ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

Pの『THE つだん部屋』コミュの私の里帰り

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
※田舎全てを差すものではありません。

※方言は脚色しており実際のものとは異なります。

※暴力が苦手な方は回れ右。



私が中学生になった頃。

両親が離婚し私は父の実家がある東北地方の某所へと連れていかれたのでした。
着いて早々、私は親族が集まる本家へと腕を引かれ。
小さな平屋が転々と点在する村の砂利道を歩き暫くすると差別化を強調するように百人が家に入っても余裕なほど広大な土地と屋敷が威厳を放っていました。

庭先には眉間にシワを寄せた着物姿の老婆が佇み。

私と父を見た途端、奇声をあげて罵詈雑言を吐きました。

そんな出迎えを受けつつ家へと入ると奥間へ老婆が案内を務め、終始小言を呟き続けます。

十畳ほどある部屋に通され見たこともない大人達の厳しい眼に晒されました。

まるで親の敵のように……。

父はというとひたすら床に額をこすりつけて土下座。
一身上の都合で憎かった父の背中はとても小さく見えました。

親族は皆、父の謝罪を幾度とはね除け罵倒の雨を降らせます。

皆のボルテージは上がり誰かが父や私に掴みかかるのは時間の問題ではないかと思われた時。

野太い声が親族を制止。

嘘のように静まり返る私と父を囲む円陣。

円陣の中央には180ほどある長身で白髪の人(祖父)が無表情だった顔を緩めて私に視線を合わせて言いました。

「怖かったろう?ワシは皆のように怒らんからな?ワシは人神一徹(仮名)…お前の父さんの父さんだ……おじいちゃんだよ?おじいちゃんって言ってごらん?」

私はニヤニヤと七福神のように笑う祖父を尻目にチラリと震える父の背中を視ました。

……仕方がない。

正直、それが頭に広がり。
次に「この人なら……」と希望にすがった。

私は小さな声で「おじいちゃん……」と言いました。
それを聞いた祖父は勢いよく立ち上がりゲラゲラと下品な笑い声をあげて私に告げます。

「心地悪い!ワシの孫ながら!おじぃ呼ばわりされてこれほど心地悪いのはお前だけだ…!それもこれも汚れたあの女が関係しているんだ!お前は汚れた子だ!」

「おじいちゃん……あ、あの……」

最初、理由がわからなかった。

いきなり優しくされて口車に乗ったら突き落とされた。

簡単な原理なのに理解したくない自分がいた。

それで蜘蛛の糸にすがる私は震える唇で言葉を紡ぎ出そうとする。

「おじいちゃん……どうしてそんな冗談を言うの?」と。

笑みを浮かべる私。

けれど笑顔はすぐに苦悶の顔へと変わり、視界がグルッと反転して畳に頭をぶつけた。

口の中に血の味が伝わり、片方の頬がヒリヒリと熱く痛む。

祖父に思いっきり平手打ちされたんだと気付くのは簡単だった。

祖父は笑顔を絶やさず何度も平手打ちの動作を繰り返していたのだ。

「二度とおじぃと呼ぶんじゃない汚れた餓鬼め……ヒヒヒヒ!ヒヒヒヒ!」

ヒヒヒヒ!と奇怪な笑いが祖父を皮切りに親族達に伝播する。

笑った親族達の顔は皆が同じように視えて不気味さを強調し、それが涙とともに視界が曇った時は正直ありがたいと思った。

相変わらず小さな父の背中も曇った。

……仕方がない。

私はもう一度、脳裏で呟いた。

「いつまで固まってる!?この堕らすが!こっちに来るんだ!」

私は笑顔を張り付けた祖父に胸ぐらを掴まれると罵倒され、ズルズルと体を引きずられ奥の間のさらに奥間に連れて行かれた。

襖が親族達によって次々と開かれ目の前には闇が延々と広がっている。

まるで地獄に続くみたいだと思ってしまう。

例え地獄に行っても、近所に住んでいた笑うと狐そっくりなお姉さんに会えたら良いな、とクラクラする頭で小さく切望した。

「これからお前がいかに汚れた女から生まれたか話してやろうじゃないか!二人っきりでな!せっかくの里帰りだからな?」

六畳ほどの部屋に着くと祖父は皮肉混じりに告げ、私から手を離した。

次いで豆電球が光り部屋を明るくする。

部屋の壁は血の痕や猫じゃない何かが引っ掻いた痕が、この場所はヤバい!と明確に物語っていた。

……今だ!逃げよう!

そう叫ぶ私がいる。

私はチラリと背後を覗くと襖の奥の暗闇からは人の荒い息づかいと青白い手が、私を逃がさない!と誇示していた。

「逃げようとしたら暫く歩けん体になってもらうんでの!ヒヒヒヒ…!」

祖父はボキボキと拳を鳴らして私に釘を打つ。

私は祖父に従うしかなかった。

祖父は語る。

父と母の馴れ初めを……。
父は兄姉の六男。

末っ子。

村の掟では末の子は無論家を継ぐことは叶わず結婚もなく、ただただ生涯を馬車馬の如くお家のために働くのが常だった。

しかし父は村を飛び出し、よそで鎮魂を務める巫女であった母と駆け落ちしてしまう。

噂は月日を重ねて県から県へ村から村へ伝わる。

ただでさえ無断で村を飛び出した父は重罪であるにも関わらず近親での濃い血を保ってきた家柄。

世俗とは逆の常識を持った親族達は激怒。

そして村の言い伝えにある、近親の均衡が崩れ災いが起こる、とされた。

それは村人全員に広がり、当の原因である夫婦とその子に伝播する仕組みとのことだった。


「ワシらの血は同じ者同士が合わさって清められていた…なのに、なのに!お前の親父と来たら余所者に手を出したばかりか!調べたら……その女が神事の出と来た…!汚れをワシの身内に入れてしまったんだよ!!だが不幸中の幸いは……祟りを恐れ自分の命欲しさに里帰りしたバカなお前の親父のおかげで……ワシらは祟りから逃れられる…祟りはお前に受けてもらうからな…ヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」


私は少し呆気に取られつつ耳障りな祖父の笑い声を尻目に口内に広がる血を飲み下し続けた。

コメント(1)

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

Pの『THE つだん部屋』 更新情報

Pの『THE つだん部屋』のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング