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warm roomコミュの空と海と…

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都会の夜空に一粒の光が走った。
「ホホッ!流れ星!!」
春は喚起した表情でレンズを見つめている。
「見えたよ…何にも願い事なんてないぜ。」
俺は悪友が次に何を言って来るか解っているのでフライイングして、そう答えた。
因みに次に何を言ってくるかも大体解る。
「なんだよ…冷テェな!そんなだから女の一人もデキネェんじゃん!?」
「女なんて興味ねぇ…」
「うえ…お前モーホーかよ…まさか…俺狙ってんじゃねぇだろうなぁ?」
「あほくさ…一辺死ぬか??シナ作んな気持ちワリィ!!」
「冗談だって、怒るなよ!?それより俺の夢を聞いてくれ!!」
いつもいつも無駄話ばかりが多い春がこんなことを言い出すのは今までに無い事だった。
俺は無意識にかしこまってしまった。
「俺は世界一のハーレムを作ってウッハウハな…?」
鈍い音がした。
いや、正確にはさせた。俺が頭突きを食らわせたからに他ならなかったが……。
「うぐおおおおお…」
春はもんどうりうって恨めしそうに俺を見た。
「何で毎回突っ込みかたが違うんだよ!?避けねぇ…てか本気で入れやがって…この石頭ツ…!」
「真面目な話かと期待させるお前が悪い。ついでに答えてやると、避けられたらつまらねぇからだよ」
因みに春の動体視力…ってか反応速度は尋常じゃぁない。
現に俺以外の奴の突っ込みはことごとくかわしている。
しばらくして立ち直った春は今度こそ語り始めた。

コメント(3)

「俺は卒業したら東京へ行く。やりたい事が見つかっちまったんだよ…これが。」
「へぇ…なんだよ?」
「へっへへ…カメラマンだよカメラマン。しかも世界をまたにかけて活躍する大物になってやる!!」
「……モテるからか??」
「茶化すなよ…」
真面目に聞いたつもりが逆に冗談に取られてしまった。
「この星空も結構綺麗だろ…だけどな、写真家の撮った星空なんてのはこんなもんじゃねぇんだ。俺、もっとすげぇものがみたい。大物になって世界中を回っていろんなものを皆に見せてやりたいって思うんだ。それって…最高に格好いいだろ!?」
普段、真面目な話なんて一切しない奴がいきなりそんな話をするもんだから
いざ聞いてみた俺は、
「ああ、そうだな…」としか言えなかった。
「東京に写真部のすげえ高校があるらしくってなぁ、そこに進路決めた。まだ誰にも言ってねぇんだ。」
「そうか、頑張れよ。」
「お前はどうなんだよ?」
「俺は…まだ何も…」
正直夢なんて無いし部活や趣味を将来の進路にするなんて想像もつかない。
春のことをいい加減でなんとなく生きてる奴だと思ってた俺は、急に取り残された気分に…不安になった。
「まぁまだあせる事なんて無いぜ。俺だってどうなるかわからねぇし。」
「ああ、そうかもな…」
「それよりそろそろ吹いてくれよ。俺お前のハーモニカ聞きに来たんだぜ。」
そうだった。ここへ来た本当の目的を忘れる所だった。
学校帰り、俺達は廃墟となった無人のビルに気が向いたら登ってだべって、春は望遠鏡を持ち込んで天体観測。俺はハーモニカやオカリナを持ち込んで吹いていた。
クラスの違う転校生の春と出合ったのもここだった。
都会では気ままに音を出せる所がなかなかみつからず、…特にうちの安アパートじゃ壁も薄い。
中学に入って下校中にここを見つけた。不法侵入には違い無かったけど…

