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奥崎謙三 ゆきゆきて神軍コミュのokuzaki(19)「神様の愛し奴」

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出所後の奥崎は前述の通りに「色ボケ」してしまった。「ゆきゆきて神軍」にみられたような過去の戦争犯罪の追求に力を燃やしたその姿はどこにも見えない。それは自身の二本目の映画「神様の愛い奴」で確信される。劇場で一般公開されることはなく、主にDVDで販売されている。内容は最悪であるが、奥崎の死を見届ける意味でも一見するべきである。

監督は藤原章氏だが、制作の中心は漫画家の根本敬氏による所が多いだろう。根本氏は奥崎の支援者でもある。重松氏から奥崎のミニコミ誌を貰ったのが、きっかけである。根本氏は、一九八一年九月号の「月刊漫画ガロ」に『青春むせび泣き』が掲載され漫画家デビュー。当時のヘタウマブームに乗り、八〇年代での活動の場はエロ雑誌からメジャー誌までと非常に幅広かった。根本の作風は「便所の落書きが増殖したような漫画」と揶揄され、見た目の異様さで嫌悪感を覚えるものが多い。それが故にファン層は非常に限られているが、その強烈な個性を露出した表現は他の追随を決して許さないものである。
始まりは、前述のロフトの公演後、奥崎の体調が悪化し、事務所のトイレで籠城を続けてなかなか出てこない。(こうなると子供がダダをこねているようにしか見えないのだが)その時、誰かが半ば冗談で
「AVでも借りてくれば、天の岩戸のように出てくるかも」
ということになり、AVを再生していると本当に奥崎がトイレから出てきた。奥崎はAVを見ながら、
「いやあ、いいですね、若い女性の裸はいいですね。本当に一度で良いからこんな若い女性の肌に触れてみたいですね。こんな老いぼれのじいさんでは無理ですけど」
根本はファッションヘルスにお連れしますと、奥崎を誘ったが、
「そんなところに行ったら皆さんから軽蔑されます」
根本は奥崎の辞意が本心ではないと見極めて更に
「もし堂々とヘルスへ行かれたら、益々先生を尊敬します」
無理矢理ファッションヘルスに連れて行くと、奥崎は一度で気に入ってしまい、以降ファッションヘルスに入り浸りとなってしまうのであった。そんなことが続いて、ある日、根本氏は自分が撮影した映画「さむくないかい」を奥崎に見せると
「根本先生は漫画を書くことだけじゃなくて、こういうことをなさっていたんですね。今度は私主演で、ビデオを撮ってこういうことをさせてください」
「こういうこと」というのは性行シーンのことである。「神様の愛い奴」にはセックス描写があるが、これは奥崎が希望したものなのであった。そういったやりとりのなか、「神様の愛い奴」は、なし崩し的にスタートされた。

