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iPS細胞とES細胞コミュのヒトクローンにおける倫理的問題の回避法

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2008-02-19 00:00:00
ヒトクローンにおける倫理的問題の回避法
テーマ:クローン

今回は前回の記事の最後に書いたように、クローン技術がヒトに応用される場合に起こりえる倫理的問題をいかにして解決するかという方法論についてです。。



まず、クローン人間の作製を回避する方法として、マサチューセッツ工科大学(MIT)のRudolf Jaenischらは、胚盤胞期胚の栄養外胚葉において発現し、胎盤の形成に関与している遺伝子であるCdx2を欠損させ、着床できないようにしたクローン胚からES細胞を樹立するという方法を発表しています。



Nature. 2006 Jan 12;439(7073):212-5
Generation of nuclear transfer-derived pluripotent ES cells from cloned Cdx2-deficient blastocysts.
Meissner A, Jaenisch R.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16227971?ordinalpos=38&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum


確かにクローン人間が産まれることはなくなるでしょうが、少なくとも僕の感覚からすると、この方法は違和感を感じざるを得ませんね。

やはり、根本的な解決法は、とにかく母体に戻さない!これだと思います。



次に、未受精卵の入手に関する倫理的問題を解決する方法についてです。

核移植は効率が悪いため、レシピエントとして多量の未受精卵を必要としてしまうのです。

倫理的な問題が発生する上に、ヒトから未受精卵を採卵する際には、女性に対して多大な肉体的・精神的苦痛を与える必要があり、後遺症が残る可能性があることも明記すべきですね。
後遺症としては、卵胞刺激、排卵誘起のためのホルモン注射による卵巣過剰刺激症候群により、下腹部の不快感・膨満、腹痛、腹水貯留、胸水貯留、呼吸困難、悪心、嘔吐、下痢、血液凝縮、出血傾向等の症状を引き起こす可能性があり、死亡するケースも報告されています。
約1週間のホルモン処理後、超音波で可視化しながら特殊な針を卵巣に挿入し、卵胞を吸引するのですが、この際、出血、感染、他臓器穿刺といったリスクを伴います。

やはり、このようなリスクを伴うことが分かっているのに、核移植のためだけに多量に採卵することは許されないと思います。

よって、核移植のために採卵するのではなく、不妊治療で過剰となった卵を用いる方法を確立する必要があるのです。



一つ目は、理研CDBの若山照彦先生らのグループによって報告された、老化を起こし受精に失敗した未受精卵をレシピエントとして核移植を行う手法です。



Curr Biol. 2007 Feb 20;17(4):R120-1
Establishment of mouse embryonic stem cell lines from somatic cell nuclei by nuclear transfer into aged, fertilization-failure mouse oocytes.
Wakayama S, Suetsugu R, Thuan NV, Ohta H, Kishigami S, Wakayama T.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17307041?ordinalpos=17&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum



核移植胚を発生させる際に、トリコスタチンAと呼ばれる脱アセチル化酵素阻害剤を培地中に加えることで、発生率を向上できることが、同チームによって発見されており、これにより、低品質な卵でも核移植のレシピエントとして用いることが可能になったとのことです。



Biochem Biophys Res Commun. 2006 Feb 3;340(1):183-9
Significant improvement of mouse cloning technique by treatment with trichostatin A after somatic nuclear transfer.
Kishigami S, Mizutani E, Ohta H, Hikichi T, Thuan NV, Wakayama S, Bui HT, Wakayama T.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16356478?ordinalpos=43&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum



二つ目は、ポーランド動物遺伝育種研究所のJacek A Modliskiら、および、ハーバード大学のKevin Egganらによって報告された、受精卵をレシピエントとして核移植を行う手法です。



Reproduction. 2006 Nov;132(5):741-8
Mouse zygotes as recipients in embryo cloning.
Greda P, Karasiewicz J, Modlinski JA.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17071775?ordinalpos=4&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum
Nature. 2007 Jun 7;447(7145):679-85
Developmental reprogramming after chromosome transfer into mitotic mouse zygotes.
Egli D, Rosains J, Birkhoff G, Eggan K.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17554301?ordinalpos=2&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum


クローン技術において、体細胞核をリプログラミングする物質は、卵の核内にある物質であるというのが、一般的な考えです。

哺乳類クローンの多くの研究では、レシピエントとして未受精卵を用いていますが、哺乳類の未受精卵は、実はM?期と呼ばれる分裂期で細胞周期が停止しており、核膜が崩壊しています。よって、未受精卵では核内物質が細胞質内に分散しており、核(染色体)を取り除いても、核内物質は残されたままなので、体細胞核をリプログラミングすることが可能です。

しかし、核膜の崩壊していない受精卵では、除核する際に、核内物質が取り除かれてしまうことが、受精卵が核移植のレシピエントとなり得ない理由だと考えられました。

そこで、Jacek A Modliskiらのグループは、核膜が存在する前核期の受精卵から、核内物質を残しつつ、染色体のみを取り除く方法を開発しました。

一方、Kevin Egganらのグループは、核膜が存在していないM期の受精卵から染色体を取り除くという手法を開発し、ntES細胞を樹立することにも成功しました。



これらの手法を用いることで、不妊治療において今までは廃棄されていた過剰な卵を核移植のレシピエントとして用いる道が開かれました。



あ、ちなみにヒトiPS細胞のニュースと被ってしまって全然話題になりませんでしたが、最近になってようやく霊長類のntES細胞が樹立されました。一応載っけておきます。



Nature. 2007 Nov 22;450(7169):497-502
Producing primate embryonic stem cells by somatic cell nuclear transfer.
Byrne JA, Pedersen DA, Clepper LL, Nelson M, Sanger WG, Gokhale S, Wolf DP, Mitalipov SM.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18004281?ordinalpos=13&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum




異種の動物の未受精卵を核移植のレシピエントに使う方法、卵巣中に多量にある未成熟な卵を取り出して体外で成熟させた卵を核移植のレシピエントに使う方法、ES細胞やiPS細胞から作製した卵を核移植のレシピエントに使う方法など、他にもいろいろ提案されています。いずれ触れようかと思います。


http://ameblo.jp/regenerative-kyoto/entry-10073644847.html

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