俺は最近のヒットソングを春からリクエストされ、吹き終わると洋楽、上を向いて歩こう等数曲吹いた。
「風流じゃのう」
「じじいかお前は」
子守唄がわりに居眠りしかけていた春を起こすと
帰ろうとしたその時だった
「いいねぇ…青春だねぇ…だけど不法侵入は良くないんじゃないかな?」
俺たちのもう一人の友人が現れた。
「いつも暇なんすか?佐藤さん??」
この辺の駐在所の佐藤さんだ。一応警官やってる。
「またサボりですか?」
「違うよ、今日はもう上がり。」
確かに私服だった。
佐藤さんはこの場所のことで言えば、俺たちより
【先輩】だ。
「俺も君らくらいの年頃は色んな夢があったもんさ。その1つが警察官だっただけで…」
「でも、夢叶えてるじゃないですか?」
俺は急に夢の無い自分が恥ずかしくなった。
「ははは、小学生は宇宙飛行士、それからシェフ、消防士、と来て、警察官だぜ??なれたのはなぁ…わらっちまうだろ?」
「俺は叶えてみせるゼ!」
春が言った。
「ようし、それじゃ叶えろよ!応援してるぜ。俺も刑事目指そうって考えてんだ。こう見えてもまだ24なんだぜ〜俺。」
そう言いながら
カンのカフェオレを袋から3本出しながら言った。
「こういう時はビールとかじゃねぇのかよ!?」
「カフェオレじゃちょっとぱっとしないですよね。」
「俺はビール嫌いなの。苦いし。苦いのは人生だけで十分。飲み物くらい甘いの飲もうぜ。」
「せめて炭酸が良かった…」
「ああ、大事なこと言うの忘れてた!!ここ、一週間後から取り壊しなんだは。なんでも大型の電気店が立つんだとさ。」
「「ハァ!?」」
ハモってしまった。
「どういうことですか!?」
俺達は佐藤さんに詰め寄った。
「気持ちはよおく解るよ…この場所がなくなって淋しい思いをするのは僕も同じだ。」
「でも俺達ここがなくなったらどうやって放課後暇潰しゃあいいんすか!?」
「そうじゃねぇだろ!こいつは星を見に、望遠鏡まで担ぎ込んで…俺だってここなら自由に吹けたのに…」
俺は春に突っ込みを、ハーモニカで小突いてやろうとしたが、あっさりかわされてしまった。
「まぁそう落ち込みなさんな、お前らだってここから旅立つ日が来んだろ?秘密基地は子供のもんだ。お前らはいずれ大人になんなきゃなんねぇ…世界は広いぜぇ?」
「けどなぁ…」
春はふに落ちない様子で空を見上げた。
「僕だって辛いんだぜぇ…憩いの場所が無くなるのが…ここから見える夕日なんて最高の眺めだろ〜??」
「秘密基地は大人には無いんじゃ無かったんですか?」
「ははは、偉そうなことを言っても僕もまだまだ子供ってことさ…ごっこ遊びが大好きな子供のまんまかも知れねぇ…」
俺は自分たちのやっていることまで<ごっこ遊び>と言われた気がしてムッとしたが、佐藤さんの横顔に孕んだ哀愁に言葉が出てこなかった。
「オシ!!じゃぁお別れ会やろうぜ!!」
春が言い出した。…いやお別れ会って何に!?とか言う前に続けられた。
「いいねぇ青春だねぇ…もちろん僕も入れてくれるよな」
「……」
「……」
「…お、おいおいいいれてくれよぉ…僕だってマジで淋しいの我慢してるんだよぉ〜」
「冗談に決まってんじゃん。」
「そんな泣きそうな顔しないでくださいよ。」
どうやら色々我慢してただけの様だっ
た。なんでもなさそうなようでしっかり辛いのは間違いない様だった。
何処からともなくバイクの音が響いてくる。気づけばもう夜8時を回ろうとしていた。
「やべ…もうこんな時間かよ!?」
「最近不良連中が多くて困るぜ!この場所も夜中はヤンキーどものたまり場になってるっぽくってなぁ…」
「みたいですね。」

俺達は次の土曜の昼間に会うことを約束して家路についた。

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