ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

とりあえず面白い話。コミュのでびクエ 十四章

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

宿屋「いらっしゃいませお客様。

お二人ですね?

一晩870Gになりますが」


勇者「…870Gか…」

宿屋「…おや、お金が足りないようですね…。

さようなら旅の人、またお立ち寄り下さい…」

勇者「…そうだな、金が足りないんじゃ、そうするしかなさそうだ」

新人(また、金欠か…)


 勇者と新人は宿屋を出た。


勇者「…すまんな新人、また今日も、薬草を食って野宿するしかなさそうだ…」

新人「オラは良いんだよ。でも、勇者様もちゃんと薬草食ってるだか?

最近すごく痩せてきてるだよ…」

勇者「…ちゃんと食ってるよ。

痩せてるように見えるのは、気疲れだよ。

魔王城に近付いてきてるからさ」

新人「そ、そうだか…勇者様の事だから、気遣って自分の分までオラに分けてるんじゃ無えだか?」

勇者「…そういう心配はすんじゃねーよ。

おれ達は同じ志を持った仲間だ。

今後仲間同士でそういう詮索をするんじゃない。

解ったか?」


新人「わ、わかった…」

新人(勇者様…)


 伝説の勇者の血を引いて生まれた者として、勇者は自国の王から魔王討伐の命を受けた。


…だが、魔族を一方的に悪と決め付ける人間の考え方に疑問を持っていた勇者は、密かに【魔王と話し合いで解決する】という志を抱き、旅に出た。


最初は3人居た仲間達も、諸事情により途中で別れ、今は【風俗嬢の新人】一人だけになってしまった。


 そればかりか、魔王と話し合いで解決するという方向性上、魔物との戦いを避けて旅を続けて来た勇者には当然収入源が無く、

とうとうゴールドが底を尽き、宿に泊まって体力を回復する術も失ってしまっていた。

 ぐつぐつ…。

  ぐつぐつ…。

新人「…さ、勇者様出来ただよ。

今日は薬草入りコンソメスープだよ」


勇者「…ああ、ありがとう。

じゃあ、いつものように目を閉じてくれないか。

おれ、食べるところを人に見られたく無いからさ」

新人「ああ、はいはい、わかっただよ」


新人は目を閉じた。

…勇者はそっと、器に入った薬草を鍋に戻し、器に少しだけ残った汁をすすった。

勇者「…ごちそうさま、もう目開けてもいいぜ」

新人「…ん。

いつもながら、食べるの早いなぁ勇者様は」

勇者「早飯早糞ゲイのうち…ってな」

新人「え?勇者様は男が好きなんだか?」

勇者「バーカ、そのゲイじゃねーよ」

新人「ハハハ」

勇者「ククク…ちょっと休んでくるよ」

勇者はそういうと、近くの森の方へと歩いていった。

新人「…勇者様、最近よく休ませてくれって言って一人になるけど…やっぱり色々と思い悩む事とかがあるんだろうなぁ…ズズズ…」

新人は小さくなっていく勇者の背中を見ながら、薬草汁をすすった。


勇者「…


…ひいふうみい…。

 …残り7Gか…。

こないだ恵んでもらった金も、もう底を付いちまうな…。

…それに、この金じゃあもう薬草を買うにも金が足りない…。

…まずいな…いよいよ…コイツを使う時が来ちまうのか…」


勇者はそう呟くと、ギュっと自分の刀を握り締めた…。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 勇者「さ、新人次の町に行こう」

新人「う、うん。

勇者様、本当に大丈夫だか?

顔色も悪いけど…ちゃんとよく噛んで薬草食ってるだか?」

勇者「ああ、食ってるよ…。

行くぞ」

新人「あ、はい」

 勇者と新人は町を出た。

 次の街までの距離は、およそ30キロ。

勇者はなるべく魔物に遭遇しないよう、岩陰に隠れたり、地面を這ったりして駆け抜けた。

…だが、気配を消す呪文を使えない二人は幾度と無く魔物と遭遇し、

そのたびに勇者は新人を庇いながら逃げ続け…。

…日が暮れて、次の街に着いた頃には、勇者の体は傷だらけになってしまっていた。


勇者「く…」

新人「だ、大丈夫だか?勇者様…」

勇者「平気だよ…これくらい。

…さ、宿に…っと。

すまん新人…もう、7Gしか残っていないんだった…」

新人「え、ええええ!