映画は奥崎が刑務所から出所するところから始まる。それからホテルの部屋で奥崎の独演会が始まるのであった。奥崎は嬉々として他愛もない話を取り留めなく続ける。既に深夜となり、スタッフは朝の5時からスタンバっているので少しずつ抜けていく。
そして、重松氏が抜ける時に奥崎はいきなりキレだすのであった。奥崎は交通費を出すので帰るなと引き留めるのだが、重松氏も頑として聞かない。次の日に仕事があり生活があるのだ。無職同然の奥崎とは立場が違う。
「帰れ、帰れ」
奥崎は老いてしまい、孤独に耐えられなくなってしまったのだ。こういう「帰る」「帰らない」シーンが何度も繰り返される。奥崎は人の居なくなる寂しさに耐えられない程の苦しみを感じる。それ程に弱くなってしまったのだ。次に神戸に帰るための新幹線に乗るシーンが出るのだが、JRの対応の悪さに、奥崎の手を引いている強面の男が職員を恫喝する。既に階段は昇ることはおろか、普通に歩いたりすることもままならなくなっていたのだ。加齢とはいえ、医療刑務所の劣悪な環境で四肢は萎えていた。
「オイっ貴様、ここのプロだろう。何年務めてるんだバカヤロー。誰が貴様の給料を払っていると思ってるんだ」
筆者が悪趣味と思うのは、恫喝されて顔面蒼白となっている職員の表情を中心に描写しているところである。奥崎も尻馬に乗って暴言を吐いているし、遂にダダをこね出してか、ホームに仰向けになっている始末だ。
「こっち見ろと言ってるんだろう、様子見ないで先歩くなっていってんだろ」
職員は完全に萎縮してしまい、まともに大宮氏の顔は見れない状態だ。無理もない。ようやく列車が到着し、新幹線の個室を宛がわれた奥崎を乗せ、自宅のある神戸に向かった。奥崎はゴネ得で、新幹線の個室を普通料金で利用したことになった。
自宅に到着した奥崎は隣の質屋に帰宅の挨拶をした。老夫婦、娘二人で細々と営業しているようだ。質屋の一家三人が応対したが、奥崎の帰宅に一家全員困惑の表情を隠せない。
「失礼ですけど、血栓溶解法で、私はご主人さんより長生きしますよ」
例の軍服をまとっての奥崎のトークに質屋の主人は終始目が虚ろとなっていた。奥崎が帰宅後真っ先にした作業は生活保護の申請である。国家を否定しても、国家に頼るという矛盾が見え隠れするが、奥崎も一人で生きていかなければならないのだ。奥崎の申請はすんなり通ったようだ。
奥崎は撮影スタッフの為にささやかながら、スキヤキを振る舞うことにした。その場には「ゆきゆきて神軍」の時に仲人をした太田垣氏もやってきた。奥崎は開口一番
「太田垣さん、もの凄くおじいさんになられましたね。太田垣さんは今の奥さんに不満があるんですか?」
奥崎は手を上下に振るわせながら太田垣氏に問う。
「不満はないです」
奥崎は一気にまくし立てる
「あなたが、結婚できたのは私の存在があったからだ。ここに妻を求むと書きましてね、今は書いてますけど、女房居ないからと」
どうも、遠回しにであるが、太田垣氏に再婚相手の世話を依頼しているのだ。太田垣氏は意を決したかのように言った
「奥崎さんには失望し、信用できなくなった。尊敬できない。獄中で変わられました」
収監中に奥崎が太田垣氏に送った手紙の内容に問題があるらしい。また、奥崎から一人去っていったが、奥崎はしつこく太田垣氏に絡む
「納得いくまで、返しません。不法拘禁というならば警察呼んでください。あなたのそういう目差し、私の目を見る目差し、その目差しがダメだというんだキサマッ。そういう目で何故見るんだ。はっきりしろキサマ。あなたは中途半端な人間だ」
訥々と太田垣氏が反論する
「中途半端で結構です」
奥崎はキレた
「俺に勝てると思ってるのかキサマ」
奥崎は太田垣氏に殴りかかるが、反対に返り討ちに遭ってしまい、こてんぱんにのされてしまう。いくら気が強いと言っても、八〇歳間近の老人なのであるから痛々しい。
「カメラはなせ、俺は病人だぞ」
「ゆきゆきて神軍」のリフレインかと思えるシーンが繰り広げられた。この作品はオマージュなのかギミックであるのか、根本氏の魂胆が把握できない。冷静な太田垣氏も怒りが収まらない。
「都合の良いときだけ、病気とか言って、なんだ」
立場が逆転してしまったようだ。太田垣氏の問いに奥崎は弱々しく答える。既に太田垣氏は怒りから嘲笑の目差しに変わっていた。
「太田垣さん、あなたには体力では勝てません、刑務所から出てきた思えばみんなから冷たくされてね、おかしいなと」
奥崎はいつしか哀れみを乞う老人に成り下がっていた。太田垣氏は終始、蔑みの視線を絶やさないまま、奥崎の自宅を後にした。太田垣氏がこの場所を訪れるのは最期だろう。
太田垣氏をなんとか取りなしてスキヤキを再開させるのだが、既にその時には奥崎は落ち込みから回復していた。スタッフに向かって、「ゆきゆきて神軍」の制作のために、妻のシズミが原の妻である小林に四〇〇万渡していて、自分は一切それを聞かされていないらしい。故に原を殴りつける。これは神が決めたことだと周囲に話している。

「ワケのワカラン奴はもう殴ったらいいんですよ。殴られたら何故自分が殴られたかわかるわけですよ」
つい、さっき起こった出来事を忘れてしまっている。奥崎節が吠える中、予定されていたテレビのドキュメンタリー番組の取りやめを告げる電話があった。もう誰も奥崎を見捨ててしまった。そんなことを暗に告げるような内容であった。受話器を握った奥崎の目は寂しさに溢れていた。

それからの奥崎はオモチャにされているように映る。奥崎と共演するのは全て、中年のAV女優なのだが、七〇歳を過ぎている奥崎にしてみれば十分若いのだろう。共演者の中には自分の娘の全裸ビデオを販売目的で撮影して、逮捕された母親も混ざっていた。最初は普通に性行するシーンから始まるのだが、徐々に女装させられたり、糞尿まみれにされたり、マンションに置き去りにされたりする。
「予定があります」
「家が遠いから帰ります」
どうでも良い言い訳で次々にスタッフは「帰宅」宣言。奥崎はマンションに独りぼっちに、そもそも帰りたければ帰れと言い出したのは奥崎なのだ。
「帰るのはお二人だけじゃないんですか、最初と言ってることが違うじゃないですか」
奥崎は泣きそうな顔でスタッフ達を引き留めるが、全員帰った。恐らく数日中引き回されて疲労困憊となったことは容易に伺える。根本氏も最初は真面目な気持ちで映画を制作する気であったと思われるが、幾度となく突きつけられる無理難題や、ワガママなど付き合い切れないので、いっそのこと自分のやりたいように、煽てながら奥崎を思い通りにしてしまうという結果になったのだろう。
翌日、スタッフがマンションに行くと、奥崎は置き手紙を残して、部屋の中は空っぽになっていた。
「神戸に帰るが、ホテルに会いに来い」

