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とりあえず面白い話。コミュのでびクエ 十三章(前編)

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ドンドンドン!…



  ドンドンドン!…


町人「わっしょい!」

町人「わっしょい!」



 とある町。

今日は秋の収穫祭。

 普段は仲の悪いあの人とこの人も。

今日は皆仲良く祭りを楽しんでいる。

…そんな秋の日…。




町人A「なあ、町人B」

町人B「何だ町人A?」

町人A「今日は年に一度の秋祭り。今年こそは…今年こそはカワイイ女をGETしような!」

町人B「ああ。あたりまえだ!普段来る日も来る日も肥溜めを管理する仕事ばかりで、出会いなんてありゃしない。

年に一度のこの日を逃せば、また1年間孤独な時間を過ごさなきゃいけなくなる!」

町人A「…まあ、そんな事言いながらかれこれ20年くらいが過ぎ去ってるんだけどなオレ達…」

町人B「か、過去の事は言うんでない!

大事なのはこれからだ!こ れ か ら!」

町人A「そ、そうだな、悪りぃB」

町人B「最初からそんな弱気でどうすんだよお前は!

ほら、アレを見てみろ!」

そう言うと、町人Bは道の端っこに座り込む、汚い身なりをしたホームレス二人を指さした。

町人B「いいかA?オレ達も来年で40歳になる。

もう後が無い。

今日は最後のつもりで頑張るんだ。

わかったな?」

町人A「そ、そうだな…。

オレ、今までどこかに甘えの部分があったと思う…。

うん。今日はもう死に物狂いでがんばるよ。

15〜20歳でスタイルバツグンで料理が上手くて美人とかいう高い理想はもう捨てる!」

町人B「お、おまえそんなソフトバンクホークスみたいな戦い方目指してたのか…もっと早く気付けよ…ムリって…」

町人A「いや、ムリとは思ってないけど…もう、なんていうか焦ってんだよオレは」

町人B「…」

町人A「さあ!行こうA! 童貞とは今日でおさらばだ!」

町人B「そ、そうだな。うん。行こう!」


町人A「…っと、その前に」


町人Aはポケットからサイフを取り出した。



 チャリ〜ン。

  チャリチャリ〜ン。


町人Aはホームレスに5Gを恵んだ。


町人B「お、おい、賽銭にとっとけよその金…。

もったいねえ」

町人A「いや、いいんだよこれで」

町人B「?」

町人A「神様にはさ、祭りにやってきた沢山の人達が賽銭を納めるだろう?

…でも、この小汚いやつらに金を恵む奴らって何人居る?

父ちゃんが、昔言ってたんだ。

『皆が助けてる奴らを助けて、何になる?

皆が助けない奴を、オマエは助けてやれ』…ってな」

町人B「…そっか。

オマエの父ちゃん、良い事言うんだな」

チャリーン。

そう言うと、町人Bは10Gを恵んだ。

町人A「…。

…だろ?」

チャリーン。

そう言うと、町人Aは20Gを恵んだ。

町人B「…。

…情けは人の為ならず…って言うからな」

チャリーン。

そう言うと、Bは40Gを恵んだ。

町人A「…。

まあ、女ってやつはだな、

きっと気前の良い男が好きなんだとオレは思うよ。

気前の良い男な!」

チャリーン。

そう言うと、町人Aは100Gを恵んだ。

町人B「!!!!

…き、気前か。

ふ〜ん。

なるほどね」


…チャリン…。

そう言うと、Bは震えた手つきで500Gを恵んだ。


町人A「!!!!

そ、そろそろ行こうかB。

祭りは、こ、これから…だぞ」


ヒラッ。


そう言うと、Aも震えた手つきで1000G札を恵んだ。


町人B「!!!!!!!!!!!!


そ、そうだな、い、いこうか」


Bはそう言って、サイフから5000G札を取り出そうとした…。


ガシッ!!

…と、その時、町人AはBの腕を掴み、そして顔をゆっくりと横に振った。


B「な、何すんだよ!離せよ!」

A「も、もう辞めようB…オレ達、こんな所で争ってる場合じゃないよ」

B「はっ。…た、たしかにそうだな…」

A「きっと、こういう部分じゃないのか?おれ達が40前になっても結婚できないのって…」

B「い…言うなよA…」


冷静になったBは、そっと手に持った5000G札をサイフに納めた。

A「とにかく、行こうぜ。良い女なんて早いもん勝ちなんだから」

B「そ、そうだなA、行こう」



そう言うと、AとBは祭りの中心部へ向って走って行った。



勇者「…なんだか知らないが…新人、どうやら今日は宿に泊まれそうだぞ…」

新人「うぅ…あ、ありがたや…」


ボロボロの身なりをした勇者と新人は、町人AとBが恵んでくれた1670Gにそっと手を伸ばした。


勇者「…すまないな新人。

…オレが、軽はずみに有り金全部使っちまったばかりに…」


新人「良いんだよ勇者様!