な、7G?

薬草買うのにも1G足り無えでねえか…」

勇者「…すまん…。



…新人、ちょっと、疲労で足が動かないんだ。

そこの原っぱに座りたいんで、肩かしてくんねーか?」

新人「う、うん、良いだよ」

新人は、勇者をそっと座らせた。

そして新人も、勇者の横に座った。

勇者「…」

新人「勇者様…ごめんな…オラ、勇者様の足ばかり引っ張って…」

勇者「そういうのは気にするなよ」

新人「…でも…」

勇者「それより…のどかだな、この街は」

新人「え?」

新人は勇者が見ている街の景色を見た。

そこには自然と科学が調和した、実にのどかな風景が広がっていた。

新人「わぁ、たしかに、なんか良い感じだぁね、この街」

勇者「…あそこの牛小屋のところに置いてあるツボなんかも、なんか良い感じだよなぁ」

新人「ああ、なんかのどか感超出してるだね〜」

勇者「…」

新人「…オラ、ちょっとあのツボ割ってくる」

勇者「え?」

タッタッタッタッタ

パリーン!

勇者「…」

タッタッタッタッタ

新人「ハァ、ハァ、

勇者様!う、牛のフンが入ってただ!!」

勇者「も、持ってくんなよそんなもん!」

新人「オ、オラ、これを道具屋に売ってくる!!

勇者様、7Gオラにわたしてけろ!!!」

勇者「え?

あ、そっか。

その手があったか」

新人「いってきます!」

タッタッタッタッタッタッタッタッタ…。

…ッタッタッタッタッタッタ。

新人「勇者様!!!買えただよ!!

薬草が!!!

買えただよ薬草が!!!」

勇者「で、でかした新人」

新人「…さ、勇者様食べてけろ!」

勇者「え?いや、新人が食えよ」

新人「んもう!!今の勇者様は傷だらけだろ!

オラは腹へってるだけだから、こんなもんツバのんどきゃ平気だよ!

それ!」

勇者「んぐ…」

新人は、勇者の口に薬草を押し込んだ。

勇者(青臭い…)

新人「…どうだ勇者様?傷の具合は」

勇者「うん。ほぼ、全快したよ。

レベル1でHP少ないから」

新人「そっか、薬草様様だね。ハハハ」

ぐぅぅぅぅ…

 ぐぅぅぅぅ…。

勇者と新人は、共に腹を押さえた。

勇者「…」

新人「…。HPは回復しても、空腹は草食った程度しか満たせ無い…か」

勇者「…そうだな」

新人「…」

勇者「…」

新人「…オ、オラ、もっといっぱい壷を割ってくるだよ。

牛のフン8個集めて、薬草汁でも一緒に…」

勇者「…いや、もういいよ新人」

新人「…え?」

勇者「…もういい。

…今まで、おれのつまらないこだわりで、苦労かけちまったな新人」

勇者はそう言うと、そっと立ち上がり、刀が入ったサヤを握り締めた。

新人「ゆ、勇者様?何だ???その刀をどうするんだ?」

勇者「…コイツを使う事はもう無いと思ってたんだが…ここまで追い込まれちまったんだ、致し方ない」

新人「!!!?ダ、ダメだよ勇者様!!!」

勇者「…何も聞くな新人。

…少しここで待ってろ、すぐ戻る」

ダッ!

勇者はそう言うと走り去った。

新人「ま、待つだよ勇者様!!!

ダメだ!!ダメだよ勇者様!!!

魔物達と…和解するんだろ勇者様!!!

魔物を倒して金を稼ぐなんて…そんなのダメだ!!!

ここまで耐えてきたのに、信念を曲げちゃあダメだよ勇者様!!!

