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ブギープリンス文庫コミュの彼女のブルーズ 第四話 束の間の蜜月のブルーズ 後編

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バスルームから出てきた彼女は、
いつの間にかグレーのスウェットに着替えていた。

”あ、適当にしといてね。”

そう言うと、そのまま料理支度を始めてしまった。

俺は掛ける声も見つからないまま、
周りを探りなんとか座り場所を見つける。

僅かながら落ち着きを取り戻して部屋を改めて見回してみると、
数時間前まで居た自分の住む部屋とはまったくの別世界である。

女の子の服、女の子の本、女の子のぬいぐるみ。

幾分、想像した通りの少女趣味ではあるが、
何か危うげな感じがするのは気のせいか、、。

それよりも今、確実に危険なのは
部屋に充満する風呂上がりの彼女の匂い。

石鹸とシャンプーの香りが、ムッとする湿気と共に
抵抗力の無いプリンスを包み込む。

邪気を払うかの様に、
思い出した本を ギターケースの中から引っ張り出す。

暫くして、彼女が出来上がった料理を運んできた。

”何の本読んでるん?”

”ああ、これ マイルス デイヴィスっていうジャズの人の自伝”

”へえ〜”

乾ききってない髪と、まだ上気したままのスッピンの顔に、
俺は気恥ずさしさを覚え、彼女をまともに見られない。

初の母以外の人間が作った手料理がならんだ小さな机をはさんで、
彼女は向かいに座った。

それから二人そろって、ぎこちなくはにかみながら

”いっただっきまあーす。”

それからお互いの事を色々話しながら、
ゆっくりと食事を終えた。

その後も会話はつづき、
やっとスムーズになってきた頃
とうとう夜も更けてきた。

”じゃあ、寝よっか。”

こともなげに彼女は言う。

当たり前の様に同じ布団に二人が入る。

布団に入っても話は尽きない。

そして会話の中で解った事。

彼女は俺と同じく地方出身者。
両親が離婚していて、大阪に姉がいる、等々。

そして、彼女の性格が、過度な位純粋な事。

今までの行動は俺の勘ぐりとは違って計算とかでは無く、
俺よりも世間知らずな程のピュアさ故だった事。

見知らぬ天井を見つめながらすっかり感心して、
思わず熱く語ってしまった。

社会の枠にはまりきれず、
何処にも居場所を見つけられなかった自分の、
その時の気持ちと思想をぶちまけた。

今思えば気恥ずかしい。

しかし、意外にも彼女も同じ気持ちだった。

それまで二人ともずっと天井を見上げながら話していたが、
何か強い視線を感じて彼女の方を見た。


目と目が合い、見つめ合う。

彼女の吐息が掛かる位に、顔と顔が近い。

ぶるぶると自分の中の熱い何かが胸を駆け上がり、
泣き出しそうな、愛おしい気持ちになる。

そう、愛おしい。

初めての感情だ。

勝手に指が彼女の頬にやさしく触れている。

二人共に笑顔は無い。

そこにあるのはお互いをもっと深く知ろうとする、
不思議な瞳と、何か言いたげな口。

でも、もう言葉は要らない。



人生初めての、真剣なキス。

頭の中で何かがぷつんと音をたてて、切れてしまった。

必死に抱きしめ合い、唇を重ねる。
心が身体と共に溶けていく。

またしても、初めて味わう感覚に酔いしれる。



どれ位経っただろうか。

ふと、彼女の体中を探っていた指に異物感を覚えた。



”ん?何これ?ティッシュ?”

”うん、ごめん。今生理やねん。ナプキン買い忘れたから、、、。”


そうなんや。大人の階段は高かった、、、。


落ち込んだ様子を見せまいと努めて明るく振る舞おうとした俺に、
彼女は言った。

さっきまでとは違う、 無邪気な笑顔で。


”チュウしたろぅか?”

”え?チュウやったらさっきからしてるやん?”

すると、いたずらっ子の様にニヤッと笑って、
彼女はプリンスのトランクスを脱がしに掛かるのだった、、、。

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