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∞コワバナ∞コミュの[001]おじゃま道草〜前編〜

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自己責任でお読みください

7年前の6月、夜10時ごろ、自宅の電話がなりました。
いつになく、どきっとする音だったのを覚えています。ミュージシャンの馬場君からでした。

「どうもオカシイ、口では説明できない。夜分申し訳ないが、来てみてほしい」

とのこと。馬場君はバンドの合宿所として、川越に近い、ある一軒家に引っ越したばかりでした。いつにない彼の深妙な声に、いやーな緊迫感を感じましたが、長い付き合いの彼の頼みなので、行ってみることにしました。そして、出かけようと玄関にでた瞬間、目の前のドアを誰かがいきなりノック。開けてみると、友人の茅野君が一升瓶をかかえて立っていました。馬場君に呼ばれて出かける旨を話すと、

「馬場君とは面識も有るし、単独で行くべきではないと思うので同行する」

と言い出しました。とりあえず車を出し、その車中で話し合いました。その日はたまたま暇で、急に私の顔を見たくなったのだそうです。茅野君はもともと感の鋭い人で、私の顔を見た瞬間、「何かあったな」とピンときたといいます。馬場君はいくつかの因縁を抱えた人で、以前から問題を起こしやすいタイプの人でした。茅野君は、私を通して、馬場君の波乱万丈ぶりを知っていましたが、今回は今までとは違うように感じる、という点で、意見が私と一致しました。

車で30分ほど走ったとき、茅野君が突然、「うわぁーーっ」と声をあげました。話を聞くと、

「一瞬道路の前方に、身長50mはあろうかという真っ赤な仁王さんが、『来るな!』のポーズで立ちはだかった」

というのです。彼はその当時、仏像の知識をほとんど持ち合せておらず、「仁王」と表現しましたが、後日写真集を見せて確認したところ、明王部の中でも不動明王の立像に一番似ていたそうです。初めての訪問だったので、馬場君に最寄りの駅前まで迎えに出てもらいました。

馬場君を駅で拾い、車中で「何事か」と問うと

「格安で二階家、いい物件だと思ったが、どうもオカシイ、とにかく来て、見てから、意見を聞かしてくれ。」

といいます。到着すると、そこは目の前を高速道路が走り、雑木林に三方を囲まれた10戸ほどの分譲住宅の中にある一軒でした。囲まれていない開いた方の、道路に面した角にたっており、築10年位でした。車を降りると、まず、私はその家に向けてカメラのシャッターをきりました。梅雨の中休みといった気候で、蒸し暑い夜でした。「はまったな」…その場に立った時の素直な感想でした。その家の外見で気になった点を挙げてみましょう。

・全ての敷地内の雑草が外側へ向かって伸びている。

・敷地内の南西の角に3本の木(高さは2階の軒とほぼ同じ)がある。

・3本の内、南よりの1本は立ち枯れになっている。

・分譲住宅なので、周囲の家屋と同時期の築のはずだが、それだけが傷みが大きい。隣の住人が網戸ごしにこちらを覗いているのを気にかけながら、中へ。

「むさ苦しいところだが、まあはいってくれ。」

馬場君のさそいに、玄関へ一歩。

「く、くさい、何だ?」

…というのが内部を見た第一印象でした。茅野君は開口一番、

「猫、飼ってるのかな?」

私もそれに相槌をうつと、馬場君は、

「うちには居ないが、周りには何匹かいるよ。匂う?やっぱりなあ。いくら掃除しても、抜けないんだよね。」

玄関から上がってすぐ左が階段。玄関(西)から正面(東)へ真っ直ぐに廊下があり、突き当たり右(南東)がダイニングキッチンで、左(北東)が浴室。私たちは、上がって右手(南西)のバンドの練習室に通されました。

