心霊　ホッとする話・いい話コミュの【実話】　帰りそびれた・・・

私の相方の体験談です。

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お向かいの・・・と言っても　駐車場を挟んでのお向かいなので距離もあり　ご挨拶をする程度の
お付き合いでしかなかったのだが、そのお向かいのオジイサンが長い闘病の末亡くなられたと
聞いたのは、前の年のことだった。お葬式の様子も無く、お付き合いも無いことから　お顔を拝見する
ことも無い方だった。

そんな事も忘れていた、真夏のある日。我が家はアパート・・いや、ボロアパートの１階に住んでいる。
ボロではあるが、日当たりも良く　その日も洗濯物をセッセと干していた。
すると、後ろから微かな声が聞こえた気がして、振り向いた。
周りは駐車場、真昼間は殆ど　誰も居ないはず。
「空耳か？」と思いながらも、なにか後ろに気配を感じる。
「まぁ、いいか」と思いながら、洗濯物に向かっていると今度は微かながらハッキリと声。
「あのぉ・・・すみません・・・」　蚊の鳴くような・・と言うのはこの事だろ。
あわてて後ろを振り向くと、ひょろりとしたオジイサンが立っている。
申し訳無さそうに、うつむいて　身を小さくするように。

半透明であったので「はぁ、真夏とは言え日の燦々としている時に・・・」？？
勿論、夜には見やすいというだけで　昼間にも　アチコチにいらっしゃる。
しかし、声をかけられたのは初めての事だった。
それも、何か重要な話しのようである。
「どうされましたか？」
「あのぉ・・・お恥ずかしい話しなんですが・・」と切り出された話しに耳を疑った。
「お盆の送り火に間に合いませんで・・・帰る方法はありますか？」
「へっ？」思わず出た言葉である。(そんな事ってアリ？）と。
長年、あちらの世界の方と接しているが、こういう相談は始めてである。
「あ・・まぁ、私で良ければ上げて差し上げる事はできますが、そう言うことですよね・・？」
「大変申し訳ありません・・・お願いいたします・・」
恐縮された態度は、一向に変わりません。

とりあえず身を清め、戻って頂くべく　準備を整え　お迎えをお願いして彼岸へ渡って
いただきました。燦々と照りつける太陽の中、お迎えくださった方が放つ　より一層の光に
乗られ、吸い込まれるように消えて行かれました。
「はぁ・・・こういう事もあるんんだなぁ・・近所の人なんだろうか？」

その日の夕方、夕食の買い物をしに出掛けました。スーパーへ行くには、遠いお向かいさんのお宅
の横を通ることになります。
キレイに手入れされているお宅で、いつも少し障子窓が開いていました。
そして、その向こうの景色は　お盆灯篭を片付けておられる　おばさんの姿でした。
「あ！！おじいちゃん、新盆だったんだ・・・」と、頭の中で繋がりかけた時　覗くでもなくやった
視線の先に、ご遺影がありました。
思ったとおり、あのおじいちゃんでした。
「ほぉ、おじいちゃんだったのかー。ご挨拶しとけばよかったなー」等と思いながら通り過ぎました。

それから数日して、台風の余波で大風が吹きました。
お向かいのお宅は、いつも風鈴を出されています。青銅の良い音色ですが　その大風の中では
非常に耳障りなモノになってしまっていました。
夜中も３時をまわった辺りから、イライラに変わりました。「仕舞ってくれよー！」と
思わず口に出した途端の事です。
一瞬、風の音も何もかもが静寂に変わって、勿論風鈴の音も聞こえなくなりました。
「え”？？」と思っていると、ふと耳元で「すみませんねぇ・・・」と、聞き覚えのある声。
あのおじいちゃんの声でした。そして、それ以来風鈴の音がしなくなりました。
風は、相変わらず吹き荒れています。
夜中の３時過ぎに風鈴を仕舞うなら、もっと早く仕舞っているはずでしょう。
気になって、台所の窓から　丁度風鈴が下がっている軒が見えるので見に行きました。
風鈴は確かにあり、それどころか飛んで行きそうな勢いで揺れています。

「そっか、おじいちゃんのお礼だー」と、何だかうれしくなりました。
ご近所の話しだと、床に伏せる前は　とても人付き合いの良い方だったそうです。

感謝の気持ちを伝えられた・・と言うお話しでした。