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とりあえず面白い話。コミュのでびクエ 五章

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 30歳の誕生日を迎えた勇者は、王の命によりその日のうちに

お供(僧侶・兵士・新人)を連れて、

遥か遠くにある天竺…では無く魔王討伐へと旅立った。


 勇者は自らの信念で【魔王とは話し合いで解決する】をモットーとしたクリーンな采配により、

兵士の呪文【ストレス】で気配を消し、魔物との戦いを避ける冒険を続けていた。

…だが、そんなある時、新人がうっかり【フェラーマシーン】とぶつかってしまう。

 戦いを避けてきた為、まだ全員レベル1の勇者達は、瀕死の重症を負いながらも、なんとか命からがら逃げだし、

意識モウロウの中次の町へと旅を続ける…





勇者「はぁ…はぁ…だ、大丈夫か皆?」


兵士「わ、私はなんとか…でも僧侶が…」


勇者「僧侶!しっかりしろ!」


僧侶「…」


僧侶をおぶっている兵士が首をふった。


兵士「声をかけても無駄です勇者様!

見てくださいこれを!」


兵士は、僧侶の破れた腹からはみ出ている臓物をつまみあげた。

勇者「うっぷ…す、すまん…。

次の町はまだか…」


兵士「このまままっすぐ行けば辿りつくはずですが…」


勇者「く…」


勇者は骨が折れて不自然に折れ曲がった自分の腕の痛みを我慢しながら、おぶっている新人を抱え治した。


新人は頭蓋が割れ、そこから脳漿がはみ出ていた。


勇者「…新人も、なんとかまだ息はあるが…死ぬのも時間の問題だ。

…はやく町までたどり着かないと…」


兵士「…焦りは禁物ですよ勇者様。

さっきのように、うっかりモンスターとぶつかってしまえば、いくら気配を消しているとはいえ、戦いは避けられません。

…この辺りのモンスターは強敵です。

今まで戦った事の無い我々ではとても…」


勇者「…解ってる。

…それより、オマエも脊髄に損傷を受けているんじゃないか?」


兵士「ハハ…バレてましたか。

すいません、だんだん右半身がマヒしてきてて…」


勇者「あまりムリするなよ。

…ちょっと休もうか?」


兵士「いえ、大丈夫です。

それより、本当に急ぎましょう。

私はともかく、僧侶と新人は一刻も早く町にたどり着かねば、死んでしまいます」


勇者「…そうだな。

すまん、いそごう」




 勇者達は、傷を負った体を引きずりながらも、なんとか町にたどり着いた。



町人「ようこそ!」


勇者「はぁ…はぁ…す、すいません、宿屋はどこにありますか?」


町人「ああ、宿屋ならほら、そこの角を曲がった先だよ」


勇者「あ、ありがとうございます」



 テクテクテク…



勇者(あった、宿屋だ!)


勇者「すいませ〜ん」


宿屋のオヤジ「いらっしい!」


勇者「…仲間が重症で、一泊お願いしたいんだが」


宿屋のオヤジ「4名様ですね?一晩42Gになりますが、お泊りになられますか?」


勇者「モチのロン」


宿屋のオヤジ「では、ごゆるりと…」




 チャ〜ラ〜ラッラ〜 ラッラッラ〜(一泊した音)




 ―翌朝ー

勇者「ふぁぁ〜よく寝た」

兵士「おはようございます、勇者様」

僧侶「…もう!私死ぬところだったじゃないの!」

新人「す、すまねぇだ…」


 一晩ですっかり傷も癒え、全快した勇者達は、食堂で朝食バイキングを食べていた。


勇者「新人、もう頭の具合は大丈夫か?」


新人「お、おかげさまで後遺症もまったく無えだ。

…それより、オラがうっかりモンスターにあたっちまったばっかりに、本当にすまねえだ…」


勇者「ははは。気にするな。失敗は誰にでもある事だ。

次は気をつけてくれよ」


新人「めんぼく無えだ…」



兵士「しかし、勇者様」

勇者「ん?」

兵士「不思議ですよねぇ…。

宿屋って、どんな死にかけの人間でも、死んでさえいなけりゃあ一晩で傷が全快する。


一体どんな仕組みになってるんでしょうかね…」


勇者「…そういえばそうだよな。

考えた事もなかった」


兵士「…あ、私まずい事言っちゃいましたかね?」


勇者「いや、疑問をもつのは良いことだと思うよ。

でもたしかに、そこはおかしな点だよな。

それに…一つの町に宿屋が一つしか無いってのも不自然だ。

よく考えて見ろよ?

宿屋が栄えてるとして、その近くに宿屋を作って客を奪ってやろうって考える奴が、普通なら出てくるはずだ。

なんでそういう輩が出てこないんだ?」


兵士「そういえば…そうですよねぇ」

勇者「…きっと、宿屋は国の上の方と繋がっているな。

でないと、この低価格ってのもよく考えたらおかしい。


薬草いっぱい買って傷を全快させようと思ったら、一体何Gかかると思う?