オラ、空腹には慣れてるだよ!

ずっと貧乏暮らしだったから、三日くらい飯抜いても平気平気。

はっはっは」


グゥゥゥゥゥゥ…


新人(!!)


新人は、とっさに自分の腹を抑えた。



勇者(…新人…)


勇者「と、とにかく、今日は何かしらないけど宿に泊まれるだけの金が手に入った。

きっとこれは天の恵みなんだろう。

とりあえず一泊して体力が回復したら、あの若者達を探して恩返しをしよう」


新人「…そ、そうだね勇者様。

宿、泊まれるんだ今日は。

オラ嬉しいよ…」



新人(…恩返しって…今のオラ達に何が出来るっていうんだよ勇者様…。

…勇者様が義理深くてやさしいのは、オラよ〜く解ってるだよ。

…でも…でも、それだけで人を幸せに出来るかっていうと…それは別の話になってくるんだよ…。

…。

…。


…オラ…自分が辛いのは我慢できる…でも…。

…勇者様が辛いのを必死に隠そうとしてる今の姿を見てると…オラ、物凄く胸が痛むだよ…)



新人は、立ち上がった勇者の背中を見た。


背中には、魔物の爪あとがくっきりと刻まれていた。


この町に辿りつくまでの間、勇者と新人は幾度と無く魔物に襲われた。


…自らの信念で魔物を傷つけたく無い勇者は必死に逃げた。

新人を庇いながら必死に…。


…その結果、勇者は幾つもの傷を体に負ってしまっていた。



 ヨロヨロとした足つきで歩く勇者。


勇者(…おっとっと…。

目までかすんできやがった…。

…少し…出血が多かったな…。

…次からはもう少ししっかり攻撃をかわさないとな…)


新人(勇者様…)




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



宿屋「いらっしゃいませお客様。

お二人ですね?一晩780Gになりますが、いかがなさいますか?」


勇者(…780Gか…。

このあたりに来ると、宿賃もえらく高いもんだな…

…だが、考える余地は無い…)


勇者「わかった、一泊頼む」

宿屋「はいかしこまりましたお客様。

…あ、そうそう、今、我が宿ではこの町で行われている祭りで使える金券をお客様にお渡ししてるんですよ。

一人100G分の。

よろしければこれ、どうぞお受け取り下さい」

勇者(…できれば金券分値引きしてくれればありがたいんだがな…)


勇者は200G分の金券を受け取った。





勇者「…さ、部屋に行こうか新人」

新人「…え?」

勇者「…ん?どうした、疲れているだろう?早く来ないと置いてくぞ?」

新人「あ、は、はい」


勇者と新人は部屋に入った。


勇者「…ふぅ。

やはり、気配を消す呪文が使えないと、戦わずして旅をするのはキツいものだな」

勇者はそう言いながら、ボロボロに破れた服を脱ぎだした。


新人「あ…あの…勇者様…」

勇者「ん?何だ?」

新人「…いや…その…

…今日は、オラと一緒の部屋で良いだか?」

勇者「…へ?

あ、スマン。

ちょっと出血が多かったせいか、頭がボーっとしててな…。

ニ部屋頼むのを忘れていた。

ちょっとカウンターに行ってくるよ」

勇者はそう言って、また服を着ようとした。

新人「あ、ま、まってくれ勇者様」

勇者「ん?」

新人「その…勇者様さえよければ、今日は同じ部屋でも良いだよ。

オラ、その…夜に一人っていうのは寂しいし」


勇者「…しかし、男女同じ部屋っていうのもアレだろう?」

新人「オラ、変な男なら嫌だども、勇者様は信頼できる人だから、全然同じ部屋でも構わないだよ」

勇者「…ふむ…そういうもんなのか。

とりあえず、今は本当に体力の限界だから、その言葉に甘えさせてもらうよ。

スマンが、そこの寝巻きを取ってくれないか新人?」

新人「あ、はい」

新人はガウンみたいなのを勇者に手渡した。


勇者「じゃあ、オレは少し寝させてもらうよ。

新人は、飯でも食って、祭りにでも行ったら良い。

金券を200G分もらったから、これ使ってくれ」


新人「…」

新人は金券を受け取った。


勇者「…じゃあ、すまんが先に寝るな」

新人「…あ、はい。

おやすみなさい」


勇者はベッドに横たわった。


新人「…」


新人(…勇者様…)




