多めに材料を調達します。

　先の現場代理人の人の話によると固い支持地盤に悔いが到達すると物凄い音が出るので支持層まで到達したかは現場にいれば必ず判る筈らしいのです。

　ところが予算もぎりぎりの為余分な杭を調達しない上にその杭を新たに発注すると作成までに数日の日数がかかってしまう上に工期は迫っているという事ではなるべくしてなったとも言えるのかもしれないのです。

　第二　職人の気質と経験

　職人の長年の経験と聞くと何となく頼もしく聞こえて来るけれど、事建築構造に至っては私自身は余り信用していません。

　私の場合、一級建築士であり耐震診断士でも有るけれど、大工ではないので実際に施工は大工さんに行ってもらいます。

　今回の現場代理人や現場監督も実際現場にいる人たちはある意味で職人と言えるし、そのプライドを持っています。

　以前勤めた会社で設計を行っていた時の事です。

　現場で設計と食い違いが出て現場監督に直すように指示をするとその２０代の監督は「大丈夫ですよ、遠藤さん」と言ってきたので、何故かと問いただすと僕の経験上だからと言うではないですか？そんな経験何の役に立つんだとやり直しさせたことが有ります。

　弊社の現場でも、以前いた大工さんがこの職人の典型的な人で何度も現場で怒鳴り合いをしたことが有りました。

　要は、職人さんてやり直しをさせられる事が大嫌いなのです。

　建築は何万年単位の自然が相手ですので例え何十年の経験があっても建築構造の観点からいうと殆ど役には立たないのです。

　推測ですが、この現場代理人は今までの偽装で大きな問題がなかったので、今回も大丈夫だと思ったのでしょう。