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∞コワバナ∞コミュの[058]鬼童子

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ある村に夏休みに母親の里へ帰郷した小学生A君のお話です。


村に着いて、お婆ちゃん達に挨拶を済ませさっそく山や川に遊びに行ったA君。

初めの何日かは一人でも楽しかったのですが、やはりだんだん遊び相手が欲しくなるものです。

何時ものように、遊びに出かけようとしたA君に、実家の隣に住んでいるお爺ちゃんが

「この村には子供が少ないから友達もなかなかできんじゃろ」

と話し掛けてきました。

A君にとって知らないお爺ちゃんではありません。そのお爺ちゃんには魚の釣り方、虫の獲り方、危険な場所などを教えてもらったりといわゆる遊びの師匠でした。

「今日は昔話をしてあげるから寄っていきなさい」

暇を持て余すA君に断る理由なく、庭の縁側の廊下に腰掛け、話を聞かせてもらいました。

その話の内容は…。


そのお爺さんがA君と同じ位の年の頃の夏休みに、友人たちと夜に肝試しに行こうという事になったそうです。

今ではないが、昔は山奥に誰も使っていない小屋があり、お爺ちゃん達は隠れ家、秘密基地にしていました。
そこへ深夜に家族が寝静まったらこっそり家を抜け出し、みんなで泊りに行き、朝早く家族が起きないうちに帰ろうという、お化けの怖さ、家族にバレそうなスリルのある計画を立てたそうです。

そして決行の夜、お爺ちゃん、B君、C君と三人で集まりました。

B君が電灯を持っているので先頭が決定、そしてC君、お爺ちゃんと続きます。
山に着くまでは月明かりで明るかった夜道も、山の中は木々が月明かりをさえぎり電灯で照らされている所以外は漆黒の暗やみです。

遊び慣れた山ですが、夜は知らない所の様に雰囲気が違ったそうです。
たまに聞こえてくる鳥の羽音や風で枝が揺れて木の軋む音が、普段ならなんでもないのに怖く肝試しらしくなってきました。

三人とも山に入ってから怖いせいもあり無言のまま小屋を目指しました。
そして小屋に到着。やっぱり昼間と違い、不気味。三人の隠れ家、秘密基地なのにまるで別の小屋のようでした。