新人「あ、あの…勇者様…」




勇者「…

    …Zzz…」


新人(も、もう寝ちゃっただか勇者様…よっぽど疲れてたんだな…。




…勇者様…


…勇者様は何もわかっちゃいないだよ…。

…確かにオラは祭りは大好きだけど…でも独りで行ったって、楽しいワケ無いじゃないか…。

オラ…勇者様とお祭りに行きたいだよ…。


…大好きな勇者様と一緒に…お祭りに…。


…以前に兵士さんが言ってた。『勇者様は鋭い』…って。

…だけど、オラから見たら勇者様は鈍すぎると思うだよ…。

…勇者様はオラの気持ちにちっとも気付いてくれない…。

…女が…女が『同じ部屋でも良い』なんて…異性として好きじゃない男に言うとでも思ってるだか…)



 新人はとても切なくなった。



グゥゥゥゥゥ…。


新人「…」


せつなさと共に、新人は食堂へと向った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ホー…


 ホー…。



勇者「Zzz…

   …


  …ん」


数時間ほど眠っただろうか。

勇者は目を覚ました。


新人「…あ、勇者様すまねぇ。

眩しくて起きちまっただか?」

新人は目を覚ました勇者に気付くと、慌ててランプの火を消そうとした。


勇者「あ、いや別に眩しくて目を覚ましたわけじゃねーよ。

…それより、何やってんだこんな夜更けに」


新人「え、あ…ハハ。

これ、勇者様の服がボロボロだったからさ、

オラ、へたくそだけど縫ってたんだ」


新人は、手に持った勇者の服を見せた。


ボロボロに破れていた勇者の服は、丁寧に修復されていた。



勇者「へたくそって…上手いじゃないか新人。


さては、オマエけっこう裁縫やってたろ?」


新人「…あ、解るだか?ハハハ。

実はオラの実家、子沢山でさ。

弟と兄ちゃんが全部で12人も居るんだよ。


家族で女は母ちゃんとオラの二人だけだったからさ。

こういう作業は実は慣れてたりするんだよ。

ハハハハ」


勇者「そうだったのか…。やるじゃないか新人」


新人「ヘヘ」


勇者「…それより、傷もけっこう癒えてくると腹が減ってきたな。

ちょっと食堂にでも行って来るよ」


新人「…あ、それなら大丈夫だよ。はいこれ」


新人はそう言うと、使い捨てパックに入ったゴハンとオカズを差し出した。


勇者「…これは?」

新人「勇者様が夜中に起きて腹が減ってちゃいけないと思ってさ、

オラ、勇者様の夕飯をパックに詰めてもらっただよ。

もう、この時間食堂はやってないよ」


勇者「そ、そうなのか…。

いや、助かったよ新人。

感謝感謝」


新人「ヘヘ」


弁当を新人から受け取り、勇者は食べ始める。


勇者「いただきます」


ムシャムシャ…。


勇者「ん!うまいなにこれ?」


新人「お、口に合っただか?」


勇者「激美味じゃんこの弁当」


新人「ヘヘ。

実はオラさ、テーブルに置いてあったにんにくとかラー油とか酢とか塩とか七味とか醤油使って、味を調整したんだよ。

ここの食堂の味付け、マジキモスだったからさ」



                    (調理人「へっくしょん!」)



勇者「へ〜〜。


…マジ美味い。


…新人、オマエ絶対良い嫁さんになれるよ。

良かったなぁ。

あの日オレとたまたま出会って。


旅が終われば、オマエは晴れて自由の身だ。

きっと良い男がお前を放っておかないよ。

オレが保障する」


新人(…勇者様…。

…その言葉は…どういう意味なんだよ…)



勇者「ムシャムシャ…。

…ん?」


ふと、勇者の目に200G分の商品券が入った。


勇者「新人、行かなかったのか祭り?」


新人「ん?…ああ。

うん」

勇者「なんで?」


新人「え…だって、独りで行ってもつまらないって思って」


勇者「…あぁ…そういうもんなのか。

…スマンな。

ほら、オレずっとDQNやってたからさ。

祭りは一人で行ってもかならずどっかにツレとかが居たもんだから。

そういう発想無かったんだわ」


新人「ハハハ。勇者様らしいだね」

勇者「すまんすまん…ムシャムシャ」


新人「…」


勇者「…」


新人「…」




勇者「…なあ、新人。

お前まだ眠く無いか?」


新人「え?大丈夫だけど…」


勇者「…じゃあ、一緒に行こうか。



   …祭り」


新人「…え?」


新人はポトリと針を落とした。



新人「あ…ど、どうしたんだ勇者様急に?」


新人は慌てて針を拾いながら言った。



勇者「え?だって、一人じゃつまらないんだろ?

