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関西クリティックコミュの2009/7/5 けいじ2

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酒蔵イブニングコンサート 於・白鹿ミュージアム

曲目
Come again! Sweet love doth new invite Vo+G
Flow my tears Vo+G
(以上/ダウランド作曲)
歌と舞曲 (ガリレイ作曲) G
Di due bell' anime che amor piago Vo+G
Fra tutte le pene v'e pena maggiore? Vo+G
Le dimore amor non ama Vo+G
(以上/ジュリアーニ作曲)
Ave maria(カッチーニ作曲) Vo+Org

   休憩

アルハンブラの思い出(タレガ作曲) G
夢の円舞曲(藤井敬吾作曲) G
島へ Vo+C
恋のかくれんぼ Vo+C
小さな空  Vo+Org
(以上/武満徹作曲)
調子のよい鍛冶屋 C
オペラ「ルチアーナ」より Tornami a vagheggiar Vo+C
オペラ「リナルド」より  lascia ch'io pianga Vo+C
(ヘンデル作曲)

アンコール2曲



酒蔵を改造した博物館で催された今回の演奏会。
そもそも、お客さんを観客として縛り付ける気がない。
まるでホームパーティをするかのような暖かい雰囲気の中での演奏会でした。
すでに始まる時点から一般のコンサートとはわけがちがいます。

日本人がこんなにも素朴に洋楽を演奏できるのかと感心しました。
トカク、僕らは日本の音楽と西洋の音楽を対立させるけど、
もともと日本にあった音楽と同じくらい、僕らは西洋音楽を聴いています。
邦楽か洋楽かはそんなに重要なことではなく、ただ自分たちの音楽を聴く、
そういう演奏会だったと思います。

前半のプログラムの中心は17世紀以前の曲です。
これはちょうど日本の江戸時代初期で、音楽史的にはほとんど紀元前です。
これが、酒蔵という特殊な空間で演奏されたわけです。
その空気を吸えばわかりますが、これはなかなかに粋なコンセプトです。

一曲目と二曲目は英語で、しかも伴奏をギターが担当するという、
かなり変則的なプログラムでした。
その後にギターのソロ、そしてイタリア語の歌曲が三曲続きます。
おわかりでしょうか?
この、「2曲+1曲+3曲」は、聞き手が飽きないように工夫された配分なのです。
前半のラストはオルガンと歌です。
さらに、後半も曲の配分に工夫があり、
連続する二曲は編成、もしくは曲想にコントラストをつけてあります。

僕も歌曲を何度か聞いていますが、ここまで言葉を大切にした演奏は珍しいです。
歌曲といえば、音色を楽しむもので、言葉なんてあってないようなものだと思っていたのですが、
ヴォーカルの中井さんは聞き取れるようにと懸命に言葉を立てていたように感じました。
無論、会場もそれほど大きくなかったので、ワンワンと響かなかったことも言葉を聞き取りやすくしていたと思います。
けれどもそれ以上にポイントになってるなと感じたのは、中井さんの歌う姿勢です。
言葉に体重をかけるべく、一生懸命なのがよくわかります。
客席も近くて、いっそう表情豊かに伝わってきます。
これはクラッシックの演奏会よりもむしろ、演劇で観られるような迫力です。
楽譜を再現するだけでは得られない、真に迫った表現がされていました。
いい音楽というのは、疲れた後の温泉のように染み渡る感じがします。
いいメロディは単純に心に響きます。
それが怒りであれ、悲しみであれ、喜びであれ、
音楽とは、つまるところ涙をさそうかどうかなんじゃないかと思った次第です。

中井さんの歌を支えているのは、ギターの大西さんの巧みな伴奏だったと思います。
歌と伴奏の間に探り合いのようなぎこちなさはいっさい感じませんでした。
中井さんはあくまでも自由に歌い、それにあわせる大西さんの演奏は余裕を感じさせます。
二曲目を聞いているころにはすでに、ギターの伴奏は意識の外にありました。
それくらい、違和感無く自然に聞くことができたのです。

曲の解説や、プログラムの紹介を中井さんがされます。
その後ろで大西さんはチューニングする。
中井さんの利発そうな雰囲気と、大西さんの職人的なオーラがいいバランスです。

前半の最後、ようやく登場したオルガンですが、このタイミングもまた絶妙だったのではないでしょうか。
プログラムを見て休憩を予感しているお客さんに、疲れを忘れさせる新鮮さと、後半への期待をもたせたわけです。

休憩時間にも心づくしはとどまるところを知りません。
来場者全員にお茶が振る舞われ、さながらサロンのような雰囲気です。
酒蔵を洗練されたミュージアムに改造したこの施設で、
リラックスして西洋音楽を聞くという趣向は出来過ぎなほどにしっくり来ます。

後半は大西さんのギターソロから始まります。
有名なアルハンブラの思い出、これはギター曲の古典です。
その次の夢の円舞曲は藤井敬吾という日本の作曲家によるもので、
タレガのセピア調な趣とは対照的に、彩り豊かな軽快な曲です。
ここで、大西さんが初めてMCをしました。
中井さんと違って、必要最小限のことだけ(笑)
プレイヤーとしての誠実さが感じられ、好感がもてます。

プレイヤーのキャラ設定でも成功した今回の演奏会。
技巧的にも、盛り上がり方としても、後半は実に充実した内容です。
二曲のギターソロの後にはチェンバロ/オルガンを伴奏に、武満徹の歌曲が三曲演奏されました。
特に三曲目の「小さな空」は、それまでのチェンバロの音色をオルガンに変えての演奏。
これがまた郷愁をさそうのです。
昭和の小学校、歌曲の伴奏といえばオルガン。
このサウンドはすでに日本の伝統と言っても過言ではない。

ここまで来て、聞き手は心のトビラをすこしずつ解放し始めます。

ヘンデルの「調子のよい鍛冶屋」でリフレッシュした後、
いよいよヘンデルのアリアが登場します。
もはや中井さんは「舞台の上にすべて置いてこよう」モード。
鞘を捨てたサムライさながら、この日一番のパワーを発揮します。
不思議なことに、僕はこの演奏に中井さんではなく、ヘンデルを感じたのです。
それは、まぎれもなくここで生じている音楽でした。
演奏が真実の的に当たり始めると、演奏者も聞き手も透明になっていくような気がしました。
多分、ヘンデルは250年後に西宮の酒蔵で演奏されるつもりはなかったでしょう。
それでも、その歌はヘンデルが聞かせたかったものだと思います。



今回のコンサート、演奏者はいずれも20代の若者です。
一見、普通のコンサートと変わらないのですが、いたるところに自らの感性に沿って組み立てられたオリジナリティがありました。
大昔に作られた音楽が変わることはありませんが、僕らの世代にも、僕らなりのクラッシックがあるんだなあと、勇気をもらえる演奏会でした。

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