勇者さまああああああ!!!」

 新人が叫んだ言葉は、勇者には届かなかった。

勇者は街の出口の方へと走って行き、そして見えなくなった。

新人「うぅ…」

新人(…勇者様…勇者様…。

…オラだ…オラが悪いんだ…。

オラがいなければ…勇者様の使う金は半分で済んでたんだ…。

…そうすれば…きっと魔王城に着くまで、お金も足りたはずだ…。

…オラだ…オラが悪いんだ…

あぁぁぁぁ…勇者さまぁ…。

どうかどうか…思いとどまってけろぉ…)

新人は祈るように、勇者が走り去った方角に向って手を合わせた。


 ー 20分後 ー

新人の元へ、袋を持った勇者が帰ってきた。

勇者「…待たせたな、新人」

新人「…あ、勇者様、おかえりなさい」

ドサッ。

勇者は袋を地面に置いた。

新人「? これ、何だ?」

新人は袋の口を開いてみた。

新人「うひゃあ!」

なんと、袋の中には大量のゴールドが入っていた。

新人「ゆ、勇者様、こ…このお金は…」

勇者「…何も聞くなよ、新人。

…さ、宿屋に泊まろう。

1500Gはある。

今日は久々に暖かいベッドで眠れそうだ」

新人(…勇者様…)

〜〜〜〜〜〜

宿屋「お二人様ですね?一晩1000Gになります」

勇者「…ほら、1000Gだ。数えてくれ」

宿屋「ひいふうみぃ…はい、たしかに1000G。どうぞ、部屋までご案内します」

勇者「…案内は良い。部屋の場所を教えてくれ」

宿屋「そ、そうですか…303号室です。こちらがルームキーになります」

勇者「…」

勇者は無言で鍵を受け取ると、部屋に入った。

 バタン。

  ガチャッ。

部屋に入り鍵をかけた勇者は、布団に腰を下ろした。

勇者「…ふぅ…」

そっと、自分の両手の平を見つめる勇者。

勇者(…刀…おれの刀…)

新人「あ、あのぉ…勇者様…」

勇者「うわっ!!び、びっくりした。新人居たのかよ」

新人「い、一緒に部屋に入ってきたんだけど…」

勇者「そ、そうだったか。ご、ごめん」

新人「いや…あの、勇者様、すごく思いつめた顔してるけど…」

勇者「…ん?ハハ。

新人が気にする事じゃないよ」

新人「で…でも…

…勇者様はここまでずっと、魔物に手をかけずにやってきたのに…オラのせいで…」

勇者「…ん?新人のせいじゃないよ。

オレも…たまにはベッドでゆっくり休みたかったしさ」

新人(…勇者様…きっと、ムリして笑顔を作ってる…。

…その証拠に…目がとても悲しそう…。

…勇者様はあの手で…きっと沢山の魔物を…。

…あの刀を握って…。

…刀…ん?

あれ?)

新人「あれ?勇者様、刀は?」

よく見てみると、勇者は刀を持っていなかった。

勇者「え?売ったよ」

新人「は?」

勇者「…刀売ったから、今こうして宿に泊まる事が出来てるんだろう?」

新人「え?じゃあ魔物は殺めていないの?」

勇者「は?魔物を殺める?

んなことするわけ無いだろう。

魔王と和解できなくなっちまう」

新人「あ、そ、そうだね。ハハ…」

新人(勘違いしちまっただ。テヘッ)

新人「…あ、で、でも勇者様、良いんだか?

刀を売っちまったりして…」

勇者「…ああ、良いんだ。

魔物を斬る事も無い刀だ。

人の手に渡り、使われたほうがきっと刀も幸せだ」

新人「勇者様…」

新人(ウソだ…勇者様はああ言ってるけど、きっとあの刀は勇者様にとって色々思い出のある刀に違いない…。

…でないと、あんなに寂しそうな目はしないはずだ…)

勇者「ふぁぁ…。

新人すまん。

少し疲れたから、先に寝させてもらうよ。

新人はまだ元気そうだし、町の観光でもしてきたらいい」

勇者はそう言うと、ゴロンと横になった。

新人「い、いや。オラも疲れてるから寝ようかな…」

勇者「Zzz…」

新人(も、もう寝てる…。よっぽど疲れてたんだな勇者様…)

新人(…でも…オラも元気そうに見られてるけど、そこそこ疲れてんだよなぁ。

外に遊びに行く元気なんて無いよぉ…)

