たーちゃんとお母さんコミュの手紙１５通目　１＋２＋３枚目

最初に言うわ。
たーちゃんよく読んでね。

今回のお手紙長いのよ。
なんと３枚なのよ。
続けて読んでちょうだいね。

それにしてもお母さんは毎回、徹夜で夜なべしたり農作業の合間にこの手紙を書いてるんだけどどうしてこうも長いのかしら？

書き出しは短くしたいと思ってるのに書いていたら長くなっちゃうのよね。

困るわ～、お母さん。

では本編開始するわよ。

たーちゃん元気に暮らしてますか？

お母さんお酒呑んでま～す！
んふ～、とっても良い気分なの。

だってね、たーちゃんが小学２年生の時の授業参観日のお知らせを今っころ見つけちゃったのよ～。

授業参観覚えてるかしら？

たーちゃんが小学校２年生の時、そうよ！数日前にプリントもらったのよね。
たーちゃんが「お母さん！明日は絶対来てね！僕、た～っくさん答えるからね！お母さん来てよ！」
ってはしゃぐもんだからお母さん、何を着て行こうかしらと考えたのよね～。

さすがにお父さんからもらったお気に入りの赤いレインコートってわけにもいかないし、かといってお父さんが買ってくれた白のドレスってわけにもいかないし困ったわ～。

当日まで悩んでいたけど畑に向かう途中でおばあちゃんから頂いた着物を着て行こうと決めたのよ。

精を出し畑を耕していたら鈴木さんのおばあちゃんが声をかけてきて話し込んじゃったのね。

おばあちゃんったら噂好きで何でも知ってるこの村じゃ神様的な存在じゃない。

お母さんも噂が嫌いじゃないから乗ってしまっていたのね。
だって撒いた種をスズメがついばんでも気付かなかったもの。

大盛り上がりのお母さん達に田中さんのおばあちゃんが
「アンタ、授業参観じゃなかったのかえ？時間とっくに過ぎてると違うんでないかい？」

お母さんもらしそうなほどビックリしたわ！

お母さんに限ってたーちゃんを、たーちゃんを裏切るなんて有り得ない！
これじゃあお母さん失格だわ！
太宰お母さんだわ！

お母さん慌てて、そりゃあ慌てて鈴木さんの耕運機に飛び乗ったのよ！

お母さん必死だったわ！
耕運機がお母さんの心と同じように悲鳴をあげてたわ！
たーちゃん！
たーちゃん！
お母さんのたーちゃん！

やっとの思いで校庭の中に入ったら上級生の教室から
「あれ！タクマのかーちゃんじゃねえ？」
「トラクターで来てやんの！」
「ﾋｬｰｯﾋｬｯﾋｬ！有り得ねぇ！」
「校庭でも耕すのかよ！（笑）」「暴走族が来たぞぉ～」

一生懸命なお母さんには聞こえなかったわ。
お母さんはむしろ歓迎されてると思って手を振ったもの！

ようやく玄関に着き、走って教室に駆け込んだらもうとっくに始まっていたわ。

凄い音と共に入ったお母さんをみんなはビックリしてたわね。
ポカンと開いてた口々を見て池の鯉を思い出したもの。
でもね、あの時の目を白黒させてたたーちゃんを今も鮮明に覚えてるわ。

他のお母さんに混じってたら田中さんの奥さんが小声で言うの。
「なんでアンタ農作業の格好なのよ？しかも顔泥だらけよ！」

はたと気付いたわ。
お母さん、急ぎのあまりそのまんま来てしまったの。

周りのお母さん方はお化粧もしっかりして素敵なおべべを着てるじゃない。
お母さん穴が開いてたら入りたかったわ～

先生が気を取り直して質問したら子供達が「はい！はい！」元気良く手を挙げてる。
でもたーちゃんはうつむいたままジッとしてるじゃない。

お母さん、たーちゃんが具合悪いのかと思って心配したの。

みんなは「はい！はい！」元気答えてるのに。

よく見たらたーちゃんの顔は真っ赤だったわ。

お母さん思わず
「たーちゃん！わからなくても良いから手を挙げて答えなさい！」
て言ったら、たーちゃん振り返って、真っ赤な顔で
「なんでそんな格好で来たんだよ！みんなお化粧しててキレイなドレス着てるのに！恥ずかしいやい！」
と叫んで泣き始めたのよ。

お母さんオロオロして気を失いかけたわ。
シ～ンと静まり返った教室にはたーちゃんの泣き声が痛く響いていたの。

ガララッ
「ほらっ！しっかりおし！」

振り返って見れば農作業姿の鈴木さんのおばあちゃんがいるじゃない。

「アンタ、ター坊のお母さんだろ！へこたれてる場合かえ？アタシも同じ格好してるんだから大丈夫じゃて」
そう言われてもお母さん、たーちゃんの晴れ舞台に農作業姿だしまだ立ち直れないでいると

鈴木さんの所のおばあちゃんがオッパイ出してるじゃない。
片乳出してるじゃない。

どよめく中おばあちゃんは凛としてこう言ったの
「これでもまだオメエさんは恥ずかしいのかえ？恥ずかしい前にオメエさんはター坊のお母さんだろ！」

お母さんはお母さん…
お母さんはお母さんよ。
そうよ！お母さんはお母さんであってお母さん以外のお母さんじゃないわ！
しっかりしなさい！お母さん！

気を取り直したお母さんは
「たーちゃん！いつまでグジグジしてんの！そんなのナメクジと一緒よ！お母さんはね、必死な思いで畑を耕していたのよ！誰だってお母さんを責めることは出来ないのよ！よく聞きなさい！お母さんの顔に付いてる泥はおしろい、この農作業の格好だってお母さんにはヒラヒラのドレスと一緒よ！恥じることなんて全然ないわ！たーちゃん！顔を上げなさい！手を挙げて先生の質問に答えるのよ！」

一瞬の静まりから割れんばかりの拍手が響いたの！
鈴木さんのおばちゃんも片乳出したまま涙滲ませて拍手してる。

お母さんとおばあちゃんは頷き合ったわ。
「それでこそター坊のお母さんだ！」

先生が質問を再開しみんなが手を挙げたわ。
たーちゃんも空高く手を挙げたわ！
お母さんも涙浮かべて手を挙げたわ。
鈴木さんのおばあちゃんも手を挙げたわ。

先生が
「じゃあ田中！」

って指して
田中さんのお子さんが即答したらお母さんいたたまれなくなってきて

「先生！たーちゃんが手を挙げてるのに、お母さんも手を挙げてるのになんで指してくれないのよ！ダシに使ったのかえ？」

お母さんの悲痛な叫びに窓も震えたわ。

同時に鳴ったチャイムにお母さんうなだれて出て行ったの。

お母さんやるせなくてやるせなくて耕運機で校庭を耕してやったわ。
そりゃあ見事なもんよ。

ミス耕運機の名に恥じない見事な畑が出来たわ。

片乳ハミ出した鈴木さんのおばあちゃんを引っ掛けて村を一周してきたわよ。
しかも耕しながら（笑）

ップゥフゥ～
良い気持ちよ～
懐かしいわね。
お母さんにとっては良い思い出。

そうそう、たーちゃんはその後の感想文に
「お母さんは世界一のお母さんだい！耕すのも世界一に決まってるやい！必殺畑人に決まってるやい！」
なんて書くんですもの（笑）

鈴木さんのおばあちゃんに感謝ね。
お線香でもあげておくわ。

お母さんもう一杯飲んだら寝るわよ。
たーちゃんも感謝しながら寝なさいね。
じゃあまた手紙書くわ。
おやすみ