100じゃあ足りないぞ」


兵士「…う〜ん…そう考えると、ますます何か裏がありそうですねぇ」


勇者「…これは…調べてみる価値がありそうだな」

兵士「…では、まずは裏を取ってきましょうか?」


 チョンチョン


勇者「ん?何だ僧侶?」

僧侶「…アンタ達、私達の旅の目的、忘れて無いよね?」


勇者「ん?魔王んところ行くって事だろ?」


僧侶「わかってるじゃないの…


…じゃあ、宿屋の仕組みとかつまらないこと詮索する前に、

とっとと旅立つわよ!」


兵士「ぶ、無礼者!貴様勇者様になんて口の聞き方を!」


僧侶「ダマラッシャイ!」

兵士「ビクッ!」

僧侶「…調べたわよ、アンタ。

アンタ、兵士でも、偵察の下っ端の兵士らしいわねぇ」


兵士(…ば、ばれたか…)


僧侶「城に雇われてる公務員だからと思って黙ってたけど、下っ端って事なら話しは別よ!

今まで私に偉そうにした事、謝んなさい!

私は神官の免許持ってんのよ!」


兵士「す、すいませんでした…」

僧侶「 頭 が 高 い わ よ ! 」


兵士「はは〜ぁ」(←土下座)



勇者(う〜ん…宿屋には専属の医者が居るのかな?)




 そんなこんなで、皆は何事もなく朝食をとり、チェックアウトして町に繰り出す事となりました。



勇者「いや〜しかしアレだよな。


ここに来るまでいくつか町を見てきたけど、どこの町もまだ全然平和だよなぁ。

まあ、もちろん外には魔物がウヨウヨいるけどさ」


僧侶「なーにがどこも平和よ。

しっかり隅々まで調べたのは最初の町くらいで、他の町は一晩宿に泊まったらろくに調べもせずにそそくさと次に行ってたくせに。

もししっかり調べたら、何か問題のある町もあったかもしれないじゃないの」


勇者「…そ、それは仕方ないだろ。

おれ達の目的は、あくまで【魔王との議論】だ。

そりゃ、探せば小さな問題はいくらでも出てくるよきっと。

でも、そんなのにかまってたら、魔王のところに辿りつくのがいくらでも遅れちまうだろう」


僧侶「そりゃ、魔王のところに辿りつくのが遅れるかもしれないけど、

でも、町のちいさな問題を見つけて解決する事も、勇者として大事な事じゃないの?
 
アンタみたいに先を急いで逃げ惑う勇者なんて、誰が尊敬すんのよ?」


兵士「こ、これ…」

僧侶(ギロッ!)


兵士「ひぃ」



勇者「…尊敬…か。

おれは、誰それに評価されたいとは思っちゃいないからな。

別に人間全てに嫌われても構わねえ。

嫌われて嫌われて、それでもキチンと魔王と話し合いが出来て、世界に平和が来るんなら、

それで十分じゃないか」


新人(ゆ、勇者様かっこいいだ…/////)


僧侶「な〜にかっこつけてんのよアンタ。

アンタ、そうやってカッコつけてるけど、本当は怖いんでしょ?」


勇者「怖い?」


僧侶「ええ。

戦うのが怖いから、逃げてるだけなんでしょ本当は?」


勇者「…そう思うか?」


僧侶「ええ、思うわ。

だってアンタ、レベル1じゃないの。

それに、さっきの戦いで新人や私が危ない目に遭っても、アンタ敵を攻撃しようとはしなかったわよね?

あくまで逃げようと必死だった。


ほんっと、軽蔑するわよ!

勇者なら、味方のピンチくらいは戦って助けなさいよ!」


勇者「…皆に大怪我を追わせてしまった事はあやまるよ。

ごめん。


…でも、もしあそこでオレがあのモンスターを倒したらどうなってたと思う?


モンスターはきっと、重症を負って、そのうちどこぞで息絶えるんじゃないか?

…でも、お前らは死にかけてはいたが死んではいなかった。


…だから、あそこで逃げて、宿屋に泊まれば、敵もオレ達も全員無事かな…って思ってな。

ほら、現に全員無事じゃないか今」


僧侶「言い訳なんて聞きたくないわ!!!

あーヤダヤダ!!!

アンタみたいな腰抜け勇者なんて、声も聞きたく無いし顔も見たくないわよ!!」


勇者「…そうか、すまんな」


兵士「…」(勇者様…)

新人「…」(うぅ…オラ、何も口出しできない自分が情けねーだ…)



僧侶「…ちょっと、私別行動とらせてもらうわ。

アンタの顔見てると、いくらでも頭に血がのぼっちゃう」


勇者「そうか、わかった。

…夕方、また宿屋の前で集合しよう。

わかったか?」


僧侶「フン!

じゃあね!」


 僧侶はしかめっつらをすると、どこぞへと歩いて行ってしまった。


勇者「…」


兵士「ゆ、勇者殿」


勇者「ん?」


兵士「き、気分を害されてはおりませんか?