新人はそんな事を思いながら、ふと机の上に置いてある新聞に目をやった。

新聞の見出しには、【マーダ神殿、未だ再開のメド立たず…】の文字。

新人「…ん?マーダ神殿?」

新人は新聞を手に取った。

そして新聞を読んだ。

記事の内容はこうだった。

 マーダ神殿の大神官は女性にプロポーズしてフられてから、ずっと引きこもっているらしい。

転職を司るマーダ神殿が閉鎖中という事で、社会全体に就職難の波が広がり、

それは就職活動中の大学生にも影響を与え、

スマートフォンを持っていない大学生は就職活動に支障をきたす事態に陥っているという事らしい…。

新人(…マーダ神殿の大神官…。

…オラ達が行った時には、元気そうに営業してたのに…。

…っていうか、そういえばオラ、あの人にプロポーズされたな…。

…あれ?そういえばオラ、あの大神官のプロポーズ断ったな…。

…ムム?

…もしかして、マーダ神殿の大神官が引きこもってる原因って…

…オラがフッたから???)

新人は新聞をテーブルに置いた。

そして勇者の寝顔を見た。

新人(…勇者様…。



…オラが一緒だと…勇者様の足を引っ張ってばかりだよね…。



…オラ…もしかしたら…始めて勇者様の役に立てるかもしれない…。

その方法が…今見つかったかもしれない…。

…だから…勇者様ゴメン。

…25Gだけ、もらうね)

新人は、そっと勇者のゴールド袋から25Gを取り出した。

そしてそれを握り締め、道具屋へと向った…。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ー 夜 ー

勇者「…ん…」

新人「あ、起きただか勇者様」

勇者「…もう夜か…ずいぶんぐっすりと眠っちまったもんだ」

新人「野宿だと熟睡は出来ないからねぇ」

勇者「やっぱ、宿屋は良いなぁ。ハハハ。

…ま、明日からはまた野宿になるんだろうけどな…」

新人「…」

新人「あ、勇者様、そうそう、はい、夕飯」

新人はそう言うと、パックに詰められた夕飯を勇者に差し出した。

勇者「…あ、また夕飯詰めといてくれたのか。ありがとうな新人」

新人「起こすのも悪いとい思って…」

勇者「感謝感謝。いただきま〜す」

新人「…」

新人は、じっと勇者の顔を見つめている。

勇者「…ん?どうした新人?」

新人「うううん。何も無いだよ。

ただ、勇者様をじっと見つめていたいだけだよ」

勇者「…何だよそれ…」

新人「良いから、気にせずに食べてけろ」

勇者「…。まあ、食うけど。パクパク」

新人「…」

新人(…やっぱり勇者様は、薬草汁の薬草を全部オラにくれてたんだな…。

…食べるところを見られるのが恥ずかしいって言ってたくせに…)

勇者「ぷはぁ〜〜食った食った。

久々に腹いっぱいだ。

ごちそうさま」

新人「…」

勇者「ん?」

勇者が立ち上がり、そっと窓の方を向いた時、新人はそっと勇者の背中に自分の身を寄せた。

勇者「な、何だよ新人…」

新人「…勇者様…お願いがあるだよ」

勇者「ん?」

新人「オラを…オラを抱いてください」

勇者「は?」

新人「オラ…勇者様が好きです…」

勇者「…え?」

新人「…」

勇者「…あ、あのさ新人、すこし落ち着こっか」

新人「無理です。

勇者様、こっちを向いてもらえるだか?」

勇者はそっと振り返った。

勇者「む…」

その瞬間、新人はそっと勇者にキスをした。

勇者「な…何するんだよ新人!」

新人「い、嫌だっただか?」

勇者「い、嫌じゃないけど…」

新人「勇者様…オラ、本気だよ」

新人はそういうと、ファサッと服を脱いだ。

服の下から、とても綺麗な体が現われた。

勇者「…」

勇者(…きれいだ…ゴクリ)

新人「勇者様…オラ…勇者様に抱いてほしいんだ…。

初めての人は…勇者様が良いんだよ…」

勇者「ちょ…おいおい、ま、待てよ。

初めてがおれとかさ、それは良いけど、

なにも今じゃなくても良いだろう?