場所は高級ホテルだ。昨日の置き去り事件が相当堪えたのか、表情はいつになく憔悴しきっている。一同は血栓溶解法を強制されて、奥崎は例の軍服姿。傍目から見て異様である。奥崎は開口一番
「オレより立派な者はおりませんよ」
「私はもてて、もてて、もてて、もてて、もてて、しようがない生き方をしてきたと」
「抑え、抑え、抑え、してきたから、バッと出れるワケですわ」

もっとチヤホヤしてくれと言っているのだろうか。奥崎の機嫌が直り撮影は再開された。古アパートの一室での絡みのシーンを撮る最中、奥崎のそれ自身が不能になった。いくらやってみても立たないので、苛立つ奥崎は辺り構わず八つ当たりしだした。

「これで、どうですか、文句ありますか野郎共。こういうことはどういう意味があるんだ、貴様ら。オレが怒るの文句あるか?人を殺して申し訳ないなんて済むか?ヤメロ、撮るな。オレは奥崎謙三だ。文句あるか貴様ら」
根本氏は事態収拾のために声を張り上げ土下座した。根本氏によれば、この時のスタッフの武器は土下座と「尊敬しております」というセリフの二つだけだったという。
「奥崎先生のことを益々尊敬いたします。尊敬いたします」
奥崎も釣られて、土下座して一同拍手。ここまで来るとマンガだ。奥崎は根本氏を始めとしてスタッフを先生と呼んでいる。これは自分も先生と呼ばれたいが故の所作であろう。その後、奥崎が出演女優にカネを渡すシーンがある。
「これは自分の奥さんが、私のために残してくれたお金です」
といって、それなりに大金を惜しげもなく渡すのだ。ちょっとこれには心が悲しくなった。

スタッフが出演女優に交渉の電話を入れるシーンも気になる。
「凄い心待ちにしているみたいなんですよ。で、添い寝をしたいという風に、てゆうかね、普通の人じゃ無いんですよ」
確かに普通の人ではないが、この頃になるとスタッフの顔に疲労の色が隠せない。その後、風呂場で共演女優から顔に放尿されて、嬉しそうな奥崎がおぞましく映し出されていた。ここまで来ると不快感もたけなわだが、根本氏の演出というよりかは、奥崎自身の意思でやらせたような雰囲気が色濃い。奥崎は嬉々としてスタッフににおねだりした。
「オシッコをね、アーンと体験させて貰えませんか?」


極めつけは女王様と奴隷という設定のシーンで、兎に角奥崎が足蹴にされたり、命令されたりする場面がある。台本通りなのか、助けないと後で奥崎がダダをこねるのを知ってか、根本氏が止めに入る。
「先生は我々が本当に尊敬する方なんです」
女王役は足で奥崎を嬲りながら
「これが、偉いの?アタシは何なの?」
根本は口を押さえながら、絞り出すような声で懇願する。
「女王様です。でも、この方はもっと偉い方なんです。本当は」
いつもの如く奥崎がキレた。全裸でコッペパンを頬張る奥崎をスタッフは、どう声を掛ければよいのか嫌な空気が撮影場所を覆う。
「俺はおっかない女の人には射精できないんだ。何が女王だ、俺は絶対テメーの事は女王とは思わない。世界中の金くれるといったってコイツとしない」
それを聞いた女王役の女優が奥崎を口汚く罵り、奥崎はその剣幕に対して、反対にオロオロする。恐らく、ギミックだと思われるが、現場はそれなりに緊迫した雰囲気でイレギュラーな状態が発生したのかとも思わせる絶妙な演出だ。
「オレは病気なんだ」
弱々しく反抗する奥崎。最期は女王役のAV女優に押し倒されて、スタッフが奥崎が殴られるのを静止する様子がスローモーションで流れて、この映画は終わりを告げる。筆者としては、とても後味の悪い感想しか感じられない。
「皆さんが戦争犯罪責任追及人としてリスペクトしている奥崎謙三の本性は色ボケした老人です。」
率直な感想として、そうとしか取れない映画だった。女王役に嬲られる前に奥崎のセリフが吠える。
「奥崎謙三が立派かどうかはこのビデオテープが証明します」
根本氏は恐らく「神様の愛い奴」の公開にはギリギリ最期まで悩んだ先の結果であったと考えられる。綺麗なまま中途半端に奥崎のキャラクターを存続させるよりは、いっそのこと落とすだけ落として、汚れるままに汚して、全てを葬り去ってしまおう。そんな心境だったに違いない。

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