たーちゃんとお母さんコミュの手紙２５枚目　１+２+３枚

たーちゃん、元気かしら？
火傷をするような夜遊びしてないかしら？

お母さんはテレビで知ったドリームノートたるものをつけてます。
夢日記よ、夢日記！
んもぅ！のりピーの夢冒険じゃないわよ！

朝起きたらすぐに夢を書き綴るの。
ただそれだけ。

今日ラジオ体操から帰ってきて読んだらお母さん、赤面したの！
だって……
だってお母さんは……

お母さんはパー子だったの！
嫌だ！なんでこんな夢見たのかしらと考えたわ。
はたと気付いたのが昨夜、たーちゃんの部屋に入って掃除した際、パーマンの漫画を発見して読んでたからかしらね。
夢はどんなだったかしら？
確かこうだったわよね……

お母さんは、ガバッと布団から跳び起き、得意の琉球空手で身構える！
静まりかえった部屋では畳の匂いと雨音が聞こえる。
……なんだか視界がオカシイ。
化粧台の鏡を開けて見てビックリしたの！

だって…
だってお母さん、「桃色のヘルメット」してるの！
目深に被って、目の所があいていてそこから見えるのよ！
しかも肩から「マント」をしてるじゃない！

お母さんは、浴衣に桃色のヘルメット、そしてマントの姿に心臓が止まりそうだったわ！

まずは落ち着かないといけないよね。
台所で水を１杯飲み干し、仏壇で手を合わせたの。
ご先祖様、お母さんは夢見てるのでしょうか？
お母さんがパー子だったなんて現実じゃないわよね？
それとも何か使命が待っているのかしら？
なら、お母さん頑張ります！
たーちゃんが胸を張れるパー子になります！

落ち着いたけど特にやることもないのでもう一度台所へ行き、お茶を飲みながら自慢の沢庵をボリボリッと貪った。

ビビィ～ッ！
ビビィ～ッ！

お母さんは腰を抜かした。
く、空襲？
ビ、Ｂ２９？

……燃えていないみたい。
じゃあ何かしら？

…音を辿ると浴衣の合わせに隠れて「Ｐのマークのバッヂ」があったの。
取ってみたら
「パー子、聞こえるか？
パー子、聞こえるか？
車同士の事故だ！助けに行くぞ！」

……。
この声なんだか懐かしいわ。
誰かしら？
なんだか胸が切ないのよ。

そうそう、町に行くんだけっけ。事故負傷者を助けに行くんだっけね。
でもどうやって？
こんな時間にバスは走ってないしどうやって町まで行くのかしら？

！！
そうだ！パーマンは空を飛べるのよね。
ひとっ飛びだったわよね。じゃあお母さんも飛んでみましょうか！

玄関出て鍵をかけてから走って飛んだの！
勢いよくジャンプしたのにあれよあれよと落下していくじゃない。

地面にぶつかる瞬間！
オシッコが少し漏れた瞬間！

フワッと浮いたの！
浴衣の裾が地面に触れているのが気になるけど飛べてる！
そうね、地面から５０?pくらい上を浮かんでるわ！

ヒャッホー！
最高よ！
最高よ！
歩いている時より視界が低く、速度も遅いわ！

40分かかって町に着いたら事故現場は片付いていたの。

ガードレールに佇むタバコを吸っているパーマンと思しき方がパー子に気付いたの。

吸ってたタバコをポケット灰皿に乱暴に押し込み、缶チューハイを潰してガツガツ歩いてくる。

ラクダのシャツに腹巻の格好のパーマンらしい方は
「遅いんだよ！あれからどんだけ時間が経ってると思ってるんだ！パーマンなめんじゃねぇ！とっくに病院に、車の移動とやっておいたぞ！この役立たず！」

お母さんはトンカチで頭を殴られた感じがしたわ。

だってこの声…
だってこの声は、初恋の武田君じゃないの！
間違いないわ！
ヘルメットしてるけどこの声に間違いないわ！

忘れるもんか！
あのアバンチュール、忘れてたまるもんですか！

あっ、あぁ～、なんて言う神様の悪戯！
こんなに素敵な再会なんてあるのかしら？

頬が紅く染まったお母さんにパーマンが言ったわ！
「泣けばいいってもんじゃねえ！次回は遅れるんじゃねぇぞ！わかったか、この役立たず！」

「は、はい」

相変わらず格好良いわ～
男らしくてお母さん、好きよ～
残念だけど、この初恋武田パーマンはパー子がお母さんだなんて全くわからないみたい。
浴衣から覗く肌がほんのり桜色なのに全く気付かないなんて、なんて罪な人！
もう！男って鈍感なんだから（笑）

颯爽と飛んで行く姿にお母さん、見えなくなるまで見送ったの。

次こそ初恋の武田パーマンの役に立たなきゃ！
決意を固くしその格好のままバスで帰宅したわ！

初恋の武田君がパーマンだなんてね。
居間でお茶をすすりながらほくそえんだ。
ヘルメットとマントをしたまま農作業の格好に着替えて畑仕事したの。

ビックリよ！
なんだかはかどる、はかどる！
耕すのも楽だわ！
楽しくて没頭していたら

ビビィ～ッ！
ビビィ～ッ！

きたわ！
今度こそ、武田君！じゃなくてパーマンの力にならなくちゃ！

手ぬぐいを首に巻き走って走って飛んだわ！

案の定、低空飛行だし遅いけど一生懸命飛びながらＰバッヂをとったの。

「パー子！ワークマンでの激安セールで負傷者発生だ！救急車より急げよ！」

あぁ愛しの武田パーマン！
お母さんは気持ちだけ急いてるのに速度が遅いの！

急げ、パー子！
急げ、お母さんパー子！

なのに登校の子供達に抜かれて抜かれて気持ちがもどかしい。

泣きそうな面で（と言ってもヘルメットで隠れてるけど）トボトボ飛んでると

「パー子！パー子！急ぎなさい！」

だ、誰？

ふと右を向くと
耕運機に乗ったバードマン？？
でも、あ、あれは
鈴木さんのおばあちゃん？
おばあちゃんがバードマン？

「ボヤッとしてんじゃないよ！」
檄をとばされて気付いた。
鈴木さんのおばあちゃん、片乳が出てるの！

浴衣が緩んでて片乳が出てるの！

お母さん、なんだか勇気出て懸命に飛んだわ！
耕運機と並んで飛んだわ！

町に着いたら激安セールも落ち着いていたわ。

初恋の武田パーマンは露店で瓶ビールをラッパ飲みし灰皿にはタバコが溢れてる！

気付いたパーマンは
「遅いんじゃあボケッ！この役立たずパー子にバードマン！解散だ、解散！やってられっか！」

何も言えず、ワナワナと震えるお母さんパー子は助けを求めるようにバードマンを見たら

駐車場に耕運機をバックで入れてる姿が目に入ったの！

唖然としてるパー子をよそに鈴木さんのバードマンおばあちゃんが、片乳ハミ出してることに気付いて恥ずかしがっているわ。

パーマンの罵声に放心状態のお母さんパー子は、おばあちゃんの水分の抜けたシワシワのオッパイを見てるしかなかった。

舌打ちをし唾を吐き、飛び去るパーマンに２度と結ばれない運命があることを気付いて意識を失ったの。

夢から醒めたら、枕がグッショリ涙で濡れてたわ。

切ないわね。

追伸
意外とヘルメットは邪魔にならないのよ。