この旅が終わった後でも良いんじゃ…」

新人は首を振った。

新人「…ダメなんだよ…今で無いと…。

…オラ…今まで勇者様に無理なお願いをした事って無いと思うんだ。

…これから先も、きっと無いと思う。

…だから、これが最初で最後なんだよ。

……オラの…最初で最後のお願い…聞いてくんねえだか?」

勇者「…」

勇者は新人の目を見た。

真剣で、何か決意をしたような目だった…。

勇者「…新人…わかった。

…とりあえず、ベッドに入ろうか」

新人「勇者様…抱いてくれるだね?」

勇者「…いいから、とりあえずベッドに入って待ってな。

オレも服を脱ぐ」

新人「うん」

新人は布団に入った。

そして勇者は着ているものを脱ぎ、裸になった。

新人「…勇者様の体、ステキだね」

勇者「…よせよ…むかしDQNやって全盛の頃は、もっと締まってた」

勇者もベッドの中に入った。

勇者「…なあ新人。

オレは、今から自分の事を話す。

その話を聞いて…それでも初めての相手がオレで良いと思ったのであれば、

オレはお前を抱く。

…でも話を聞いて、もし初めての相手がオレじゃダメだと思えば…寝たフリをしてくれ。

お前が寝てたら、オレは何もせずに寝るから」

新人(勇者様の…過去…)

勇者「…まずおれは、お前が始めての相手じゃない。

DQNの特性上、オレは30人とはヤった。

上は56から下は12まで。

正直、オレ、性の方では汚れてるんだよ」

新人「…オラ、平気だよ。

勇者様の事が好きだから、そんな過去の事は気にしないよ」

勇者「…そうか、ありがとう。

じゃあ、今のオレの話をしよう」

新人「…今?」

勇者「…ああ。

…正直な話だが…オレは、僧侶の事が好きなんだ」

新人「…え?」

勇者「…だからもし、オレが新人を抱いたとしても、

オレは新人の事が好きじゃないって事だよ。

オレは性の快楽の為だけにお前を抱く事になる。

お前を抱きながら、オレは頭の中で僧侶を抱く事になる。

…新人は、本当にそれでも良いのか?」

新人(…勇者様が…僧侶さんの事を…。

…そっか…そういえば…勇者様は知らないんだ…僧侶さんの秘密を…)

勇者「…なあ新人、女性にとって、初めての相手っていうのは、大切なものだと思うぞ。

お前はまだ若い。これから色んな出会いがある。だから…」

新人「オ、オラ、良いよ」

勇者「え?」

新人「オラ、それでも良いんだ…オラ、勇者様が好きだから、勇者様がたとえ頭の中で僧侶さんを抱いてたって…オラはそれでも幸せなんだよ」

新人はそう言うと、布団に潜った。

勇者「な、何をするんだ新じ…オフゥ…」

新人「ングング…勇者様、オラ、よく解らないんだけど、こうすると…男の人って気持ち良いんだよね?」

勇者「し、新人、辞めろ!辞め…ろ!」

勇者は新人を引っ張り出した。

新人「キャッ!」

新人は泣いていた。

勇者「…」

新人「…」

勇者「…解ったよ、新人。

…お前の気持ちは解った。

…後で後悔するかもしれないが…今日、オレはお前を抱く。

それで良いな?」

新人「…嬉しい」

勇者はギュっと新人を抱きしめた。

新人もギュッと勇者を抱きしめた。

そして勇者は新人の上に乗り…右手でそっと、ロウソクの明かりを消した…。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 チュンチュン…


   チュンチュン…

ー 翌朝 ー

勇者「…ん…」

 窓から差し込んだ光で、勇者は目を覚ました。

勇者「ふぁぁ〜」

勇者は大きな伸びをした。

勇者(…あ、そういえば昨夜、オレ、新人と…)