「す、涼しい…いや、寒い…」

エアコンは?…な、ない!、。窓は?…閉じてる。窓の外に妙に目立つものが…。よく見ると枯れ木でした。

「この部屋が1階では一番まともなんだ。」

マネージャーの女の子が茶を入れている時、やっと馬場君が話を始めました。馬場君の話の概要は、

・1階で寝るとうなされることがある。

・2階に全員が居る時、1階から話し声が聞こえる。

・1階から上がってくる足音がしたのに誰も来ない。

・引っ越してきた時、押入の中にケース入りのゴルフクラブ一式が残されていた。

・台所に行くのをみな嫌がる。といった現象なのですが、猫について次の様な体験を話してくれました。

「昨日、2階に居たら1階で物音がしたんで、『買物に行ってたヤツが戻ってきたかな?』と思って下へ降りてきたんだ。そしたら、玄関のドアは開いてたんだけど、誰も居ない…。よく見ると、近所の猫が入り込んでたんだな。ところがそいつがなかなかつかまらない。ちょっと掴むと、必死で引っ掻いて抵抗する。この引っ掻き傷、見てみなよ。そこで、窓を開けてやったんだな。ところが追い回したけど、猫は窓を無視するんだね。そして、そのうち、猫が玄関へ走ったんだ。『やった、出てくぞ…』そう思ったら、猫が変な行動をとったんだ。玄関に降りるやいなや、ビタッと立ち止まって急に向きをかえたんだね。そして俺の足下をぬけて階段上がって、2階の窓から屋根越しに逃げたんだ。で、さぁ…。その、玄関での行動なんだけど、本当に変なんだよね。何か、目の前に恐ろしいものでもいて、あわてて引き返した…という感じなんだ。俺に追いかけられるよりは、よほど怖そうだったよ。」

この話を聞いた茅野君は、

「その猫、何かに操られてたんじゃないかなぁ。」

と、コメント。私は、その話の間も、廊下を猫が行ったり来たりしている様な感じがしていました。

「その猫はたまたまそうなっただけで、普段は生きていない猫がうろうろしているみたいだね。」

私がそういうと、すかさず茅野君は、

「うん、今も廊下をふっと影が通った様な気がしたよ。」

と、意見が一致。しかし、大切なのは、さっきの茅野君のコメントです。私は、茅野君の勘(感)を生かすつもりで、彼にたずねました。

「でも、本体は猫じゃないな。台所へ行ってみる?」

「いいや、今はよすよ。明後日は休みだから、明るいうちに来よう。」

この後、馬場君からもう少し話を聞き、新曲のデモを聞かせてもらいました。台所には足を踏み入れず、午前2時ごろ帰途につきました。茅野君を送った後、私は自宅へ戻りました。

「ん?誰も居ないはずの弟の部屋でひとの気配がする……。」

電気をつけて、覗くと…やはりいない……。来たな…。私は、「くるな!」と強く念じ、気配が消えたのを確認してから床に入りました。

明けて、すぐ、私はフィルムを現像に出しました。その日の夕方には仕上がりますから…。職場へ行くと、弟の大輔からの伝言がありました。

「今晩、帰る。友人を呼ぶ。酒、買っておいてくれ」


弟は、職場が遠いので、その近くに下宿しており、およそ月に1度、衣替えに戻っていました。私は仕事の帰りに、上がったプリントを引き取りました。持ち帰ると、まず、ネガで現像ムラや光線洩れ、傷などをチェックし、それからじっくりプリントを調べました。枯れ木がとても目立ち、何枚かのカットに気持ちの悪い印象を与えていました。と…よく見ると、そのうちの1枚に…南西の角のブロック塀に小さい赤い光点(豆電球でも点いているかように見える)が写っているものを見つけました。同アングルの他のカットにはなく、そのカットにだけ写っていました。ネガにもきちんと写っており、物理的な処理の過程で出来たミスとは考えられません。赤…一般に負のエネルギーです。小さな光点…強い霊体です。色の感じからも判断して…結論…祟りじゃーーっ!ちょうど写真を見終わった頃、大輔が友人の榎本君を連れて現れました。そして、私がテーブルの上の写真を片付けようとすると…