…オレでもしよければ、付いてくよ。

金券もったいねーし」


新人「…あ、そ、そうだよね。

金券が…もったいないもん…ね」


新人(…一瞬嬉しかったけど…そうだよね。

…オラが勇者様の事を好きなだけで…向こうはオラの事を何とも思っちゃいないもんな…


…でも…でも、よく考えたら、それでもオラは嬉しいだよ。

勇者様と一緒にお祭りに行ける。

それだけで、オラ嬉しい」


勇者「…ん?どうした?何か難しい顔をしてるけど」


新人「あ、い、いや。
ハハハ。

何でも無いだよ。


勇者様行こう!一緒にお祭り!」


勇者「うん。

…まあ、こんな状態だから、200Gまでしか振舞えないが、それは勘弁してくれよな」

新人「ぜんぜん!

勇者様と一緒なだけで、オラ満足だよ!」


勇者「そうなの?なら良かったけど」


新人「…でも、勇者様は大丈夫だか?

傷とか」


勇者「ん?オレは平気。

少し寝て随分マシになったから。

…まだ完全じゃあないけど、この程度のキズはDQN時代は毎日だったからさ」


新人「そっかぁ。

なら、オラおもいっきりはしゃいじゃおっと!」


勇者「オイオイ、加減はしてくれよ」


新人「ハハハハハ!」




 新人の縫ってくれた服を着た勇者は、


新人を連れて夜の祭りへと繰り出した。



…だが、時間はけっこう夜中。


もう開いている屋台は数えるほどしか無かった。



勇者「…すまないな新人…もう少しおれが早く起きていれば…」


新人「平気だよ、オラ。

まさか、勇者様と一緒に…その…デ、デートできるなんて思ってなかったしさ。

オラ、幸せだよ」


勇者「…そっか。

ならよかった」


新人「…」


新人「…あ、勇者様、あそこのりんご飴食べたい」


勇者「ん?ああ、よし、買おう」


屋台の人「へいらっしゃい」


勇者「リンゴ飴くれるか?」


屋台の人「へい。いっこ300Gになりやす」

勇者「え?」


新人「あぁ〜〜、予算オーバーだか…」


勇者「…はい、これ金券200G分と、あと現金で100Gね」


屋台の人「へい、まいどあり〜」


新人「え!??

ゆ、勇者様良いんだか??

今、そんな余裕なんて…」


勇者「ハハハ。良いんだよ。

ここでこの飴を買えなかったら、新人は明るい気持ちになれないだろ?

せっかく来たのに、嫌じゃんか。

100Gの為に、新人の気分を台無しにしちゃうなんて」


新人(ゆ…勇者さまぁぁぁぁ!!!)



屋台の人「はい、りんご飴ね」

勇者「ありがとう。

…はい、新人」

新人「あ、ありがとうごぜぇます勇者様…」


新人は勇者から飴を受け取り、舐めた。


新人「あぁ〜甘いだよ勇者様ぁ」


勇者「ん?ハハ。それは良かった」


新人(…今過ごしてるこの時間は、もっと甘いだよ〜〜〜。オラ、とろけそうだぁ〜〜〜)


勇者「…しかし、時間も時間だから、周りのガラも悪いなぁ。

あちこち酔っ払いだらけじゃないか」



 ギュッ。


新人「!!!?」


勇者は、優しく新人の手を握った。


勇者「新人はそこそこカワイイから、オレとはぐれてああいう連中に捕まったら厄介だぞ。

はぐれるなよ」


新人「は、はははは、はいいぃ!」


新人は勇者の手を強く握り締めた。


勇者の手はすごく汗ばんでいるように感じられたが、よくよく考えてみると、それは自分の汗だった。


そんなじゅくじゅくの手の汗にも一切触れない勇者の寛大さに、


新人の心はますます惹かれていくのであった…。







勇者「…ん?あれ?

新人、アレ見て」

新人「…ん?

…何々…あ!

あの人達は!」



 勇者と新人は、もうまばらになっている祭りの人々の中に、自分達にお金を恵んでくれた町人AとBを見つけた。


(後編につづく)

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