そしてB君が

「さ、入ってみんなでお菓子食べようぜ」

C君「そうだね、俺いっぱい持ってきたよ」

お爺ちゃんは飲み物担当で、水筒にお茶をたくさん入れてきました。
中に入り電灯を小屋の真ん中置き、お菓子や飲み物を口にしながら談笑を始めました。

明日の朝起きられなかったらどうする? とか、来るまでは怖かったけど落ち着いたら怖くないね。など次第に三人はキャンプみたいな気分に楽しくなってきました。

やがて話し疲れて眠くなってきました。

お爺ちゃん「今何時かな?」

B「多分、12時過ぎぐらいじゃないかな」

お爺ちゃん「そろそろ寝るかぁ」

C「そうだね、朝早く帰らないとマズいし」

そんなわけで寝る事にしました。B君が電灯の電気を消すと真っ暗。三人は電灯を囲むように横になり寝始めました。

そして寝てからしばらくして、お爺ちゃんは物音で目が覚めました。それは、おそらくC君が小屋の戸を開けた音でした。

「あぁ、小便だな」とB君が言いました。

お爺ちゃん「やっぱBも起きちゃった?」

そしてしばらく経って、C君が帰ってきません。

お爺ちゃん「C遅いね」

B「あいつ、まさか大のほうなんじゃない?」

クスクス笑っていると、足音が聞こえてきました。

B「帰ってきた、寝ちゃっとこうぜ、朝にからかってやろうよ」

お爺ちゃん「ハハ、そうだね」

と言う事で二人は寝たふりをしてました。

戸が開く音がして、C君が横になった感じでした。
そして、また寝入った所でまた戸を開ける音で少し目を覚ましました。

お爺ちゃんは今度はB君だろうと、そのまま気にせず寝てしまいました。
そして、小屋の隙間から夏の日差しが差し込む光と鳥の声で目が覚めました。

起きたお爺ちゃんの目に入って来たものは…
なんと、なにか切れ味の悪いナタのようなもので首を切られたB君でした。

お爺ちゃんはうわっ! っと、飛び起きました。
どうしようと思っていると、C君もいません。

とにかく、大変な事になってしまった。
こんな事してた事がバレて怒られるなんて場合じゃなくB君が死んでいる。

村に帰って早く大人に知らせなくちゃ。と急いで村に帰りました。
帰る途中に

「Cはどこだろう? もしかして俺より早く起きてBに気付いて村に帰ってるかも」

そうこうしてるうちに村に着いて、お爺ちゃんは自分のお父さんに事情を話すと、お父さんは急いで他の大人たちを集めて山の小屋に行きました。お爺ちゃんも大人たちの後ろについて行きました。

当たり前ですがやはりB君は死んでいました。

「おい、C君はどうした?」

お父さんがお爺ちゃんに尋ねます。

「朝に起きたときにはいなかった」

「そうか…」

残念そうにお父さんが言います。

大人たちは集まって話していました。その中にはB、Cのお父さんもいました。
お爺ちゃんは怒られるだろうなぁと小さくなっていました。

大人たちのボソボソ話が少し聞えてきました。

「熊じゃないのか?」

「違う、あの子だけ無事なのは変だろう」

「まさか、まさかな…」

そんなふうに聞えてきました。

「お前はもう家に帰っていろ」

とお父さんに言われその日は家に帰り大人しくしていました。

夕方にお父さんが帰ってきました。お父さんに

「B君、C君な、熊に襲われたようだ。C君も小屋から少し離れた所で見つかった。もうあの小屋には絶対に近寄ってはいかんぞ!」

と厳しく言われました。


「っとこういう話じゃ」

お爺ちゃんが話し終えました。

A君は本当に熊だったの? と聞くと。

「ワシも大きくなってから、父親に教えてもらったんじゃが。

あの山には大昔に「鬼童子」という化け物がおって、村の子をさらっては食べていたんだと。困った村人達は偉いお侍さんを頼んで退治してもらったそうじゃ。
退治されてしばらくは何もなかったんじゃが、たまに子供が神隠しにあうことがあって、鬼の怨念と言う事でお祓いしたらそんなことも無くなった。

それからはずーっとワシの事件まで、村の伝説になっておった」

「じゃあ、お爺ちゃんの友達二人を殺したのって、その「鬼童子」って事なの?」

「多分な、おそらくCは小便に行った時に殺されて、Cになりすました「鬼童子」が入ってきてBを殺していったんじゃろう。そしてワシがBだと思っていたのも出ていった「鬼童子」だったんじゃろうの」

