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草太郎クラブコミュの草太郎 第二章

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青い空 白い雲 燃えるように鮮やかな緑色の植物
世界はキラキラキラキラ輝いているのに
一人だけスッキリしない少年がいた。
外堀 草太郎少年だった。
朝はお爺さん所有の果実園で取れたもぎたてのフルーツと、お婆さんが5歳の誕生日に買ってくれた執事のアランの入れたミルクコーヒーを飲む。
ミルクももちろん、アランが飼育している乳牛のメイちゃんの絞りたてである。
「ラクトフェリンたっぷり。」朝食を用意するとき、きまってアランは口笛を吹いて、ご機嫌だ。
毎日毎日同じことの繰り返しで飽き飽きしていた日常から、突然草太郎は放り出されてしまった。
草太郎が所持しているのは、お爺さんが用意してくれた新しいゴールドカード(旅行保険つき)と現金3万円と鬼を断つという「鬼切丸」という赤く光る短剣。
お婆さんが用意してくれたバビ団子。バビ団子は「ピンチの時に、近くにいる人物と一緒に食べなさい」と筆で猛々しく書かれた手紙が添えられていた。
鬼切丸は見たことがないほど、つやのある深紅を纏っていた。
果たしてこれを使って鬼を倒す日が来るのだろうか。
鬼切丸は「血を吸いたい血をすいたい」と草太郎に訴えるかのように妖しく光っていた。

とりあえず地元の旅館で夜を明かした草太郎だが、環境の変化から熟睡することが出来なかった。
外堀家以外で食事を一人で取るなんてこと、今まで一度もしたことがない。
外食のときも綺麗なレストランの予約席がすでに用意してあって、綺麗で美味しい料理が運ばれてくるのを待っているだけで良かったのに。
「畜生、くそ爺め」
今まで普通だと思っていた食事が、美味しかったことを。
アランのいれたミルクコーヒーがとても香ばしくて美味しかったことを。
「畜生、水さえまずいじゃないか」
草太郎は呆然としていた。
しかもいるかわからない鬼退治をして帰らないと、外堀家に戻れないとはなんということだ。
付き合い始めたばかりのヒナコにそのことを告げるとヒナコは悲しそうに眉を寄せた。
「草太郎と離れるのは寂しいわ」
「大丈夫だよ、ヒナコ。
僕は大事な外堀家の一粒種の子供だから、ちょっと離れて暮らしていればお爺さんもお婆さんも寂しくなって頭を下げて言ってくるさ「戻ってきて草太郎」ってね。それまではバカンスだと思ってホテルや旅館を転々としようかな」
「私はついていかないわよ」
「どうして?」
「私が好きになったのは、外堀家の草太郎。財産も美貌も何もかも全てひっくるめて持っているあなたがすきなの」
「つまり財産も持っていないといやだってわけだね?すごい自信だね、ヒナコ」
「ゴールドカード一枚しか持っていない草太郎は、ちっとも魅力的ではないわ。お爺さんはきっと本気よ。」
「そんな核心をつくようなこと言って、僕が嫌いになると思わないの?今この瞬間、結構きみのこと鬱陶しく思っているよ」
「あなたの執着なんてその程度よ。
いいから西の方へ鬼を探しに行きなさいよ。あなたは鬼を見つけて、外堀家の全てを継ぐ。そうしたら今よりもっと美しくなって・・・またあなたと恋をするわ」

こうして旅立ちとともに草太郎は、生まれて初めて女の子にふられたのであった。
「まあいいか。なかなかの観察力だ」
全てが手に入る経験しかしていなかった草太郎は、執着心が薄かったのであった。
旅館に代金を払って、仕度をしていると旅館の女将が草太郎にきいた。
「ぼっちゃま、どこへお出かけになられるの?」
「西の方へ」
「あらー。ここから西のほうに姥捨て山の峠があるんだけど、最近化け物が出るってうわさがあるんですよ。だからそちらは避けられた方がいいですよ」
「姥捨山って聞くだけで辛気臭い嫌な名前だな」
しかし鬼を探しているのだから、化け物が出るといわれている方へ行った方が話は早い。
こうして草太郎は、とりあえずゴールドカードと一万円と鬼切丸とバビ団子をもって
姨捨山を目指すことにした。


一方外堀家
「おおう、おおう、おおう!!!草太郎サーーン」
草太郎以上に草太郎との別れを惜しんでいる人物が外堀家にはいた。
草太郎が5歳の頃から、草太郎専属のお世話係兼外堀家のプランテーションを管理しているアラン青年(30歳)である。
慎重190cm、褐色の肌を持つ異郷人のアランは、とても気の優しいナイスガイであった。
我侭な草太郎だったが、弟のように可愛がり、甘やかして面倒を見てきた。ちょっとマゾなアランにとって草太郎は理想的な主人でもあった。
「アランよ、そんなに悲しむな」
「だってぇーオジイサーン、草太郎さんはまだ15歳デース」
「この国では15歳といったら、元服といってもう一人前の歳なんだ」
「何十年前の話デスカー?」
「心配いらんよ、アラン。あれでも草太郎はわしの血を引いておる。
一年前の男になって帰ってきたときは、わしも色んなことを水に流して跡取りとして迎えるつもりだ。そんなことよりプランテーションのことをしっかりやってくれよ。今年のバビ団子の収穫は予定通りか?」
「バッチリでーす」
外堀家は広大なプランテーションで作られるこのバビ団子で栄えていた。
バビ団子は全く中毒性や副作用の無い、食した者を桃源郷へと誘う魔法の果実と称されていた。
各国のセレブリティが良質なバビ団子を手に入れるなら出すお金は惜しまない、これは事実だ。バビ団子の原料となっているバビリ草はとても特殊な土壌環境のみに育つ植物で、現時点で外堀家が全世界で独占していた。
長年野草の観察が趣味だったお爺さんの知識と、アランの精密な管理が巨大な富を生み出していた。アランは生来の従者体質から、でしゃばることなく、毎日嬉々として草太郎の世話とプランテーションの世話に精を出してきたのであった。
「草太郎サン、早く帰ってクダサイ」
アランは草太郎の無事を案じていた。

一方、姨捨山の峠では
谷間に化け物の声が反響していた。
「グルルルグルルル・・・」
岩をも震わす獣のひくいうなり声
草太郎は自分がたどることになる数奇な運命をまだこのとき、気づく術もなかった。

続く

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