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奥崎謙三 ゆきゆきて神軍コミュのokuzaki(8)「皇居パチンコ事件」

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昭和四一年八月に大阪刑務所を出所した。仮釈放も無く、満期出所だった。出所後の奥崎を迎え入れる環境は恵まれていたものではなかった。妻のシズミは交通事故に遭い七ヶ月入院していたし、自ら経営していたバッテリー商も休業中で借金も二百万円以上抱えている状態であった。出所する奥崎の余りのみすぼらしさに、大阪刑務所が奥崎のために丸々身の回りの物を一揃えした程である。
妻のシズミは加害者である阪急タクシーより、毎月二万なにがしのカネを受け取るだけであった。シズミの面倒は実弟の文治が見ていた。シズミは奥崎がヤメロというのに創価学会に入信していた。逆上した奥崎は、すぐさま仏壇を近所の空き地で燃やした。シズミは一八インチのテレビも購入していた。一人では寂しかったのだ。これも奥崎の逆鱗に触れ、破壊されそうになるが、何とか知り合いにプレゼントすると言うことで、テレビの破壊は難を逃れた。
社会復帰にはなにがしかの金がつきものである。奥崎は恥ずかしながら区役所へ相談に赴いた。相談に応じた担当者は、本当は交通事故の補償金を受け取れる状態では生活保護は受けられないが、聞かなかったことにして申請を受理する。奥崎は保護観察所から生活保護を受取、うれし涙を流す。軍人恩給にしても前科者には恩給取消となるのだが、これも担当者は聞かなかったことにして、奥崎に引き続き恩給が受け取れるように手続をした。まだ役所にも人情が残っていた時代なのであろう。
ゼロどころかマイナスのスタートラインに立たされた奥崎は途方に暮れた。しかし、捨てる神有れば拾う神ありで、徴兵される前に住み込みで働いていたバッテリー店のオーナーが、問屋に、
「自分が保証人になるから奥崎にバッテリーを卸してやってくれ」
と頼み何とか仕入は確保できた。元々仕事に関しては真面目一徹の奥崎は、持ち前のバイタリティーで経営状態を立て直し、二年半で借金を完済させることができた。
 ようやく商売も軌道に乗り、昭和四三年も暮れようとしていたところ、奥崎は二度目の刑事事件を起こすことを決心する。来年、天皇がバルコニーで一般参賀に応えることを新聞で知ったからである。
 天皇の名によって行われた戦争のために死んでいった戦友や、何百万人もの無辜の人々のことを考えると、天皇の犯した罪は万死に値するものだと確信していた。奥崎は死刑になることも厭わず思っていたが、その反面、ニューギニアから生還して、殺人を犯しても尚生かされている使用済みの命であっても、そんな虚しいことに命を捨てる気にはならなかったので本音である。パチンコの発射機は自宅近くの空き地に捨てられていた、折りたたみ式テーブルの金具で作ることにした。パチンコ玉は近所のパチンコ屋から、こっそり失敬して決行の日に望んだ。
 
かくして奥崎は東京行きの新幹線に乗り込み、計画を実行に移す。昭和四四年一月二日、二〇メートル先の天皇が立つバルコニーに向かって、パチンコを三発発射するが誰も気づかなかった。自分自身いたたまれなくなったのであろう。一計を案じた奥崎は、
「ヤマザキ、天皇をピストルで撃て」
乾坤を込め絶叫する。(ヤマザキとは同じ部隊で苦楽を共にした戦友の名前である。)周囲は何事かと奥崎を見た。しかし、誰も奥崎の存在を気にとめようとしないので、奥崎は再度パチンコを発射した。パチンコ玉は天皇には命中せず、全て外れた。ようやく事態を察知した私服警官に拘束されることとなった。
「さあ、いきましょう」
奥崎は自ら警官の腕を掴んで捕縛されることを即した。奥崎は再度囚われの人となったのである。下された判決は懲役一年六ヶ月であった。
 奥崎の行動は暴行罪に該当するとして、身柄拘束のまま起訴された。不敬罪が消滅して以来、おそらくはじめての刑事裁判の場に天皇の名が登場した形となった。しかし、この裁判は被害者本人のみならず、被害者側の証人一切を不必要とする類い希なる内容であった。奥崎は様々な抗議の意味も含めて、弁護人を解任する。
 この事件に対する特殊異常な取り扱いは、天皇が単なる被害者として、その名前すら公然と語れないことに止まらずに、保釈を認めないという厳しい措置が執られた。昭和四五年一月に東京地裁がようやく保釈申請を許可したが、準抗告を受けて保釈を取り消した。一審においては検察側は懲役三年を求刑し、東京地裁は懲役一年六ヶ月を宣告した。
 一審判決に対して、弁護側・検察側から控訴がなされた。それを受けて東京高裁は量刑は一審を維持し、拘留日数を本刑算入することにより、服役を免除するという結果を出した。何とか宮内庁側に対してぎりぎり面目を保てた苦肉の策であったと言えよう。