「お爺ちゃんはどうして無事だったんだろうね?」

「さぁ、ワシに気付かなかったのかも知れんのう」

お爺ちゃんは笑いながら話します。

「A君もあまり遅くまで外で遊んでいてはイカンぞ」

「はーい」


話を聞いていたら、お昼になっていました。A君はご飯を食べに家に帰り、午後は川に遊びに行くことにしました。

そして、川に行くと珍しく子供がいました。A君と同じ位の子供でした。しゃがみこんで何かを見ています。

「友達になれるかな? 話し掛けてみよう」

A君はその子に近寄り

A「こんにちは、何見てるの?」

?「メダカだよ」

その子は石で小さな囲いを作って、その中に捕まえた小さな魚を眺めていたようでした。

A「僕も見てていい?」

?「いいよ。君ここら辺の家の子じゃないね? どこから来たの?」

A「東京だよ。君は? どこに住んでるの?」

?「この村のちょっと離れた所だよ、今日はちょっと遠出をしてみたんだ」

その子は色白できれいな顔立ちの少年で、A君は自分と一緒の境遇で田舎に遊びに来たのかなと、顔を見たとき思ったそうです。

?「はぁ、魚も見飽きたし何かして遊ぼうか?」

そういうと少年は、石で作った囲いを壊して魚を逃がしました。

A「うん。でもいいの? 魚逃がしちゃって」

?「別にいいよ。でも前にもっと大きい奴を間違って逃がした事があるよ。あれは悔しかったなぁ」

そういうと立ち上がり、寺に行こうと言いました。A君は友達ができそうだと期待しながらその少年について行きます。

寺に着いて、二人でかくれんぼやだるまさんがころんだ等、誰かいないとできない遊びをしました。

一息ついて、A君はお爺ちゃんから聞いた話を思い出し

A「ねぇ、鬼童子って知ってる?」

?「鬼童子? 知らないな」

A君はお爺ちゃんから聞いた話をしました。

話を聞き終わって、少年はかすかに笑ったようでした。

?「アハハ、そのお爺ちゃん嘘つきだよ。そんな話ここら辺で聞いたことないよ」

A「えー、そうなの? 隣の爺ちゃん嘘つかないと思うんだけどなぁ」

?「でも、今日は遠出をしてみた甲斐があったよ」

A「甲斐って?」

?「面白い話が聞けたって事さ。そうか、君の家の隣かハハハ」

A君はそう言って笑う少年を見てギョッとしました。白くきれいな顔にスッと刃物で切ったような感じの薄い唇が妙に吊り上がり、細く切れ長の目は少し上を見上げた感じでした。

子供ながらに不気味な感じを覚えました。

?「さぁ、今日はもう遅いしさよならしよう」

そう言った少年にはさっきの不気味感はなくなっていました。

A君は気のせいだったのだろうということにして

A「さよならする前に忘れてたんだけど、名前おしえて。僕はAって言うんだ」

?「そうだったね、僕は丹羽志良男」

A「丹羽君だね。また明日遊ぼうよ」

丹羽「うん、多分遊べるよ。じゃあね」


二人は別れA君は家へ帰り、お婆ちゃんやお母さんに丹羽くんという友達ができた事を話しました。

お婆ちゃんは

「そんな名前のウチがここら辺にあったかな? うーん、まぁ遊び相手が出来て良かったの」

その日はA君は遊び疲れて、早々と寝てしまいました。


次の日、人の声の騒々しさに目を覚まされました。
何事かと起きて居間に行くと誰もいません。皆外にいるようでした。

外に行くと、大人達が隣の家に群がっています。
帰ってきたお婆ちゃんにどうしたの? と聞くと。

「隣のお爺ちゃんが、死んじゃったみたいなのよ。まるで鬼童子にやられたみたいだ。熊ともナタとも言えん傷みたいじゃと他のもんが言っておった。隣んち行ってはいけないよ」

A「え? お爺ちゃんが? 鬼童子にやられたの? でもその話嘘なんでしょ?」

お婆ちゃん「おや、Aは鬼童子を知っておるん?」

A「うん、昨日隣のお爺ちゃんに聞いた。それから、それは嘘だと丹羽君から聞いた」

お婆ちゃん「その丹羽君の名前は?」

A「たしか志良男君だったよ」

お婆ちゃん「どんな子じゃった?」

A君は丹羽君の特徴をお婆ちゃんに教えると…

お婆ちゃんは紙に何か書きながら、うーんと少し考えたりしてました。

お婆ちゃん「A、お前が昨日遊んだ丹羽君はおそらく鬼童子じゃ」

「え? なんで丹羽君が鬼童子?」

A君はわけがわかりませんでした。

お婆ちゃんが差し出す紙を見ると「にわしらお」その下に「おにわらし」と書かれていました。

A君が顔を傾げていると、お婆ちゃんが

「字を並び変えてごらん」

『に、わ、し、ら、お』
『お、に、わ、ら、し』

 「鬼童子!?」

そんな、丹羽くんが鬼童子? 別に普通の同じ年の男の子が? 信じられない!

信じられない? A君は引っ掛かる事がありました。

鬼童子の話を聞かせてくれたお爺ちゃんの事を話した時の丹羽君の笑い方、遠くまで来た甲斐、大きな奴を逃がした。

すべてが繋がった様な気がしました。


「たまに人間の子に化けて人里に現れるんじゃよ。その時は決まってAの言う様な子じゃ。その時だけは悪さはせんが鬼は鬼じゃ」

「昔に殺し損ねた隣の爺さんの事を思い出して山から探しに来たのかもしれんの」

お婆ちゃんが茶をすすりながら言いました。

A君は今度は自分が狙われるかもと不安になりましたが、東京に帰る日まで丹羽君の姿を見る事はありませんでした。


小さい頃、その日遊んだ限り会っていない子の記憶がある人は、もしかすると「鬼童子」だったかもしれませんよ。

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