…私、最初は戦わない勇者様に対して…その…正直に申しますと、

僧侶殿と同じように不満を感じておりました。


…でも、こうやって共に旅を続けて、勇者様という人間を理解し、

その【血を流さない解決法】の素晴らしさが、最近少し解ってしたのです」


勇者「…フ。

そうか、それはうれしいな」


兵士「勇者様、僧侶殿に対して苛立ったりはしないのですか?

…僧侶殿は…まだ勇者様の考えをちっとも理解しておらん様子です…」



勇者「え?もしかしておれの事心配してくれてんの?

アハハ。そっか、ありがとな兵士。

おれさ、ずっとDQNやってたから、ああいうアタマの硬いのにグチグチ言われるのには馴れてんだ。


だから、何とも思っちゃいないよ。


…それに、僧侶は僧侶で、小さい頃から【それが正義】だと教育されて生きてきたんだ。


しかも、アイツはオマエらと違って神仏の教えを基盤に学んで来た身だろ?

アイツはアイツで、そう簡単に曲がるわけが無いよ。

…そのうち解る日が来るといいけどな」


そう言うと、勇者は僧侶が歩いて行った方角を眺めた。

兵士(勇者様…)





 一方その頃、僧侶は大変な場面に出くわしていた。


僧侶「え!何何!え?もう一回今の話し聞かせて!」


村人「…えぇ?もう一回ですか?

…仕方ないですねぇ。

あの、ですから、この村から北に行った洞窟にですね、

魔物が住んでいましてですね、

毎月村から一人、女の子を生け贄に出さなければ村が滅ぼされるって言うんですよ…」


僧侶「フンフン!」


村人(…この人…こんな暗いニュースを聞いてなんでこんなに目が輝いてんだろ…)


村人「…で、今晩がその生け贄の日なんですよ…。

…で、生け贄が私の娘の順番なんですよ…」


僧侶「そうなんだ!

それ、マジ話だよね!」


村人「…冗談でこんな暗い顔しますかいな…」


僧侶「ちょ、ちょっと待っててねオジサン!

いいね!」

バヒュ〜ン!

僧侶は駆け足で宿屋へと戻っていった。


村人「?」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


バヒュ〜〜〜ン!



兵士「あれ?僧侶が戻ってきた」

新人「あんれ?本当だ」


僧侶「勇者あ!!!

…あれ??勇者は?」


兵士「い、今トイレでうんこをしている所だ」


僧侶「あっそ!

トイレはあそこね?


勇者ァ!!」



 ガラガラガラ


僧侶はトイレの窓をあけ、中に座っている勇者を覗き込んだ。


僧侶「あ、勇者居た!」


勇者「…見るなや」


僧侶「勇者聞いて!

北の洞窟にね!

魔物が出て、生け贄をとるんだって!!

ようやく、問題のある町にでくわしたわね!!


今日、生け贄に扮してその魔物をやっつけましょう!!

そうすれば、勇者としての地位と名誉が確保できて、この村で英雄になれるわ!!」


勇者「…返事は後だ。とりあえずそこから覗くのをやめろ」


僧侶「え?何?

照れてるの?」


勇者「だから見るなや!」


僧侶「え?

あ!


クスッ。

小っさ」


バタン!


 僧侶は窓を閉めた。


勇者「…」





兵士「ど、どうしたんだ僧侶?やけに機嫌が良いな」


僧侶「ウフフ、そうなのよ!

聞いてよ。

この町ね、モンスターに目を付けられてて、生け贄をとられてるらしいのよ!

でね!

その生け贄の代わりに私達が箱に入って、魔物をやっつけちゃうってどう?

勇者らしいでしょ!」


兵士「た…たしかに、勇者らしいが…きっと勇者様は反対するぞ。

なにせ、あの人は血が流れる事を嫌う」


僧侶「そこよ!そこ!

よ〜く考えてみてよ。

たとえば何もしなかったとするわよ。

生け贄の女の子はどうなるの?


【血が流れる】事に変わりないわよね?


…だからきっと、勇者は動いてくれると思うの!


最悪でも、『その魔物と話し合ってみよう』って言うと思うのよ!


そうすればきっと、魔物なんて話が通じるワケ無いから、戦う事になるでしょ?


さすがにボスキャラだと逃げられないから、戦うしかなくなるってワケよ」


兵士「…う〜ん…。

なかなかよく考えを張り巡らせてるとは思うが…」

僧侶「でしょ〜?

アハハハ〜。

勇者早く出てこないかなぁ〜」



新人「あ、あの…」


僧侶「ん?」


新人「勇者様、遅くないですかね?トイレ」


僧侶「…そういえば…」


兵士「そうだなぁ…」




 三人が勇者を心配しているその時、


勇者が入っているトイレは真っ赤に染まっていた。


…そう、きっと僧侶の『小っさ』という一言が禁句だったんだろう。




勇者は自らの手首を切って気を失っていた。

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