「何写したの?」

「お化け…じゃ。」

「へぇーー、どれ?見せて……家?…お化け屋敷?」

そのうち、私と大輔とのやりとりを見ていた榎本君が身を乗り出してきました。

「見せてもらっていいですか?」

彼が写真をめくっている間に、大輔が彼について教えてくれました。

学生の頃の剣道部の仲間だそうですが…何と…彼は霊感が強く、それを見込まれ、密教系の寺院でアルバイトをしている…という変り種だそうです。彼によると…

「こういう赤いのって、神仏の罰てぇことがあるんです。強いなあ…。うかつなことは言えないので、これ、2・3日預っていいですか?師匠に相談して見てもらいます。僕だったら、ただですから…」

ネガがあるので茅野君には焼き増して見せればよい、ということで、私は例のカットの他、数枚を榎本君に預けました。榎本君は遅くまで飲み、その日は一泊して帰りましたが、大輔は馬場君の家に興味を示し、翌朝…

「今日、茅野さんと馬場さんの家に行くんだろ?俺、明日も休みだからつきあうよ。」

と言いだしました。

「あぶねぇぞ…憑かれるぞぉ〜。」

「武道やってるからかも知れないけど、おれ、そんなの平気だよ。」

約束の正午に茅野君が現れ、私たちは3人で馬場君宅へ向かいました。私は、例の猫が気になっていたので、途中、鰹節のパックを買っていきました。馬場君宅へ着くと、ちょうどバンドの練習中でした。すぐに終わると言うので、待つ間に建物の周囲を調べることにしました。林が切り開かれ、宅地として分譲された場所のようでは在りましたが…近くには古そうな農家が点在しています。

「わざわざ木を切らなくても、農地があるのになぁ」

私はだんだん土地の成り立ちが気になり出しました。そして、しばらく歩き回るうち、

「ん?水の気配がする…池か井戸か…」

溜まった水のようです。場所は限定できませんが、どこかにあったと思われます。そのうち、馬場君宅が静かになり、女の子(船井さん)が呼びに出てきました。中へ入ると、まず、使わない皿を2つ貸してもらい、1つには水を入れ、もう1つには鰹節をのせました。猫の気配がもっとも多い階段の下に、それらを置きました。そして、しゃがんで手を合わせると、「ここにとどまるな、去りなさい……」と念じました。それから5分位後でしょうか…練習室でお茶を飲んでいると、廊下の方から、「ニャン」という鳴き声がしました。

「また、猫がはいってきたか?鰹節狙ってるんだろう。」

馬場君が立ち上がって、廊下を覗きました。

「ありゃ、いない。今、鳴いたよなぁ…」

馬場君が首をかしげながらもどり、また元の雑談になりました。そしてその後、猫の気配はぱったりと途絶えました。ところが、この猫供養が、本体をつついたようです…。さて、3人でキッチンへ…。6畳の広さがあるダイニングキッチンでしたが、だれもそこで食事を取らないため、テーブルなどの家具もなく、広々としていました。まずは写真撮影…「ん?、なんだぁ、あれは…。
柱の上部に、貼っていた紙を剥がしたあとがある…。きちんとはがさず、びりびりになって、中央部が残った状態です。黄ばんでいて、すごく古そうな感じでした。しかも、そこだけでなく、部屋の四方に同じものがある…。御札で何かを封じた…しかし破れた…。最も剥がれていないものに近寄って、見てみると、真ん中が妙に黒い…絵?…黒犬。御嶽山か…?