勇者は昨夜新人が眠っていた場所を見た。

ほのかに新人の香りがした。

 ピンポ〜ン。


と、その時、部屋のチャイムが鳴った。

勇者「あ、は〜い」

勇者は慌ててズボンを履き、ドアを開けた。

ボーイ「あ、朝刊をお持ちしましたぁ」

勇者「あぁ、ありがとう」

バタン。

ドアを閉めて、勇者はイスに腰掛けて新聞に目をやった。

 【マーダ神殿、営業再開。全国五万の就職難民問題も解決へ】

勇者「マーダ神殿…ああ、あそこか。

閉鎖してたんだ」

勇者は新聞を机に置き、服を着る。

勇者「…あれ、そういえば新人、どこ行ったんだろうな…」

そんな事を考えながら、服を着終えた勇者はゴールド袋を見た。

勇者「たしか残り500Gだったよなぁ。

…またしばらく、薬草食って野宿する生活か…。

…やっぱベッドは良かったなぁ」

ゴソゴソゴソ…

勇者「!!!!?」

勇者「はぁああああ????」

勇者は驚いた。

なんと、500Gが入っているはずのゴールド袋の中身が、80万ゴールドになっていたからだ。

勇者「な、何この札束???はぁ???」

 ひらっ…。

勇者「ん?」

勇者は札束の中に、1枚の手紙が混じっている事に気が付いた。

【勇者様へ】

折りたたまれた手紙には、そう書かれていた。

勇者「…」

勇者はそっと、その手紙を開いた…。

【 勇者様、

今まで、こんな何の役にも立たないオラと一緒に旅をしてくれて、ありがとう。

色々危険な事もあったけど、オラは勇者様と一緒に旅が出来て、本当の本当に楽しくて幸せだったよ。

 一緒に旅をした僧侶さんや兵士さんと別れる事になって寂しかった事もあったけど、

オラは大好きな勇者様の隣に居れたから、ちょっと寂しいだけで済んで良かったよ(←よくまとまってない…汗)

 オラね、考えたんだ。

皆、兵士さんも僧侶さんも、回復したり、気配を消す呪文を唱えたり、勇者様の旅の役に立ってるのに、

オラは弱くて何もトリエが無くて足ばっかりひっぱってて、勇者様の邪魔なんじゃないかなって…。

 でも、優しい勇者様はそんな事を微塵も態度に出さなかったよね?

オラ、そんな優しい勇者様の役に立ちたいって、ずっと思ってたんだ…。

 マーダ神殿で、オラが大神官から求婚された事、覚えてるだか?

あの時はまだ今ほどお金にも困ってなかったから、オラ二つ返事で断ったけど、

オラね、決心したんだ。

 オラ、愛する勇者様の為に、大神官と結婚するって!

 勇者様、オラはこんな事しか出来ないけど、勇者様の為に何かがしたかったんだ。

大好きで大好きで、世界で一番、自分よりも大事な勇者様の為に、何かがしたかったんだ。

 オラ、道具屋で【キモラの翼】を買って、マーダ神殿に行って求婚を受けたんだ。

…だから…オラが大神官と結婚して受け取った結納金の80万Gを、どうか受け取って欲しいんだ。

そのお金を使って、どうか旅を無事に終わらせて欲しいんだ。

…そして、魔王と和解して…勇者様は僧侶さんの所に行って、

幸せに暮らして欲しい。

 オラは大神官と結婚するけど、一生勇者様を思って生きていきます。

…昨夜の事は、一生忘れないからね。

勇者様、本当に本当に、今までありがとう。

これからもお元気で。

             新人より】


勇者「…何だこれは…新人の奴…」

勇者は手紙を力強く握りしめた。

勇者「ばかやろう…こんな事して…何がオレの為だよ…

金なんて…金なんて要らねえんだよ」

勇者は80万Gが入った袋を握り、道具屋に向った。

道具屋「へいらっしゃい!」

勇者「キモラの翼を一つ頼む」

道具屋「へい!25Gになりやす!」

勇者はキモラの翼を空高く放り投げようとした。

…しかし、そこで思い留まった。

勇者(…いや、いや待て…。

実際…新人はオレと旅をして、本当に幸せなのか?

…オレと旅をしている新人は…いつも腹を空かせて、ボロボロの身なりで…。

…でも、大神官と結婚したら新人はどうなる?

暖かい部屋で、暖かいベッドで…安心した生活を送れる…。

なにより旦那は公務員の上役…。

…オレがこの結婚を阻止したとして…新人は本当に幸せなのか…?)

…勇者はキモラの翼を放り投げるのを辞めた。

勇者(…新人…幸せになれよ)

そして空を見上げ、心でそう呟いた。

空には雪がちらついていた。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

とりあえず面白い話。 更新情報

とりあえず面白い話。のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。