昭和四五年(う)第二〇六八号
判決
本籍 兵庫県三木市口吉川町槇五一一番地
住居 神戸市兵庫区荒田町二丁目五番地
蓄電池販売業 奥崎謙三 大正九年二月一日生

右の者に対する暴行被告事件について、昭和四五年六月八日、東京地方裁判所の言い渡した判決に対し、被告人及び検察官から控訴の申し立てがあったので、当裁判所は、検事斉藤済次郎出席の上審理をし、次のように判決する。


主文

一、原判決を破棄する
二、被告人を懲役一年六月に処する。
三、原審における未決勾留日数を右本刑(但し、法定の本刑通算未決拘留日数を差し引いたもの)に満まで算入する。
四、押収しているゴム銃一丁及びパチンコ玉四個を没収する。
五、原審における訴訟費用は、全部被告人の負担とする

理由

本件の控訴の趣意は、被告人及び検察作成名義の各控訴趣意書に対する被告人の抗弁は、被告人作成名義の追加控訴趣意書と題する答弁書に、それぞれ記載してあるとおりであるから、何れもこれを引用し、これに対し当裁判所は、次のように判断をする。

被告人の控訴趣意について

論旨は、まず原判決を破棄し無罪の判決を求めると主張し、その理由を論述するものでるが、その理由とするところを備に審査、検討してみると、控訴趣意として主張すべき事項としては、余りにも常軌を逸し、とくに天皇をはじめとして裁判官、検察官等、国家機関に対する数々の不穏等な表現の羅列、繰り返しを含み、果たして適法な控訴趣意として判断の対象と、成し得るか否かにつき一考を要するものがあると、思慮されないではないが(この点は検察官の控訴趣意に対する被告人の答弁についても同断である)
なお、子細に調査してみれば、被告人なりに原判決に対する不服の理由を、いわゆる控訴趣意として主張しているものとみられる箇所も無いではないので、右主張を以下の通り整理の上、逐次判断を示すものとする。
一、憲法前文を援用し、その内容、特にその後段に
「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」
とあることからみて、憲法前一段にいう、民定憲法であることの表現とは何ら矛盾、抵触するものではないので、この点だけからしても、原判決には、何ら所論のような憲法違反ないし、事実誤認は存しないというべきである。

二、被告人には本件被害者とされている者に対し、本件パチンコ玉を命中させる意思もなかったし、本件のようなゴム銃をもってしては物理上も不可能であり、更に相手方は本件被害事実を認識していなかったとして、原判決の事実誤認ないし、法令適用の誤りを主張する点について
原判示の、被告人の天皇に対する暴行の事実は、原判決挙示の各対応証拠により優に認定しうることであり、本件記録を精査してみても、原判決に所論のような事実誤認は認められず、特に暴行被害者が被告の事実を被害当時において認識しなかったとしても、暴行の成立が妨げられる謂われはないから、この点においても原判決に事実誤認ないし法令適用の誤りは存しない。

三、原裁判所が被告人側からの天皇の証人申請を却下したことを非難する点について

所論指摘の証人申請及びその却下の事実には、記録上明認されるところであるが、右証人申請における立証趣旨、その他本事案の内容、原審訴訟手続の経過等から勘案するに、原審の証人申請却下の措置には、何ら訴訟手続の法令違反と目すべきものは認められない。
その他、事実誤認、法令違反の主張と認められるものについて、更に本件記録を精査、検討してみたが、原判決には、所論のような箇所の存しないことは明らかである。

四、量刑不当の主張について

論旨は、その冒頭(控訴趣意)においては、無罪の判決を求めると言うが、「控訴理由」の項においては、原判決の量刑不当を主張すると解される箇所が存するので、この点に付き判断する。
検察官の控訴趣意も原判決の量刑軽きに失するとして量刑不当を主張するにあるので、ここでまとめて判断することにする。