「足がちくちくする…」

いるな…。私は、茅野君へ向かって、

「何か感じない?」

「何か、足がひりひりするよ。」

「そう…俺と同じだね。どの辺がひどい?」

「この流しの前のあたりかな。」

「そうだろう…。」

またしても意見が一致。それまで黙していた弟の大輔が口を開きました。

「すごい…殺気がある。目を閉じると、今にも誰かが斬りかかって来そうな気配があるよ。それに、昔痛めた腰が痛くなった。弱いところをつついて来るみたい。この感じ…修学旅行で関ケ原へ行った時以来だな。普通は、俺、こういうの平気なんだけど…ここは別だよ。何がいるんだ?」

「ここで、『見る』と危ないな。帰ってからな。」

私は、「これは、猫のようなわけには行かないな。無理だな。」と思い、馬場君に転居を勧めることにしました。そして、私がもう2、3枚写真を撮ろうとすると、茅野君が、

「何か気持ちが悪くなりそうだから、向こうでお茶飲んでるね。」

と言って台所をでました。

「俺もそうするよ。」

大輔も同じことを言いだしたので、私も出ることにしました。練習室へ戻ると、馬場君が横になって寝ていました。

「明け方までかかってバンドスコアを書いたって言ってたからね。でも、何か安眠してるようではないみたいね。」

船井さんがタオルケットを馬場君にかけながらつぶやきました。しばらくすると、うつ伏せの馬場君がうなされ始めました。なにやら、寝言で、うん、うんといっています。

「あれ?」
よーーく、馬場君の方を見ると…何か、気配があります。彼の上に、影の様なモノがのっているようです。私は茅野君に、

「どう思う?」

と意見を求めました。

「これ、金縛りじゃぁないの?押さえ付けられてんのかな?」

茅野君の直感は、当てになります。私は、確信しました。

「馬場君は、意思が強く、行動力もあり、覚醒時は強い…したがって、疲れてうとうとしている様な弱い時につけこんで憑依してくるんだ。」

船井さんが、

「起こそうか…」

と、馬場君の肩をゆすりました。でも、起きません。相変わらずです。

「あっ、ちょっと待って、もし、意識が飛んでいたらマズイ。帰還に失敗するかも…無理に起こさないで。」

私は、強く揺すろうとした船井さんを制しました。その時、茅野君が…

「あれぇ…何か動いたよ。馬場君の背中の上…」

と言い出しました。そして馬場君の背中の上、30cmほどのところに、手をもって行こうとして…

「おーーーっ。」

彼は、あわてて手を引っ込めました。

「ああ、ぞっとした…ちょっと、やってみなよ。」

私にも促します。なんと茅野君にも見えたのです。

「やばいな。俺たちも影響をうけてるな…。」

私は、そう思いながらも、彼に倣いました。そおーっと手を出す。動いている影の輪郭を抜け、突っ込む……。ひんやりとしています。冷蔵庫に手を入れたときのようです。それでもヤツは動こうとしません。そおーっと手をひっこめる。冷たさは消えます。ヤツはうごきません。

「ねっ、冷たいだろ?」

と茅野君が同意を求めてきました。

「隙間風なんか通ってないよね…やっぱり居るんだね。」

彼は、いつになく真顔です。私は、乗っているヤツが、いまだ退こうとしないので、除霊九字を切りました。そしてそれが効いたのか、ヤツの気配は消えました。いや、一時的に退いただけですが……。切った後、馬場君を揺すると、彼はすぐに目を覚ましました。起きるなり、彼は、

「ああーーっ、疲れた。おれ、うなされてなかった?揺すったでしょ。分ったんだけど、夢がさめないんだ。これで4回目かな。同じ夢見たのは…2階じゃ見たことなくって、いつもここで寝た時にだけ見るんだ。おれ、何か寝言を言ってた?」

と、目をこすりながら、一気に話しました。

「うん、うん…っていってたよ。」

船井さんが答えると……

「そうか?おれ、うんう…って…自分では首を振ってたつもりなんだけどなぁ…。聞いてもらえる?」

そう言って、馬場君は夢について語り始めました。




〜後編に続く〜

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