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no1048作品展示場コミュの20051128『ホットドッグ早食い大会』

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今年もやってきた『ホットドッグ早食い大会』。
毎年あのイエローモンキーに優勝を持っていかれて
正直この街の人間として怒りは頂点に達している。
今年こそは、と意気込んでみるがいつも2位どまり。
しかし、今年は秘策があるんだよ。
吠え面かくなよ、ファッキンジャップ!!
おっと、日本人にもファッキンジャップくらいは
分かるんだったな、危ねえ、危ねえ。

で、その秘策ってぇのが不思議な話でさ、
数日前のことなんだけど、俺はあるバーにいたんだよ。
そこで一人の黒人が酔っ払いにからまれてるのを
助けたことが発端さ。

その黒人はアメリカンじゃなくアフリカンでさ、
あまり英語が得意じゃなかったんだが、
お礼に一杯おごるっていうもんだから、
それじゃ遠慮なくってね。
そこで例の『ホットドッグ早食い大会』の話をしたんだよ。
そしたらいいものがあるって、これを出したのさ。

彼のたどたどしい英語を繋ぎ合わせるとこういうことらしい。
この塗り薬は、アフリカの呪術師が薬草を練り合わせて
さらに魔法をかけてあるらしい。
効能は、って?まぁそうあせるなよ。

彼が言うには、この薬をどこでもいいから塗るだろ?
すると、その塗ったところと彼の村とを行き来できる、
って言うんだよ。
おいおい、笑ってんじゃねぇぞ。
まぁ、俺だって最初は笑ったんだけどよ。
でもよ、彼に店の奥に連れて行かれて見ちまったんだよ。
何をって?
アフリカだよ。
彼が薬を壁に塗ると穴が開いてな、そっから見えたんだよ。
ありゃ間違いなくアフリカのサバンナだよ。
しかも、村の人々がこっちを覗いてんだよ。
信じられないだろ?そりゃ信じられないよな。
でも見ちまったもんはしょうがないわな。
俺は信じることにしたよ。

彼が言うには効果は10分間らしい。
実際、壁の穴も驚いている間にみるみる塞がっちまったよ。
アフリカの匂いはしばらく残っていたけどな。
で、彼がその薬を俺に分けてくれたんだよ。
ほんの少しだけどな。

その彼に会ってみたいって?
そりゃダメだね、だってよ、
彼はその後、また壁に薬を塗ると、その穴をくぐり抜けて
帰っていっちまったんだからよ。
どこへ、って?
アフリカだよ。自分の村へさ。

で、この薬と『ホットドッグ早食い大会』に
何の関係があるのか、って?
まぁ聞きなよ。
この薬をさ、口の中に塗るわけよ、
するとさ、俺の口の中とあの村がつながるわけだ、
俺が放り込んだホットドッグは胃ではなく、
あの村へ送られるって寸法さ。
どうだい、名案だろ?
これで今年はあの小さな日本人に勝ち目はねぇぜ。
はっはっは

おっと、そろそろ時間だな、俺はもう行かなきゃ。
さてと、薬を塗って、と。
うげぇ、こりゃ苦いな、まぁこれも勝つため仕方がないな。
それじゃ行ってくるよ。



ゼッケン2番。
彼はひたすらホットドッグを口に放り込んでいく。
右隣にいる前回チャンピオンの日本人は、
自分のペースを守りながら順調にホットドッグを
口に運んでいるように見える。
しかしその顔をよく見ていると、ちらりちらりと
左を見ているのが分かる。
明らかに動揺している。
それほど今回のチャレンジャーはすさまじかった。
なにしろ、噛むこともせずに次々とホットドッグを
平らげているのだ。
何なんだこいつは?
観客だけでなく、他の出場者でさえ手を止めて見入っている。
やがて開始から7分が経過しようとしていた。

彼の口の中に空いた穴は塞がりかけていた。
それでも彼はホットドッグを送り込む手をやめない。
勝負はすでに見えていた。
彼の圧勝、誰もこのスピードには追いつかない。
前回チャンピオンの日本人でさえも。
(ざまぁみろだ、ファッキンジャップめ)
彼は心の中で笑った。
しかしこのスピードを緩める気はなかった。
記録、そう記録だ。
誰にも破られない記録を打ち立てるんだ。
制限時間は12分、スタート前に薬を塗ったため、
10分間という薬の効能はそろそろ切れるころだ。
それまで放り込みつづけてやろう。

しかし、ここで彼に異変が起きた。
何かが詰まったように見えた。
そして、彼の口から細くて黒い腕が出てきたのである。
観客はすでに彼だけを見ていたため、そのほとんどが
彼の口から伸びた腕を見ることとなった。
腕は口から伸びると大量に積まれたホットドッグをつかみ
また口へと消えていった。

一方、アフリカの村ではホットドッグをめぐって
騒ぎが起きていた。
アメリカから帰ってきた男によって、
『ホットドッグ早食い大会』の話は、その村だけでなく
となり村やそのまたとなり村まで伝わっていた。
次々に現れるホットドッグも、まだ全員に行き渡っておらず
穴が塞がりかけたのを見て慌てた者が、
その穴に腕を差し入れた。

穴から引き抜いた腕の先にホットドッグが握られているのを
見た他の者達は、我先に穴に腕を差し入れようとした。
そして塞がろうとしている穴のふちに手をかけ、
穴を広げだしたのである。

『ホットドッグ早食い大会』の会場は大混乱に陥っていた。
なにしろ、出場者の口から黒い腕が何本も生えてきて
ホットドッグを掴んでは口に消えていくのである。

あっけにとられる者、逃げ惑う者、叫び声をあげる者、
子供を置き去りにして駆け出す親、親とはぐれた子供、
会場は戦争でも起きたかのような騒ぎであった。

やがて彼の口から生えていた数本の腕が
一度に口の中へ消えたかと思うと、
口が考えられないような大きさに広がった。
そして、その中から黒人がわらわらと出てきたのである。
次から次へと口から出てくる黒人たちは、
ホットドッグを片っ端から食べ始めた。

アフリカの村では、数人の男たちが力の限り穴を広げ、
塞がるのを食い止めようとしていた。
広げた穴には次々と村人が入っていく。
穴に入る者たちの腰には、木の皮を編んで作ったロープが
巻きつけてあった。

やがて穴を広げていた男たちが大声をあげた。
「モウムリダ、アナガフサガルゾ!」
それを合図に穴に向かって女達が叫んだ。
「ミンナ、モドリナサイ!!」
そして残った男たちが一斉にロープを引き始めた。

『ホットドッグ早食い大会』の会場で、ホットドッグを
むさぼっていた黒人たちは、女たちの声が聞こえると
そこらにあったホットドッグを脇に抱え込んだ。
そして、ロープにひかれるままに口の中に帰っていった。

すべての黒人達が口の中に入っていくと、
今まで広がっていた口が急速に閉じようとした。
自分の口から人を吐き出すという芸当を見せた男は、
今や注目の的であった。
逃げ遅れた観客は、彼を見つめた。

彼は一時たりともこの場にいたくなくて、思わず
自分の口の中に両手を突っ込んだ。
すると、その手を誰かが掴んだかと思うと、
強い力で引き込まれた。

彼は、観客の見ている前で、自分の口の中に
ずるずるずるずる・・・

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