まず、検察官の主張をみるに、所論がその理由の第一として、本件が日本国憲法によって、日本国の象徴、日本国民統合の象徴としての地位を有する天皇に対しての犯行であって、極めて悪質であり社会的影響も甚大であるとする点に対しては、もとより同調するに吝かではなく、続いて本件が、被告人の抱く反社会的思想の宣伝と売名を目的として敢行されたものであり、周到に準備、計画された大胆な犯行で、しかも実害発生の危険が、かなり高いものであった旨、主張するところについても記録上これを肯認するにかたくはないし、更に被告人に再犯のおそれがあり、改悛の情が全く認められないと言うこと、縷々主張することについても、確信犯的な被告人の物事に対する考え方等からすれば、これを否定することは困難なように思われるのであるが、翻って考えてみるに、本件は言うまでもなく懲役刑としては二年以下の法定刑が定められるに止まる事案であり、原判決も量刑事情の項においていうとおり、被告人に原判示のような累犯前科があるとしても、右法定刑を上回るような量刑をすることは、一暴行事件の処理としては余りにも重きに過ぎるものと認めざるを得ないのであって、原判決も所論指摘の各事由は殆ど全て考慮の上、被告人に対し懲役一年六月の刑を量定したものと推察するに十分である。そして当裁判所においても、原審の右量刑を更に被告人の不利益に、変更加重すべき特段の事由を発見しがたいので、検察官の控訴は結局理由が無いことに帰する。

次に被告人の主張についてみるに、検察官の量刑不当の控訴趣意に対して判断したとおり、被告人に対しては、主刑の量刑に関する限り、原判決を相当とすると思慮するが、原判決は未決拘留日数の本刑算入については、
「未決勾留日数のうち一八〇日を右刑に算入するとす」
るに止まっているので、この点に付き考察してみるに、被告人は原審において監置一〇日の執行を受けた期間を除いても、昭和四四年一月四日勾留状の執行を受けて以来、原判決の言い渡された本年六月八日の前日に至るまで、殆ど主刑の一年六月に垂れんとする期間拘留を継続されていたものであって、なるほど本件起訴は昭和四四年三月五日ではあるが、これは被告人が精神鑑定のため同年1月一〇日から同年二月二四日まで、鑑定留置されていたことにもよると認められるし、また、本件の事実的審理が遅れ、相当長期間を要したことについては、主として被告人側の責に帰すべき事由によるものと認められないではないが、他方、被告人側の保釈請求が、再三にわたり却下されていることも明白なことであって、これらの事情を比較考量してみると、結局原判決における、未決拘留日数の本刑本刑算入日数は、過少に失するものと認めざるを得ないのであって、原判決においては、この点において、いわゆる量刑不当に準ずる瑕疵が、あるものというべく論旨には理由があり、原判決は全部は全部破棄を免れない。

なお論旨は、
「訴訟費用は国の負担とする」
との判決を求めているが、原判決中の訴訟費用負担の裁判には何ら違法の点は認められないし、本件記録に明らかな被告人の資力、その他事情に徴し、後記のとおり原審における訴訟費用は、全部被告人に負担させることとした。

よって、被告人の本件控訴は理由があるから、刑訴法三九七条一項、三八一条により、原判決を破棄した上、同法四〇〇条但書の規定に従い、更に自ら次のように判決をする。
原判決が認定した事実に法令を適用すると、被告人の原判示所為は、刑法二〇八条、罰金等臨時措置法二条、三条に該当するので、所定刑中懲役刑を選択、被告人は原刑示前科があるから、刑法五六条一項、五七条により再犯の加重をし、その刑期範囲内で、被告人を主文第二項掲記の刑に処し、同法二一条に則り、原審における未決拘留日数の本刑算入を主文三項のとおり定め、主文四項掲記の各物件は、被告人が、原判示犯行の用に供したもので、被告人以外のものに属さないものであるから、同法一九条一項二号、二項本文により、何れも没収し、原審の訴訟費用は、刑訴法一八一条一項本文に従い、全部被告に負担させることとし、主文のように判決をする。

昭和四五年一〇月七日
東京高等裁判所第七刑事部
裁判長裁判官 栗本一夫
裁判官    小川泉
       藤井一雄

時を同じくして皇居で発煙筒に火をつけたアナキストがいた。大島英三郎である。その後大島は奥崎と共に「ゆきゆきて神軍」で共演することになる。下された判決は懲役四ヶ月。奥崎と比べれば随分と軽い。
 これらの事件が契機となってか、天皇の一般参賀は、バルコニーに防弾ガラスが施されることになった。これを機に奥崎の元には様々な反響が寄せられた。

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